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第28話
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一限はギリギリ間に合って、空いた二限の時間に友達と待ち合わせして、校内にある喫茶店に入ってコーヒーを頼んだ。
「そういえば修介、この前藤澤 景と二人で会ったんだろ? 実際どうだった? カッケーのか?」
「あ、俺もそれ訊きたいな! テレビで見るのとはやっぱ違う?」
この二人は、友人の晴人と秀明。
入学したての頃、教室の場所が分からずオロオロしているところを見かねて声を掛けてくれて、それから行動を共にするようになった。
この二人は、俺の性の事情を知っている数少ない友達だ。
「めっちゃカッコエエで! テレビで見るよりも実物の方が遥かに小顔で背も高かった!」
「ふぅん。そうなんだ。あの人ってハーフみたいな顔してるよね」
晴人は、三人の中では一番しっかりしたリーダー的存在だ。
顔の堀が深く、眉毛がしっかり整っていて、メガネをしている事が多い。
晴人こそハーフのような顔をしている。
遊ぶ時や飲む時、昼飯は今日は何処にするかなど、全部晴人が決めてくれるから、俺たちはそれに大人しくついていく。
「いいなぁー。俺も今度誘ってほしい~」
秀明は、俺と見た目が似ているとよく言われる。
髪を茶色に染めてパーマをかけていて、俺よりも少しだけ背が高い。
好んで着る服のブランドが一緒だから、たまに一緒に買い物に行くと面白い。
晴人は真剣な表情をして、ふと俺に尋ねた。
「本当にあの人、モデルの南と付き合ってるのか?」
「うん。一緒に飲んでた時、彼女からめっちゃ連絡来てたで。相当愛し合っとるな、あれ」
晴人はがっくりと肩を落として項垂れた。
「晴人、どうしたんよ?」
「修介知ってた? 晴人って南の大ファンなんだよー?」
「えっ、そうなん? それは知らんかった……まぁ、気を落とさんと!」
俺は晴人の肩をポンポンと叩いた。
しばらく談笑していたら、入り口の方から何やら聞き慣れた声が聞こえてきた。
後ろを振り向くと、四、五人の男女グループが笑い合いながら並んで中に入ってくるのが見えた。
その中の一人が、翔平だった。
ほぼ同時に目が合うと、翔平はパアッと表情を明るくさせた。
「おー、修介! やっと会えたじゃん!」
「そやなぁ! バイトでは嫌でも顔合わすんになぁ!」
翔平は、何事かと顔を見合わせる晴人と秀明に事の詳細を説明し終えると、なぜか俺を喫茶店の隅に呼んだ。
「なんやねん、急に」
「ちょうど良かった。修介くん、一生のお願い。今日バイト代わって?」
「はぁ? なんで?」
代わってと言われて、眉根を寄せた。
今日は特に用事も無いけど、バイトの人数が足りないからと店長に頼まれて、仕方なく五連勤をしてやっと休みが取れて一息つける日なのだ。
翔平は呑気な事を口にし出す。
「さとみちゃんが映画観に行きたいって言ってんのー! 今日レディースデーだから、さとみちゃんにお得に観てもらいたいんだよー!」
なんだその理由は。
顔の前で手を合わせて頭を下げる翔平を見ながら、俺はピシャリと言ってやった。
「嫌や。俺五連勤もしたんやで? もう体がボロボロや。ゆっくり寝させてや」
「そこを何とかっ!」
「ならへん」
「お願い! 修介さま! 今日だけでいいから~!」
今度埋め合わせするから~! と、全然引こうとしない翔平を見て、口を噤んで悩んだ。
まぁ、景に会えたのも、翔平が企画してくれて、俺を信頼してるって事で呼んでくれたんだし、感謝はしているけど。
「……もうっ、今日だけやでっ?」
俺はとうとう折れて、腕を組みながら翔平に言った。
翔平は「ありがとうー!!」と、みんなの注目を浴びるくらいに俺を強く抱きしめた。
「あ、そうゆうこと」
抱きしめられている俺を見ていた晴人が、ニヤリと微笑んで呟いた。
きっと誤解している。俺たちの仲を。
「ちゃうで?! 友達やで?!」
即座に翔平を無理やり引き剥がした。
「そういえば修介、この前藤澤 景と二人で会ったんだろ? 実際どうだった? カッケーのか?」
「あ、俺もそれ訊きたいな! テレビで見るのとはやっぱ違う?」
この二人は、友人の晴人と秀明。
入学したての頃、教室の場所が分からずオロオロしているところを見かねて声を掛けてくれて、それから行動を共にするようになった。
この二人は、俺の性の事情を知っている数少ない友達だ。
「めっちゃカッコエエで! テレビで見るよりも実物の方が遥かに小顔で背も高かった!」
「ふぅん。そうなんだ。あの人ってハーフみたいな顔してるよね」
晴人は、三人の中では一番しっかりしたリーダー的存在だ。
顔の堀が深く、眉毛がしっかり整っていて、メガネをしている事が多い。
晴人こそハーフのような顔をしている。
遊ぶ時や飲む時、昼飯は今日は何処にするかなど、全部晴人が決めてくれるから、俺たちはそれに大人しくついていく。
「いいなぁー。俺も今度誘ってほしい~」
秀明は、俺と見た目が似ているとよく言われる。
髪を茶色に染めてパーマをかけていて、俺よりも少しだけ背が高い。
好んで着る服のブランドが一緒だから、たまに一緒に買い物に行くと面白い。
晴人は真剣な表情をして、ふと俺に尋ねた。
「本当にあの人、モデルの南と付き合ってるのか?」
「うん。一緒に飲んでた時、彼女からめっちゃ連絡来てたで。相当愛し合っとるな、あれ」
晴人はがっくりと肩を落として項垂れた。
「晴人、どうしたんよ?」
「修介知ってた? 晴人って南の大ファンなんだよー?」
「えっ、そうなん? それは知らんかった……まぁ、気を落とさんと!」
俺は晴人の肩をポンポンと叩いた。
しばらく談笑していたら、入り口の方から何やら聞き慣れた声が聞こえてきた。
後ろを振り向くと、四、五人の男女グループが笑い合いながら並んで中に入ってくるのが見えた。
その中の一人が、翔平だった。
ほぼ同時に目が合うと、翔平はパアッと表情を明るくさせた。
「おー、修介! やっと会えたじゃん!」
「そやなぁ! バイトでは嫌でも顔合わすんになぁ!」
翔平は、何事かと顔を見合わせる晴人と秀明に事の詳細を説明し終えると、なぜか俺を喫茶店の隅に呼んだ。
「なんやねん、急に」
「ちょうど良かった。修介くん、一生のお願い。今日バイト代わって?」
「はぁ? なんで?」
代わってと言われて、眉根を寄せた。
今日は特に用事も無いけど、バイトの人数が足りないからと店長に頼まれて、仕方なく五連勤をしてやっと休みが取れて一息つける日なのだ。
翔平は呑気な事を口にし出す。
「さとみちゃんが映画観に行きたいって言ってんのー! 今日レディースデーだから、さとみちゃんにお得に観てもらいたいんだよー!」
なんだその理由は。
顔の前で手を合わせて頭を下げる翔平を見ながら、俺はピシャリと言ってやった。
「嫌や。俺五連勤もしたんやで? もう体がボロボロや。ゆっくり寝させてや」
「そこを何とかっ!」
「ならへん」
「お願い! 修介さま! 今日だけでいいから~!」
今度埋め合わせするから~! と、全然引こうとしない翔平を見て、口を噤んで悩んだ。
まぁ、景に会えたのも、翔平が企画してくれて、俺を信頼してるって事で呼んでくれたんだし、感謝はしているけど。
「……もうっ、今日だけやでっ?」
俺はとうとう折れて、腕を組みながら翔平に言った。
翔平は「ありがとうー!!」と、みんなの注目を浴びるくらいに俺を強く抱きしめた。
「あ、そうゆうこと」
抱きしめられている俺を見ていた晴人が、ニヤリと微笑んで呟いた。
きっと誤解している。俺たちの仲を。
「ちゃうで?! 友達やで?!」
即座に翔平を無理やり引き剥がした。
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