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第5章 ぼくの運命の先輩は。
謝られています…が?
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指定された場所、それは別校舎の空き教室だった。
中に入ろうとしたが、ドアが開かない。鍵がかかっている。
もう一つのドアを横に引くと、こっちはすんなり開いた。
中に入ると、さっき開けようとしていたドアの前には段ボール箱や机や椅子が重なって置いてあった。
黒板には落書きがたくさん。壁にもマジックで卑猥な文字が書かれている。隅っこには、空き缶が数本と、その中にタバコの吸い殻まで。きっとヤンキーたちのたまり場になっているのだろう。
手紙の主を待つため、ぼくはカッターで切られたような跡があるパイプ椅子に座ってジッと待った。
5分、10分と時間が過ぎていくが、廊下からは足音一つ聞こえてこない。どうしたものか。
静寂に包まれていると、聖先輩に書庫室で抜かれてしまったことを思い出す。
スマホを取り出してメッセージアプリを開いてみたが、聖先輩からは特に連絡はない。
ぼくは「あぁー」とひとりごちた。
先輩たち、もしかしてぼくのせいで険悪になっちゃったのかな。
気になるのに、怖くて訊けない。そもそも今日、聖先輩は学校に来ているのかさえ分からない。
やっぱり一からやり直したい。
あの保健室で聖先輩に間違って告白しちゃった時から。
あの時にきちんと断っていれば、こんな気持ちにならずに済んだのに。
聖先輩の存在が、こんなにも大きくなっている……。
ガラッ! と勢いよくドアが開けられた。
ぼくは肩をビクつかせて、瞬時にドアの方を見る。
そこには、聖先輩みたいに蜂蜜色の髪で、全体にふんわりとパーマがかった青年がいた。
眉が細くてくっきり二重のその人を見て、あぁ、そういえばこの人だった、とようやく思い出した。
その人はゆっくりとドアを閉め、ぼくの方へ近づいてくる。
「小峰くん、だよね?」
「はい、そうです」
ぼくは反射的に立ち上がる。
眉尻を下げるその人は、ぼくの目の前まで来ると膝に手を付いて勢いよく頭を下げた。
「本当にっ悪かった!」
まるで不倫をスクープされた芸能人みたいに切羽つまった声で言うものだから、ぼくは慌てて両手をブンブン振った。
「いやっ、ぼくの方こそ、あの時うまくよけれなくてすみませんでした! 気にしてませんので、顔上げてください」
「怪我ってここだけ? 骨にヒビ入ったりしてない?」
顔を上げてくれたかと思ったら、ぼくの手首に巻かれた包帯を涙目で撫でてくる。
ぼくは何度も首を縦に振った。
「大丈夫です。ちゃんと病院で診てもらいましたから」
「あぁ、申し訳ないよ。診察代っていくらだったの? 俺払うから」
「いえ、本当に大丈夫ですから」
「けど……」
ぼくよりも背が高いのに、オドオドして背中を丸めながら謝ってくるこの先輩を見て、わざとやってきたんだと一度でも決めつけてしまった自分を悔やんだ。
ぼくは何度も「大丈夫ですから」と言って、その先輩を落ち着かせた。
「こうして話してくれただけで充分ですよ。もうお互い、この事は忘れましょう。わざとでは無かったんですし」
ぼくはニッコリと微笑んでその人を安心させようとする。
しかし相手の顔はまだ晴れることがない。不安に駆られたような表情のまま、ぼくに告げた。
「まだ、ダメだ。納得出来ないよ。小峰くん、無理してるでしょ? きっと本当の気持ちは違うんでしょ? 本当は俺のこと憎いって思ってるよね? そうなんだよねっ?」
えぇーー。
ぼく正直、申し訳ないが直感で『面倒だなこの人』と思ってしまった!
もう本当にいいって言ってるのに。
というかもう帰りたい!
「心の底から俺のことを許してくれるまで、俺はなんでもするよ。あぁそうだ。こうすれば許してくれるかな?」
その先輩はなんだか一人で喋りながら、なぜか自分のネクタイをシュルッと取って、シャツのボタンを上から順に外していった。
……あれ、何してるんですか、この人。
中に入ろうとしたが、ドアが開かない。鍵がかかっている。
もう一つのドアを横に引くと、こっちはすんなり開いた。
中に入ると、さっき開けようとしていたドアの前には段ボール箱や机や椅子が重なって置いてあった。
黒板には落書きがたくさん。壁にもマジックで卑猥な文字が書かれている。隅っこには、空き缶が数本と、その中にタバコの吸い殻まで。きっとヤンキーたちのたまり場になっているのだろう。
手紙の主を待つため、ぼくはカッターで切られたような跡があるパイプ椅子に座ってジッと待った。
5分、10分と時間が過ぎていくが、廊下からは足音一つ聞こえてこない。どうしたものか。
静寂に包まれていると、聖先輩に書庫室で抜かれてしまったことを思い出す。
スマホを取り出してメッセージアプリを開いてみたが、聖先輩からは特に連絡はない。
ぼくは「あぁー」とひとりごちた。
先輩たち、もしかしてぼくのせいで険悪になっちゃったのかな。
気になるのに、怖くて訊けない。そもそも今日、聖先輩は学校に来ているのかさえ分からない。
やっぱり一からやり直したい。
あの保健室で聖先輩に間違って告白しちゃった時から。
あの時にきちんと断っていれば、こんな気持ちにならずに済んだのに。
聖先輩の存在が、こんなにも大きくなっている……。
ガラッ! と勢いよくドアが開けられた。
ぼくは肩をビクつかせて、瞬時にドアの方を見る。
そこには、聖先輩みたいに蜂蜜色の髪で、全体にふんわりとパーマがかった青年がいた。
眉が細くてくっきり二重のその人を見て、あぁ、そういえばこの人だった、とようやく思い出した。
その人はゆっくりとドアを閉め、ぼくの方へ近づいてくる。
「小峰くん、だよね?」
「はい、そうです」
ぼくは反射的に立ち上がる。
眉尻を下げるその人は、ぼくの目の前まで来ると膝に手を付いて勢いよく頭を下げた。
「本当にっ悪かった!」
まるで不倫をスクープされた芸能人みたいに切羽つまった声で言うものだから、ぼくは慌てて両手をブンブン振った。
「いやっ、ぼくの方こそ、あの時うまくよけれなくてすみませんでした! 気にしてませんので、顔上げてください」
「怪我ってここだけ? 骨にヒビ入ったりしてない?」
顔を上げてくれたかと思ったら、ぼくの手首に巻かれた包帯を涙目で撫でてくる。
ぼくは何度も首を縦に振った。
「大丈夫です。ちゃんと病院で診てもらいましたから」
「あぁ、申し訳ないよ。診察代っていくらだったの? 俺払うから」
「いえ、本当に大丈夫ですから」
「けど……」
ぼくよりも背が高いのに、オドオドして背中を丸めながら謝ってくるこの先輩を見て、わざとやってきたんだと一度でも決めつけてしまった自分を悔やんだ。
ぼくは何度も「大丈夫ですから」と言って、その先輩を落ち着かせた。
「こうして話してくれただけで充分ですよ。もうお互い、この事は忘れましょう。わざとでは無かったんですし」
ぼくはニッコリと微笑んでその人を安心させようとする。
しかし相手の顔はまだ晴れることがない。不安に駆られたような表情のまま、ぼくに告げた。
「まだ、ダメだ。納得出来ないよ。小峰くん、無理してるでしょ? きっと本当の気持ちは違うんでしょ? 本当は俺のこと憎いって思ってるよね? そうなんだよねっ?」
えぇーー。
ぼく正直、申し訳ないが直感で『面倒だなこの人』と思ってしまった!
もう本当にいいって言ってるのに。
というかもう帰りたい!
「心の底から俺のことを許してくれるまで、俺はなんでもするよ。あぁそうだ。こうすれば許してくれるかな?」
その先輩はなんだか一人で喋りながら、なぜか自分のネクタイをシュルッと取って、シャツのボタンを上から順に外していった。
……あれ、何してるんですか、この人。
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