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第4章 ぼくの運命が変わる日
男らしくなろう。
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先輩たちの次の試合も見ていく事にして、体育館にそのまま留まった。次の試合も圧勝で、次はついに決勝。その試合は午後、ぼくらの試合の後に行われるみたいだから、ぼくと乙葉は体育館から出て学食へ向かった。
早めの昼食を取り、準備体操をする。
他の生徒がまだ昼休憩をしている中、ぼくは乙葉とこっそり練習をしていた。
「じゃあこの辺からパスすれば、雫はちゃんと受け取れるかな?」
「うん、大丈夫だと思う」
ぼくは乙葉に指示を受けた場所に立ち、ボールをパスしてもらってゴールに向かってシュートを打つ。
緊張のあまりに腕に力がこもってしまい、リングが壊れるんじゃないかと思うくらいの勢いで投げてしまった。
「雫、深呼吸。大丈夫だよ、絶対出来るから」
「う、うん、出来る出来る。ぼくは絶対に出来る」
「そうそう。イメトレって結構大事だよ。絶対にシュート決められる」
「うん! 絶対にシュート、決める……」
『シュート、決めるなよ』
あぁ、聖先輩の言葉がやっぱり頭から離れない。
あの時の言葉の意味は、一体なんだったんだろう。考えてもモヤモヤするだけだ。
こんな気持ちで打ったシュートはもちろん入る訳がない。
結局一本も成功させることが出来ないまま、試合時間になってしまった。
シュートが入らなかった事に、実は内心ホッとしていた。自分でケジメを付けようとしたくせに、入らなかったら今と何も変わらなくていいんだから。
──手を抜こうか。シュート出来そうになったら、今みたいに力んでわざとゴールを外すとか。
そんな考えが掠めた瞬間、諸々の気持ちを心の中の箱に入れて蓋をして、周りをテープでガッチガチに包んだ。
ダメだ、せっかく聖先輩が教えてくれたのに手を抜くだなんて。男らしくなれ。
チームメイトが集まってきて、ユニフォームを渡されて着用する。
コートの周りを見渡すと、さっきの先輩たちの試合程ではないが人が集まってきていた。
一階の隅に歩太先輩と聖先輩を見つけた。
聖先輩は無反応だったけど、歩太先輩は「小峰、頑張れよー」とこちらに声をかけ目を細めてくれた。
二人が並んでいるのを見るとドキッとしてしまう。
歩太先輩、ぼくと付き合ってるのかと聖先輩に聞いたんじゃないだろうか。
見た感じ普通に装っているし、聖先輩は見た目に反してしっかりしていて口が硬い人だから、それはないとは思いたいけど。
早めの昼食を取り、準備体操をする。
他の生徒がまだ昼休憩をしている中、ぼくは乙葉とこっそり練習をしていた。
「じゃあこの辺からパスすれば、雫はちゃんと受け取れるかな?」
「うん、大丈夫だと思う」
ぼくは乙葉に指示を受けた場所に立ち、ボールをパスしてもらってゴールに向かってシュートを打つ。
緊張のあまりに腕に力がこもってしまい、リングが壊れるんじゃないかと思うくらいの勢いで投げてしまった。
「雫、深呼吸。大丈夫だよ、絶対出来るから」
「う、うん、出来る出来る。ぼくは絶対に出来る」
「そうそう。イメトレって結構大事だよ。絶対にシュート決められる」
「うん! 絶対にシュート、決める……」
『シュート、決めるなよ』
あぁ、聖先輩の言葉がやっぱり頭から離れない。
あの時の言葉の意味は、一体なんだったんだろう。考えてもモヤモヤするだけだ。
こんな気持ちで打ったシュートはもちろん入る訳がない。
結局一本も成功させることが出来ないまま、試合時間になってしまった。
シュートが入らなかった事に、実は内心ホッとしていた。自分でケジメを付けようとしたくせに、入らなかったら今と何も変わらなくていいんだから。
──手を抜こうか。シュート出来そうになったら、今みたいに力んでわざとゴールを外すとか。
そんな考えが掠めた瞬間、諸々の気持ちを心の中の箱に入れて蓋をして、周りをテープでガッチガチに包んだ。
ダメだ、せっかく聖先輩が教えてくれたのに手を抜くだなんて。男らしくなれ。
チームメイトが集まってきて、ユニフォームを渡されて着用する。
コートの周りを見渡すと、さっきの先輩たちの試合程ではないが人が集まってきていた。
一階の隅に歩太先輩と聖先輩を見つけた。
聖先輩は無反応だったけど、歩太先輩は「小峰、頑張れよー」とこちらに声をかけ目を細めてくれた。
二人が並んでいるのを見るとドキッとしてしまう。
歩太先輩、ぼくと付き合ってるのかと聖先輩に聞いたんじゃないだろうか。
見た感じ普通に装っているし、聖先輩は見た目に反してしっかりしていて口が硬い人だから、それはないとは思いたいけど。
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