74 / 111
第4章 ぼくの運命が変わる日
試合開始
しおりを挟む
試合開始直前、ぼくの姿を見つけた歩太先輩がこちらに寄ってきてくれた。
「小峰、来てくれたんだ。嬉しいよ」
「先輩。応援してますよ、頑張ってくださいね」
「高橋先輩の活躍、期待してますからね」
ぼくに続いて乙葉も先輩に声を掛ける。
「あぁ、乙葉もありがとう。いや、俺よりもきっと聖の方が大活躍するよ。俺は足引っ張らないように隅で頑張るよ」
「いやいや、何言ってるんですか。先輩だってスピードもあるし、パス回しもすごく上手なくせに」
「いつの話してるんだよ。俺、最近までボールに触ってもいなかったんだぞ?」
歩太先輩と乙葉が盛り上がっている最中、ぼくは無意識に聖先輩を目で追っていた。
聖先輩は仲間たちと準備体操をしている。
じっと見つめていると、聖先輩は視線を感じ取ったのか、ふとこちらを向いて少しだけ口の端を上げた。
余裕の笑みだ。俺達が負けることなんてないと信じ切っているような目。カッコよくて腰が抜けそうになった。
(なんか、聖先輩が昔からモテモテなのがよく分かった気がする……)
すぐに目を逸らされてしまったが、ぼくは聖先輩から目を逸らすことが出来なかった。
その間、歩太先輩からじっと見つめられていたと気づかずに。
「……小峰?」
ハッとして、歩太先輩を見る。
歩太先輩と乙葉は、不思議そうにぼくの顔を覗き込んでいたので、慌てて笑顔を作った。
「あっ、ボーッとしちゃってすいません! ぼくも先輩が活躍するところ、期待してますよ。絶対勝って下さいね!」
「……うん。ありがとな」
歩太先輩は柔らかく笑んで、聖先輩たちの元へかけていった。
「雫、何ボーッとしてたの? 歩太先輩、せっかく話しかけてくれてたのに」
「えっ、嘘、なんて?」
「よく練習頑張ってたよなぁとか、小峰たちは午後にやるんだよな? とか」
全く耳に入って来てなかった。歩太先輩に悪いことしてしまった。
こんなんじゃだめだ、しっかりしよう。
ぺちぺちとほっぺを叩いてからふと顔を上げたら、二階にいるカラコン先輩と目が合った。
笑顔でぼくを見下ろしているけど、何考えてるか分からないような不気味な笑みだ。
(えぇー! まためっちゃ睨まれてるよー! きっとぼくが聖先輩を見てたのがバレたんだ……)
もう二階は絶対に見ないと誓って視線を戻すと、両チームが挨拶をしていたので試合が始まるようだった。
一番背の高い聖先輩がジャンプボールをするみたいだ。審判役の先生が天井に向かってボールを投げると、聖先輩はちょうどいいタイミングで高くジャンプをしてボールに触れ、チームメイトにボールを渡すことに成功した。
それだけで体育館内に歓声が沸き起こる。
ブワッと地から這い上がってくるような熱気に、ぼくは胸をモヤモヤさせながらも肌が栗立つのを感じた。
がんばれー、いけいけーと周りの生徒たちが声を出す。ぼくもそれに倣って声を振り絞った。
「小峰、来てくれたんだ。嬉しいよ」
「先輩。応援してますよ、頑張ってくださいね」
「高橋先輩の活躍、期待してますからね」
ぼくに続いて乙葉も先輩に声を掛ける。
「あぁ、乙葉もありがとう。いや、俺よりもきっと聖の方が大活躍するよ。俺は足引っ張らないように隅で頑張るよ」
「いやいや、何言ってるんですか。先輩だってスピードもあるし、パス回しもすごく上手なくせに」
「いつの話してるんだよ。俺、最近までボールに触ってもいなかったんだぞ?」
歩太先輩と乙葉が盛り上がっている最中、ぼくは無意識に聖先輩を目で追っていた。
聖先輩は仲間たちと準備体操をしている。
じっと見つめていると、聖先輩は視線を感じ取ったのか、ふとこちらを向いて少しだけ口の端を上げた。
余裕の笑みだ。俺達が負けることなんてないと信じ切っているような目。カッコよくて腰が抜けそうになった。
(なんか、聖先輩が昔からモテモテなのがよく分かった気がする……)
すぐに目を逸らされてしまったが、ぼくは聖先輩から目を逸らすことが出来なかった。
その間、歩太先輩からじっと見つめられていたと気づかずに。
「……小峰?」
ハッとして、歩太先輩を見る。
歩太先輩と乙葉は、不思議そうにぼくの顔を覗き込んでいたので、慌てて笑顔を作った。
「あっ、ボーッとしちゃってすいません! ぼくも先輩が活躍するところ、期待してますよ。絶対勝って下さいね!」
「……うん。ありがとな」
歩太先輩は柔らかく笑んで、聖先輩たちの元へかけていった。
「雫、何ボーッとしてたの? 歩太先輩、せっかく話しかけてくれてたのに」
「えっ、嘘、なんて?」
「よく練習頑張ってたよなぁとか、小峰たちは午後にやるんだよな? とか」
全く耳に入って来てなかった。歩太先輩に悪いことしてしまった。
こんなんじゃだめだ、しっかりしよう。
ぺちぺちとほっぺを叩いてからふと顔を上げたら、二階にいるカラコン先輩と目が合った。
笑顔でぼくを見下ろしているけど、何考えてるか分からないような不気味な笑みだ。
(えぇー! まためっちゃ睨まれてるよー! きっとぼくが聖先輩を見てたのがバレたんだ……)
もう二階は絶対に見ないと誓って視線を戻すと、両チームが挨拶をしていたので試合が始まるようだった。
一番背の高い聖先輩がジャンプボールをするみたいだ。審判役の先生が天井に向かってボールを投げると、聖先輩はちょうどいいタイミングで高くジャンプをしてボールに触れ、チームメイトにボールを渡すことに成功した。
それだけで体育館内に歓声が沸き起こる。
ブワッと地から這い上がってくるような熱気に、ぼくは胸をモヤモヤさせながらも肌が栗立つのを感じた。
がんばれー、いけいけーと周りの生徒たちが声を出す。ぼくもそれに倣って声を振り絞った。
0
お気に入りに追加
86
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる