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第4章 ぼくの運命が変わる日

試合開始

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 試合開始直前、ぼくの姿を見つけた歩太先輩がこちらに寄ってきてくれた。

「小峰、来てくれたんだ。嬉しいよ」
「先輩。応援してますよ、頑張ってくださいね」
「高橋先輩の活躍、期待してますからね」

 ぼくに続いて乙葉も先輩に声を掛ける。

「あぁ、乙葉もありがとう。いや、俺よりもきっと聖の方が大活躍するよ。俺は足引っ張らないように隅で頑張るよ」
「いやいや、何言ってるんですか。先輩だってスピードもあるし、パス回しもすごく上手なくせに」
「いつの話してるんだよ。俺、最近までボールに触ってもいなかったんだぞ?」

 歩太先輩と乙葉が盛り上がっている最中、ぼくは無意識に聖先輩を目で追っていた。
 聖先輩は仲間たちと準備体操をしている。

 じっと見つめていると、聖先輩は視線を感じ取ったのか、ふとこちらを向いて少しだけ口の端を上げた。
 余裕の笑みだ。俺達が負けることなんてないと信じ切っているような目。カッコよくて腰が抜けそうになった。

 (なんか、聖先輩が昔からモテモテなのがよく分かった気がする……)

 すぐに目を逸らされてしまったが、ぼくは聖先輩から目を逸らすことが出来なかった。
 その間、歩太先輩からじっと見つめられていたと気づかずに。

「……小峰?」

 ハッとして、歩太先輩を見る。
 歩太先輩と乙葉は、不思議そうにぼくの顔を覗き込んでいたので、慌てて笑顔を作った。

「あっ、ボーッとしちゃってすいません! ぼくも先輩が活躍するところ、期待してますよ。絶対勝って下さいね!」
「……うん。ありがとな」

 歩太先輩は柔らかく笑んで、聖先輩たちの元へかけていった。

「雫、何ボーッとしてたの? 歩太先輩、せっかく話しかけてくれてたのに」
「えっ、嘘、なんて?」
「よく練習頑張ってたよなぁとか、小峰たちは午後にやるんだよな? とか」

 全く耳に入って来てなかった。歩太先輩に悪いことしてしまった。
 こんなんじゃだめだ、しっかりしよう。

 ぺちぺちとほっぺを叩いてからふと顔を上げたら、二階にいるカラコン先輩と目が合った。
 笑顔でぼくを見下ろしているけど、何考えてるか分からないような不気味な笑みだ。

 (えぇー! まためっちゃ睨まれてるよー! きっとぼくが聖先輩を見てたのがバレたんだ……)

 もう二階は絶対に見ないと誓って視線を戻すと、両チームが挨拶をしていたので試合が始まるようだった。

 一番背の高い聖先輩がジャンプボールをするみたいだ。審判役の先生が天井に向かってボールを投げると、聖先輩はちょうどいいタイミングで高くジャンプをしてボールに触れ、チームメイトにボールを渡すことに成功した。
 それだけで体育館内に歓声が沸き起こる。
 ブワッと地から這い上がってくるような熱気に、ぼくは胸をモヤモヤさせながらも肌が栗立つのを感じた。
 がんばれー、いけいけーと周りの生徒たちが声を出す。ぼくもそれに倣って声を振り絞った。
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