65 / 111
第3章 ぼくに降り注ぐのはドキドキとモヤモヤと。
ぼくのお願い
しおりを挟む
電車の中でも、となりの聖先輩はそっぽを向きながら立っていて、左隣に立つ歩太先輩だけがぼくの事を気遣ってくれていた。
何度もペットボトルのお茶を口の中に流し入れるが、喉がぎゅっと摘まれたように痛くなっているのは治らない。
全く。いつか絶対に仕返ししてやる。覚えておいてよね聖先輩。
「小峰、さっきの話の続きだけどさ」
歩太先輩は思い出したようにぼくを覗き込んだ。
「さっきの話って?」
「ほら、好きな人がどうこうって」
「え、もしかして、教えてくれるんですか?」
聖先輩は外の流れる風景を見つめている。
電車がレールの上を走る音や車内アナウンスの声にかき消されて、聖先輩にはぼくらの会話の内容がバレていないようだ。
「うん、でも一つ条件がある」
「条件? なんですか?」
「今度のバスケの試合で、一回でもシュート決められたら教えてあげてもいいよ」
歩太先輩のその提案に、頭がポーっとする。
確かに前にぼく、本番ではシュートしてみせますと意気込んだけど。
え、え?
それってつまり、ぼくに告白してくれるって意味?
「ほんとですか? ぼくが一度でもシュート決められたら、好きな人を……」
「うん。だから頑張れよ、練習。無理し過ぎない程度にな。俺、小峰が活躍するところ期待してるから」
「あっ……はいっ!」
ぼくの下車する駅に到着したので、ぼくだけが電車を降りて中の二人を見送った。
聖先輩は無愛想な顔のまま片手をあげて、歩太先輩は満面の笑みでぼくが見えなくなるまで手を振ってくれていた。
家に到着するまでの間、歩きながら考えた。
歩太先輩の好きな人って、本当にぼく?
笑顔が可愛くて、面白い奴だなんて世の中にめちゃくちゃいる。もしかしたらぼくじゃなくて全く面識のない女の子かもしれない。
だけどあんな風にわざわざ、好きな人を教えてあげるだなんて言ってくるだろうか。
自惚れじゃない。きっと、歩太先輩はぼくのことが好きなんだ。
ぼくは立ち止まってスマホを取り出し、ぐっと奥歯を噛んだ。
そうだ。これはいい機会だ。ここらへんできちんと、ケジメを付けなければ。
聖先輩の番号に電話をかけると、すぐに出てくれた。
『何?』
「あ、あの、もう家に帰ってますか」
『うん、ちょうど今家の目の前。どうした』
「どうしたじゃないですよっ。カフェオレにタバスコなんか入れてっ」
わーわーひとしきり文句を言ったあと、ぼくはもう一度気を落ち着かせて声のトーンを落とした。
「聖先輩に、お願いがあるんです」
そう言うと、微妙に空気が引き締まったような気がしてさらに緊張してしまったがそのまま続けた。
「あの、今度の球技大会、もしぼくが一回でも点を取る事ができたら、ぼくのお願い事を一つ聞いて貰えませんか?」
何度もペットボトルのお茶を口の中に流し入れるが、喉がぎゅっと摘まれたように痛くなっているのは治らない。
全く。いつか絶対に仕返ししてやる。覚えておいてよね聖先輩。
「小峰、さっきの話の続きだけどさ」
歩太先輩は思い出したようにぼくを覗き込んだ。
「さっきの話って?」
「ほら、好きな人がどうこうって」
「え、もしかして、教えてくれるんですか?」
聖先輩は外の流れる風景を見つめている。
電車がレールの上を走る音や車内アナウンスの声にかき消されて、聖先輩にはぼくらの会話の内容がバレていないようだ。
「うん、でも一つ条件がある」
「条件? なんですか?」
「今度のバスケの試合で、一回でもシュート決められたら教えてあげてもいいよ」
歩太先輩のその提案に、頭がポーっとする。
確かに前にぼく、本番ではシュートしてみせますと意気込んだけど。
え、え?
それってつまり、ぼくに告白してくれるって意味?
「ほんとですか? ぼくが一度でもシュート決められたら、好きな人を……」
「うん。だから頑張れよ、練習。無理し過ぎない程度にな。俺、小峰が活躍するところ期待してるから」
「あっ……はいっ!」
ぼくの下車する駅に到着したので、ぼくだけが電車を降りて中の二人を見送った。
聖先輩は無愛想な顔のまま片手をあげて、歩太先輩は満面の笑みでぼくが見えなくなるまで手を振ってくれていた。
家に到着するまでの間、歩きながら考えた。
歩太先輩の好きな人って、本当にぼく?
笑顔が可愛くて、面白い奴だなんて世の中にめちゃくちゃいる。もしかしたらぼくじゃなくて全く面識のない女の子かもしれない。
だけどあんな風にわざわざ、好きな人を教えてあげるだなんて言ってくるだろうか。
自惚れじゃない。きっと、歩太先輩はぼくのことが好きなんだ。
ぼくは立ち止まってスマホを取り出し、ぐっと奥歯を噛んだ。
そうだ。これはいい機会だ。ここらへんできちんと、ケジメを付けなければ。
聖先輩の番号に電話をかけると、すぐに出てくれた。
『何?』
「あ、あの、もう家に帰ってますか」
『うん、ちょうど今家の目の前。どうした』
「どうしたじゃないですよっ。カフェオレにタバスコなんか入れてっ」
わーわーひとしきり文句を言ったあと、ぼくはもう一度気を落ち着かせて声のトーンを落とした。
「聖先輩に、お願いがあるんです」
そう言うと、微妙に空気が引き締まったような気がしてさらに緊張してしまったがそのまま続けた。
「あの、今度の球技大会、もしぼくが一回でも点を取る事ができたら、ぼくのお願い事を一つ聞いて貰えませんか?」
0
お気に入りに追加
85
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
Lv1だけど魔王に挑んでいいですか?
れく高速横歩き犬
BL
ちょっとおバカで前向きな勇者の総受け異世界ライフ!
助けたヒヨコごと異世界トリップした青年、世那。そこは人間と魔族が対立する世界だった。そして村人に勇者に仕立て上げられてしまう。
スライムすら倒せずにLv1のまま魔王城へ。
空から降ってきた世那を姫抱きキャッチしてくれたアルビノ美形アディはまさかの魔王だった!その魔王の魔王(アレ)に敗北しても、打倒魔王をあきらめずレベルを上げようとするが・・・吸血鬼や竜神族、獣人にまで目を付けられてしまう。
✼••┈┈⚠┈┈••✼
・R18オリジナルBL
・主人公総受け
・CPはほぼ人外
・小説に関して初心者ゆえ自由に楽しくがモットー。閲覧・お気に入り等ありがとうございます(*´ω`*)暖かく見守って下さると嬉しいです
・こちらの作品は、フジョッシー・ムーンライトノベルズでも掲載しております
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ヤンデレだらけの短編集
八
BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。
全8話。1日1話更新(20時)。
□ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡
□ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生
□アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫
□ラベンダー:希死念慮不良とおバカ
□デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち
ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。
かなり昔に書いたもので、最近の作品と書き方やテーマが違うと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる