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第3章 ぼくに降り注ぐのはドキドキとモヤモヤと。

ねーちゃんとぼく2

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 ぼくは本棚にある大量の恋愛漫画に視線を移す。

「ねーちゃん」
「何」
「好きじゃない人と急にお付き合いが始まっちゃう漫画ってあったっけ?」
「え? そんなの沢山あるわよ! ちょっと待ってね」

 姉ちゃんは迷いもせずに本棚から漫画本を何冊か引き出し、床に広げた。
 ぼくはまた遠い目をしながら本を手に取り、パラパラと捲る。

 ひとつは、根暗な女の子が経験を積むために告白してきた男ととりあえず付き合ってみようという内容だった。
 もうひとつのも手に取って見てみると、彼氏がいると周りに嘘を吐き、それがバレるのが怖くて親友に彼氏のフリをしてもらうという内容だった。

「間違って告白しちゃってお付き合いが始まっちゃったっていう漫画はないの?」
「雫、もしかして今そういう状況なの?」

 ぼくはどうしようかと逡巡した挙句、フェイクを交えながら話すことにした。
 相手は他校の女の先輩ってことにして、高橋違いの先輩に告白をし、OKをもらってしまったのだと。

「待って待って、どうして告白する相手を間違うだなんて事が起こるの」
「だから、相手が隠れてて気付かなかったんだよ。その……壁、の向こう側に」
「は? 壁?」
「いや、違う……カーテン、の向こう側……」
「カーテン? 他校の人なんでしょう?」
「えっと、ちょっと具合悪くなっちゃったその人が学校のベッドで寝てて」
「なんであんたが他校の保健室にいるのよ」

 どうにもこうにも嘘が吐けなくなってしまったぼくは、結局本当の事を話してしまった(というかぼく、嘘吐くの下手すぎるだろー!!)。

 姉ちゃんは、ぼくが男と付き合っているのだと分かると、なんか鼻息を荒くして興奮しだした。

「それはいわゆるボーイズラブってやつね! 大丈夫よ、私は偏見なんて全く無いからね!」

 張り切ってぼくと握手する姉ちゃんはきっと、BL漫画も好きなんだろうなぁと悟った。

「よく分かったわ。本当は歩太会長が好きだけど、そのお友達の聖くんとお付き合いしてるのね? で、周りには付き合ってることは内緒にしてくれとお願いしてる、と」

 聖先輩とキスやエッチな事をしてしまったというのは流石に隠しておいた。
 こくこくと頷くと、──バチン!!
 すぐに姉ちゃんのビンタが飛んできた。

「痛いなっ!! いきなり何すんのッ?!」
「最低よ、バカ! あんたその二人の気持ち、ちゃんと考えてるわけ?!」

 ぼくはジンジンする頬に手を添えながら反論した。

「考えてるよ! だからこうして悩んでるんじゃん。聖先輩を傷つけたくはないし、歩太先輩にもこの事はバレたくはないし」
「あんた、もしその聖って人と別れられたとして、その後会長とすんなりお付き合いできると思ってるわけ?」

 そんな風に言われ、ぼくはグッと奥歯を噛み締めた。
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