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◇第7章◇優しくて大好きなひと

82 ストレートな告白

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「残ってたんだ……ていうか、ご丁寧に現像までして」
「この写真を見慣れていたので、きみを5年振りに見つけた時、なかなか信じられませんでしたよ。まさかこんなに、頑固で生意気で……」
「……む」
「……可愛くかっこよく成長しているだなんて、思わなかったから」

 フグみたいに膨らませている僕のほっぺを、律はムギュッと手で押し潰して笑った。
 タコの口にキスをされて、また笑われて。

 甘やかしてくれるのは嬉しいけど、慣れなくて照れる。
 きっと、今まで嘘を吐いていたことを悔やんでいるから、その分優しさで返していこうって魂胆だ。

 そんなことをしなくても、もう既に律を許しているし、そもそも初めから憎んでもいない。
 そう言っても律は、僕を甘やかすのを止めそうにない。だからこのままずっと、律の隣で笑っていられますように。
 この恋が最初で最後の───永遠に続く恋になれますように。

「律。また一緒に海に行こうよ」
「あ、俺もずっとそう思ってました。千紘と一緒に行きたいと」
「またかき氷買ってよ」
「いちごのね」

 舌を真っ赤にさせて見せつける僕を思い浮かべたのか、律は嬉しそうにキスをしてきた。
 唇を綻ばせながら受け止めて、なるべく官能のキスまでいかぬよう、その手前の大人のキスまでに留めるように心がけた。

「……そういえば、これはまだ言ってなかったかも」

 はたと動きを止めた律は、何かを考えるように僕を見つめた。
 まだ何か隠していた嘘があるのかなと首を傾げると。

「愛しています、千紘」
「……!」

 ストレート過ぎる最上級の告白に驚いてしまい、僕は目を丸くした。

 そんなこと言わなくたって分かってる。
 けど、言葉にするのって大事なことだ。
 僕は猫のように、すり、と体を寄せた。

「う、うん。ありがとう。僕も、律のことを───」

 続きを言おうとした時、ベッドの下から足音が聞こえて、どこからともなくチーが姿を現した。
 軽い足取りで窓枠にジャンプしたチーは、カーテンの後ろに再び姿を隠す。

 いつからいたのだろう。
 ふと気になって律に尋ねた。

「チーっていつも、ベッドの下にいることが多い?」
「ああ、そうですね。今日もほとんどそこで丸くなっていました」
「ほとんどって、その……」

 カーッと顔が熱くなる。
 僕がこのベッドで高く喘がされている最中も?

 律はこともなげに言った。

「猫の五感の中で最も優れているのは聴覚ですからね」

 僕は手のひらで熱すぎる顔を覆った。
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