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◇第5章◇優しくて切ないひと
52 嫉妬作戦
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「あっれー? 千紘くんじゃない?! 久しぶりだねぇー!」
白々しく、遠くから僕らの姿を見つけた素晴くんは満面の笑みでこちらに駆け寄ってくる。
えぇ、そんな感じで来るのか、と内心戸惑いつつも「えっ、ま、まさか素晴くん? 偶然だね、久しぶりー!」と僕もド素人な演技をかました。
プラネタリウムの前売り券を手にした彼は、僕の隣にいる律に、ぺこりと頭を下げる。
「あ、初めまして! 俺、千紘くんの友達の素晴って言います! 千紘くんとは高校生の時に学習塾が一緒で……」
「あぁはい。知っていますよ。きみたちが話し合っていたカフェに一緒にいましたから」
素晴くんには、あの日に律がこっそり見守っていてくれたということを話してある。
「えぇー、そうなんですかぁ? もしかして千紘くんが心配で付いてってあげたとか? 優しいですね~。千紘くん、良かったねぇこんなに優しいお兄さんみたいな人と友達でー!」
素晴くんはなぜか、律の腕をギュッと掴んで僕に見せつけてきた。
距離感バグってない?
そしてなんだか素晴くんのテンションがおかしいし不自然だ。
これじゃあ事前に連絡をして計画を練っていたことがバレてしまうではないか。
「千紘に明るくて元気ないいお友達ができて安心しました」
律はどう感じているのか知らないが、グイグイ来る素晴くんに腕を組まれても狼狽えずに穏やかな笑みを崩さない。
「あ、素晴くんに紹介するね。そちら、幡野 律さん。写真家さんなんだ」
「へぇー律さんって言うんですね! 千紘くんとはどういったご関係で?!」
素晴くんは律の服を引っ張って上目遣いで訊ねた。
だからさっきから、親しみと馴れ馴れしさの境界線もバグってるって。
突っ込みたくても何もできずに僕は黙ってやり取りを見守る。
「千紘は幼馴染みで、実家が隣同士なんです」
「へぇー、じゃあ昔から仲がいいんですねー、一緒にプラネタリウム来ちゃうくらいだし」
「あのー、素晴くん」
ゲホンとわざとらしく咳をして、目配せする。
こちらの意図が伝わっただろうか、素晴くんは律から体を離して、今度は僕の腕に巻きついてきた。
「もしかしてこれから見る予定なんですか? 俺もチケット持ってるんで、良かったら一緒に入りません?」
律は僕と素晴くんを見比べながら瞬きを数回した後で頷いた。
「いいですよ。せっかくですからご一緒に」
「やった! じゃあ行こう、千紘くん!」
素晴くんは僕の腕を引いて、建物の中に意気揚々と入っていく。
背後を付いてくる律に怪しまれぬように、僕はヒソヒソ声で素晴くんに訊ねた。
「大丈夫かな? こんなので上手くいくかな?」
「大丈夫、俺に全部任せて。律さんに嫉妬させるために、今日は俺、張り切っちゃうから」
雷さんが律の家に泊まりにきたのを見て、僕はこれ以上ない嫉妬心が生まれた。だから逆のことを今度は律さんにしてみようと、素晴くんはアイデアを出したのだ。
それで律が嫉妬してくれたら嬉しいけど、果たして上手くいくだろうか。
嫉妬のしの字も出ずに、孫を見つめるおじいちゃんのような暖かい視線を向けてくる律の絵が浮かぶのだけど。
現に今だって、素晴くんにくっつかれながら振り返っても、ニコニコとほほ笑みを絶やさない律と目が合うし。
白々しく、遠くから僕らの姿を見つけた素晴くんは満面の笑みでこちらに駆け寄ってくる。
えぇ、そんな感じで来るのか、と内心戸惑いつつも「えっ、ま、まさか素晴くん? 偶然だね、久しぶりー!」と僕もド素人な演技をかました。
プラネタリウムの前売り券を手にした彼は、僕の隣にいる律に、ぺこりと頭を下げる。
「あ、初めまして! 俺、千紘くんの友達の素晴って言います! 千紘くんとは高校生の時に学習塾が一緒で……」
「あぁはい。知っていますよ。きみたちが話し合っていたカフェに一緒にいましたから」
素晴くんには、あの日に律がこっそり見守っていてくれたということを話してある。
「えぇー、そうなんですかぁ? もしかして千紘くんが心配で付いてってあげたとか? 優しいですね~。千紘くん、良かったねぇこんなに優しいお兄さんみたいな人と友達でー!」
素晴くんはなぜか、律の腕をギュッと掴んで僕に見せつけてきた。
距離感バグってない?
そしてなんだか素晴くんのテンションがおかしいし不自然だ。
これじゃあ事前に連絡をして計画を練っていたことがバレてしまうではないか。
「千紘に明るくて元気ないいお友達ができて安心しました」
律はどう感じているのか知らないが、グイグイ来る素晴くんに腕を組まれても狼狽えずに穏やかな笑みを崩さない。
「あ、素晴くんに紹介するね。そちら、幡野 律さん。写真家さんなんだ」
「へぇー律さんって言うんですね! 千紘くんとはどういったご関係で?!」
素晴くんは律の服を引っ張って上目遣いで訊ねた。
だからさっきから、親しみと馴れ馴れしさの境界線もバグってるって。
突っ込みたくても何もできずに僕は黙ってやり取りを見守る。
「千紘は幼馴染みで、実家が隣同士なんです」
「へぇー、じゃあ昔から仲がいいんですねー、一緒にプラネタリウム来ちゃうくらいだし」
「あのー、素晴くん」
ゲホンとわざとらしく咳をして、目配せする。
こちらの意図が伝わっただろうか、素晴くんは律から体を離して、今度は僕の腕に巻きついてきた。
「もしかしてこれから見る予定なんですか? 俺もチケット持ってるんで、良かったら一緒に入りません?」
律は僕と素晴くんを見比べながら瞬きを数回した後で頷いた。
「いいですよ。せっかくですからご一緒に」
「やった! じゃあ行こう、千紘くん!」
素晴くんは僕の腕を引いて、建物の中に意気揚々と入っていく。
背後を付いてくる律に怪しまれぬように、僕はヒソヒソ声で素晴くんに訊ねた。
「大丈夫かな? こんなので上手くいくかな?」
「大丈夫、俺に全部任せて。律さんに嫉妬させるために、今日は俺、張り切っちゃうから」
雷さんが律の家に泊まりにきたのを見て、僕はこれ以上ない嫉妬心が生まれた。だから逆のことを今度は律さんにしてみようと、素晴くんはアイデアを出したのだ。
それで律が嫉妬してくれたら嬉しいけど、果たして上手くいくだろうか。
嫉妬のしの字も出ずに、孫を見つめるおじいちゃんのような暖かい視線を向けてくる律の絵が浮かぶのだけど。
現に今だって、素晴くんにくっつかれながら振り返っても、ニコニコとほほ笑みを絶やさない律と目が合うし。
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