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幕間① アイリス嬢の救出

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「おい、どういうことだ!」

 教会にヴェロールの怒声が響く。
 教会に勤める者は皆、声を荒らげるヴェロールに驚きを隠せず呆然と立ち尽くした。
 常に冷静沈着で、ひとりひとりに対して的確な指示を出す『あの』ヴェロールが、感情をあらわにして声を荒らげたのは恐らく初めてだからだ。

「ベルベット姫様のメイドであるアイリス嬢が失踪したと報告され――」
「そんなことは分かっている!何故、誰がアイリスを誘拐したかと聞いているんだ!」

 ヴェロールの声はだんだん大きくなる。

「現在調査中とのことで――」
「失礼します!ヴェロール様、ご報告致します!どうやらアイリス嬢は、隣国アステアの何者かに誘拐された模様です!」
「……アステア、だと?」
「はい。アイリス嬢は馬車に乗せられて誘拐されたようです。そしてその馬車の目撃情報があがっております」
「どこで見かけたと言っているんだ?」
「ここからさほど離れていない、ナピスという街に立ち寄ったとの情報が――」

「ナピスだな、分かった。――皆、よく聞け!これからアイリス嬢の救出に向かう!この旨を騎士団に伝え、応援を要請して来い!」
「はっ!」

 ビシッと美しく敬礼をした彼らを見て、ヴェロールは美しい顔を歪めてくしゃりと髪をかきあげた。

「……はぁ、何故私めはこれほど焦っているのでしょう」

 ――――花祭りでアイリスにブーゲンビリアあなたは魅力に満ちているを渡したヴェロールであるが、しかしちゃんと自分の気持ちに気がつくのは、まだまだ先の話のようである。
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