忌み子の僕がハピエンになるまでの物語

2

   「ーて、、、。あ､､、か、、、」
   
   意識を手放してどのくらい経ったのだろうか。
 
暖かく心地よい何かに包まれて僕は眠っていたらしい。

 ゆっくりと意識を覚醒させる。そして慌てて飛び起きようとした。
 早く起きないと 「いい身分だな。寝るなんて。」
 と言われ嘔吐するまで殴り蹴られる。
 その苦痛から逃れるため、家族の誰よりも早く起きて誰の目にもとまらぬようにいつもいる押し入れへと隠れ、息を潜める。

いつものように押し入れと隠れようとするが、体が思うように動かない。

(何で、起きれないの。早く起きないと、誰かが･･･)
 

何とか起き上がろうと手足をバタつかせる。すると、突然クスクスという笑い声が降ってきた。

 僕はまさか人がいると思わず反射でパッと声がした方に顔を上げる。

── 人がいる ───

僕は身構えて今から襲って来るであろう痛みに耐えようとした･･･が、いつまで経っても痛みはやってこない。

それどころか、先程から眠りへと誘う心地良さばかりが襲ってくる。

状況が掴めず困惑する。すると、また先程の笑い声と同じ高さの声で

「起きたのね、私の可愛い赤ちゃん。」

という言葉が。

僕は吃驚する。視界が霞んではいるが、何とかその人を見ようと精一杯目を凝らす。が、顔の輪郭が僅かに認識できる程度だ。

この人は僕を殴らずにそれどころか何故か僕を抱き抱えている。僕はその事実に驚愕する。

  (僕に、触ったら汚れちゃう。病気になっちゃう。)

慌てて腕から抜け出そうとするがやはり体は動かず、クスクスという笑い声が頭上から降ってくるだけだ。

その人は優しく僕に囁く。

「今は、お眠り。私の可愛い赤ちゃん。」

その声に従うかのように僕は瞼を閉じた。









         夢の中で誰かが祈っている




  ───あの子が幸せな人生を歩めますように───