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43. 6月 アップルパイ作り
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楽しかった誕生日パーティからまもなく一ヶ月。
気温は日に日に上昇し、連日爽やかで過ごしやすい気候が続いている。
近隣の県に雨雲が。もしかした近々降る?
降らない。
ぜんぜん、雨が降らない。
なので、俊介さんと会えない。
休みの今日も、予定はなし。
気晴らしにお菓子作ろうかなあ。
と思い立って、アップルパイを作ることにした。
粉類と無塩バターは常備しているけれど、リンゴはない。
パイ生地の材料を冷やしている間に買いに行こう。
冷蔵庫からバターを取り出して、さいの目にカット。冷蔵庫に入れ直す。
水に塩と砂糖を加えて、これも冷蔵庫へ。
必要分を量った小麦粉も冷蔵庫。
一時間ほど冷やすから、その間にリンゴを買いに近くのスーパーへ。
6月に入って少し湿気が増えてきた。癖毛がほわんと広がるので、この時期は少し困る。
紅玉を買って戻ってくると、10時を過ぎていた。
俊介さんは寝ているかなと思いながら、これからアップルパイを作りますとメッセージを送った。
すぐに返信があった。違った。返信じゃなくて、着信。
『おはようございます、彩綺さん。アップルパイですか?」
「俊介さん、おはようございます。林檎は旬じゃないですけど、いきなり思い立ちました」
『ビデオ通話で見ていてもいいですか』
「作っているところをですか? 見たいです?」
『見たいです』
というわけで、ダイニングテーブルにスマホを設置して、キッチンが横から映るようにして――
「こんな感じでいいですか?」
『大丈夫です。僕も仕事をしながらになるので、気にしないでください」
「わかりました」
気にしないでと言われても、気にはなる。
「生地の材料は冷蔵庫で冷やしているので、この間に林檎をカットします」
と伝えると、
『実況ありがとうございます』
俊介さんが笑いながら言ったのが、背中ごしにわかった。
皮を剥いて、くし切りにしてから芯を取り除く。
「カットしたリンゴをキャラメリゼします」
お鍋に水と砂糖を入れて、火にかけて、砂糖が溶けたタイミングで林檎を投入。
水分を飛ばしながらリンゴに火を入れていると、キツネ色になってきて、
「こんなもんかなあ。俊介さん」
仕事をしながらと言っていたので、名前を読んで気を引いた。
スマホの前にバットを置いて、リンゴを移す。
「見えました?」
『はい。良い色のリンゴがよく見えました』
「良かった。次は、パイ生地作りです」
『はい』
応えてくれる声が弾んでいる。その場にいないのに一緒にいる気になって、私も楽しくなってきた。
冷蔵庫で冷やしておいた粉とバターを取り出して、一つのボウルに入れる。
バターをコーティングするように粉をまぶしてから、製菓用カードを使って切るように混ぜ合わせる。
途中で冷やしていた水を加え、氷水を使ってボウルの底から冷やして、練らないように気をつけながら、なじませる。
「ラップに包んで、冷蔵庫へ。この間に、アーモンドクリームを作ります」
俊介さんからの返事がなかった。集中して書いているのかな。
お仕事、はかどっていたらいいんだけれど。
邪魔になったらいけないから、声を出すのは控えておこうかな。
柔らかくしたバターに砂糖を加えて混ぜ合わせ、卵を3回に分けて加えて混ぜていく。
全体が混ざると、アーモンドパウダーと小麦粉をふるって混ぜ合わせ、最後に香りづけのラム酒を少し加えて、アーモンドクリームの完成。
生地が冷えるまでもう少し時間が欲しいから、少し休憩。
お腹がすいたので、梅干しのおにぎりを作ってもぐもぐ。
そろそろかなと冷蔵庫から生地を取り出し、打ち粉をしてめん棒で伸ばしていく。
アップルパイといえば、やっぱり網目だと思うので、網目用の生地をスケールで2センチ幅にカットして、よけておく。
残りをフォークで空気穴を入れて、円形の型に生地を敷き、型からはみ出した生地を除去。
もう一度フォークで空気穴をしっかり作って、下の生地は完成。
ここにアーモンドクリームを七分目の辺りまで流し込んだら、キャラメリゼしたリンゴを敷き詰める。
そしてカットしておいた生地をまずは縦に並べてから、横を一本ずつ編みこんでいく。
時間はかかるけど、出来上がりを考えると楽しい作業でもある。
はみでた部分を型に合わせてカットして、網目はできたけど、これで終わりじゃない。
縁に卵を塗って、二本の生地をねじったものを貼りつける。
最後に全体に卵を塗って、予熱したオーブンで焼いていく。
次回⇒44. 俊介さんの一人暮らし
気温は日に日に上昇し、連日爽やかで過ごしやすい気候が続いている。
近隣の県に雨雲が。もしかした近々降る?
降らない。
ぜんぜん、雨が降らない。
なので、俊介さんと会えない。
休みの今日も、予定はなし。
気晴らしにお菓子作ろうかなあ。
と思い立って、アップルパイを作ることにした。
粉類と無塩バターは常備しているけれど、リンゴはない。
パイ生地の材料を冷やしている間に買いに行こう。
冷蔵庫からバターを取り出して、さいの目にカット。冷蔵庫に入れ直す。
水に塩と砂糖を加えて、これも冷蔵庫へ。
必要分を量った小麦粉も冷蔵庫。
一時間ほど冷やすから、その間にリンゴを買いに近くのスーパーへ。
6月に入って少し湿気が増えてきた。癖毛がほわんと広がるので、この時期は少し困る。
紅玉を買って戻ってくると、10時を過ぎていた。
俊介さんは寝ているかなと思いながら、これからアップルパイを作りますとメッセージを送った。
すぐに返信があった。違った。返信じゃなくて、着信。
『おはようございます、彩綺さん。アップルパイですか?」
「俊介さん、おはようございます。林檎は旬じゃないですけど、いきなり思い立ちました」
『ビデオ通話で見ていてもいいですか』
「作っているところをですか? 見たいです?」
『見たいです』
というわけで、ダイニングテーブルにスマホを設置して、キッチンが横から映るようにして――
「こんな感じでいいですか?」
『大丈夫です。僕も仕事をしながらになるので、気にしないでください」
「わかりました」
気にしないでと言われても、気にはなる。
「生地の材料は冷蔵庫で冷やしているので、この間に林檎をカットします」
と伝えると、
『実況ありがとうございます』
俊介さんが笑いながら言ったのが、背中ごしにわかった。
皮を剥いて、くし切りにしてから芯を取り除く。
「カットしたリンゴをキャラメリゼします」
お鍋に水と砂糖を入れて、火にかけて、砂糖が溶けたタイミングで林檎を投入。
水分を飛ばしながらリンゴに火を入れていると、キツネ色になってきて、
「こんなもんかなあ。俊介さん」
仕事をしながらと言っていたので、名前を読んで気を引いた。
スマホの前にバットを置いて、リンゴを移す。
「見えました?」
『はい。良い色のリンゴがよく見えました』
「良かった。次は、パイ生地作りです」
『はい』
応えてくれる声が弾んでいる。その場にいないのに一緒にいる気になって、私も楽しくなってきた。
冷蔵庫で冷やしておいた粉とバターを取り出して、一つのボウルに入れる。
バターをコーティングするように粉をまぶしてから、製菓用カードを使って切るように混ぜ合わせる。
途中で冷やしていた水を加え、氷水を使ってボウルの底から冷やして、練らないように気をつけながら、なじませる。
「ラップに包んで、冷蔵庫へ。この間に、アーモンドクリームを作ります」
俊介さんからの返事がなかった。集中して書いているのかな。
お仕事、はかどっていたらいいんだけれど。
邪魔になったらいけないから、声を出すのは控えておこうかな。
柔らかくしたバターに砂糖を加えて混ぜ合わせ、卵を3回に分けて加えて混ぜていく。
全体が混ざると、アーモンドパウダーと小麦粉をふるって混ぜ合わせ、最後に香りづけのラム酒を少し加えて、アーモンドクリームの完成。
生地が冷えるまでもう少し時間が欲しいから、少し休憩。
お腹がすいたので、梅干しのおにぎりを作ってもぐもぐ。
そろそろかなと冷蔵庫から生地を取り出し、打ち粉をしてめん棒で伸ばしていく。
アップルパイといえば、やっぱり網目だと思うので、網目用の生地をスケールで2センチ幅にカットして、よけておく。
残りをフォークで空気穴を入れて、円形の型に生地を敷き、型からはみ出した生地を除去。
もう一度フォークで空気穴をしっかり作って、下の生地は完成。
ここにアーモンドクリームを七分目の辺りまで流し込んだら、キャラメリゼしたリンゴを敷き詰める。
そしてカットしておいた生地をまずは縦に並べてから、横を一本ずつ編みこんでいく。
時間はかかるけど、出来上がりを考えると楽しい作業でもある。
はみでた部分を型に合わせてカットして、網目はできたけど、これで終わりじゃない。
縁に卵を塗って、二本の生地をねじったものを貼りつける。
最後に全体に卵を塗って、予熱したオーブンで焼いていく。
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