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第三部 仲良し姉妹
39 姉の行動
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「調理科三年のお店は、『コース de アラカルト』に決定で、いいですか」
クラス委員長こと桃谷くんが教室内を見渡した。異論はない。
「それでは分担を決めます。必要数を決めてから、挙手制で、多かったらジャンケンで決めます」
9月の下旬の土日に文化祭がある。今はまだ夏休み前だけど、調理科三年は毎年飲食店出店のため、早くから準備を始めるそうだ。
今年はフレンチのコースをアラカルトで提供するお店になった。
コース料理を食べるとなると、そこそこのお店に行って、そこそこのお値段の物を、緊張しながら食べる印象があるけど、メニューから好きな物を一品ずつ注文できるようにすることでお財布にも胃にも優しいお店を目指した。
あたしの担当は前菜。
「学校からもらえる予算の振り分けは、これでいいですか? では各パート毎、予算内に収めてください」
「委員長、メニューはどうやって決めますか? 今決めちゃいます?」
クラス全員の担当が決まり、議題はメニューに移る。
「何か案はありますか?」
「パート毎に話し合って決めたらいいんじゃない」
「コースにするなら、全体的なバランスを考えないと」
「でもアラカルトだから、少しボリュームがあってもいいと思う」
「それだとコースで食べたい人にはきついでしょう」
さまざまな意見が飛び交う。
「麻帆は、意見ないの?」
頭の中でお姉ちゃんが意見を求めてくる。
あたしはみんなの意見を聞いていただけ。自分の意見は持ってない。
お姉ちゃん、ずるい。人がいるとあたしは話しかけられないのに。頭の中で会話できたらいいのにな。
「海野さん、どうぞ」
いきなり桃谷くんに当てられて、びっくりして体が固まる。
「手上げてるから」
えええええ。
自分の右手が無意識で上がっていた。
なんで、なんで。
あたし上げてないよ。
戸惑いながら、頭をひねって、案を考える。
「えっと、メインを先に決めてから、各パートが考えるっていうのは、どうでしょうか」
その場しのぎでひねり出した意見だから、自信なんてない。声がどんどん小さくなる。
「メインはどうやって決めましょうか?」
「ええっと、投票するとか‥‥‥」
「みんなで出し合ってメイン料理を投票で決めるのもいいですね。メイン料理担当の人たちは、どうですか?」
「いろいろ試したいので、時間が欲しいです」
メイン料理の担当になった人たちが言うと、
「それだと、他の料理が決められないよ」
と別の料理担当から意見が出る。
再び議論が再加熱。
あたしは体を小さくして、両手の指先を組んだ。お姉ちゃんに手を上げられないように。
♢
「お姉ちゃん、どうして勝手に手を上げるの? パニックになったよ」
メニューについての意見がまとまり、下校の時間になった。
あたしはトイレの個室に駆けこんで、姉に抗議する。もちろん小さな声で。
「ごめんごめん。麻帆は積極性がないじゃない? ピンチになったらどうするのかなって思って。いい意見出せたじゃない」
「そんなことないよ」
夏休みいっぱいを使って個人がメニューを考え、二学期に試食をして投票で決めることになった。
あたしの「メインを先に決めてから~」は採用されなかったけど、投票制だけは残った。
「ていうか、お姉ちゃん。どうして、あたしの体動かせてるの?」
抗議の本題はそっち。姉が勝手に体を動かせたことに、驚きと戸惑いがあって、早く謎を知りたかった。
「麻帆が寝てる時に、布団がベッドから落ちちゃって。掛けたあげたいけど、どうにかならないかなって思ったら、体を動かせたの。お姉ちゃんもびっくりしちゃった」
「布団は掛けてくれて助かるけど、自分の体じゃないみたいだから、やめてよ」
「そうだね。ごめんね。もうやらないから」
謝っているけど、お姉ちゃんの声がなんだか楽しそうで、少し罪悪感が沸いた。
「少しの時間で、寝てる時ならいいよ。包丁とか火は使わない約束なら」
「いいの? んー、でもやっぱりやめておくね。麻帆が疲れたらいけないから」
「平気だよ。元気だから」
「じゃ、寝相が悪い時に動かすね」
「わかった。じゃよろしく」
そう言って笑い合った。
クラス委員長こと桃谷くんが教室内を見渡した。異論はない。
「それでは分担を決めます。必要数を決めてから、挙手制で、多かったらジャンケンで決めます」
9月の下旬の土日に文化祭がある。今はまだ夏休み前だけど、調理科三年は毎年飲食店出店のため、早くから準備を始めるそうだ。
今年はフレンチのコースをアラカルトで提供するお店になった。
コース料理を食べるとなると、そこそこのお店に行って、そこそこのお値段の物を、緊張しながら食べる印象があるけど、メニューから好きな物を一品ずつ注文できるようにすることでお財布にも胃にも優しいお店を目指した。
あたしの担当は前菜。
「学校からもらえる予算の振り分けは、これでいいですか? では各パート毎、予算内に収めてください」
「委員長、メニューはどうやって決めますか? 今決めちゃいます?」
クラス全員の担当が決まり、議題はメニューに移る。
「何か案はありますか?」
「パート毎に話し合って決めたらいいんじゃない」
「コースにするなら、全体的なバランスを考えないと」
「でもアラカルトだから、少しボリュームがあってもいいと思う」
「それだとコースで食べたい人にはきついでしょう」
さまざまな意見が飛び交う。
「麻帆は、意見ないの?」
頭の中でお姉ちゃんが意見を求めてくる。
あたしはみんなの意見を聞いていただけ。自分の意見は持ってない。
お姉ちゃん、ずるい。人がいるとあたしは話しかけられないのに。頭の中で会話できたらいいのにな。
「海野さん、どうぞ」
いきなり桃谷くんに当てられて、びっくりして体が固まる。
「手上げてるから」
えええええ。
自分の右手が無意識で上がっていた。
なんで、なんで。
あたし上げてないよ。
戸惑いながら、頭をひねって、案を考える。
「えっと、メインを先に決めてから、各パートが考えるっていうのは、どうでしょうか」
その場しのぎでひねり出した意見だから、自信なんてない。声がどんどん小さくなる。
「メインはどうやって決めましょうか?」
「ええっと、投票するとか‥‥‥」
「みんなで出し合ってメイン料理を投票で決めるのもいいですね。メイン料理担当の人たちは、どうですか?」
「いろいろ試したいので、時間が欲しいです」
メイン料理の担当になった人たちが言うと、
「それだと、他の料理が決められないよ」
と別の料理担当から意見が出る。
再び議論が再加熱。
あたしは体を小さくして、両手の指先を組んだ。お姉ちゃんに手を上げられないように。
♢
「お姉ちゃん、どうして勝手に手を上げるの? パニックになったよ」
メニューについての意見がまとまり、下校の時間になった。
あたしはトイレの個室に駆けこんで、姉に抗議する。もちろん小さな声で。
「ごめんごめん。麻帆は積極性がないじゃない? ピンチになったらどうするのかなって思って。いい意見出せたじゃない」
「そんなことないよ」
夏休みいっぱいを使って個人がメニューを考え、二学期に試食をして投票で決めることになった。
あたしの「メインを先に決めてから~」は採用されなかったけど、投票制だけは残った。
「ていうか、お姉ちゃん。どうして、あたしの体動かせてるの?」
抗議の本題はそっち。姉が勝手に体を動かせたことに、驚きと戸惑いがあって、早く謎を知りたかった。
「麻帆が寝てる時に、布団がベッドから落ちちゃって。掛けたあげたいけど、どうにかならないかなって思ったら、体を動かせたの。お姉ちゃんもびっくりしちゃった」
「布団は掛けてくれて助かるけど、自分の体じゃないみたいだから、やめてよ」
「そうだね。ごめんね。もうやらないから」
謝っているけど、お姉ちゃんの声がなんだか楽しそうで、少し罪悪感が沸いた。
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「いいの? んー、でもやっぱりやめておくね。麻帆が疲れたらいけないから」
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「じゃ、寝相が悪い時に動かすね」
「わかった。じゃよろしく」
そう言って笑い合った。
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