20 / 59
第二部 海野汐里
20 汐里の法要
しおりを挟む
先祖代々お世話になっているお寺さんに海野家の親戚が集う。祖父の弟一家五人と、父の妹夫婦、私たち三人と母の祖父母。
今日は私の一周忌の法要と納骨をする日。
本当なら三週間前に行われる予定で両方の祖父母が参加予定だった。しかし麻帆が体調を崩して入院をしたので、やむなくキャンセルとなっていた。
もともと海野家は毎年のお盆にお経を上げて頂くことになっているので、お寺さんにお願いして納骨もお願いすることになった。
「麻帆ちゃん、体調は、もう大丈夫なの?」
「お祖母ちゃん、心配かけてごめんね。もう大丈夫だよ」
「あなた、細いから。夏の暑さにやられたんじゃない? ご飯はしっかり食べてるの?」
「もりもり食べてるよ」
海野のお祖母ちゃんは、私たち姉妹を太らせようと計画しているのか、っていうぐらい、これをお食べ、あれをお食べと、勧めてくる。お祖母ちゃん家に遊びに行くとお腹が空く暇がない。
海野のお祖父ちゃんが通りすがりに頭をよしよしと撫でていった。
お祖父ちゃんは寡黙な人で、言葉の代わりに行動で表してくれる。
私たち姉妹は、海野の祖父母が大好き。
今日は母の実家、青井家の祖父母も来ている。私を弔ってくれるためだけど、海野家の集まりなので、端の方で少し肩身を狭そうにしている。
「お祖父ちゃん、お祖母ちゃん。今日は来てくれてありがとう」
声をかけに近くに行くと、お祖母ちゃんは私の手を取った。
「麻帆ちゃん、お祖母ちゃん、つらくってつらくって。本当は今日迷っていたの」
お祖母ちゃんの目がうるうるして、つーと涙がこぼれ落ちた。
「私もとてもつらくて‥‥‥」
本当は泣かないでと伝えたい。私はここにいるよと言いたい。
でも言ってはだめとわかっている。家族を困らせたくないから。
制服のスカートからハンカチを取り出し、お祖母ちゃんの涙を拭った。ごめんねと心の中で謝りながら。私に出来ることは、これしかなかった。
隣のお祖父ちゃんも、眼鏡を持ち上げて目元をそっと拭った。
ご住職さんによる読経と焼香を行ったあと、一族の墓石に向かう。法要が始まる前に掃除とお花を供えてある。
父が挨拶をして、骨壺を収めるために石材店の方がカロートを開けてくれた。
父が私の遺骨を、骨壺ごと収めた。
カロートが閉められる。
心の中で、自分の生きた証にバイバイと伝える。
私はいつか麻帆に伝えなければならない、この日のことを。
どうしても視界が滲んでしまうのを、片方ずつ涙を拭いながら見やり、一連をしっかりと脳裏に刻み込んだ。
読経と焼香の後、それぞれの車で予約済の会食場所に向かう。ご住職さんは檀家さんの法要があるのでと、会食はご辞退された。
魚料理がメインの和食処で、個室に案内された。
90分の飲み放題がついたコース料理を予約してあるので、飲み物だけを注文する。
数人の仲居さんが入出を繰り返して、お料理を運んできてくれた。
小鉢、茶わん蒸し、お刺身、天ぷら、焼き魚、小鍋、汁物、炊き込みご飯。食べきれないほどの量のお料理が目の前に並ぶ。
父が挨拶をするのを聞き流しながら、麻帆食べたかっただろうなと、頭の片隅で眠る妹を思う。
脳内にひきこもった麻帆は、まだ目覚める気配がない。一日に何度も声をかけているけど、気持ちの良さそうな顔で眠っているイメージが頭に浮かぶ。
もしかして私が眠っている間に起きていることはないだろうか、と考えたこともあるけれど、それなら翌日体が疲れているはず。
健康そのものの麻帆の体は、毎日元気いっぱいで、しっかり休息が取れていた。
料理を食べながら、会話は私の思い出話になった。
口火を切ったのは、私の向かいに座る、祖父の弟大叔父だった。
「19歳で逝ってしまうとは、早過ぎだ。わしは、若いものに先に逝かれるのは好かん。神様は、連れて行くのが早過ぎる」
お酒が入っているからか、声が大きくて、言い回しが少し乱暴だった。
「優秀な子どもさんだったから、なんて何の慰めにもなりませんわね」
まあまあと宥めるような口調で、大叔母が合槌を打つ。
「汐里ちゃんは、どんな子だった?」
大叔父の質問に両親が答えてくれた。自分の事になると、麻帆の体とはいえ、言いにくい。
「汐里は、麻帆の面倒をよく見てくれました。麻帆も懐いていて、とても仲の良い姉妹でした。学校でも面倒見の良さを発揮していたようで、先生からよく褒めてもらって。女の子なのに、バレンタインデーにチョコをもらって帰ってきた時もありました」
「町内の方からも、よくお礼の言葉を頂いていました。道案内やら荷物を持ってもらったやらお手伝いをしてお礼を受け取らなかったようで。汐里はとてもよくできた、自慢の娘でした」
ママがハンカチで目元を拭う。
「麻帆ちゃんは? お姉ちゃん好きだったか?」
私にも言わすんだ、まあ当たり前かぁと内心で思いつつ、
「お姉ちゃん大好きです。一緒にお料理やお菓子作りをしました」
それだけで顔から火が出そうだった。麻帆のフリってけっこう大変。
「汐里ちゃんは、看護師を目指していたのよね」
大叔母の隣に座る望美おばちゃんが言った。望美おばちゃんは、両親と同年代。
「麻帆が生まれた時に嫁さんがお世話になってね。それがきっかけだったらしい」
ママにしか話してないのに、パパも知ってたんだ。
「麻帆ちゃんは、何歳になった」
大叔父の顔が私に向く。
「高校一年生です。私も看護科に通っています」
「おお、そうか。立派だ。手に職があるっていうのはいいぞ。食うのに困らないからな」
大叔父は満足そうに頷いた。大叔父は女は家にいればいいというタイプではないらしい。
「麻帆ちゃん、頑張りなさいよ」
「はい」
私は顔を上げてにこりと笑みを見せた。
大叔父はエールのつもりで言ってくれているのはわかっている。でも麻帆だったらつらかっただろうなと思ってしまう。
「神様の所に逝くのは、次はわしだからな。お前たち順番を抜かすなよ」
大叔父が冗談めかして言った。悲しみたくないという大叔父の優しさを感じた。
「それなら俺が先だ」
父の向かいに座っていた祖父がぽつりと返した。
「違いない。わはは」
大叔父は豪快な笑い声を立てた。
今日は私の一周忌の法要と納骨をする日。
本当なら三週間前に行われる予定で両方の祖父母が参加予定だった。しかし麻帆が体調を崩して入院をしたので、やむなくキャンセルとなっていた。
もともと海野家は毎年のお盆にお経を上げて頂くことになっているので、お寺さんにお願いして納骨もお願いすることになった。
「麻帆ちゃん、体調は、もう大丈夫なの?」
「お祖母ちゃん、心配かけてごめんね。もう大丈夫だよ」
「あなた、細いから。夏の暑さにやられたんじゃない? ご飯はしっかり食べてるの?」
「もりもり食べてるよ」
海野のお祖母ちゃんは、私たち姉妹を太らせようと計画しているのか、っていうぐらい、これをお食べ、あれをお食べと、勧めてくる。お祖母ちゃん家に遊びに行くとお腹が空く暇がない。
海野のお祖父ちゃんが通りすがりに頭をよしよしと撫でていった。
お祖父ちゃんは寡黙な人で、言葉の代わりに行動で表してくれる。
私たち姉妹は、海野の祖父母が大好き。
今日は母の実家、青井家の祖父母も来ている。私を弔ってくれるためだけど、海野家の集まりなので、端の方で少し肩身を狭そうにしている。
「お祖父ちゃん、お祖母ちゃん。今日は来てくれてありがとう」
声をかけに近くに行くと、お祖母ちゃんは私の手を取った。
「麻帆ちゃん、お祖母ちゃん、つらくってつらくって。本当は今日迷っていたの」
お祖母ちゃんの目がうるうるして、つーと涙がこぼれ落ちた。
「私もとてもつらくて‥‥‥」
本当は泣かないでと伝えたい。私はここにいるよと言いたい。
でも言ってはだめとわかっている。家族を困らせたくないから。
制服のスカートからハンカチを取り出し、お祖母ちゃんの涙を拭った。ごめんねと心の中で謝りながら。私に出来ることは、これしかなかった。
隣のお祖父ちゃんも、眼鏡を持ち上げて目元をそっと拭った。
ご住職さんによる読経と焼香を行ったあと、一族の墓石に向かう。法要が始まる前に掃除とお花を供えてある。
父が挨拶をして、骨壺を収めるために石材店の方がカロートを開けてくれた。
父が私の遺骨を、骨壺ごと収めた。
カロートが閉められる。
心の中で、自分の生きた証にバイバイと伝える。
私はいつか麻帆に伝えなければならない、この日のことを。
どうしても視界が滲んでしまうのを、片方ずつ涙を拭いながら見やり、一連をしっかりと脳裏に刻み込んだ。
読経と焼香の後、それぞれの車で予約済の会食場所に向かう。ご住職さんは檀家さんの法要があるのでと、会食はご辞退された。
魚料理がメインの和食処で、個室に案内された。
90分の飲み放題がついたコース料理を予約してあるので、飲み物だけを注文する。
数人の仲居さんが入出を繰り返して、お料理を運んできてくれた。
小鉢、茶わん蒸し、お刺身、天ぷら、焼き魚、小鍋、汁物、炊き込みご飯。食べきれないほどの量のお料理が目の前に並ぶ。
父が挨拶をするのを聞き流しながら、麻帆食べたかっただろうなと、頭の片隅で眠る妹を思う。
脳内にひきこもった麻帆は、まだ目覚める気配がない。一日に何度も声をかけているけど、気持ちの良さそうな顔で眠っているイメージが頭に浮かぶ。
もしかして私が眠っている間に起きていることはないだろうか、と考えたこともあるけれど、それなら翌日体が疲れているはず。
健康そのものの麻帆の体は、毎日元気いっぱいで、しっかり休息が取れていた。
料理を食べながら、会話は私の思い出話になった。
口火を切ったのは、私の向かいに座る、祖父の弟大叔父だった。
「19歳で逝ってしまうとは、早過ぎだ。わしは、若いものに先に逝かれるのは好かん。神様は、連れて行くのが早過ぎる」
お酒が入っているからか、声が大きくて、言い回しが少し乱暴だった。
「優秀な子どもさんだったから、なんて何の慰めにもなりませんわね」
まあまあと宥めるような口調で、大叔母が合槌を打つ。
「汐里ちゃんは、どんな子だった?」
大叔父の質問に両親が答えてくれた。自分の事になると、麻帆の体とはいえ、言いにくい。
「汐里は、麻帆の面倒をよく見てくれました。麻帆も懐いていて、とても仲の良い姉妹でした。学校でも面倒見の良さを発揮していたようで、先生からよく褒めてもらって。女の子なのに、バレンタインデーにチョコをもらって帰ってきた時もありました」
「町内の方からも、よくお礼の言葉を頂いていました。道案内やら荷物を持ってもらったやらお手伝いをしてお礼を受け取らなかったようで。汐里はとてもよくできた、自慢の娘でした」
ママがハンカチで目元を拭う。
「麻帆ちゃんは? お姉ちゃん好きだったか?」
私にも言わすんだ、まあ当たり前かぁと内心で思いつつ、
「お姉ちゃん大好きです。一緒にお料理やお菓子作りをしました」
それだけで顔から火が出そうだった。麻帆のフリってけっこう大変。
「汐里ちゃんは、看護師を目指していたのよね」
大叔母の隣に座る望美おばちゃんが言った。望美おばちゃんは、両親と同年代。
「麻帆が生まれた時に嫁さんがお世話になってね。それがきっかけだったらしい」
ママにしか話してないのに、パパも知ってたんだ。
「麻帆ちゃんは、何歳になった」
大叔父の顔が私に向く。
「高校一年生です。私も看護科に通っています」
「おお、そうか。立派だ。手に職があるっていうのはいいぞ。食うのに困らないからな」
大叔父は満足そうに頷いた。大叔父は女は家にいればいいというタイプではないらしい。
「麻帆ちゃん、頑張りなさいよ」
「はい」
私は顔を上げてにこりと笑みを見せた。
大叔父はエールのつもりで言ってくれているのはわかっている。でも麻帆だったらつらかっただろうなと思ってしまう。
「神様の所に逝くのは、次はわしだからな。お前たち順番を抜かすなよ」
大叔父が冗談めかして言った。悲しみたくないという大叔父の優しさを感じた。
「それなら俺が先だ」
父の向かいに座っていた祖父がぽつりと返した。
「違いない。わはは」
大叔父は豪快な笑い声を立てた。
1
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
【完結】御食事処 晧月へようこそ 第5回ほっこり・じんわり大賞奨励賞受賞
衿乃 光希(恋愛小説大賞参加します)
大衆娯楽
第5回ほっこり・じんわり大賞奨励賞頂きました。
両親を事故で亡くし、三歳で引き取られた一穂と、幼い子供の養い親となる決意をした千里。
中学校入学まで仲の良かった二人の間に溝が入る。きっかけは千里の過去の行いのせいだったーー。
偽物の母娘が本当の母娘になるまでの、絆の物語。
美味しいご飯と人情話、いかがですか?
第7回ライト文芸大賞への投票ありがとうございました。86位で最終日を迎えられました。
心の落とし物
緋色刹那
ライト文芸
・完結済み(2024/10/12)。また書きたくなったら、番外編として投稿するかも
・第4回、第5回ライト文芸大賞にて奨励賞をいただきました!!✌︎('ω'✌︎ )✌︎('ω'✌︎ )
〈本作の楽しみ方〉
本作は読む喫茶店です。順に読んでもいいし、興味を持ったタイトルや季節から読んでもオッケーです。
知らない人、知らない設定が出てきて不安になるかもしれませんが、喫茶店の常連さんのようなものなので、雰囲気を楽しんでください(一応説明↓)。
〈あらすじ〉
〈心の落とし物〉はありませんか?
どこかに失くした物、ずっと探している人、過去の後悔、忘れていた夢。
あなたは忘れているつもりでも、心があなたの代わりに探し続けているかもしれません……。
喫茶店LAMP(ランプ)の店長、添野由良(そえのゆら)は、人の未練が具現化した幻〈心の落とし物(こころのおとしもの)〉と、それを探す生き霊〈探し人(さがしびと)〉に気づきやすい体質。
ある夏の日、由良は店の前を何度も通る男性に目を止め、声をかける。男性は数年前に移転した古本屋を探していて……。
懐かしくも切ない、過去の未練に魅せられる。
〈主人公と作中用語〉
・添野由良(そえのゆら)
洋燈町にある喫茶店LAMP(ランプ)の店長。〈心の落とし物〉や〈探し人〉に気づきやすい体質。
・〈心の落とし物(こころのおとしもの)〉
人の未練が具現化した幻。あるいは、未練そのもの。
・〈探し人(さがしびと)〉
〈心の落とし物〉を探す生き霊で、落とし主。当人に代わって、〈心の落とし物〉を探している。
・〈未練溜まり(みれんだまり)〉
忘れられた〈心の落とし物〉が行き着く場所。
・〈分け御霊(わけみたま)〉
生者の後悔や未練が物に宿り、具現化した者。込められた念が強ければ強いほど、人のように自由意志を持つ。いわゆる付喪神に近い。
おにぎりが結ぶもの ~ポジティブ店主とネガティブ娘~
花梨
ライト文芸
ある日突然、夫と離婚してでもおにぎり屋を開業すると言い出した母の朋子。娘の由加も付き合わされて、しぶしぶおにぎり屋「結」をオープンすることに。思いのほか繁盛したおにぎり屋さんには、ワケありのお客さんが来店したり、人生を考えるきっかけになったり……。おいしいおにぎりと底抜けに明るい店主が、お客さんと人生に悩むネガティブ娘を素敵な未来へ導きます。
チェイス★ザ★フェイス!
松穂
ライト文芸
他人の顔を瞬間的に記憶できる能力を持つ陽乃子。ある日、彼女が偶然ぶつかったのは派手な夜のお仕事系男女。そのまま記憶の奥にしまわれるはずだった思いがけないこの出会いは、陽乃子の人生を大きく軌道転換させることとなり――……騒がしくて自由奔放、風変わりで自分勝手な仲間たちが営む探偵事務所で、陽乃子が得るものは何か。陽乃子が捜し求める “顔” は、どこにあるのか。
※この作品は完全なフィクションです。
※他サイトにも掲載しております。
※第1部、完結いたしました。
【完結】愛しいあなたに、夢でもう一度逢いましょう
冬馬亮
恋愛
ふたりの出会いは森の奥深く。
怪我もしていないのに、なぜか瀕死の状態だった天才魔法使い、アユールをある女の子が助けたのがきっかけで。
アユールに一目惚れした少女サーヤは、かいがいしく世話を始める。声を出せないけれど、明るく元気なサーヤが気になるアユールだったが・・・。
実は、サーヤの声には呪いがかけられていたことを知り、王国一の(自称)魔法使いとしての誇りにかけて、・・・というより、サーヤへの恋心にかけて、その呪いを解くことを誓う。
どこか訳アリの魔法使いと、どこか訳アリの女の子の出会いから始まる、あったかラブストーリー。
君の未来に私はいらない
南 コウ
ライト文芸
【もう一度、あの夏をやり直せるなら、君と結ばれない未来に変えたい】
二十五歳の古谷圭一郎は、妻の日和を交通事故で亡くした。圭一郎の腕の中には、生後五か月の一人娘、朝陽が残されていた。
圭一郎は、日和が亡くなったのは自分のせいだと悔やんでいた。罪悪感を抱きつつ、生後五か月の娘との生活に限界を感じ始めた頃、神社の境内で蛍のような光に包まれて意識を失った。
目を覚ますと、セーラー服を着た十七歳の日和に見下ろされていた。その傍には見知らぬ少女が倒れている。目を覚ました少女に名前を尋ねると「古谷朝陽」と名乗った。
十七歳になった娘と共に、圭一郎は八年前にタイムリープした。
家族三人で過ごす奇跡のような夏が、いま始まる――。
※本作はカクヨムでも投稿しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
DARSE BIRTHZ。(ダースバース。)
十川弥生
ライト文芸
これは世界の謎を解き明かす物語———。
2020年3月14日、日出国(ひいずるこく)上空に突如謎の球体が出現。それにより未知の化物、化(ローザ)が全国各地に現れ、街々は壊滅的な状況となった。そんな中、たった一人の男の登場により事態は収束の一途を辿る———。
時は流れ、化(ローザ)と交戦する一つの職業が生まれた。人はそれを化掃士(かそうし)と呼ぶ。
球体が現れた衝撃の理由とは———
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる