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番外編 猫のいる街 1997

18. リン

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わたくしは、かつて飼われておりました。
美しい毛並みのキジ猫だと、それはそれは大層可愛がられました。
常時餌があり好きなときに食べ、温かい部屋で温かいベッドを用意してもらい、外に出たこともなく、出たいと思ったこともありませんでした。
しかし、その幸せも長くは続きませんでした。
わたくしが成長すると、家族はあまり構ってくれなくなりました。
餌も忘れられることが多くなり、わたくしは飢え、家族が不在の間に仕方なくフードの袋を破き餌にありつきました。
しかし帰ってきた家族に叱られたのです。それはもうこっぴどく。叩かれ、鍵をかけた檻に閉じ込められました。
少しして、家族が、家族とは呼びたくありませんが、便宜上そう呼んでおきます。新しい生き物を連れ帰ってきたのです。それはフェレットでした。
長い胴体と短い手足でちょろちょろと愛くるしい動きをするそれに、家族は夢中でした。わたくしも可愛いと思うほどでしたから。
引き替えに、わたくしへの関心は完全に絶えました。
幾日も檻から出してもらえず、餌も水ももらえなくて、わたくしはここで死ぬのだと思いました。
そう思うと、無性に腹が立ちました。あまりにも勝手ではありませんか。
わたくしが愛情をもらえたときは幼い頃だけで、成長すると放置され。目の前で次の対象物を愛でるなんて。まるでわたくしに見せつけかのように。
我慢がならなくなったわたくしは、檻内で騒ぎ、暴れました。当然家族は怒りました。フェレットが怯えますからね。
扉に身体をぶつけてさらに暴れてやりました。生死がかかっているわたくしには些末なことですから。
わたくしがあまりにうるさかったのでしょう、我慢の限界にきた家族が鍵を開けました。
久しぶりにわたくしは檻の外へと出られたのです。
捕まえようとする家族から逃げました。家中を走り回り、脱出できるところを探しました。
飢えと乾きでふらふらでしたが、この機会を逃しては檻の中で飢え死ぬだけでしたから、必死でした。
身を潜ませ、家族が別の部屋を探している間に網を破り、わたくしはようやく解放されたのです。
しかし外の世界も過酷でした。飼われていたわたくしには狩をすることができず、虫にすら逃げられる有様。それでもなんとか捕まえられるようになって、今日まで生きてこられました。
わたくしは、子供たちにそんな思いをして欲しくないのです。一匹でも生きていけるようにしてあげたいのです。
わたくしたちが生きていくのに、人は必要ありません。
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