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第三部 最終話

36 友情と恋心の狭間(ロマーリオ目線)

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 今日こそは行こう。今日こそは。
 そう思いながらもきっかけが掴めず、さらに数日が経過した。ディーノを見かけた日から、もう十日ほども経ってしまった。
 毎日どうしようと悩んでいると、きっかけが降ってきた。

 お客からの差し入れで、大量の菓子が届けられた。
 好きなものを持っていけと太っ腹な親方の言葉に、弟子たちの間で争奪戦が始まり、ロマーリオも参加した。
 日持ちのしそうなものしなさそうなもの、様々な菓子を手に入れて、可愛い姪と甥に持って行ってやろうと思った途端、イレーネの顔も浮かんだ。
 居候先に子供もいるし、何かと気を使っているのが見えていたから、持って行ってやればイレーネへの心証も上るかな、とちらっと思った。

 自分の分を少し選り分け、残りを二等分して紙袋に入れ、先に姉の家に届けに行った。

 いつものように大はしゃぎで出迎えてくれた二人と少し遊んでから、イレーネの店に向かった。

 アランもフランカもとても可愛い。集落で下の子の面倒は見てきたから、アランが生まれるまでは弟が生まれる感覚だったけれど、いざ生まれてみると全然違った。

 同じ血が流れているせいか、自分に似ているところがあると云われると、自分の子じゃないのに嬉しくなった。

 義兄は自分の夢を託してアランに演奏家になって欲しいらしく、リュートやヴァイオリンを買い与えて教えているらしい。なにせ本業が楽器販売だから、良い物が安めに買える。

 ロマーリオが聴いて、アランに才能があるようには思えなかった。まだ七歳だからこれから伸びるだろうが、ディーノの演奏を聴いていたロマーリオには、ディーノに勝てる腕前になるとは残念ながら思えなかった。

 ディーノの演奏は、八年聴いていない今でも耳に残っている。耳障りがとても良くて、心にすっと入り込んでくる。いつまでも聴いていたいと思った。

 ディーノのリュートがとても好きだ。それに、彼自身のことも好きだった。

 一緒に生活をしたのは三年ほどだが、幼い頃から一緒に育ったと思えるほど気が合った。イレーネのことに関しては嫉妬しつつも、信じている。

 きっとイレーネのことを幸せにしてくれるだろう。この間の男に取られるのは嫌だけど、ディーノにならば、イレーネを託せる。

 諦めよう。イレーネの幸せが一番だから。

 決意すると、ロマーリオは足を速めた。
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