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第三部 最終話
33 酷いやつれ具合(ロゼッタ目線)
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「ただいま」
ロゼッタが部屋に入ると、朝とほとんど同じ場所に座っているイレーネが振り向いた。
「お帰りなさい。今日ね、ディーノが目を覚ましたの。ほんの少しの時間だったけど」
「そうかい。良かったよ。何か食べられたかい?」
「いいえ。ほんとに一瞬で、お水をほんの少しだけ」
「水だけかい。買い物してきたから、起きたときに少しずつ口に放り込んでやりな」
紙袋からレモンの蜂蜜漬けや、ベリー、プルーンなどを取り出した。
「ありがとう、お母さん」
にこりと笑うと、イレーネはすぐにディーノに顔を向けた。
「あんたはちゃんと食べたのかい?」
「ええ」
「睡眠は?」
「疲れたら休もうと思ってるんだけど、眠気を感じないの」
「少しだけでも横になったほうがいい。あんたが倒れたら誰がディーノの面倒を見るんだい」
「・・・・・・それもそうね。じゃ、少しだけ。ディーノが目を覚ました起こしてね」
「あいよ」
「絶対よ」
「わかったよ」
念押ししてから、イレーネは壁際で横になった。
ロゼッタがディーノの顔を覗き込む。顔色は変わらず土気色で、唇はがさがさのままだ。無理やりにでも起こして水や食べ物を身体に入れたくなる。それほどまでに、酷いやつれ具合だった。
森で倒れている二人を見つけたときを思い出す。
酷い痩せ具合だった。手足は折れそうに細くて、ディーノにいたってはまだ子供なのに皮膚がかさついていた。一目でこれは数日程度の飢餓状態ではなく、長年に渡って栄養が足りていない状態であるのが見て取れた。
だが、二人とも回復が早かった。よく食べたし、すぐに動き回った。
今はあの時ほど痩せているわけでもないし、背丈も伸び、体力もついているだろうに。それなのに痛ましいほどの、この疲弊の仕方は何なのだろうか。
ロゼッタは布を手にし、ディーノの額に浮かぶ汗を拭ってやった。
ロゼッタが部屋に入ると、朝とほとんど同じ場所に座っているイレーネが振り向いた。
「お帰りなさい。今日ね、ディーノが目を覚ましたの。ほんの少しの時間だったけど」
「そうかい。良かったよ。何か食べられたかい?」
「いいえ。ほんとに一瞬で、お水をほんの少しだけ」
「水だけかい。買い物してきたから、起きたときに少しずつ口に放り込んでやりな」
紙袋からレモンの蜂蜜漬けや、ベリー、プルーンなどを取り出した。
「ありがとう、お母さん」
にこりと笑うと、イレーネはすぐにディーノに顔を向けた。
「あんたはちゃんと食べたのかい?」
「ええ」
「睡眠は?」
「疲れたら休もうと思ってるんだけど、眠気を感じないの」
「少しだけでも横になったほうがいい。あんたが倒れたら誰がディーノの面倒を見るんだい」
「・・・・・・それもそうね。じゃ、少しだけ。ディーノが目を覚ました起こしてね」
「あいよ」
「絶対よ」
「わかったよ」
念押ししてから、イレーネは壁際で横になった。
ロゼッタがディーノの顔を覗き込む。顔色は変わらず土気色で、唇はがさがさのままだ。無理やりにでも起こして水や食べ物を身体に入れたくなる。それほどまでに、酷いやつれ具合だった。
森で倒れている二人を見つけたときを思い出す。
酷い痩せ具合だった。手足は折れそうに細くて、ディーノにいたってはまだ子供なのに皮膚がかさついていた。一目でこれは数日程度の飢餓状態ではなく、長年に渡って栄養が足りていない状態であるのが見て取れた。
だが、二人とも回復が早かった。よく食べたし、すぐに動き回った。
今はあの時ほど痩せているわけでもないし、背丈も伸び、体力もついているだろうに。それなのに痛ましいほどの、この疲弊の仕方は何なのだろうか。
ロゼッタは布を手にし、ディーノの額に浮かぶ汗を拭ってやった。
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