【完結】小さな大冒険

衿乃 光希

文字の大きさ
上 下
3 / 6

子オオカミと二匹の子ブタ 

しおりを挟む
 オオカミのミコちゃんには推しがいます。
 となりのクラスの双子姉妹、子ブタのポーちゃんとルコちゃんです。

 ちっちゃくて、つやつやでピンク色のきれいな肌をしていて、細いしっぽがかわいいのです。
 ミコちゃんはかわいいものが大好きなので、見ているときゅんとしてしまいます。

 ミコちゃんは、自分に自信がありません。

 人と話すのが苦手だし、男子よりも体が大きいのが恥ずかしいのです。特に太いしっぽが大嫌い。ぜんぜんかわいくないからです。

 姉妹はいつも一緒で、仲がとても良くて、
「いいなあ~」
 と思って見つめています。

 姉妹はきれい好きで、お掃除がとても上手。
 お掃除ありがとう、と伝えたいのに、ミコちゃんは双子姉妹に話しかけられません。
 同学年なのに、憧れているせいで、いつもより緊張してしまうのです。


 子ブタの双子には推しがします。
 クラスメイトのオオカミのミコちゃんです。

 運動が得意で、いじわるな男子に負けない大きな体。ふさふさの立派なしっぽ。

 それにミコちゃんはとても優しいのです。
 手が届かない棚の本を取ってあげているのを、図書館で見たことがあります。

 話す声も穏やかで、柔らかくて、姉妹は癒されるのです。

 ミコちゃんは人前に出るのが苦手みたいで、よくもじもじしています。
「そこがかわいいのよね」
「ねえ」
 ミコちゃんについて二人でよく話します。

 お友達になりたいのに、話しかけようとすると、ミコちゃんは顔を真っ赤にして逃げてしまうのです。

 足が速いので、運動が苦手な双子姉妹には追いつけません。



 小学校でお泊り会がありました。

 近くの川で水遊びをして、上級生が作ってくれたカレーを食べて、校庭でキャンプファイヤーをしました。

 体育館でふとんをしいて、みんな好きな場所で寝ます。

 興奮していてみんななかなか眠らなかったけれど、一日たっぷり遊んだので、騒いでいた声は静かになっていきました。
 たまに寝ぼけた声で、もっと食べる、遊ぶの、などの声が聞こえてきますが、ほとんどの子供が、寝ています。

「眠れないね」
「お家に帰りたいよ」

 双子姉妹は心細くなってしまいました。ひとつのふとんで一緒に横になっています。おうちと同じように。

「パパー」
 ポーちゃんが呼ぶと、
「ママ―」
 ルコちゃんもさびしくなって、呼んでしまいました。

 今日は、一緒に寝ているパパとママはいません。
 ポーちゃんがしくしくと泣きだしてしまいました。
 すると、ルコちゃんもしくしくと泣き始めました。
 ふとんをかぶって、体を寄せ合い、泣いています。

「眠れないの?」
 小声で誰かが話しかけてきました。

 ゆっくりとふとんをめくると、暗闇に慣れた目に、クラスメイトの姿がうつりました。
 姉妹のとなりで眠っていたのは、オオカミのミコちゃんでした。

「大丈夫?」

 いつものミコちゃんの優しい話し方に、姉妹は安心して泣き止みました。

「いつも、ママとパパと一緒だから」
「二人だと寂しいの」

 姉妹が答えると、ミコちゃんが、
「え?! 双子ちゃん?!」
 なぜだか、慌てだしました。

 お互い、誰がとなりにいるのか知らなかったのです。

「ミコちゃんは平気なの?」
「ひとりは、寂しくないの?」

 姉妹に質問されて、ミコちゃんは、
「へ……平気……だよ」
 と、人前でもじもじしている時の話し方になっていました。

「わたし、いつも、ひとりで寝てるから」
「ミコちゃん、すごおい」
「ね、すごおい」
「そそそ……そんなこと、ないよ」

 姉妹に褒められて、ミコちゃんはもっと慌てています。

「ねえ、ミコちゃん。お願いがあるの」
「ミコちゃんのしっぽ、気持ちよさそうだから、触らせて欲しいの」

 ポーちゃんとルコちゃんは、いつも二人で話していることを、ミコちゃんにお願いしてみました。

「えええ! しっぽ? 私のしっぽなんて、気持ちよくないよ」

 姉妹はミコちゃんのしっぽを心から褒めます。

「ぜったい気持ちいいよ」
「ふさふさしてるもん。わたしたちと違って」
「双子ちゃんのしっぽの方が、かわいいよ。肌もとてもきれいだし」
「ミコちゃんだってステキよ」
「ステキよ」

 暗闇のおかげなのか、お互いに本音を伝えあっていました。

「じゃあ、いいよ。気持ちよくなかったらごめんね」

 姉妹の思いが通じて、ミコちゃんは願いをきいてくれました。

 ぽふっとやってきたしっぽに、姉妹はふれます。

「気持ちいい」
「あったかあい」

 姉妹が想像していた以上に、ミコちゃんのしっぽは柔らかくてもふもふしていました。

「そ、そうかな……じゃあ、眠れるまでしっぽにくるまっていていいよ」
「いいの!?」
「うれしい」

 ミコちゃんの提案が嬉しくて、姉妹はしっぽにくるまりました。

 パパやママと違う感触。それなのに、とても落ち着きます。
 双子姉妹は寂しくなくなって、安心すると眠くなってきました。

「おやすみなさい」
「おやすみなさい」

 小さくあくびをした姉妹とミコちゃんは眠りにつきました。

 翌日から、三人は仲良くなり、お友達になりました。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】イタズラ大好きケントくんと不思議なペン

衿乃 光希
絵本
イタズラが大好きなケントくんは、ママやパパをよく困らせています。 せっかく遊園地に遊びに来たのに、妹のキヨカちゃんに合わせるので、ケントくんは不満を溜めこんでいました。 ひとりでトイレに来たケントくんは、不思議なペンを手に入れました。 描くともこもこと風船みたいにふくらみます。 花やねずみを描いて楽しくなったケントくんは、大作にいどむことにしました。後に大騒ぎになってしまうのに―― 文章のみですが、第17回絵本大賞にエントリーしました。全9話で完結します。

おばあちゃんの家にいくとね!

矢野 零時
絵本
おかあさんがおばあちゃんのために編んでいたカーディガンができあがりました。すると、おかあさんはルミに おばあちゃんの家にカーディガンを届けるように言ったのです。おばあちゃんの家にいけば、いつもいいことばかりが起きます。るんるん気分で、ルミはおばあちゃんの家に向かいました。

さくらんぼ兄弟

てらやゆま
絵本
かわいいふたごの男の子 泣いて笑って けんかして お互いきらいって言ってるのに いつもくっついてる その名もさくらんぼ兄弟

ゆまちゃんとヤン丸の12ヶ月

万揮/マキちん
絵本
まん丸な子犬のヤン丸とゆまちゃんという女の子の一年間の物語です。

姫と精霊の物語A Tale of Princesses and Spirits

静風
絵本
「姫と精霊の物語」では、広大な王国のお姫様、アリアの心温まる冒険が描かれます。城での退屈な毎日に飽き飽きしていたアリアは、ある日、森の精霊たちとの出会いをきっかけに、外の世界へと一歩を踏み出します。老木の精、石の精、川の精との出会いを通じて、アリアは毎日を大切に生きること、変化を楽しむこと、そして心を穏やかに持つことの重要性を学びます。 この絵本は、アリアが精霊たちから受けた教えを胸に、最終的に立派な女王になるまでのサクセスストーリーを描いています。読者は、ページをめくるたびに、アリアの成長と変化を見守り、彼女と一緒に成長することができます。鮮やかなイラストが物語をさらに魅力的に彩り、子供たちだけでなく大人も楽しめる内容となっています。 アリアの旅は、大切な人との絆、自然との調和、そして自分自身を見つめ直す旅でもあります。「姫と精霊の物語」を通じて、読者は日常の小さな奇跡を見つけ、心に響くメッセージを受け取ることでしょう。癒しと成長の物語が、あなたを待っています。 ※この絵本は「大人と子供が楽しめる絵本」と言うコンセプトでAIにより作製しました。

にょっきりおやつ

弓削光希
絵本
ウサギさんとネコさんとアルパカさんがおやつをたべているよ。 でもね、なんだかようすがおかしいの。 これからなにがおきるとおもう?

ゆめみるちゃいろのけむくじゃら 1

cha
絵本
みんなの・・そばにいるよね いたずらで かわいい・・けむくじゃら・・

ミミとロロ パンツやしきにいく

珊瑚やよい(にん)
絵本
 私が絵本コンテストに参加すると言ったら娘も参加したいといいまして。10歳(小5)の作成した絵本です。どうぞあたたかい目でご覧下さい。 珊瑚やよい→私 金色ヒトミ→娘  この絵本はトイレトレーニングをしている子におすすめです。弟が2歳の時、トイレトレーニングをしているときに描いた絵本です。トイレトレーニングをしている子には「パンツをはいてみな。パンツロボットがいるかもしれないよ」というといいです。

処理中です...