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タヌキのぽこちゃん ママをさがそう
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真夜中、ふっと目を覚ましたタヌキのぽこちゃん。
いつも隣にいるはずのママがいないことに気がつきました。
「……どこぉ?」
ころりんとねがえりを打つと、ほっぺにママの温もりを感じます。
ほのかに甘い香りもします。まるでホットケーキのような、やさしい香り。
ママがいなくて、とてもとてもさみしくなりました。
よおしっ、ママを探しに行こう。
ぽこちゃんはぱちりと目を開けて、起き上がりました。
ベッドの下に黄色の明かりがほんのりと灯っていて、お部屋は真っ暗ではありません。
ぽこちゃんはお部屋をぐるっと見ました。
ママは、やっぱりお部屋のどこにもいません。
ぽこちゃんは立ち上がりました。
ママを捜すためには、ぽこちゃんはまず、ベッドから降りないといけないのです。
ベッドには、ぽこちゃんが落ちてしまわないように、柵があります。
だけど階段がちゃんとついてあるのです。
いつもは、ママと手をつないで下りている階段を、ぽこちゃんはひとりで下りようとしました。
けれど、足がすくんでしまいます。転がり落ちてしまいそうで、怖いのです。
階段を下りないと、ママを探しに行けません。
ぽこちゃんは考えました。どうやったら怖がらずに階段を下りられるのかを。
そこで、くるりと後ろを向きました。
ちょこんと座り、手をついて、足を出しました。
階段に足が乗って、ゆっくりと下りていきます。
「よっこらしぇ。よっこらしぇ」
おばあちゃんの口真似をしながら、ぽこちゃんはゆっくりゆっくり階段を下りていきます。
裸足に感じたじゅうたんの柔らかさ。いつもの感触に、階段を下り切ったと感じました。
手をついていた段差から手を放して立ち上がります。
足元にあったベッドの柵が、目の前にありました。
ぽこちゃんは、ひとりで階段を下りられたのです。
やった。
ぽこちゃんは嬉しくなって、バンザイをしました。
ママ探しの旅は、一歩進みました。
次にぽこちゃんの邪魔をしたのは、ドアでした。
柵よりも高い高いドアがそびえています。
でもぽこちゃんは、開け方を知っています。横に押すのです。ママがいつもしています。
ぽこちゃんは、ママが触っているドアのへこんだところに、手を伸ばします。
ところが、手が届きません。
うんと手を伸ばしても、つま先で立ち上がっても届きません。
ぽこちゃんのママをさがす旅はもう終わってしまうのでしょうか。
すると、ぽこちゃんはドアが少し開いているのに気がつきました。
空間に指先をいれて、力をこめます。
「よっこらしぇ。よっこらしぇ」
いーっぱい力をいれると、ドアが開いて、ぽこちゃんが通れる隙間ができました。
けれど、ぽこちゃんの足はまた止まってしまいました。
真っ暗だったからです。
お部屋から出たいのに、何も見えない真っ暗闇が怖いのです。何かが飛び出してくるような気がします。
だけど、ぽこちゃんはママに会いたいのです。
早くママの温かい腕に抱かれて、ほっぺをすりすりしてもらいたいのです。
ぽこちゃんは、勇気を出して、右足を出しました。
闇の奥からいまにも手が伸びてきて、掴まれそうです。
でももう一歩踏みだしました。
ついにお部屋を出ました。
次のお部屋は、いつもなら、パパとママと遊んでいる楽しい所です。でも真っ暗だととても怖い所でした。
ぽこちゃんは壁に背中をくっつけて、闇を見つめながらゆっくりと歩いていきます。
カニさんみたいに。
想像していた手は出てきません。
どうやら大丈夫なようです。
その時——
カチッ
何か音がしました。
「っ!……」
ぽこちゃんは息を呑みました。足を止めて、じっとします。
やっぱり手がにゅっと出てくるのでしょうか。
それとも、大きな目がぽこちゃんを見つめてくるのでしょうか。
けれど、それ以上音はしませんでした。
ぽこちゃんはほっと小さく息をはいて、またゆっくりと動きだしました。
ママが美味しいご飯を作ってくれる台所を通り過ぎると、その先はドアがあって、別の部屋や、お風呂があります。
ここのドアは開いていて、ぽこちゃんは廊下に出ることができました。
廊下はうっすらと明るくて、真っ暗闇ではありませんでした。
ぽこちゃんはにじりにじりと、足を動かします。
すると、壁の一部から光がもれだしました。
廊下がもっと明るくなります。
「ぽこちゃんは、どうしたの?」
ママでした。
ママがおトイレから出てきたのです。
「ママァ」
ぽこちゃんは張り付いていた壁から背中を放して、ママのところに走っていきました。
そしてママの胸に飛び込みました。
首に手を回して、ママのほっぺにくっつきました。
「ひとりで階段を下りられたのね。がんばったわね」
ママはほっぺをすりすりしながら、たくさんほめてくれました
背中に腕をまわして、ぎゅっと抱きしめてくれます。
「ぽこちゃんすごい」
ママは温かくて、甘くて、やさしい香りがします。
ぽこちゃんは安心したので、眠くなってきました。
「ママと一緒に寝ましょうね」
ママはぽこちゃんの体を持ち上げて、抱っこをしてくれました。
揺れが心地良くて、ぽこちゃんはママの腕の中で眠りにつきました。
いつも隣にいるはずのママがいないことに気がつきました。
「……どこぉ?」
ころりんとねがえりを打つと、ほっぺにママの温もりを感じます。
ほのかに甘い香りもします。まるでホットケーキのような、やさしい香り。
ママがいなくて、とてもとてもさみしくなりました。
よおしっ、ママを探しに行こう。
ぽこちゃんはぱちりと目を開けて、起き上がりました。
ベッドの下に黄色の明かりがほんのりと灯っていて、お部屋は真っ暗ではありません。
ぽこちゃんはお部屋をぐるっと見ました。
ママは、やっぱりお部屋のどこにもいません。
ぽこちゃんは立ち上がりました。
ママを捜すためには、ぽこちゃんはまず、ベッドから降りないといけないのです。
ベッドには、ぽこちゃんが落ちてしまわないように、柵があります。
だけど階段がちゃんとついてあるのです。
いつもは、ママと手をつないで下りている階段を、ぽこちゃんはひとりで下りようとしました。
けれど、足がすくんでしまいます。転がり落ちてしまいそうで、怖いのです。
階段を下りないと、ママを探しに行けません。
ぽこちゃんは考えました。どうやったら怖がらずに階段を下りられるのかを。
そこで、くるりと後ろを向きました。
ちょこんと座り、手をついて、足を出しました。
階段に足が乗って、ゆっくりと下りていきます。
「よっこらしぇ。よっこらしぇ」
おばあちゃんの口真似をしながら、ぽこちゃんはゆっくりゆっくり階段を下りていきます。
裸足に感じたじゅうたんの柔らかさ。いつもの感触に、階段を下り切ったと感じました。
手をついていた段差から手を放して立ち上がります。
足元にあったベッドの柵が、目の前にありました。
ぽこちゃんは、ひとりで階段を下りられたのです。
やった。
ぽこちゃんは嬉しくなって、バンザイをしました。
ママ探しの旅は、一歩進みました。
次にぽこちゃんの邪魔をしたのは、ドアでした。
柵よりも高い高いドアがそびえています。
でもぽこちゃんは、開け方を知っています。横に押すのです。ママがいつもしています。
ぽこちゃんは、ママが触っているドアのへこんだところに、手を伸ばします。
ところが、手が届きません。
うんと手を伸ばしても、つま先で立ち上がっても届きません。
ぽこちゃんのママをさがす旅はもう終わってしまうのでしょうか。
すると、ぽこちゃんはドアが少し開いているのに気がつきました。
空間に指先をいれて、力をこめます。
「よっこらしぇ。よっこらしぇ」
いーっぱい力をいれると、ドアが開いて、ぽこちゃんが通れる隙間ができました。
けれど、ぽこちゃんの足はまた止まってしまいました。
真っ暗だったからです。
お部屋から出たいのに、何も見えない真っ暗闇が怖いのです。何かが飛び出してくるような気がします。
だけど、ぽこちゃんはママに会いたいのです。
早くママの温かい腕に抱かれて、ほっぺをすりすりしてもらいたいのです。
ぽこちゃんは、勇気を出して、右足を出しました。
闇の奥からいまにも手が伸びてきて、掴まれそうです。
でももう一歩踏みだしました。
ついにお部屋を出ました。
次のお部屋は、いつもなら、パパとママと遊んでいる楽しい所です。でも真っ暗だととても怖い所でした。
ぽこちゃんは壁に背中をくっつけて、闇を見つめながらゆっくりと歩いていきます。
カニさんみたいに。
想像していた手は出てきません。
どうやら大丈夫なようです。
その時——
カチッ
何か音がしました。
「っ!……」
ぽこちゃんは息を呑みました。足を止めて、じっとします。
やっぱり手がにゅっと出てくるのでしょうか。
それとも、大きな目がぽこちゃんを見つめてくるのでしょうか。
けれど、それ以上音はしませんでした。
ぽこちゃんはほっと小さく息をはいて、またゆっくりと動きだしました。
ママが美味しいご飯を作ってくれる台所を通り過ぎると、その先はドアがあって、別の部屋や、お風呂があります。
ここのドアは開いていて、ぽこちゃんは廊下に出ることができました。
廊下はうっすらと明るくて、真っ暗闇ではありませんでした。
ぽこちゃんはにじりにじりと、足を動かします。
すると、壁の一部から光がもれだしました。
廊下がもっと明るくなります。
「ぽこちゃんは、どうしたの?」
ママでした。
ママがおトイレから出てきたのです。
「ママァ」
ぽこちゃんは張り付いていた壁から背中を放して、ママのところに走っていきました。
そしてママの胸に飛び込みました。
首に手を回して、ママのほっぺにくっつきました。
「ひとりで階段を下りられたのね。がんばったわね」
ママはほっぺをすりすりしながら、たくさんほめてくれました
背中に腕をまわして、ぎゅっと抱きしめてくれます。
「ぽこちゃんすごい」
ママは温かくて、甘くて、やさしい香りがします。
ぽこちゃんは安心したので、眠くなってきました。
「ママと一緒に寝ましょうね」
ママはぽこちゃんの体を持ち上げて、抱っこをしてくれました。
揺れが心地良くて、ぽこちゃんはママの腕の中で眠りにつきました。
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