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添付資料01
M1832 76mm高射砲
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■概要
M1832 76mm高射砲は、連邦の労農赤軍が採用した高射砲である。
キーロフスキー陸軍砲兵工廠の技師であるN・サハロフが設計を担当し、幾度かの試作の後、1932年に正式採用された。
口径長にして約47口径の本砲は、野戦高射砲兵用に開発された高射砲で、労農赤軍の陸軍および防空軍で使用された。
本砲の最大射程は14,500メートルにも達し、最大射高も9,250メートルと優秀な性能を誇った。
開戦当初は敵爆撃機の性能もそれほど高くはなかったため、本砲は十分な戦績を誇ったが、戦争の中盤から後半に至ると、高度9,000メートル以上の高空から侵入する敵機も出てくるようになり、本砲は性能不足と判断され、将兵たちからは一刻も早い新型の開発と配備が要求されるようになる。それでも、高射砲兵の戦友として終戦まで戦い抜いた。
本砲は機械力によって牽引することが前提となっている。牽引時は前後に折りたたんだ脚のそれぞれに台車をつけ、路上での運行を可能とする。台車の車輪はトラックのゴム製タイヤと同一のものが使用されている。
運行姿勢から放列姿勢に変更するには、まず牽引車両から砲を離し、前後に折りたたまれた脚を十字型に展開する。続いて脚の先についているジャッキ(扛重機)を使って砲全体を持ち上げ、前後の台車を抜く。それから砲床の水平を保ったまま、各脚のジャッキを使って砲を降ろし、砲床を地面に設置させる。最後に各脚の先端に駐杭を打ち込んで足を固定することで、放列姿勢への変換を完了する。
本砲は砲手長を筆頭に、照準手1名、信管測合手1名、装填手1名、拉縄を操作する撃発手1名がいれば操作および発砲は可能である。しかし、この場合だと砲側に準備した弾薬を撃ち尽くした後は、弾薬車まで弾薬を取りにいかなければならなくなる。
円滑な運用を行うためには、操砲を号令する砲手長以下、俯仰角を担当する正照準手1名、旋回角を担当する副照準手1名、信管測合手2名、装填手2名、撃発手1名、弾薬手4名の12名を必要とする。
発射速度は装填補助装置と自動信管測合機のおかげで、最大で毎分15発とされているが、実際には将兵の練度によるところがあり、毎分10発というのが平均だった。一方、熟練した高射砲兵らが操作した結果、毎分20発を発射したという記録も残っている。
本砲は照準鏡を備えており、照準手が目測で敵機を捕らえながら発砲することも可能ではあるが、本砲の性能を最大限に引き出すには、射撃管制装置との連携が欠かせない。
本砲と射撃管制装置とは電気信号を伝えるケーブルで接続され、照準手には射撃管制装置が計算した方向角、俯仰角を示す白針と、現在砲が取っている姿勢を示す赤針が表示されるので、照準手は赤針と白針とが重なるように方向角と俯仰角を取ればよい。
なお、旋回と俯仰に要する動力については、外部電源による機械力と、人力とを併用することが可能となっている。
また、信管の測合についても、目標高度に到達するまでに必要な秒時が示されるため、信管測合手はその秒時に合わせて時計信管ないし曳火信管を測合するだけでよい。
この方法を使うと、1個中隊4門のM1932による射撃で、合計100発程度の発射で有効弾を得ることができるとされていたが、実際にはそれよりも多数の砲弾を発射しない限り、有効弾を得ることはかなわなかった。また、同中隊が各個に目測による射撃を行う場合、同数の砲弾を撃ち上げたとしても、有効弾を得ることはほぼ不可能であった。
■対戦車砲ないし野砲としての運用
高射砲が備える高初速と弾道の低進性は、対戦車砲や加農砲として使用することを可能とした。
他の高射砲と同じように、本砲も高射以外の直接照準による水平射撃や、関節照準による弾道射撃を行うことができた。そのため、対戦車用の徹甲弾や榴弾のような通常弾頭の他、照明弾や煙幕弾といった特殊な弾薬も準備されていた。
しかし、本砲は高射のために大量の装薬を使用することから、薬室のサイズが長く、当時運用されていた同じ76ミリクラスの対戦車砲や野砲で、本砲と同じ完全薬筒式の砲弾を使うものであっても、砲弾の互換性がない。当然、分離薬筒式や薬包式の砲弾は本砲では使用できない。
■諸元
M1932 76mm高射砲
口径 : 76mm
砲身長 : 3,600mm(約47口径)
砲身重量: 501kg(閉塞機含)
閉塞機 : 垂直鎖栓式自動開閉装置付
仰俯角 : -2~+83度
方向射界: 360度
放列重量: 3,592kg
・M1932高射尖鋭弾
弾薬重量 : 6.87kg
弾薬筒重量: 9.21kg
初速 : 733m/s
最大射程 : 14,500m
最大射高 : 9,250m(曳火信管使用時:8,710m)
M1832 76mm高射砲は、連邦の労農赤軍が採用した高射砲である。
キーロフスキー陸軍砲兵工廠の技師であるN・サハロフが設計を担当し、幾度かの試作の後、1932年に正式採用された。
口径長にして約47口径の本砲は、野戦高射砲兵用に開発された高射砲で、労農赤軍の陸軍および防空軍で使用された。
本砲の最大射程は14,500メートルにも達し、最大射高も9,250メートルと優秀な性能を誇った。
開戦当初は敵爆撃機の性能もそれほど高くはなかったため、本砲は十分な戦績を誇ったが、戦争の中盤から後半に至ると、高度9,000メートル以上の高空から侵入する敵機も出てくるようになり、本砲は性能不足と判断され、将兵たちからは一刻も早い新型の開発と配備が要求されるようになる。それでも、高射砲兵の戦友として終戦まで戦い抜いた。
本砲は機械力によって牽引することが前提となっている。牽引時は前後に折りたたんだ脚のそれぞれに台車をつけ、路上での運行を可能とする。台車の車輪はトラックのゴム製タイヤと同一のものが使用されている。
運行姿勢から放列姿勢に変更するには、まず牽引車両から砲を離し、前後に折りたたまれた脚を十字型に展開する。続いて脚の先についているジャッキ(扛重機)を使って砲全体を持ち上げ、前後の台車を抜く。それから砲床の水平を保ったまま、各脚のジャッキを使って砲を降ろし、砲床を地面に設置させる。最後に各脚の先端に駐杭を打ち込んで足を固定することで、放列姿勢への変換を完了する。
本砲は砲手長を筆頭に、照準手1名、信管測合手1名、装填手1名、拉縄を操作する撃発手1名がいれば操作および発砲は可能である。しかし、この場合だと砲側に準備した弾薬を撃ち尽くした後は、弾薬車まで弾薬を取りにいかなければならなくなる。
円滑な運用を行うためには、操砲を号令する砲手長以下、俯仰角を担当する正照準手1名、旋回角を担当する副照準手1名、信管測合手2名、装填手2名、撃発手1名、弾薬手4名の12名を必要とする。
発射速度は装填補助装置と自動信管測合機のおかげで、最大で毎分15発とされているが、実際には将兵の練度によるところがあり、毎分10発というのが平均だった。一方、熟練した高射砲兵らが操作した結果、毎分20発を発射したという記録も残っている。
本砲は照準鏡を備えており、照準手が目測で敵機を捕らえながら発砲することも可能ではあるが、本砲の性能を最大限に引き出すには、射撃管制装置との連携が欠かせない。
本砲と射撃管制装置とは電気信号を伝えるケーブルで接続され、照準手には射撃管制装置が計算した方向角、俯仰角を示す白針と、現在砲が取っている姿勢を示す赤針が表示されるので、照準手は赤針と白針とが重なるように方向角と俯仰角を取ればよい。
なお、旋回と俯仰に要する動力については、外部電源による機械力と、人力とを併用することが可能となっている。
また、信管の測合についても、目標高度に到達するまでに必要な秒時が示されるため、信管測合手はその秒時に合わせて時計信管ないし曳火信管を測合するだけでよい。
この方法を使うと、1個中隊4門のM1932による射撃で、合計100発程度の発射で有効弾を得ることができるとされていたが、実際にはそれよりも多数の砲弾を発射しない限り、有効弾を得ることはかなわなかった。また、同中隊が各個に目測による射撃を行う場合、同数の砲弾を撃ち上げたとしても、有効弾を得ることはほぼ不可能であった。
■対戦車砲ないし野砲としての運用
高射砲が備える高初速と弾道の低進性は、対戦車砲や加農砲として使用することを可能とした。
他の高射砲と同じように、本砲も高射以外の直接照準による水平射撃や、関節照準による弾道射撃を行うことができた。そのため、対戦車用の徹甲弾や榴弾のような通常弾頭の他、照明弾や煙幕弾といった特殊な弾薬も準備されていた。
しかし、本砲は高射のために大量の装薬を使用することから、薬室のサイズが長く、当時運用されていた同じ76ミリクラスの対戦車砲や野砲で、本砲と同じ完全薬筒式の砲弾を使うものであっても、砲弾の互換性がない。当然、分離薬筒式や薬包式の砲弾は本砲では使用できない。
■諸元
M1932 76mm高射砲
口径 : 76mm
砲身長 : 3,600mm(約47口径)
砲身重量: 501kg(閉塞機含)
閉塞機 : 垂直鎖栓式自動開閉装置付
仰俯角 : -2~+83度
方向射界: 360度
放列重量: 3,592kg
・M1932高射尖鋭弾
弾薬重量 : 6.87kg
弾薬筒重量: 9.21kg
初速 : 733m/s
最大射程 : 14,500m
最大射高 : 9,250m(曳火信管使用時:8,710m)
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