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第二部4
4-4
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いったん清水の邸に帰るふりをして、その後はずっと、保月庵を見張っていた。
影衆を抜けて六年も経つというのに、未だに忠雅は家老職より影衆の方が向いているような気がしてならない。気配を消し、夜の闇と一体化しているとそのまま自分自身が闇に溶けて消えて行くような気がしてくる。
人を斬ることも、欺くことにもまったく抵抗はなかった。初めて人を殺したのは十三歳の夏だが、他の影衆が胃の中ものを吐き出したり、一晩中がたがた震えたりしている中で、忠雅一人がまったくの平気だった。多分、兄達に散々痛めつけられているうちに、忠雅の人の心はとうに死んでしまったのだろう。雅勝も含め、影衆達と友情や親睦を深めたり、妓楼で楽しいひと時を過ごしたりもしたが、一度死んだものは甦らない。己のなかに人としての大きな欠落があることは、かなり以前から自覚していた。
東の空から曙光が射し込むまで、生垣の影で立ったまま夜を明かした。西の空にはまだ群青色の夜が残っていて、消え残りの星がいくつか瞬いている。朝と夜の合間ではなく、彼岸と此岸の狭間に立っているかのようだ。次第に強くなって行く朝の陽射しが、触れるものすべてを淡い金色に変えて行く。
ああ、夜が明けるな……と思った時、保月庵の裏木戸が開いた。
おるいは簡素な木綿小袖に身を包んで、背中におゆいを括りつけている。起きる時間には早すぎるのだろう。母親の背で、幼子がぐずるような仕草を見せる。数え三歳の子どもは背負って長く歩くには大きいが、その分、母の言うことを理解できる。いったん背から下ろして、おるいが何か語り掛けるとすぐに大人しくなって、細い肩に顔を埋めて寝息を立て始めた。
彼女の行く先は清水や飯野の邸がある武家屋敷の方角だ。きっとそうなるだろうと思って待っていたのだが、正直、この後何をどうするべきか、忠雅自身もわかっていなかった。
畑があり、生活があるから、長く家を空けられない。おるいの言葉はすべて偽りだ。三年前、忠雅は故郷に帰る彼女にまとまった額の金子を渡している。実際に目にした母娘二人のつましい生活ならば、まだ相当額が残っているはずだった。忠雅が請うて来てもらっているので、明野領滞在中の生活費はすべて清水家で持っている。来年の春までこちらにいたところで、おるいが経済的に困ることはまったくない。
それでも今、おるいには急いで明野領を去らねばならない理由があるのだろうか。そうしているうちにだんだんと陽が高くなって、近隣の農家の鳥小屋で鶏が鳴いている。早出の職人や振り売りの商人の姿がちらほら見えるようになった頃、見慣れた武家屋敷の一角にたどり着いた。
飯野家の邸と清水の邸は近いので、わざわざ保月庵を見張らなくとも飯野の邸で待ち伏せすることも考えたのだが、この邸の周囲は塀や生垣が低くて長く身を隠せる場所がない。それにきっとおゆいを連れてここにやって来るであろうおるいから、片時も目を離したくなかったのも事実だった。
――俺はこの二人を守りたい。
おるいとおゆいの母娘を見ていると、心の底からそう思う。武士としてではない。人としての情だ。人の世において、子どもとは守られなければならない存在だ。そして幼子を守るということは、同時にその母親を守るということでもある。もしかすると彼女たちを守ることで忠雅の中の一部――かつて誰にも守ってもらえない子どもだった部分――を同時に守っているのかもしれなかった。
飯野邸の生垣の向こうで、一人の男が木刀を振っている。諸肌脱ぎになった男の右肩から背にかけて、かなり特徴的な深い傷跡があった。これは十三歳の冬に本領の山城に潜入した際、あちらの隠密に正体がばれて袈裟懸にばっさりと斬られた時の傷だ。血まみれの雅勝の着物を脱がせて、影の先輩と一緒に押さえつけて縛り上げたのは他ならぬ忠雅なのだから、忘れるはずもない。
今、目の前にいる男の身体は、忠雅のよく知る友の身体的特徴と完全に一致していた。
子まで儲けた仲なのだから、当然、おるいもその傷のことは知っているだろう。だが今、彼女が何を思っているのか、表情からは読み取れなかった。足を止めて佇んでいるおるいを認めて着物を戻した男が近づいて来る。滴る汗を手拭いでぬぐいながら、朗らかに笑っていた。
「そなたは、確か清水殿の邸で……」
「……飯野様。もうお加減はよろしいのですか?」
「ああ、昨日はそたなにも清水殿には面倒をかけて、すまなかった。この通り、もう何ともない」
かつて、生涯を共にすると誓い合った男女の三年ぶりの逢瀬は、完全に赤の他人同士のものだった。声が聞こえたのだろう。おるいの背中で、目を覚ましたおゆいがきょとんと目を見開いている。
愛らしい小さな童女の姿を認めて、男は頬を緩ませた。
「可愛い子だ。そなたの子か?」
「……はい」
何しろ顔がそっくりなので、事情を知る者としては、どこからどう見ても父子にしか見えない。だが成之は子どもの顔立ちが自分に似ていることには気づかないようだった。この男にしてみれば、おるいと睦み合った記憶がないわけだから、目の前の幼子を己の子と思わないのは当然か。近所の子どもにするように、ごく自然な仕草でおゆいの頭に手が伸びる。忠雅が手を伸ばした時には大泣きした幼子は、父親の掌が頭に触れても泣き出さなかった。
「いい子だな。大事に育てられよ」
「はい。……飯野様もどうかお元気で」
背中の我が子と目の前の男を交互に見やって、おるいが微笑む。金色の光に照らされた笑顔は、煌めきながらも寂し気だった。
何せ元影衆と忍びの血を引く女なので、あまり近づくと勘付かれる恐れがある。少し離れた場所から見守っていたのだが、この時のおるいの表情を見て、忠雅は昔どこかで見た薬師如来像を思いだした。若い男女が二人、穏やかに語り合っているのに、慟哭が聞こえる。喉を掻き毟らんばかりの哀切が、忠雅が今いる場所にまで漂って来る。
唐突に悟る。今、目の前の光景は、心を通い合わせた男女の逢瀬ではない。これは別れの場面だ。――おるいは今、想う男に別れを告げる為にこの場所にやってきた。
忠雅がおるいの存在を知ったのは、三年前、陣屋の奥座敷に火がつけられた事件の後ことだった。雅勝から「何か気になるから素性を調べておいてくれ」と頼まれたのだ。忠雅としては「何が」気になるのかを教えて欲しいところだったのだが、さほどの手間でもないので素性を洗って雅勝に知らせた。
初めて顔を合わせたのは、端午の節句の日の厨でのこと。見た目があまりに友の好みにぴったりだったので、おい、気になるってまさかそっちの意味じゃないよな……と突っ込みたかったのだが、その時は本人が毒虫に刺されて死にかけていたので、問い正すことはできなかった。
その後、二人が正式な許嫁になった後には何度か会った。小動物じみた可愛らしい娘が垣間見せる艶やかな女の表情や、今を生きることすら危うかった幼馴染が真剣に先を望むようになった変化を間近で見て――ずっと放置してきた己の許嫁と真面目に向き合った結果、今、このような片恋に苦しむことになったわけだが。
忠雅とおるいの縁は、雅勝を仲立ちとしてたまたま結びついただけものに過ぎない。おるいが雅勝との縁を切る決意をしたのであれば、忠雅とおるいの関係もそこで終わる。
そのことをとても寂しいと感じて、忠雅は一瞬、その場に棒立ちになった。惚れてはいない。だがおるいもまた、忠雅にとってかけがえのない大切な女だった。男と女に男女の情を超えて繋がる縁もあるのだと、この年齢になって初めて知った。
吹く風に潮の香を感じる。木の枝が微かに揺れていて、どこかで雀が囀っていた。秋の陽射しはどこまでも清廉で、夏のように強烈に照り返しても来なければ、春のように柔らかでもない。
――人の縁は時に糸に例えられる。
縁も糸も、絡み合いもつれ合うほどに強く太くなり、人が断ち切りたいと望んでも容易に切ることができなくなる。違いがあるとすれば、糸が解けた後にも目に見える形で存在するのに対し、縁が解けた時には、存在そのものが消えてなくなるということだろうか。
三年前、結ばれた縁が今、解けて消えて行く。生まれ育った武家屋敷の並ぶ一角で、忠雅は確かに、一つの縁の終焉を見届けていた。
おるいとおゆいの母子が明野領を去ったのは、それから二日後のことだった。
忠雅は二人の護衛に、影衆になったばかりの十四歳の少年・行春を付けた。行春は十年前、高濱藩の城下で起こった大火で両親を失い、四歳という幼さで明野領にやってきた。さすがに本格的な影子にするには幼過ぎたので、しばらく雅勝が手もとに置いて面倒を見ていた。読み書き算盤はもちろん、箸の持ち方や布団の上げ下ろしから教えていたので、兄というよりほとんど親だったように思う。親のように慕っていた雅勝の妻子を守る御役目なのだとよくよく言い聞かせておいたから、道中に何があっても母子を守ってくれることだろう。
菊乃から三人が無事に出立したと報せを受けて、もうあの母子に会うことはないだろうと思った。会わない方がいい。おるいの生きる場所はあの取り残されたような山里だ。彼女たちの人生に君水藩明野領次席家老は必要ない。今後明野領で何が起ころうとも、おるいとおゆいには係わらない、係らせないと固く心に誓う。
その誓いは守られた。
この後、忠雅が元忍び里に赴くことも、おるいが明野領に足を踏み入れることもなく――忠雅がおるいと会うことは生涯なかった。
影衆を抜けて六年も経つというのに、未だに忠雅は家老職より影衆の方が向いているような気がしてならない。気配を消し、夜の闇と一体化しているとそのまま自分自身が闇に溶けて消えて行くような気がしてくる。
人を斬ることも、欺くことにもまったく抵抗はなかった。初めて人を殺したのは十三歳の夏だが、他の影衆が胃の中ものを吐き出したり、一晩中がたがた震えたりしている中で、忠雅一人がまったくの平気だった。多分、兄達に散々痛めつけられているうちに、忠雅の人の心はとうに死んでしまったのだろう。雅勝も含め、影衆達と友情や親睦を深めたり、妓楼で楽しいひと時を過ごしたりもしたが、一度死んだものは甦らない。己のなかに人としての大きな欠落があることは、かなり以前から自覚していた。
東の空から曙光が射し込むまで、生垣の影で立ったまま夜を明かした。西の空にはまだ群青色の夜が残っていて、消え残りの星がいくつか瞬いている。朝と夜の合間ではなく、彼岸と此岸の狭間に立っているかのようだ。次第に強くなって行く朝の陽射しが、触れるものすべてを淡い金色に変えて行く。
ああ、夜が明けるな……と思った時、保月庵の裏木戸が開いた。
おるいは簡素な木綿小袖に身を包んで、背中におゆいを括りつけている。起きる時間には早すぎるのだろう。母親の背で、幼子がぐずるような仕草を見せる。数え三歳の子どもは背負って長く歩くには大きいが、その分、母の言うことを理解できる。いったん背から下ろして、おるいが何か語り掛けるとすぐに大人しくなって、細い肩に顔を埋めて寝息を立て始めた。
彼女の行く先は清水や飯野の邸がある武家屋敷の方角だ。きっとそうなるだろうと思って待っていたのだが、正直、この後何をどうするべきか、忠雅自身もわかっていなかった。
畑があり、生活があるから、長く家を空けられない。おるいの言葉はすべて偽りだ。三年前、忠雅は故郷に帰る彼女にまとまった額の金子を渡している。実際に目にした母娘二人のつましい生活ならば、まだ相当額が残っているはずだった。忠雅が請うて来てもらっているので、明野領滞在中の生活費はすべて清水家で持っている。来年の春までこちらにいたところで、おるいが経済的に困ることはまったくない。
それでも今、おるいには急いで明野領を去らねばならない理由があるのだろうか。そうしているうちにだんだんと陽が高くなって、近隣の農家の鳥小屋で鶏が鳴いている。早出の職人や振り売りの商人の姿がちらほら見えるようになった頃、見慣れた武家屋敷の一角にたどり着いた。
飯野家の邸と清水の邸は近いので、わざわざ保月庵を見張らなくとも飯野の邸で待ち伏せすることも考えたのだが、この邸の周囲は塀や生垣が低くて長く身を隠せる場所がない。それにきっとおゆいを連れてここにやって来るであろうおるいから、片時も目を離したくなかったのも事実だった。
――俺はこの二人を守りたい。
おるいとおゆいの母娘を見ていると、心の底からそう思う。武士としてではない。人としての情だ。人の世において、子どもとは守られなければならない存在だ。そして幼子を守るということは、同時にその母親を守るということでもある。もしかすると彼女たちを守ることで忠雅の中の一部――かつて誰にも守ってもらえない子どもだった部分――を同時に守っているのかもしれなかった。
飯野邸の生垣の向こうで、一人の男が木刀を振っている。諸肌脱ぎになった男の右肩から背にかけて、かなり特徴的な深い傷跡があった。これは十三歳の冬に本領の山城に潜入した際、あちらの隠密に正体がばれて袈裟懸にばっさりと斬られた時の傷だ。血まみれの雅勝の着物を脱がせて、影の先輩と一緒に押さえつけて縛り上げたのは他ならぬ忠雅なのだから、忘れるはずもない。
今、目の前にいる男の身体は、忠雅のよく知る友の身体的特徴と完全に一致していた。
子まで儲けた仲なのだから、当然、おるいもその傷のことは知っているだろう。だが今、彼女が何を思っているのか、表情からは読み取れなかった。足を止めて佇んでいるおるいを認めて着物を戻した男が近づいて来る。滴る汗を手拭いでぬぐいながら、朗らかに笑っていた。
「そなたは、確か清水殿の邸で……」
「……飯野様。もうお加減はよろしいのですか?」
「ああ、昨日はそたなにも清水殿には面倒をかけて、すまなかった。この通り、もう何ともない」
かつて、生涯を共にすると誓い合った男女の三年ぶりの逢瀬は、完全に赤の他人同士のものだった。声が聞こえたのだろう。おるいの背中で、目を覚ましたおゆいがきょとんと目を見開いている。
愛らしい小さな童女の姿を認めて、男は頬を緩ませた。
「可愛い子だ。そなたの子か?」
「……はい」
何しろ顔がそっくりなので、事情を知る者としては、どこからどう見ても父子にしか見えない。だが成之は子どもの顔立ちが自分に似ていることには気づかないようだった。この男にしてみれば、おるいと睦み合った記憶がないわけだから、目の前の幼子を己の子と思わないのは当然か。近所の子どもにするように、ごく自然な仕草でおゆいの頭に手が伸びる。忠雅が手を伸ばした時には大泣きした幼子は、父親の掌が頭に触れても泣き出さなかった。
「いい子だな。大事に育てられよ」
「はい。……飯野様もどうかお元気で」
背中の我が子と目の前の男を交互に見やって、おるいが微笑む。金色の光に照らされた笑顔は、煌めきながらも寂し気だった。
何せ元影衆と忍びの血を引く女なので、あまり近づくと勘付かれる恐れがある。少し離れた場所から見守っていたのだが、この時のおるいの表情を見て、忠雅は昔どこかで見た薬師如来像を思いだした。若い男女が二人、穏やかに語り合っているのに、慟哭が聞こえる。喉を掻き毟らんばかりの哀切が、忠雅が今いる場所にまで漂って来る。
唐突に悟る。今、目の前の光景は、心を通い合わせた男女の逢瀬ではない。これは別れの場面だ。――おるいは今、想う男に別れを告げる為にこの場所にやってきた。
忠雅がおるいの存在を知ったのは、三年前、陣屋の奥座敷に火がつけられた事件の後ことだった。雅勝から「何か気になるから素性を調べておいてくれ」と頼まれたのだ。忠雅としては「何が」気になるのかを教えて欲しいところだったのだが、さほどの手間でもないので素性を洗って雅勝に知らせた。
初めて顔を合わせたのは、端午の節句の日の厨でのこと。見た目があまりに友の好みにぴったりだったので、おい、気になるってまさかそっちの意味じゃないよな……と突っ込みたかったのだが、その時は本人が毒虫に刺されて死にかけていたので、問い正すことはできなかった。
その後、二人が正式な許嫁になった後には何度か会った。小動物じみた可愛らしい娘が垣間見せる艶やかな女の表情や、今を生きることすら危うかった幼馴染が真剣に先を望むようになった変化を間近で見て――ずっと放置してきた己の許嫁と真面目に向き合った結果、今、このような片恋に苦しむことになったわけだが。
忠雅とおるいの縁は、雅勝を仲立ちとしてたまたま結びついただけものに過ぎない。おるいが雅勝との縁を切る決意をしたのであれば、忠雅とおるいの関係もそこで終わる。
そのことをとても寂しいと感じて、忠雅は一瞬、その場に棒立ちになった。惚れてはいない。だがおるいもまた、忠雅にとってかけがえのない大切な女だった。男と女に男女の情を超えて繋がる縁もあるのだと、この年齢になって初めて知った。
吹く風に潮の香を感じる。木の枝が微かに揺れていて、どこかで雀が囀っていた。秋の陽射しはどこまでも清廉で、夏のように強烈に照り返しても来なければ、春のように柔らかでもない。
――人の縁は時に糸に例えられる。
縁も糸も、絡み合いもつれ合うほどに強く太くなり、人が断ち切りたいと望んでも容易に切ることができなくなる。違いがあるとすれば、糸が解けた後にも目に見える形で存在するのに対し、縁が解けた時には、存在そのものが消えてなくなるということだろうか。
三年前、結ばれた縁が今、解けて消えて行く。生まれ育った武家屋敷の並ぶ一角で、忠雅は確かに、一つの縁の終焉を見届けていた。
おるいとおゆいの母子が明野領を去ったのは、それから二日後のことだった。
忠雅は二人の護衛に、影衆になったばかりの十四歳の少年・行春を付けた。行春は十年前、高濱藩の城下で起こった大火で両親を失い、四歳という幼さで明野領にやってきた。さすがに本格的な影子にするには幼過ぎたので、しばらく雅勝が手もとに置いて面倒を見ていた。読み書き算盤はもちろん、箸の持ち方や布団の上げ下ろしから教えていたので、兄というよりほとんど親だったように思う。親のように慕っていた雅勝の妻子を守る御役目なのだとよくよく言い聞かせておいたから、道中に何があっても母子を守ってくれることだろう。
菊乃から三人が無事に出立したと報せを受けて、もうあの母子に会うことはないだろうと思った。会わない方がいい。おるいの生きる場所はあの取り残されたような山里だ。彼女たちの人生に君水藩明野領次席家老は必要ない。今後明野領で何が起ころうとも、おるいとおゆいには係わらない、係らせないと固く心に誓う。
その誓いは守られた。
この後、忠雅が元忍び里に赴くことも、おるいが明野領に足を踏み入れることもなく――忠雅がおるいと会うことは生涯なかった。
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