豊饒の儀(仮題)

新居もえ子/EMA

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4騎乗位から後背位・前(※)

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毎朝の日課を終え、ぐったりとして戻ってきた『僕』を寝室で待ち構えていたのは司祭たちだった。




「今日はどれにしましょうか」

司祭が視線だけでちらりと『僕』を窺い見る。

司祭の年の頃は三十代前半から半ば程。長身痩躯、色白で凡そ運動とは無縁のように見えるひょろりとした体格。
だが、その皺一つ、染み一つ無い簡素だが清潔感のある神官服の下には驚くほど鍛え上げられた、しなやかな筋肉を纏っている事を『僕』は知っている。その熱も。それは『僕』の体をいとも容易く抱き上げられる事からも明白だった。

瞳の色は青灰色ブルーグレーで髪は薄灰色、胸まであるさらさらのストレートロングヘアー。顔の造作は決して悪くない、と言うよりも美形と言って差し支えないだろう。

ただ、そう思わせないのは…何だろう。神に仕えるその職業柄なのか、それとも生真面目な性格故なのか、神官服の色や髪や目の色も関係しているのかもしれないが、何となく地味で暗いイメージを拭えなかった。

尤もそう見せているのは『僕』の前だけであって普段は穏やかで優しい表情を浮かべているのかもしれないが、生憎『僕』はそんな表情見た事が無い。


その司祭の目は今傍らに控えさせた女性神官の持つ角盆の上に向けられていた。
角盆の上には大小、色も形も様々な張り型が並んでいる。


「こんなのは如何ですか?」

先ず最初に司祭が手に取ったのは焦げ茶色で小豆大のぼつぼつの付いた、またそのせいで太さも一回り大きく見える悪趣味極まりない張り型だった。

冗談じゃない、と『僕』は必死で首を横に振る。

「冗談です」

ほっとした。が、それも束の間、「今日は少し動いてもらわなければなりませんからね」と司祭は不穏な言葉を吐くと、その隣にいる施術者へと同意を求めた。

「そうですね」

その二人の会話内容に『僕』は眉を潜める。
だが、次に司祭が選び取った割と細身でシンプルな造りの張り型を見て、あれ・・よりはましか…と、反論を控えた。




「さあ、今日は上で動く練習をしましょう」

寝台には全裸の『僕』の他にもう一人、体格の良い男神官が着衣のまま上げられた。

その男神官と向かい合うよう『僕』は彼の首に手を回し、膝立ち姿勢になる。
若干腰を突き出した恰好の『僕』の後腔には先程司祭が選び取ったあの張り型が埋め込まれていた。


「張り型はこちらでは動かしません。神子様がご自身で動いてください」

上向きに固定された張り型を男自身に見立ててその上で踊れ、そして達くまで許さないと司祭は言う。しかも衆人環視の中で、前には一切触れられずに―――イケる訳が無い。
馬鹿馬鹿しい!やっていられるか!と思うが、やらなければ終わらない。


後腔で張り型を咥え、余計に力が入らないのに時間が経つ毎に滲んだ汗で手が滑る。そして、滑るとどうなるか、その結果はダイレクトに自分の身に返ってくる。

体勢がきつく、手足がぶるぶると震えた。

「お願い、離さないで」

『僕』の懇願に男神官が「神子様、大丈夫です、きちんと持っていますから」と耳元で囁くと、うなじの毛がぞわりと逆立った。

その言葉通り、男神官の大きな掌は『僕』の側胸部を左右から支え持ってくれていた。まるで子どもの様に。今までこの体勢を保っていられたのはこの手の支えがあればこそだった。そうで無ければもうとっくに聳え立つ『物』の上に『僕』は腰を落としてしまっていた事だろう。


「そのままではいつまでたっても終わりませんよ?」

「…分かってる」―――黙れ。

いつまでたっても自発的に動こうとしない『僕』に痺れを切らしたのか「手伝って差し上げなさい」と司祭から指示が飛んだ。



くそ。


「楽になりますから、一度全て飲み込んでしまいましょう」と、再び男神官に耳元で囁かれた後、しがみついた彼の首の位置が徐々に下に下がっていく。
必然的に後腔は張り型を呑み込んでいき―――ずぶぅ…。

「うあっ!」

神酒ソーマで慣らされ、充血した媚肉を掻き分けながら張り型は奥へ奥へと進んでくる。
『僕』の口から思わずといった嬌声が漏れた。


「やあっ!ちょっと待って!動かないでっ!滑るっ!」

だが、『僕』の制止の声にも構わずに男神官は「大丈夫ですよ」と励ますように言いながらも下がるのを止めない。


「……(大丈夫)じゃないっ……っっ…あああぁっ!!」

凹凸の少ない、表面がつるりとした張り型の上にゆっくりと落とされる。

「やあっ!お願…ッ!!」

これ以上は、耐えられない。

「止めっ!!…ううんっ!!…は、うんっ!!」


ついに座り心地の悪い張り型の持ち手部分へと辿り着いた。張り詰めた嚢が誰かの指らしきものに触れる。

神酒ソーマの媚薬効果で強制的に感度の上げられた体。細筒内の軟肉は異物をきゅうきゅうと食い締め、歓びの声を上げていた。


内臓を押し上げるようにして『僕』の奥深い部分で張り型がその存在を主張する。
『僕』は犬のようにハッハッと息を荒げながら快感を逃がそうとするが、その呼吸が整う間も無く「上げろ」と司祭の無慈悲な指示が飛ぶ。
と、

ずぶずぶずぶぅ……ズンッ!


持ち上げられて、落とされる。
目の前に火花が散り、ひくりっと喉が鳴った。

…悦い、

気持ち良い。

認めてしまえ。


「さあ、今度はご自分で」と耳元で唆されて、『僕』はその甘い誘惑に抗えなかった。僅かに腰を上げた後、ゆっくりと腰を下ろす。


「…あ、ああッ…くっ!」

ざわざわと腰から背中、首筋、脳、四肢の先端へとじんわりとした快感が伝達神経を通り広がっていく。
男神官の首に縋るようにして再びゆっくりと腰を持ち上げた。
触れられてもいない乳首が固くつんと勃ち上がっている。

―――もっと欲しい!でも、駄目っ……!

と理性が叫ぶ。
こつんと硬い先端が最奥に当たった。

ごりっ。

「あっ、あ、はん、は、あんっ!」

奥の悦い場所に先端を当てたままぐるりと腰を回すと、ひくひくと内部が収縮した。それに連動するように内腿が痙攣を引き起こす。

もっと…、駄目…。理性と本能とが鬩ぎ合い、再び休んで快感を散らそうとすると強制的に引き上げられて、また落とされる。

ずるるぅっ……ズンッ!

「あぃっ!」

一気に張り型を呑み込み、目の前でちかちかと火花が散った。
ぶわりと体中の毛孔という毛孔から大量の汗が噴き出した。

 ・
 ・
 ・
 ・

うねる腰に視線が絡み付く。
だらしなく開いた口からは引っ切り無しに嬌声が零れ出て。だが、そんな事は最早お構いなしとばかりに『僕』は夢中になって腰を揺らめかす。

気持ち良い。
だが、駄目だ、これじゃイケない。

決定的に何かが足りなかった。その何かとは…。


「駄目…いけなっ!お願っ…前っ…前、触って…!」


理性をかなぐり捨てて、首を横に振りながら駄目だ、無理だ、と訴える。解こうとした手が再び元の位置に戻された。

男神官に体を擦り付けようと彼に抱き付こうとすると、「戻せ」と若干苛立った厳しい命令が司祭から飛んだ。
そして今度は逆に男神官から覆い被さられる形になって、ゆっくりと張り型の上に落とされる。

「…ッ…奥っ!」

「奥がよろしいのですか?」

くつりと司祭が哂った。


空気さえも桃色に染まりそうな濃密な交戯。思わず耳を塞ぎたくなるような卑猥な水音。そして、まるで女のような甘ったれた鼻声が空気を彩る。
一瞬、頭の中に桃源郷の光景が広がる。
噎せ返るような花の香りがした。



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