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ぬこぬこ麻呂ロン@劉竜

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第3章皇国編

第六部・対機械魔導連邦 2話

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 グレン東門には、正規兵である衛兵やグレン駐屯隊。そして清鳳団の面々のほかに、リオとアリシア同様、後方支援に回された冒険者たちとおぼしき16名と、義勇兵らしき一般市民110名余りの姿があった。
 彼らは忙しなく周囲を駆け回っており、辺り一帯には重苦しい緊張感が流れていた。
 そんな彼らから一歩引くような位置で佇んでいたのが、リオ達が所属する義勇兵こと後方支援部隊。主に前衛である将兵への食糧や武器の作成・給与を主任務とする部隊だ。グレン駐屯隊の予備隊と共に作業を行う彼らは、戦況次第では前線へ出る可能性をはらんだ準予備隊という側面も持ち合わせている。
「おう、ボウズ達も志願したのか」
「ルドルフさん」
 リオに声をかけてきたのは、その昔、グレン北側に広がる森で魔人と戦闘となった際に共闘した冒険者の一人・ルドルフだった。彼の脇には、彼と共に戦闘に巻き込まれた二人もいる。実はリオは、グレンでの一件のあと「大鷲の翼」主催で彼らと親睦会を通して知り合っていたりする。
「しかし、噂に聞いてはいたが、本当にグレンにいたんだな」
「ルドルフさんも」
 こんな状況下である。というのも冒険者は本来、国に縛られる立場ではないからだ。国から出される依頼はあくまでも「協力依頼」であり、例え彼らがここから早急に立ち去ったとしても咎められる謂れはない。
「ところで、噂って?」
 しかしリオには、それ以上に気になることがあった。ルドルフの口にした「噂」についてだ。するとルドルフはわずかに驚いた表情を浮かべながら、噂の概要を口にする。
「知らないのか? ボウズとそこの嬢ちゃ……じゃない、王女様がアツアツだっていう、まことしやかな噂だよ」
「アツアツ? まことしやか?」
 リオは聞き慣れない単語に首を傾げる。しかし、意味が分からなくともその言葉たちが表す状況が思い浮かんだのか、直後に引きつった表情を浮かべた。
「しかし、噂は本当だったらしいなぁ。お前らもそう思うだろ?」
 ルドルフが左右に控える仲間に同意を求めると、彼らは揃って首を縦に振る。その光景にリオは首を傾げると。
「あ」
 アリシアの手を握ったままだということを思い出した。これでは噂のようにカップルのように見られてもおかしくはない。そのことに気づいたリオが慌てて手を離す。
「別にそんなんじゃないから」
 慌てて握っていた手を離す。その行動が余計にルドルフ達からは恋人同士に見えたようで、結果としてルドルフに余計な一言を口走らせてしまった。
「恥ずかしがんなって。オレも十年くらい前にそういう経験を――」
「うるさいっ!」
 直後、ぽんぽんとリオの肩を叩くルドルフの鳩尾へと、耳まで赤く染まったリオの拳が炸裂したのだった。

「リオ様、酷いですわ」
 アリシアに責められたリオの顔がそっぽを向く。そんな彼の足元にはぴくぴくと痙攣するルドルフの体が横たわっていた。原因はリオの拳がルドルフの鳩尾へ入ったからである。非難する言葉をかけている以上、さすがに今回ばかりは、リオ最優先のアリシアをもってしても看過できる状況ではなかったようだ。
「私はいつでもそういう関係になれるよう準備してますのに」
 ――いや、どうやらアリシアにはルドルフを心配する気はないらしい。
「そういう問題なのか?」
「論点ずれてないか?」
 アリシアへとルドルフの仲間たちから疑問が投げかけられる。だがアリシアの耳には届いていないききながされたようで、アリシアが当たり前のようにリオの左手を握る。
「噂であれば真実にしてしまいましょう。あとはリオ様の気持ちだけですわ」
「いや、迷惑なんだけど」
「釣れませんわね。では」
 手をつなぐだけでは無駄だと分かると、今度はリオの腕に抱き着くアリシア。
「さあ、リオ様」
「釣られることはないし、早く離れて」
「……早すぎませんこと?」
 しかし、あまりにも早すぎるリオの拒絶に思わずぽかんとする。むしろリオからすれば日常茶飯事と言うべき出来事だったため、今回の言動も脊髄反射からくるものであった。しかし、アリシアはリオの顔を見てふっと笑みを零した。
「ですが、収穫はありましたわ」
「意味わかんないんだけど」
 アリシアの言葉の意味を掴みかねたリオが首を傾げる。対するアリシアは「ご自分のお顔に訊ねてください」と、笑顔で言う。
 結局、彼女が得た収穫とは何だったのか? 首をひねらせるリオがそれを理解するまでの道のりは遠い。
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