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第1章ミスト編
第三部・新たな家族 1話
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ミリーが過去を語った翌日。ジン達と共に宿に泊まったリオは叔母の経営する宿屋へと向かっていた。
ギルドから歩くこと数分。この世界における一般的な建築様式で建てられた、二階建ての家屋の前に辿り着く。建物に備え付けられた窓からは、遅めの朝食をとる人影が見えていた。
道案内をしていたギルドの職員がリオの方を向いた。
「こちらがティアナさんの経営する宿屋です」
そう言い、職員は宿屋の中へ姿を消す。
ふぐおの背に乗っていたリオは、慌てて背中から降り、建物の中へと入る。
扉の開く音と同時に、従業員らしき青みがかった黒髪をもつ、見た目十五歳ほどの女性の明るい声が響く。
「いらっしゃいませー、何名様・・・」
女性がリオを見て硬直する。と、次の瞬間。カウンター脇の扉を吹き飛ばすような勢いで蹴り飛ばし、職員の背後にいるリオを抱きしめた。
突然の騒音に静まり返るロビー。朝食をとっていた人々も、女性の方を見てその動きを止めていた。
「リオ君、無事だったのね!叔母さん、心配してたのよ!」
女性が感極まって涙を零す。
「・・・えっと、ティアナ叔母さん?」
「ええ、あなたのお母さんの妹のティアナよ」
女性――ティアナはリオの肩を抱きながら自己紹介をする。実は、彼らが会うのは二回目なのだが、リオがまだ物心つく前だったため、リオには初対面同然だった。
ティアナはリオから離れると軽く佇まいを正し、口を開いた。
「よかったわ、ユリアナ村が魔物に襲われたって聞いて・・・お姉ちゃん――リオ君のお母さんは無事なの?」
既にユリアナ村も魔物に襲われた情報は出回っているのだろう。ティアナが姉・ミサトの安否を確認する。
リオはティアナの問いに静かに首を振る。
「そう・・・ごめんね、辛いこと聞いて。―それで、今日は何の御用でしょうか、職員さん」
ティアナがリオの傍らに立つギルドの職員に視線を移す。
「実は――」
職員が簡単に事情を説明する。今は建物の外で待機しているが、シャドウベアのふぐおと共にユリアナ村から脱出したこと。五人組の冒険者に保護され、町まで来たこと。叔母を探すように伝えられたことなどを職員が話した。
「そうですか。ちなみに、その冒険者さんたちはどこに?お礼がしたいのですが・・・」
「彼ら「大鷲の翼」の方々は今日も生存者を探しに南の街道を探索されています。帰ってくるのは、おそらく夕方かと。・・・ギルドに顔を出したらここに来るように伝えておきましょうか?」
「ええ、お願いします」
話を聞いたティアナは、職員の提案を受け入れる。そうしてリオの方に向き直り――
「じゃあ、リオ君と一緒に来た子に会わせてくれる?」
五人組の冒険者パーティー「大鷲の翼」。リオを保護したジン達のパーティーである。
一人目は深紅のような赤い髪に、同じように深紅の鎧を身に纏う、パーティーリーダーのジン。
若くして実力を見せつけた彼は、《俊閃の女王》の運営する暗殺者育成機関の調査や教え子たちの救出をするなど、数多くの功績を持つ。
多くの冒険者が引退し始める三十代後半に差し掛かりつつある彼だが、今でもその経験値と実力でエストラーダ皇国で上位に入る冒険者である。
二人目はジンが機関から助け出した、翡翠色の目と髪を持つ女性のミリー。
幼少期、過酷な人生を歩みながらもミサトやジンのお陰で過酷な過去を感じさせない明るさを持つ。
ジンへの信頼度は最も高く、尊敬の対象。ジンだけに対し時折無茶をするが、深い信頼関係が為せる技でもある。
三人目は他国で仲間となったフルフェイスタイプの兜に、それによく合う重厚な鎧をした男性のオーガス。
その体躯に似合わず知能派であり、ジンと共に作戦や行動の立案を行っている。
四人目はエレナ。リオの伯母にあたる女性であり、十二歳の時に四つ下の妹・ミサトと離れ離れになった。
その後ある魔導士の元で魔法を学んでいたが、ジンに見初められ仲間になった、パーティー唯一の魔法使いである。
五人目は普段から適当な言動が目立つ男性・アッガス。
パーティー内のムードメーカーでもあるが、その実力はジンと並んで皇国上位の冒険者である。
間違いなく皇国内でもトップを争う実力を誇る「大鷲の翼」の面々は、昨日と同じようにローシェンナ、ユリアナ村での生存者の捜索を行っていた。
「・・・おーい、本当にまだ生きてる奴なんていんのかよ?」
スキンヘッドの上に銀髪のモヒカンが乗った男性――アッガスが愚痴る。
すでに太陽は朝と昼の境近くまで達し、弱まることのない日差しを彼らに降り注がせている。
「縁起でもないことを言うな。俺たちは希望を持って探すべきだろう」
フルフェイスタイプの兜の男性――オーガスが、バイザー部分を上げながらたしなめる。さすがに空気の流れが悪い彼の兜では、熱が籠ってしまうらしく、その額には多数の汗が滲んでいた。
「そうだよ。もしかしたらリオっちみたいに一人で森を彷徨ってるかもよ?」
「・・・リオ君みたいに生き残れるのは少数でしょうけどね」
女性陣二人がそれぞれ言葉を口にする。
ローシェンナ村が魔物に襲われたという情報が入ってから間もなく一週間。ローシェンナ村が襲われてからはすでに十日が経とうとしていた。
ユリアナ村が魔物に襲われたのはつい昨日のことである。
「お前ら、無駄口を叩いてる暇があったら周囲を見回せ。音にも気を配れ」
赤毛の男性――ジンが注意する。
人が災害に遭ったとき。無人島などでサバイバルをすることになったとき等に、注意しなければならないことがある。
それは「三分間呼吸ができないこと」「三日間水分を摂れないこと」「三週間食事を摂れないこと」の三つである。
このどれかのラインを超えると、生存率はほぼゼロ%と言われている。
(グルセリア老が言っていたことが事実なら生存者は数えるほどしかいないはず。こんな広大な土地の中から探すなんてほぼ不可能だな・・・)
周囲に広がる草原と森林を見ながら、ユリアナ村の生き残りである老人・グルセリアの言葉を思い出すジン。
「わしらの住んでいた村の人口は六十人程度じゃ。その中で生死が分からんものは多くても五人ほどじゃ」
その言葉は長年ユリアナ村に住んでいた老人が、生き残った村人たちの証言や実際に見た光景をまとめた結果だった。
ジンはその言葉を思い出しながら胸中でうなる。
と、そこに――
「おい、ジン!あそこに誰か倒れてるぞ!」
オーガスが叫んだ。
その叫びにつられ、彼が見ていた方向を見るジン。
そこには、血まみれの服を着た一人の男性がいた。
場所と時間が戻り、ミストの宿屋。
その屋外に、リオと共にミストへとやってきたふぐおの姿があった。
「フグウ」
宿屋から出てきたリオ達を見て、不満そうに一鳴きするふぐお。二日連続で屋外に置いてけぼりにされたことが不満なようだった。
――シャドウベアの巨体ゆえに、そもそも屋内に入れないのだが。
「この子がシャドウベア?ずいぶん大きいのね」
リオと共に宿屋を出てきた黒髪の女性・ティアナが三メートルある巨体を前に呟く。普通ならば物怖じしてしまいそうなふぐおの巨体だが、彼女には関係ないようだった。
まじまじと眺めてくるティアナに対し、気まずそうにするふぐお。
「フグオ」
そんなふぐおだったが、どこかで嗅いだ懐かしい匂いがしたのか。急に立ち上がると、頭部だけでリオの身長近くある頭部を甘えるようにティアナに擦り付け始めた。
ふぐおの行動を見た職員が驚きの表情を浮かべる。
当のふぐおに頭部を擦り付けられているティアナは、くすぐったいが、気を抜けば押し倒される勢いに何とか耐えていた。
「ふぐお、お母さんじゃないからもっと優しくしないとだめだよ」
昨日、同じ光景を見たことのあるリオがふぐおを諭す。リオの母親のミサトは、冒険者時代に鍛えた体で受け止めていたが、ふぐおの擦り付けは体を突き飛ばされるのと変わらない威力があったりする。
「フグ」
ふぐおは一声鳴くと、先ほどよりも弱い力で頭を擦り付ける。
「・・・これでも弱くなった方なのね・・・」
ティアナが苦悶に満ちた声をあげる。勢いが弱くなったとはいえ、押し倒されそうなことには変わりなかったようだった。
やがて満足したのか、ふぐおはティアナから離れ、リオに頭を擦り付ける。
「ふぐお、くすぐったいよ」
リオはそう言い、平然とした表情で受け流す。――それを見た二人が、唖然としたことは言うまでもないだろう。ちなみに、ティアナに対して初めにしていた擦り付けと勢いはさほどは変わらない。
しばらくし満足したふぐおは、リオから離れ、ちょこんと座る。その行動は非常に愛らしいのだが――
「ふぐお、座ると迷惑だから。ほら、立って」
見事に向かいの建物との幅を半分以上埋めてしまい、偶然にも道を通りかかった町人が驚いた表情を浮かべる。
流石にリオに立つように促されるのだが――
「フグウ」
顔をそっぽに向け、聞く意思がないことをアピールする。
リオは困った表情を浮かべ、ふぐおと繋がった魔力のパスを使って強制的に立たせようか考える。
「ふぐおちゃん、そんなところで座り込んだら邪魔になるわ。だから、ね?」
ティアナがふぐおに声をかける。すると、ふぐおは素直に立ち上がった。
頑として聞き入れないふぐおを動かしたのは、ティアナの言葉だったのである。
「いい子ね。ちゃんとリオ君の言うことは聞かないとだめよ?」
ティアナが立ち上がったふぐおを諭す。するとふぐおは頷き、リオの方を向き――
「フグ」
一声鳴いて頭を下げる。ふぐおなりの謝罪なのだろう。
そんなふぐおの姿を見たリオは頭を下げたままのふぐおの頭を優しく撫で始まる。
「フグウゥゥゥ・・・」
気持ちよさそうな鳴き声と共に目を細めるふぐお。はたから見ても、ご満悦なのはよく分かった。
そんなふぐおの様子を見たティアナがリオの方を向き、口を開いた。
「さて、ふぐおちゃんにお礼もできたことだし・・・リオ君、しばらくうちで暮らさない?」
ギルドから歩くこと数分。この世界における一般的な建築様式で建てられた、二階建ての家屋の前に辿り着く。建物に備え付けられた窓からは、遅めの朝食をとる人影が見えていた。
道案内をしていたギルドの職員がリオの方を向いた。
「こちらがティアナさんの経営する宿屋です」
そう言い、職員は宿屋の中へ姿を消す。
ふぐおの背に乗っていたリオは、慌てて背中から降り、建物の中へと入る。
扉の開く音と同時に、従業員らしき青みがかった黒髪をもつ、見た目十五歳ほどの女性の明るい声が響く。
「いらっしゃいませー、何名様・・・」
女性がリオを見て硬直する。と、次の瞬間。カウンター脇の扉を吹き飛ばすような勢いで蹴り飛ばし、職員の背後にいるリオを抱きしめた。
突然の騒音に静まり返るロビー。朝食をとっていた人々も、女性の方を見てその動きを止めていた。
「リオ君、無事だったのね!叔母さん、心配してたのよ!」
女性が感極まって涙を零す。
「・・・えっと、ティアナ叔母さん?」
「ええ、あなたのお母さんの妹のティアナよ」
女性――ティアナはリオの肩を抱きながら自己紹介をする。実は、彼らが会うのは二回目なのだが、リオがまだ物心つく前だったため、リオには初対面同然だった。
ティアナはリオから離れると軽く佇まいを正し、口を開いた。
「よかったわ、ユリアナ村が魔物に襲われたって聞いて・・・お姉ちゃん――リオ君のお母さんは無事なの?」
既にユリアナ村も魔物に襲われた情報は出回っているのだろう。ティアナが姉・ミサトの安否を確認する。
リオはティアナの問いに静かに首を振る。
「そう・・・ごめんね、辛いこと聞いて。―それで、今日は何の御用でしょうか、職員さん」
ティアナがリオの傍らに立つギルドの職員に視線を移す。
「実は――」
職員が簡単に事情を説明する。今は建物の外で待機しているが、シャドウベアのふぐおと共にユリアナ村から脱出したこと。五人組の冒険者に保護され、町まで来たこと。叔母を探すように伝えられたことなどを職員が話した。
「そうですか。ちなみに、その冒険者さんたちはどこに?お礼がしたいのですが・・・」
「彼ら「大鷲の翼」の方々は今日も生存者を探しに南の街道を探索されています。帰ってくるのは、おそらく夕方かと。・・・ギルドに顔を出したらここに来るように伝えておきましょうか?」
「ええ、お願いします」
話を聞いたティアナは、職員の提案を受け入れる。そうしてリオの方に向き直り――
「じゃあ、リオ君と一緒に来た子に会わせてくれる?」
五人組の冒険者パーティー「大鷲の翼」。リオを保護したジン達のパーティーである。
一人目は深紅のような赤い髪に、同じように深紅の鎧を身に纏う、パーティーリーダーのジン。
若くして実力を見せつけた彼は、《俊閃の女王》の運営する暗殺者育成機関の調査や教え子たちの救出をするなど、数多くの功績を持つ。
多くの冒険者が引退し始める三十代後半に差し掛かりつつある彼だが、今でもその経験値と実力でエストラーダ皇国で上位に入る冒険者である。
二人目はジンが機関から助け出した、翡翠色の目と髪を持つ女性のミリー。
幼少期、過酷な人生を歩みながらもミサトやジンのお陰で過酷な過去を感じさせない明るさを持つ。
ジンへの信頼度は最も高く、尊敬の対象。ジンだけに対し時折無茶をするが、深い信頼関係が為せる技でもある。
三人目は他国で仲間となったフルフェイスタイプの兜に、それによく合う重厚な鎧をした男性のオーガス。
その体躯に似合わず知能派であり、ジンと共に作戦や行動の立案を行っている。
四人目はエレナ。リオの伯母にあたる女性であり、十二歳の時に四つ下の妹・ミサトと離れ離れになった。
その後ある魔導士の元で魔法を学んでいたが、ジンに見初められ仲間になった、パーティー唯一の魔法使いである。
五人目は普段から適当な言動が目立つ男性・アッガス。
パーティー内のムードメーカーでもあるが、その実力はジンと並んで皇国上位の冒険者である。
間違いなく皇国内でもトップを争う実力を誇る「大鷲の翼」の面々は、昨日と同じようにローシェンナ、ユリアナ村での生存者の捜索を行っていた。
「・・・おーい、本当にまだ生きてる奴なんていんのかよ?」
スキンヘッドの上に銀髪のモヒカンが乗った男性――アッガスが愚痴る。
すでに太陽は朝と昼の境近くまで達し、弱まることのない日差しを彼らに降り注がせている。
「縁起でもないことを言うな。俺たちは希望を持って探すべきだろう」
フルフェイスタイプの兜の男性――オーガスが、バイザー部分を上げながらたしなめる。さすがに空気の流れが悪い彼の兜では、熱が籠ってしまうらしく、その額には多数の汗が滲んでいた。
「そうだよ。もしかしたらリオっちみたいに一人で森を彷徨ってるかもよ?」
「・・・リオ君みたいに生き残れるのは少数でしょうけどね」
女性陣二人がそれぞれ言葉を口にする。
ローシェンナ村が魔物に襲われたという情報が入ってから間もなく一週間。ローシェンナ村が襲われてからはすでに十日が経とうとしていた。
ユリアナ村が魔物に襲われたのはつい昨日のことである。
「お前ら、無駄口を叩いてる暇があったら周囲を見回せ。音にも気を配れ」
赤毛の男性――ジンが注意する。
人が災害に遭ったとき。無人島などでサバイバルをすることになったとき等に、注意しなければならないことがある。
それは「三分間呼吸ができないこと」「三日間水分を摂れないこと」「三週間食事を摂れないこと」の三つである。
このどれかのラインを超えると、生存率はほぼゼロ%と言われている。
(グルセリア老が言っていたことが事実なら生存者は数えるほどしかいないはず。こんな広大な土地の中から探すなんてほぼ不可能だな・・・)
周囲に広がる草原と森林を見ながら、ユリアナ村の生き残りである老人・グルセリアの言葉を思い出すジン。
「わしらの住んでいた村の人口は六十人程度じゃ。その中で生死が分からんものは多くても五人ほどじゃ」
その言葉は長年ユリアナ村に住んでいた老人が、生き残った村人たちの証言や実際に見た光景をまとめた結果だった。
ジンはその言葉を思い出しながら胸中でうなる。
と、そこに――
「おい、ジン!あそこに誰か倒れてるぞ!」
オーガスが叫んだ。
その叫びにつられ、彼が見ていた方向を見るジン。
そこには、血まみれの服を着た一人の男性がいた。
場所と時間が戻り、ミストの宿屋。
その屋外に、リオと共にミストへとやってきたふぐおの姿があった。
「フグウ」
宿屋から出てきたリオ達を見て、不満そうに一鳴きするふぐお。二日連続で屋外に置いてけぼりにされたことが不満なようだった。
――シャドウベアの巨体ゆえに、そもそも屋内に入れないのだが。
「この子がシャドウベア?ずいぶん大きいのね」
リオと共に宿屋を出てきた黒髪の女性・ティアナが三メートルある巨体を前に呟く。普通ならば物怖じしてしまいそうなふぐおの巨体だが、彼女には関係ないようだった。
まじまじと眺めてくるティアナに対し、気まずそうにするふぐお。
「フグオ」
そんなふぐおだったが、どこかで嗅いだ懐かしい匂いがしたのか。急に立ち上がると、頭部だけでリオの身長近くある頭部を甘えるようにティアナに擦り付け始めた。
ふぐおの行動を見た職員が驚きの表情を浮かべる。
当のふぐおに頭部を擦り付けられているティアナは、くすぐったいが、気を抜けば押し倒される勢いに何とか耐えていた。
「ふぐお、お母さんじゃないからもっと優しくしないとだめだよ」
昨日、同じ光景を見たことのあるリオがふぐおを諭す。リオの母親のミサトは、冒険者時代に鍛えた体で受け止めていたが、ふぐおの擦り付けは体を突き飛ばされるのと変わらない威力があったりする。
「フグ」
ふぐおは一声鳴くと、先ほどよりも弱い力で頭を擦り付ける。
「・・・これでも弱くなった方なのね・・・」
ティアナが苦悶に満ちた声をあげる。勢いが弱くなったとはいえ、押し倒されそうなことには変わりなかったようだった。
やがて満足したのか、ふぐおはティアナから離れ、リオに頭を擦り付ける。
「ふぐお、くすぐったいよ」
リオはそう言い、平然とした表情で受け流す。――それを見た二人が、唖然としたことは言うまでもないだろう。ちなみに、ティアナに対して初めにしていた擦り付けと勢いはさほどは変わらない。
しばらくし満足したふぐおは、リオから離れ、ちょこんと座る。その行動は非常に愛らしいのだが――
「ふぐお、座ると迷惑だから。ほら、立って」
見事に向かいの建物との幅を半分以上埋めてしまい、偶然にも道を通りかかった町人が驚いた表情を浮かべる。
流石にリオに立つように促されるのだが――
「フグウ」
顔をそっぽに向け、聞く意思がないことをアピールする。
リオは困った表情を浮かべ、ふぐおと繋がった魔力のパスを使って強制的に立たせようか考える。
「ふぐおちゃん、そんなところで座り込んだら邪魔になるわ。だから、ね?」
ティアナがふぐおに声をかける。すると、ふぐおは素直に立ち上がった。
頑として聞き入れないふぐおを動かしたのは、ティアナの言葉だったのである。
「いい子ね。ちゃんとリオ君の言うことは聞かないとだめよ?」
ティアナが立ち上がったふぐおを諭す。するとふぐおは頷き、リオの方を向き――
「フグ」
一声鳴いて頭を下げる。ふぐおなりの謝罪なのだろう。
そんなふぐおの姿を見たリオは頭を下げたままのふぐおの頭を優しく撫で始まる。
「フグウゥゥゥ・・・」
気持ちよさそうな鳴き声と共に目を細めるふぐお。はたから見ても、ご満悦なのはよく分かった。
そんなふぐおの様子を見たティアナがリオの方を向き、口を開いた。
「さて、ふぐおちゃんにお礼もできたことだし・・・リオ君、しばらくうちで暮らさない?」
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