My Diary

ぬこぬこ麻呂ロン@劉竜

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後日談の後日談

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 高校卒業から10年後。
 俺は祖父の住んでいた自宅へ、みやこと共に訪れていた。
 数年ぶりに訪れた祖父の居た家は既にがらんどうであり、なんとも言えない寂しさを感じてしまう。

あらた君、これはー?」

 祖父の部屋から出てきたみやこが箱を手にしながら俺に尋ねてくる。

「そっちの部屋に置いといてくれ。・・・ひかり、遊ぶなら帰ってくれ」

 みやこに運ぶ先を指定しながら、隣で俺にくっついてきた光を注意する。

「えー、いいじゃん、たまには。数年ぶりに兄妹が揃ったんだよ?」

 そう口にしながら、俺の右腕にくっついてくる光。

「仮にも嫁のいる男にほいほいくっつくな。みやこだからいいけど、他の人だったら黙ってないぞ?」

「そうだよ~、光ちゃん。私なら社会的に潰すからね~」

幸子ゆきこさんは発言が黒すぎます」

「そうかな~?」

「そうです。ていうか、2人とも作業してください」

 幸子さんの発した言葉にツッコみながら、俺はさぼっている2人に告げる。

「遺品整理なんですから、さっさとしてください」

 俺の祖父・此花翔このはなかけるは、つい先日亡くなったばかりだった。
 葬儀諸々を終え、こうして遺品整理のために祖父の家を訪れていた俺たちは、約2名のせいで遅々として進まない遺品整理の時間を送っていたのだった。
 俺の台詞を聞いて、光と幸子さんが不満そうな表情を浮かべる。

「あらちん、結婚してから冷たすぎ~」

「お兄ちゃん、結婚してから冷たすぎー」

 高校卒業から3年。卒業前後からなんだかんだと一緒に居る時間の多かったみやこから告白されたのがその年だった。
 正直、付き合うとかよく分からなかった俺だったが、なんとなく「みやことならいいかもしれない」と思った為、了承した。
 その結果、現在では結婚から丸3年を過ぎ、みやこの胎内には新しい命が宿っているという状態だった。

「妊婦や障害者に働かせてる人間が言わないでください」

 俺の一言に、にべもなく沈む2人。

「あらちん、みやこちゃん一筋だね~」

「いや、仮にもまだ新婚・・・って呼べないですね」

「あらちん、自爆~」

 俺の台詞に笑いながら答える幸子さん。
 そうしてひとしきり笑い終えると、思い出したかのように祖父の遺品整理を始める。
 俺をからかう所はいつまで経っても変わりそうにないな――
 数年ぶりに会った幸子さんの言動からそう考えた俺は、近場にあった箱を開ける。

「これ・・・アルバムか?」

 箱の中にあった、何冊ものアルバム。
 もともと、両親祖父母揃ってあまり写真を撮る方ではなかった。それこそ、あっても1冊程度にまとまる程度の量しか残っていないはずだった。
 だが目の前にあったのは、その何倍もの写真が納められたアルバム。
 いつの間にこれだけの写真を撮ったのだろう、と俺が興味本位で開いてみた、その時。

(え・・・)

 アルバムの中に映っていた、自分の写真に思わず驚愕してしまう。
 その内容に、思わず「何かの見間違いだろう」と、そのままアルバムをめくる。

(見間違い・・・じゃない?)

 数ページ見て俺の脳裏に浮かんだのがそれだった。
 写真には確かに高校時代の俺が映っていた。だが、その傍らかたわらを固めていたのは、半数以上が俺の知らない人間だった。
 その内容に薄気味悪くなり、すぐに元の箱の中へと戻す。

「新君、これって――て、どうしたの、その箱」

 すると、祖父の部屋で作業をしていたみやこが顔を出し、俺の傍らにあった箱に興味を示した。

「え、これ、みやこが持ってきたんじゃないのか?」

「いや、新君でしょ?私、そんな薄汚れた箱は見つけてないもの」

 みやこの言葉に、思わずそばの箱を見る。

「どうしたの?まさか、私を裏切るようなものなの?」

「いや、それは無い!なんなら確認――あ、いや、やめたほうがいいかもしれない」

 俺の行動を不審に思ったのだろう、みやこが俺を怪しむ視線を向ける。
 だが、俺としてはこんな薄気味悪い物をみやこに見せるのは気が引けた。だからこそ「やめたほうがいい」と口にしたのだが、みやこにはそれが言い訳に聞こえたらしく。

「じゃ、見るから。言い訳は無しにしてよ」

 怒り心頭といった様子で、俺のそばにあった箱を開けた。

「なにこれ、アルバム?」

 箱を開けたみやこが呟く。そうしてみやこが読み進めていると――

「あ、なにこれ」

 あるページを開いた途端、一枚の紙切れが床へと落ちた。
 その内容を見て、息を飲むみやこ。

「なんだ、どうしたんだ?」

 俺がその反応が気になってみやこに尋ねると、彼女から紙切れを手渡された。

「・・・・・・」

 その内容を呼んだ俺も、みやこと同様に息を飲む。

「明日、墓参りに行こう」

 紙に書かれた内容を共有した俺がそう口にしたのは、間もなくのことだった。



 その翌日。
 みやこと2人で祖父母の眠る墓へとやってきた俺たちは、つい先日整備したばかりの墓標に向かって手を合わせていた。

「終わった?」

「ああ」

 墓参りを終えた俺たちは、もう一度祖父の眠る墓を見る。
 蒸し暑い、夏の津山。
 響いてくるのはじーじーと鳴く蝉の声。そして、ごうごうと渓流を下る水の音。
 それらが一度に聞こえる山の中で、俺たちは自分たちを導いてくれた人物に労いの言葉を賭けた。
 ただ一言「お疲れ様」と。
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