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1月4日
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1月4日。とうとうと言うべきかなんというべきか、俺を非常に複雑な心情にさせる日がやってきてしまった。
昨夜みやことの別れ際にあった出来事が頭を離れなかった俺は、結局まともに睡眠を取ることが出来ず朝を迎えていた。
昨日みやこを自宅まで送ったせいか、はたまた今日がある意味運命の日だからか。どちらかはともかく、祖父の家にみやこの姿だけが無く、その代わりというか、家主だから当たり前というべきか、祖父の姿だけが居間にあった。
「あれ?じいちゃん、今日はみやこいないの?」
珍しく家にみやこの姿が無いせいか、違和感を覚えた俺は祖父に尋ねる。すると祖父からは「自宅の方が忙しいんじゃと」という答えを貰う。
その答えを貰い「三が日を過ぎたのに?」という考えが脳内をよぎる。だがよく考えれば、今日が例の日であることを考えれば別に普通な行動だろう。
そうして食卓に着いた俺は、祖父の作った朝食であるトーストを口に運んでいく。
なお、今更ではあるが、祖父は決して料理が上手い人間ではない。なぜなら俺が口にしたトーストは半分以上が明らかに焦げているからだ。――ただ、普通なら「関係ないだろう」と思うだろう。だが「半分焦げている状態ですらかなりマシになった」と考えれば相当な進歩だ。まあ、そのせいもあって祖父の趣味に「冷凍食品を集める」という趣味が増えたのだが。
(うへ、やっぱり焦げてるところは苦い。・・・まあ、食べれない程じゃないが)
一斤を6等分された食パンの体積の内、半分が焦げた――もとい、灰同然になっていそうなトーストを食べながら背筋に寒気を覚える。
(・・・ちゃんと焦がさずに焼けてるところは美味いんだけどな・・・)
やがて、配置がよかったのか絶妙な加減で焼かれたゾーンへと到達すると、まさにほっぺたがとろけ落ちそうな錯覚を覚える。
その味は、食レポで言えば「バターの豊潤な香りと食パン本来の風味が合わさり、そこに程よいカリっと感が加わっておかずとしても頂けそうな一品」といったところだろう。――祖父の焼いたトーストはムラが酷すぎることを除けば、一流のシェフが作る料理にも劣らないレベルだと思っている。
「新、今日はどうするんじゃ?」
すると、いつの間にか無我夢中でトーストを口に運んでいた俺に対して祖父が尋ねてくる。
「――ん。・・・午前中は家に居る。午後は・・・とりあえず麓くらいまで出てみようかなって思ってる」
口の中一杯に含んでいたトーストを飲み込み、今日の予定を伝える。すると祖父は、わずかに眉間に皺を寄せたかと思うと、何も言わずに空になった皿達を片付け始める。
祖父と孫。片づけをする側がどちらだとしてもなんらおかしいとは思えないその光景。だが俺は、そんな中「祖父が隠すように浮かべていた表情」に疑念を抱いてしまう。
(じいちゃんはもしかして何かを知ってる?)
俺がそう思ってしまう原因は、今となっては確認しようにも時間が足りないが、いくつかそれらしいものがあった。
まず一つはみやこに告げられた、俺がみやこを庇って命を落とすという未来の出来事だ。
そして二つ目は神社で引いたおみくじ。
普通に考えて2回連続どころか3階連続全く同じ内容を引いてしまった以上、対外的には俺のことはよほどの幸運――マイナス方面を引き続けるならいらない――を持つ人間と解釈するだろう。
そのため、祖父は俺に「自分の身を守る努力をしろ」と言っている気がしたのだ。
そして俺がそう思った最後の原因は、時折見せていた祖父の言動だった。
場に似合わない表情や何かをけしかけるような発言――そのすべてが、今になって俺の不安を煽る要因になっていたのだ。
(でも、そうだとしたらなんでじいちゃんは今まで特に何もしてこなかったんだろう)
孫が死ぬ。・・・しかも、わずか16歳で。
俺が祖父の立場なら間違いなくどうにか出来ないかと考えるような状況だ。なのに祖父はこれといって何かをしている様子がない。――いや、俺が知らないところで根回しをしているのか・・・?
「そうか、そういうことならわしはちょっと出てこようかのう」
「どこ行くの?」
「何、ちょっと昔の友人との野暮用じゃ」
どこに行くのか尋ねた俺に対して「野暮用」と口にする祖父。というか、友人と会うのに野暮用って・・・
(少しだけ気になるけど、下手に外に出て死んだりしたらみやこに合わせる顔もないしな、家で大人しくしていよう)
祖父の向かう先に興味があったが、みやことの約束を思い出した俺は祖父の家で大人しくしていることに決めたのだった。
その日の午後。今の今まで年末に購入した漫画とラノベを読んでいた俺は、玄関の戸が開く音に頭を上げた。
「お邪魔しまーす」
玄関から少女の声が響いてくる。時間的にはおそらくみやこのものだろう、なんせもう少しで12時になるんだから。
床の軋んだ音で、玄関から居間へとみやこが上がってきたことを確認した俺は、借り受けている部屋から顔を出す。
「あら、新君。おじいさんは?」
「じいちゃんなら出掛けてる。いつ帰るかは言ってなかったけど、もうすぐお昼だし、時期に帰ってくると思う」
祖父が居ないと聞いて、少し困った表情を浮かべるみやこ。
「そう。・・・そうだ、新君。この後、麓のスーパーで買い物をしようと思うんだけど、一緒に来てくれる?」
「構わないが・・・最大限に注意していかないと」
「・・・昨日言ってたこと?確かに不安要素ではあるけど、あまり気にしすぎるのも・・・」
俺の台詞を聞いて苦い表情を浮かべるみやこ。だが俺たちは、残念ながらお互いに今日死ぬ可能性が充分にある。だからここは譲れない。
「良くは無くても、お互いに命が係ってる可能性があるんだ。慎重になりすぎて損は無いだろ」
「それは・・・そうかもね」
俺の考えを理解したのか、みやこが頷く。――だがさすがに「命が係っている」と言われれば、一度考えざるを得なかったんだろう。
だが彼女の予定には変わりはない――というより、彼女の家の冷蔵庫事情が関係していたようで――
「でも今日買いに行かないと、うちの今日の夕食と明日の朝食が無くなるのよ」
割とまずい現実を口にした。
昼食をとった後、みやこと共に麓にあるスーパーへと向かう。
その道中、昨日の夜に降った雪が今朝除雪されたそうで、麓まで降りる道中の何か所かに山積みとなって放置されていた。
その光景を見た俺は、何気なく口を開いた。
「昨日の雪、積もったんだな」
ぼんやりとしたまま呟いた俺に対し、みやこが驚いたように口を開いた。
「うぇ!?あ、そうね。・・・あんまり降ってなさそうだったのに、ちょっと意外ね」
肩をびくりと跳ね上げながら答えるみやこ。その様子から、明らかに別のことを考えていたことを察した俺は、そのまま会話を続けようか迷ってしまう。
「・・・ねえ。今更なんだけど、不安になってきたわ」
すると、不意にみやこが不安そうな表情を浮かべながら俺の方を見てきた。おそらく、俺が昨日感じた不安を今になって感じたんだろう。
「スーパー、営業してるかしら。あそこ、雪が積もると休業しやすいのよ」
直後、みやこの口から俺の予想の斜め上の発言が放たれた。――残念ながら、俺の予想は完全に外れたらしい。
その後いくらか話を聞くと、どうやら、麓にあるスーパーの従業員のほとんどは山間部に住む人ばかりであり、本格的な積雪の後だと1日を通して2人しか戦力として稼働出来ないそうだ。まあその原因は、俺たちみたいな若人が市街の方ばかりで働いているせいもあるらしいが。
そして、こんな時でも明日以降のことを心配・・・もとい、今日の夕方以降のことを心配するみやこに対し、尊敬の念すら抱いた俺は、このあと起こる可能性のある出来事を心配していた自分が馬鹿らしく思えたのだった。
それから20分後。
その後、みやこと2人で話をしながら麓のバス停が見える地点までたどり着いた俺たちは、バス停の傍にある交差点に設置された歩行者用信号が点滅する光景を見て、2人して駆け出していた。
「っー、間に合わなかった」
「走り損よ、まったく・・・」
俺たちがあと十数歩で横断歩道に足を踏み入れるというタイミングで、赤くなってしまう信号。
そんな信号に対し、2人して息を切らしながら悪態をついていると、信号により停車していた車が青信号となった途端に走り出した。
1台、2台、3台――左右の車道から交互に交差点を走り去っていく車たちは、既に昼時を過ぎたにも関わらず、昨夜の雪と結露によって微妙に滑りやすくなっている車道をゆっくりと駆け抜けていく。
俺たちが足を止めてから1分後。全部で6台の自動車が信号を抜けた後、ようやく信号が変わり、俺側の青信号となった交差点をみやこと共に渡り始める。
安全となった横断歩道に足を踏み入れた俺は、隣を歩くみやこに声をかけた。
「こんなことなら、わざわざ走る必要はなかったな」
「まったくよ。間に合うから走ろう、って言われたのに・・・」
「わ、悪かったって。その代わり長い時間休憩できたからいいだろ?」
「いや、どっちもどっちよ」
横断歩道を並んで歩く俺たち。そうして片側1車線の道路の半分ほどまで歩き、反対側の車線の半分ほどまで進んだ頃。
パアァァァーーーー!
「え?」
左耳から順に、物々しいクラクションが聞こえたかと思うと、左側に明らかに制御を失ったトラックが交差点に入り込んできた。
横転しかけながらこちらへ近づいてくるトラック。実際には数秒も経たずに俺たちの元まで突っ込んでくるのだろうが、なぜか俺には、その動きが恐ろしくゆっくりに見えていた。
「み――」
トラックがこちらに来ている様子が見えた直後、俺はみやこを突き飛ばそうと腕を突き出す。
だがそれがみやこを突き飛ばす少し前。俺の声は、彼女のことを読んだ瞬間に途絶えた。
昨夜みやことの別れ際にあった出来事が頭を離れなかった俺は、結局まともに睡眠を取ることが出来ず朝を迎えていた。
昨日みやこを自宅まで送ったせいか、はたまた今日がある意味運命の日だからか。どちらかはともかく、祖父の家にみやこの姿だけが無く、その代わりというか、家主だから当たり前というべきか、祖父の姿だけが居間にあった。
「あれ?じいちゃん、今日はみやこいないの?」
珍しく家にみやこの姿が無いせいか、違和感を覚えた俺は祖父に尋ねる。すると祖父からは「自宅の方が忙しいんじゃと」という答えを貰う。
その答えを貰い「三が日を過ぎたのに?」という考えが脳内をよぎる。だがよく考えれば、今日が例の日であることを考えれば別に普通な行動だろう。
そうして食卓に着いた俺は、祖父の作った朝食であるトーストを口に運んでいく。
なお、今更ではあるが、祖父は決して料理が上手い人間ではない。なぜなら俺が口にしたトーストは半分以上が明らかに焦げているからだ。――ただ、普通なら「関係ないだろう」と思うだろう。だが「半分焦げている状態ですらかなりマシになった」と考えれば相当な進歩だ。まあ、そのせいもあって祖父の趣味に「冷凍食品を集める」という趣味が増えたのだが。
(うへ、やっぱり焦げてるところは苦い。・・・まあ、食べれない程じゃないが)
一斤を6等分された食パンの体積の内、半分が焦げた――もとい、灰同然になっていそうなトーストを食べながら背筋に寒気を覚える。
(・・・ちゃんと焦がさずに焼けてるところは美味いんだけどな・・・)
やがて、配置がよかったのか絶妙な加減で焼かれたゾーンへと到達すると、まさにほっぺたがとろけ落ちそうな錯覚を覚える。
その味は、食レポで言えば「バターの豊潤な香りと食パン本来の風味が合わさり、そこに程よいカリっと感が加わっておかずとしても頂けそうな一品」といったところだろう。――祖父の焼いたトーストはムラが酷すぎることを除けば、一流のシェフが作る料理にも劣らないレベルだと思っている。
「新、今日はどうするんじゃ?」
すると、いつの間にか無我夢中でトーストを口に運んでいた俺に対して祖父が尋ねてくる。
「――ん。・・・午前中は家に居る。午後は・・・とりあえず麓くらいまで出てみようかなって思ってる」
口の中一杯に含んでいたトーストを飲み込み、今日の予定を伝える。すると祖父は、わずかに眉間に皺を寄せたかと思うと、何も言わずに空になった皿達を片付け始める。
祖父と孫。片づけをする側がどちらだとしてもなんらおかしいとは思えないその光景。だが俺は、そんな中「祖父が隠すように浮かべていた表情」に疑念を抱いてしまう。
(じいちゃんはもしかして何かを知ってる?)
俺がそう思ってしまう原因は、今となっては確認しようにも時間が足りないが、いくつかそれらしいものがあった。
まず一つはみやこに告げられた、俺がみやこを庇って命を落とすという未来の出来事だ。
そして二つ目は神社で引いたおみくじ。
普通に考えて2回連続どころか3階連続全く同じ内容を引いてしまった以上、対外的には俺のことはよほどの幸運――マイナス方面を引き続けるならいらない――を持つ人間と解釈するだろう。
そのため、祖父は俺に「自分の身を守る努力をしろ」と言っている気がしたのだ。
そして俺がそう思った最後の原因は、時折見せていた祖父の言動だった。
場に似合わない表情や何かをけしかけるような発言――そのすべてが、今になって俺の不安を煽る要因になっていたのだ。
(でも、そうだとしたらなんでじいちゃんは今まで特に何もしてこなかったんだろう)
孫が死ぬ。・・・しかも、わずか16歳で。
俺が祖父の立場なら間違いなくどうにか出来ないかと考えるような状況だ。なのに祖父はこれといって何かをしている様子がない。――いや、俺が知らないところで根回しをしているのか・・・?
「そうか、そういうことならわしはちょっと出てこようかのう」
「どこ行くの?」
「何、ちょっと昔の友人との野暮用じゃ」
どこに行くのか尋ねた俺に対して「野暮用」と口にする祖父。というか、友人と会うのに野暮用って・・・
(少しだけ気になるけど、下手に外に出て死んだりしたらみやこに合わせる顔もないしな、家で大人しくしていよう)
祖父の向かう先に興味があったが、みやことの約束を思い出した俺は祖父の家で大人しくしていることに決めたのだった。
その日の午後。今の今まで年末に購入した漫画とラノベを読んでいた俺は、玄関の戸が開く音に頭を上げた。
「お邪魔しまーす」
玄関から少女の声が響いてくる。時間的にはおそらくみやこのものだろう、なんせもう少しで12時になるんだから。
床の軋んだ音で、玄関から居間へとみやこが上がってきたことを確認した俺は、借り受けている部屋から顔を出す。
「あら、新君。おじいさんは?」
「じいちゃんなら出掛けてる。いつ帰るかは言ってなかったけど、もうすぐお昼だし、時期に帰ってくると思う」
祖父が居ないと聞いて、少し困った表情を浮かべるみやこ。
「そう。・・・そうだ、新君。この後、麓のスーパーで買い物をしようと思うんだけど、一緒に来てくれる?」
「構わないが・・・最大限に注意していかないと」
「・・・昨日言ってたこと?確かに不安要素ではあるけど、あまり気にしすぎるのも・・・」
俺の台詞を聞いて苦い表情を浮かべるみやこ。だが俺たちは、残念ながらお互いに今日死ぬ可能性が充分にある。だからここは譲れない。
「良くは無くても、お互いに命が係ってる可能性があるんだ。慎重になりすぎて損は無いだろ」
「それは・・・そうかもね」
俺の考えを理解したのか、みやこが頷く。――だがさすがに「命が係っている」と言われれば、一度考えざるを得なかったんだろう。
だが彼女の予定には変わりはない――というより、彼女の家の冷蔵庫事情が関係していたようで――
「でも今日買いに行かないと、うちの今日の夕食と明日の朝食が無くなるのよ」
割とまずい現実を口にした。
昼食をとった後、みやこと共に麓にあるスーパーへと向かう。
その道中、昨日の夜に降った雪が今朝除雪されたそうで、麓まで降りる道中の何か所かに山積みとなって放置されていた。
その光景を見た俺は、何気なく口を開いた。
「昨日の雪、積もったんだな」
ぼんやりとしたまま呟いた俺に対し、みやこが驚いたように口を開いた。
「うぇ!?あ、そうね。・・・あんまり降ってなさそうだったのに、ちょっと意外ね」
肩をびくりと跳ね上げながら答えるみやこ。その様子から、明らかに別のことを考えていたことを察した俺は、そのまま会話を続けようか迷ってしまう。
「・・・ねえ。今更なんだけど、不安になってきたわ」
すると、不意にみやこが不安そうな表情を浮かべながら俺の方を見てきた。おそらく、俺が昨日感じた不安を今になって感じたんだろう。
「スーパー、営業してるかしら。あそこ、雪が積もると休業しやすいのよ」
直後、みやこの口から俺の予想の斜め上の発言が放たれた。――残念ながら、俺の予想は完全に外れたらしい。
その後いくらか話を聞くと、どうやら、麓にあるスーパーの従業員のほとんどは山間部に住む人ばかりであり、本格的な積雪の後だと1日を通して2人しか戦力として稼働出来ないそうだ。まあその原因は、俺たちみたいな若人が市街の方ばかりで働いているせいもあるらしいが。
そして、こんな時でも明日以降のことを心配・・・もとい、今日の夕方以降のことを心配するみやこに対し、尊敬の念すら抱いた俺は、このあと起こる可能性のある出来事を心配していた自分が馬鹿らしく思えたのだった。
それから20分後。
その後、みやこと2人で話をしながら麓のバス停が見える地点までたどり着いた俺たちは、バス停の傍にある交差点に設置された歩行者用信号が点滅する光景を見て、2人して駆け出していた。
「っー、間に合わなかった」
「走り損よ、まったく・・・」
俺たちがあと十数歩で横断歩道に足を踏み入れるというタイミングで、赤くなってしまう信号。
そんな信号に対し、2人して息を切らしながら悪態をついていると、信号により停車していた車が青信号となった途端に走り出した。
1台、2台、3台――左右の車道から交互に交差点を走り去っていく車たちは、既に昼時を過ぎたにも関わらず、昨夜の雪と結露によって微妙に滑りやすくなっている車道をゆっくりと駆け抜けていく。
俺たちが足を止めてから1分後。全部で6台の自動車が信号を抜けた後、ようやく信号が変わり、俺側の青信号となった交差点をみやこと共に渡り始める。
安全となった横断歩道に足を踏み入れた俺は、隣を歩くみやこに声をかけた。
「こんなことなら、わざわざ走る必要はなかったな」
「まったくよ。間に合うから走ろう、って言われたのに・・・」
「わ、悪かったって。その代わり長い時間休憩できたからいいだろ?」
「いや、どっちもどっちよ」
横断歩道を並んで歩く俺たち。そうして片側1車線の道路の半分ほどまで歩き、反対側の車線の半分ほどまで進んだ頃。
パアァァァーーーー!
「え?」
左耳から順に、物々しいクラクションが聞こえたかと思うと、左側に明らかに制御を失ったトラックが交差点に入り込んできた。
横転しかけながらこちらへ近づいてくるトラック。実際には数秒も経たずに俺たちの元まで突っ込んでくるのだろうが、なぜか俺には、その動きが恐ろしくゆっくりに見えていた。
「み――」
トラックがこちらに来ている様子が見えた直後、俺はみやこを突き飛ばそうと腕を突き出す。
だがそれがみやこを突き飛ばす少し前。俺の声は、彼女のことを読んだ瞬間に途絶えた。
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良ければTwitterもやってますので、そちらもお願いします。更新情報などをいち早くお届け中です♪https://twitter.com/nukomaro_ryuryuアルファポリスでは他に「WORLD CREATE」を、小説家になろうで「種族・烏で進む自由な物見生活」を掲載中です!どちらも作者マイページから飛べますので、ぜひ!
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