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12月30日・前編
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翌朝、いつものように目を覚ました俺の布団には、相も変わらず光が潜り込んできていた。すやすやと眠る、ブロンドのかかった金髪を持つ高校一年の少女には警戒という文字は一切ないらしく、無防備な寝顔をさらしていた。
(さすがに3回目となるとあんまり驚かないな・・・。昔は毎日こうだったのにな)
俺はなんとなく光と一緒に寝ていた日々を思い出す。思えば光が布団に潜り込んでくるのなんて、2年前、仕事の休みが偶然学校の長期休みと被ったとき以来なのか。・・・その前は俺が埼玉に越す前だったか?
(・・・大人になったと言えば、そうなのかもしれないな)
寝息を立てる光の顔を軽く撫でてやると、俺は光に声をかけて起こしにかかった。
それから数分後。無事目を覚ました光と共に居間へと顔を出すと、既に祖父とみやこの2人が食卓についており、静かに食事をとっていた。
「おはよう、新君、光ちゃん。すぐに準備するから少し待ってて」
そう言い残し、1人食べかけのまま台所へ去って行くみやこ。・・・偶然とはいえ、食事中に準備をさせると少し失礼なことをした気分になるな。
みやこの背中を見送りながら食卓に着くと、当たり前のように光が俺の膝の上に座り込む。
「・・・・・・」
それから少しし、台所から戻ってくるみやこは俺と光の姿を見て、文句を言いたげな視線を向けてきた。だが俺としては正直、この状態は嬉しかったりする。・・・欠点は足が痺れることだが。
「・・・な、なんだ?」
文句を言いたげな視線を向けてくるみやこに対し、少しだけ顔を引きつらせながら声をかける。なぜなら、ここで下手を打てば一昨日のように熱湯を用意される可能性があったからだ。前回は急に消えてなくなったが、さすがにあれだけはもう勘弁願いたい。
「別に。なんでもないわ。・・・ただ相変わらずって思っただけよ」
「お兄ちゃん、早く食べよ?」
みやこがそう口にしながらそっぽを向くと同時に、光の口から急かすように声が上がる。そんな彼女を見ながら、小さく溜息を吐いたみやこは、食べかけとなっていた朝食へ再度手を付け始めたのだった。
朝食後。各自で準備を済ませた俺たちは、幸子さんが働く食堂へと向かう為麓へ下る坂道を下っている最中だった。
俺を挟んでなぜか左右を歩くみやこと光。片方は腕にしがみついていて、もう片方は人1人分くらい開けて歩くというなんとも奇妙な3人組となっていた俺たちは、特に会話もなく緩やかな坂道を下っていく。
「・・・そういえばこの際だから言っておくけど」
唐突に口を開くみやこ。丁度俺も話題をと思い口を開こうとしたタイミングだったため、そのままみやこに声をかける。
「なんだよ、改まって」
「いくら幼馴染で兄妹みたいなものとは言っても、一緒に寝ているのはどうなの?」
みやこが俺たちを睨みながらそう口にする。・・・まさか、図らずしも俺が口にしようとしていた話題をみやこのほうからしてくれるとは思いもよらなかった。渡りに船とはこのことか。
「それなんだがな、一応理由というか、そういうものはある。ただ・・・」
俺はそう口にして、右腕にしがみつく光の顔を見る。正直、家族同然の俺としても、このことを誰かに話すのは抵抗がある。下手に光に同情されたくないというのもあるが、彼女の過去はそうほいほい口にしていいものではないと思うからだ。
俺の視線に気づいた光の瞳に少しだけ不安の色が映る。――おそらく、光自身も抵抗があるのだろう。何かの拍子に思い出すだけでも辛くなって泣き出すんだ、目の前でトラウマに近い負の記憶を語られていい気分はしないだろう。
「別に無理に話せとは言わないわ。どうせ2人して黙り込むってことは、単純な話じゃないんでしょう?」
それに、もしそうならおじいさんが何か言ってくるはずだし――
そう口にしたみやこは、どこか辛そうな表情を浮かべながら冬の空を見上げる。
(そういえば、みやこにも辛い過去があったんだよな)
出会って2日目で急に彼女が口にした自身の過去。あの時、俺は何も言えなかったっけか。それで次の日、何気なくみやこに聞いたんだ。その時みやこは「俺には話しても大丈夫」って言ったんだ。その上で一応信頼しているという感じの返事も貰ったんだったな。
(・・・これからみやこと会う機会も増えるはずだし、話しておいた方がお互いのため、か)
そう考えた俺は、ちらりと光に視線を向け、みやこに光の過去を話した。幼稚園の終業式の日に光が両親に捨てられたこと。俺が光に告げた言葉。そして両親に捨てられた過去は、今も光を蝕んでいるということ――
話を聞いたみやこは、両手を強く握りしめながら震わせ、怒りを込めた表情で俺の顔を見ていた。
「なんて親なの!?そんな小さな子供を捨ててどこに行ったの!?・・・許せないわ」
「光のために怒ってくれて嬉しいよ。――そんなわけで、俺と光の今の関係があるんだ」
おそらく、みやこもなんとなく察しているとは思うが、今の光は俺や俺の家族に依存する形で精神を保っている。毎朝布団へ潜り込んだり、俺の前で時折情緒不安定になるのは、特に俺に対しての依存度合が強いがゆえの行動だ。昔からの癖というのも否定はできないが、元々は依存する形でできた癖だろう。
話の中心である光はというと、今も俺の腕にしがみついていた。先ほどと違う点があるとすれば、少し痛いと感じるくらいに強く俺の腕を掴みながら下を向いていることだろう。
「話は分かったわ。それから光ちゃんの抱えてる問題も。・・・でも正直言って、年頃の男女が同じ布団で朝を迎えるっていうのは好ましくないと思う」
話を聞いたみやこの口から出てくる言葉たち。たしかに彼女の言う通りなのだが、こればっかりはすぐさまどうにか出来る事ではないような気もしている。たしかに、今の状態が良くないのも理解している。だがそれでも、と思ってしまうのは甘やかしているからなのか、それとも俺の決意が足りないからなのだろうか?――それとも光が俺に依存しているのではなく、逆に俺が光に依存しているのだろうか。
「まあ、理由が分かった以上、私としては下手なことは言わないわ。それと出来る限りはケアにも協力させてもらう」
「あ、ああ。ありがとな。・・・それと、このことを知ってるのはこれから会う中では恭介兄だけだから」
「ええ、分かったわ」
お互いに言葉をかわした俺とみやこは、光を連れて歩き出した。
家を出てから1時間半後。俺たちはおじさんの経営する食堂へと到着した。すでに食堂では林太、恭介兄、幸子さんの3人がおり、皆は複数人がけのテーブルで話をしていた。残る海は「午前中は受験勉強」ということでお昼ごろから参加する予定になっていた。
「お、新。こっちだ、こっち」
食堂のドアを開ける音でこちらに気づいた恭介兄が手招きしながら俺たちを呼ぶ。すぐに恭介兄たちの元へ向かった俺たちは、片方に男子。もう片方に女子という合コンのような状態となった。
そして、俺の目の前に座るのは――
「あらちん、なんだか合コンみたいね~」
幸子さんだった。なお、なぜこのような席配置になったかというと、光とみやこが俺の正面を嫌がったからだ。みやこのほうはなんとなく分かるが、光が俺の正面を嫌がるのは珍しかった。
「幸子さん、機嫌よさそうですね」
「もちろん~。あらちんと一番話ができる場所だからね~」
にこにことした表情でそう口にする幸子さん。普通に美人な幸子さんに改めて真正面から見られると、思わず顔が赤くなってしまうな。
「・・・」
「・・・ぶー」
そんな俺に視線を向ける存在が2人。1人はジト目、もう1人は頬を膨らませながら俺の方を見ていた。・・・正直言って、居心地はかなり悪い。
「そ、それはそうと。みやこは林太と恭介兄は初対面だろ?自己紹介したらどうだ?」
そんな居心地の悪さに耐えかねた俺は、3人が初対面であることを思い出しこれ幸いにとそのことを口にする。
「そういえばそうだな。オレは井上恭介。新より3つ年上の大学生だ。これからよろしくな」
「俺は金宮林太。新君とは同級生で親友です。新君ともどもよろしくお願いします」
恭介兄と林太が簡単に自己紹介を済ませる。
「宮川平子です。新君から聞いてるとは思いますけど、彼のおじいさんのお世話をしてます」
そう口にしたみやこは、ちらりと俺の方を見る。それを彼女が自己紹介中に発した言葉の確認と取った俺は、小さく頷いて返す。
みやこの自己紹介によろしく、と声をかける2人。
「・・・で、新」
「何?恭介兄」
不意に俺の方へ声をかけてくる恭介兄。わざわざ机に身を乗り出してきた恭介兄の表情を見た瞬間、俺は嫌な予感を覚える。これはあれだ、俺をからかう態勢に入っているな。
「彼女とは本当はどういう関係なんだ?」
・・・予感的中。
そわそわしながら俺の方を見る恭介兄。だが恭介兄には悪いが、俺とみやこは恋人関係とかではない。ていうか、そのことは伝えといたはずなんだけどな。
そして林太と幸子さんと光まで一斉に俺の方を見てきた。・・・間違いなく気になっているな。
「どういう関係って?」
「ほら、実はおじいさんの世話って言うのは口実で、実は恋人関係だったり――」
案の定、そう口にする恭介兄。だがそんな恭介兄の言葉をみやこが遮った。
「間違ってもそんなことは無いです。だれがこんなシスコンと恋人になんてなるんですか?」
辛辣な言葉を口にするみやこ。その彼女の言葉に、思わずその場の全員が黙り込んでしまう。そして俺に、なぜか憐れむような視線を向けてくる。
「私は光ちゃんが大好きなあらちんが好きだよ~?」
しばらくし、フォローするように口を開く幸子さん。だが正直言って、フォローに関しては林太か恭介兄辺りにしてほしかった。なぜかと言うと――
「え、ひかりの方がお兄ちゃんのこと好きだもん!幸子姉でも渡さないよ!」
光が暴走し始めるからだ。光は幸子さんを睨みながらそう口にすると、わざわざ席をぐるっと回って俺の膝に収まりに来る。
「あら、なら私は隣に座るわね~。ということで林太君、どいて?」
光の行動になぜか対抗心むき出しの幸子さんが林太にそう告げる。対する林太は、いきなり起きた状況が理解できず頭の上に疑問符を浮かべていたが、やがて幸子さんに笑顔で圧力をかけられ、幸子さんと場所を入れ替える。
「・・・どういう状況?これ」
膝の上に光。左側には幸子さん。光景的には間違いなく両手に花なのだが、その花たちの視線が俺には痛い。というか怖い。
「モテモテだな、新。うらやましいぜ」
「変わってくれるなら変わってよ、恭介兄」
「悪いな、新。オレにはそこに立つ資格はないんでな」
俺たちの状態を見ていた恭介兄が、格好良く訳の分からない言葉を口にする。ていうか、さっきからみやこの視線も微妙に怖い。・・・明らかに殺意が込められているような気がする。
「新・・・」
そんなみやこの視線を見てしまったのだろう。俺の向かいに座る林太が羨ましいような、でも同情するような視線を向けてくる。
「そ、そうだ、海が来るまで時間がかかるんだろう?せっかくだし、皆でその辺を歩かないか?」
女子組によって次第に険悪になっていく雰囲気を変えようと、恭介兄がそう提案する。その提案にこれ幸いと乗る俺と林太。
「おにいちゃんが行くならひかりも行く!」
そして俺について行きたいがために手を上げる光。それに続くように賛成する幸子さんとみやこ。
そうして俺たちは、食堂をあとにしたのだった。
食堂を出て歩くこと数十分。近くにある書店に立ち寄った俺たちは、そこで時間を潰すことになり、書店に入り自由行動となった俺たちは、それぞれバラバラに店内を回っていた。
「これ、昨日、新君が紹介してた本ね」
俺と一緒に新刊コーナーを見ていたみやこが、俺が昨日バスの中で見せた漫画を見つけて手に取る。なぜ食堂ではあれだけ睨みつけてきたみやこが俺と一緒にいるのかというと、俺に「最近の漫画で流行っているものを教えて欲しい」と言ってきたからだ。
どうやら昨日の会話でネット発の作品に興味を持ったらしく、男子陣のなかで一番話ができる俺に尋ねてきたらしい。
そんな彼女を見ながら俺は新刊のコーナーに目を移し、ふと視界に入った作品を手に取った。
「ほれ。猫の話が好きなみやこならこういうのも気に入るんじゃないか?」
俺が手に取ったのは、毛並みがもふもふな動物たちに囲まれて暮らすというスローライフ系の作品。転生した先でスローライフを送る、というよくある設定の作品だが、あらすじをみた限りは読みやすいだろうと思ったのだ。
俺が手にした漫画を受け取り表紙を眺めるみやこ。少しすると、彼女はその本を手にしたまま文庫本のコーナーへと移動していく。おそらく、原作の小説を探そうとしているのだろう。その証拠に、著者の名前と漫画の出版社を頼りに文庫本のコーナーを血眼になって探すみやこ。
「みやこ、多分こっちにはないぞ。あるとすれば、あっちの――恭介兄が立ってるとこだ」
そんな彼女に声をかけ、俺はラノベの新刊コーナーで吟味している恭介兄の方を示す。
「・・・そうなの?てっきりこっちだと思ってたわ」
意外そうな表情をするみやこ。同じ小説でも細かくジャンル分けされていることを知らなかった――というより、今までライトノベルというもの事態に触れることが無かったのだろう。俺が小学生の頃は「ラノベを読むのはオタク」みたいな認識があったしな。
「・・・あ、あったわ」
それからライトノベルのコーナーへ移動したみやこは、程なくして目的の本を発見できたらしく、刊行されている3冊をまるまる手に取った。
「初見で全部買うのか?もし中身が合わなかったらどうするんだよ?」
その行動に驚いた俺は思わず声をかける。するとみやこは首を傾げながら口を開く。
「新君がお薦めしてくれたんだもの。面白いわよ」
なぜか自信満々なみやこ。確かに薦めたのは俺だが、それだけで全冊購入っていうのはどうなんだろうか?
「いやいや、好みとかもあるだろうし、俺だって読んだことないんだぞ?」
「あら、そうなの?なら私が買うから後で読めばいいじゃない。それだけのことよ」
あっけらかんと告げるみやこ。その謎の自信はいったいどこから湧いてくるんだ?
「まあ、みやこがいいなら構わないけど・・・ていうか、何で恭介兄はにやにやしてるの?」
購入の意思は変わりそうにないみやこを見て頬を掻く。そして、そんな俺たちを新刊コーナーから時折のぞき見していた恭介兄に声をかける。
「いや、カップルっぽいなと思ってな。やっぱりつきあッグフ!」
「恭介兄ーー!」
つきあってると言おうとした恭介兄の体がくの字に曲がり、崩れ落ちていく。
恭介兄がカップルという単語を口にした途端に駆け出したみやこが、恭介兄へショルダータックルをかます。対する恭介兄は鳩尾に入ったのだろう、若干体を痙攣させながら床へと膝をついていた。
「付き合ってません!」
そんな恭介兄を見下ろしながら言い切るみやこ。だが耳まで真っ赤だったらしく、恭介兄にそのことを指摘されると口をつぐんでいた。
「新君!」
そしてなぜか呼ばれる俺。こういうときのみやこは訳の分からないことを口走るから本当は関わりたくないのだが・・・
「何か聞いたっ?」
「へ?」
案の定、脈絡もない訳の分からないことを言い出すみやこ。おそらく恭介兄が口走った言葉だと思うが、ここは聞いていないフリをした方がいい気がする。
「それでよし!さっさと会計して出るわよ」
そう口にしレジへと向かったみやこは、会計を済ませると1人書店を出て行ったのだった。
「遅いのよ、新君」
1人先に書店を出て行ったみやこを放っておいて、しばらく時間を潰していた俺たちにかけられたみやこからの最初の言葉がそれだった。
冬空の下、屋外に居続けるのは流石に寒かったらしく、みやこは体を抱え込むようにして暖をとっていた。
「いや、遅いも何も。勝手に出て行って戻ってこなかったのはみやこだろ・・・」
溜息を吐きながらそう零すと、みやこは俺に迫ってくる。
「はあ!?普通は追いかけてくるものでしょ!?それなのに放っておくだけじゃなくてそんなことを言うの!?」
ガチギレに近い様子で迫ってきたみやこ。今にも飛び掛かってきそうな彼女をなんとかなだめながら、俺は恭介兄に視線を送る。というか、わざわざ追いかけないだろ、普通。恋人じゃあるまいし・・・いや、友達でも追いかけるか。そう考えると、少し悪いことをしてしまったな。
対する恭介兄は俺と目線が合うと、わざとらしく視線を逸らした。
(・・・恭介兄も関わってるんだけどなぁ)
視線を逸らした恭介兄に対してそんなことを思う。元々は恭介兄がみやこのことをからかったからこうなった訳であって、無関係のフリをするのは良くないと思うんだがな。
「ねえ、新君?聞いてるの?」
「あ、ああ。・・・俺が悪かったよ」
不機嫌な様子のみやこから声をかけられ、俺は謝る。・・・正直、これ以上みやこを不機嫌にすると後が怖いしな。それによくよく考えてみれば、例えどんな状況だったとしても女の子を1人で待たせたことに変わりはない。
対するみやこは、俺の口から謝罪の言葉が出てくるとは思っていなかったのか、意外そうな表情を浮かべる。
「わ、分かればいいのよ。分かれば」
やがてそっぽを向きながらそう口にするみやこ。そんな俺たちの姿を見ていた光と幸子さんから微妙に怒りの籠った視線を受けていた気がするが、気のせいだろう。
「やっぱりカップルだよな。林太、お前もそう思うよな?」
「え、ええっと・・・」
そして、光や幸子さんと同じように俺たちのやり取りを見ていた恭介兄が林太に声をかける。林太の方は答えあぐねているようで、みやこの方をちらちらと窺っている。だが恭介兄は恐いもの知らずというかなんというか・・・先ほどの出来事は忘れてしまったのだろうか?
「恭介兄ーー!」
そして案の定、恭介兄はみやこにより再度ショルダータックルをかまされ、地面へ崩れ落ちていった。
(さすがに3回目となるとあんまり驚かないな・・・。昔は毎日こうだったのにな)
俺はなんとなく光と一緒に寝ていた日々を思い出す。思えば光が布団に潜り込んでくるのなんて、2年前、仕事の休みが偶然学校の長期休みと被ったとき以来なのか。・・・その前は俺が埼玉に越す前だったか?
(・・・大人になったと言えば、そうなのかもしれないな)
寝息を立てる光の顔を軽く撫でてやると、俺は光に声をかけて起こしにかかった。
それから数分後。無事目を覚ました光と共に居間へと顔を出すと、既に祖父とみやこの2人が食卓についており、静かに食事をとっていた。
「おはよう、新君、光ちゃん。すぐに準備するから少し待ってて」
そう言い残し、1人食べかけのまま台所へ去って行くみやこ。・・・偶然とはいえ、食事中に準備をさせると少し失礼なことをした気分になるな。
みやこの背中を見送りながら食卓に着くと、当たり前のように光が俺の膝の上に座り込む。
「・・・・・・」
それから少しし、台所から戻ってくるみやこは俺と光の姿を見て、文句を言いたげな視線を向けてきた。だが俺としては正直、この状態は嬉しかったりする。・・・欠点は足が痺れることだが。
「・・・な、なんだ?」
文句を言いたげな視線を向けてくるみやこに対し、少しだけ顔を引きつらせながら声をかける。なぜなら、ここで下手を打てば一昨日のように熱湯を用意される可能性があったからだ。前回は急に消えてなくなったが、さすがにあれだけはもう勘弁願いたい。
「別に。なんでもないわ。・・・ただ相変わらずって思っただけよ」
「お兄ちゃん、早く食べよ?」
みやこがそう口にしながらそっぽを向くと同時に、光の口から急かすように声が上がる。そんな彼女を見ながら、小さく溜息を吐いたみやこは、食べかけとなっていた朝食へ再度手を付け始めたのだった。
朝食後。各自で準備を済ませた俺たちは、幸子さんが働く食堂へと向かう為麓へ下る坂道を下っている最中だった。
俺を挟んでなぜか左右を歩くみやこと光。片方は腕にしがみついていて、もう片方は人1人分くらい開けて歩くというなんとも奇妙な3人組となっていた俺たちは、特に会話もなく緩やかな坂道を下っていく。
「・・・そういえばこの際だから言っておくけど」
唐突に口を開くみやこ。丁度俺も話題をと思い口を開こうとしたタイミングだったため、そのままみやこに声をかける。
「なんだよ、改まって」
「いくら幼馴染で兄妹みたいなものとは言っても、一緒に寝ているのはどうなの?」
みやこが俺たちを睨みながらそう口にする。・・・まさか、図らずしも俺が口にしようとしていた話題をみやこのほうからしてくれるとは思いもよらなかった。渡りに船とはこのことか。
「それなんだがな、一応理由というか、そういうものはある。ただ・・・」
俺はそう口にして、右腕にしがみつく光の顔を見る。正直、家族同然の俺としても、このことを誰かに話すのは抵抗がある。下手に光に同情されたくないというのもあるが、彼女の過去はそうほいほい口にしていいものではないと思うからだ。
俺の視線に気づいた光の瞳に少しだけ不安の色が映る。――おそらく、光自身も抵抗があるのだろう。何かの拍子に思い出すだけでも辛くなって泣き出すんだ、目の前でトラウマに近い負の記憶を語られていい気分はしないだろう。
「別に無理に話せとは言わないわ。どうせ2人して黙り込むってことは、単純な話じゃないんでしょう?」
それに、もしそうならおじいさんが何か言ってくるはずだし――
そう口にしたみやこは、どこか辛そうな表情を浮かべながら冬の空を見上げる。
(そういえば、みやこにも辛い過去があったんだよな)
出会って2日目で急に彼女が口にした自身の過去。あの時、俺は何も言えなかったっけか。それで次の日、何気なくみやこに聞いたんだ。その時みやこは「俺には話しても大丈夫」って言ったんだ。その上で一応信頼しているという感じの返事も貰ったんだったな。
(・・・これからみやこと会う機会も増えるはずだし、話しておいた方がお互いのため、か)
そう考えた俺は、ちらりと光に視線を向け、みやこに光の過去を話した。幼稚園の終業式の日に光が両親に捨てられたこと。俺が光に告げた言葉。そして両親に捨てられた過去は、今も光を蝕んでいるということ――
話を聞いたみやこは、両手を強く握りしめながら震わせ、怒りを込めた表情で俺の顔を見ていた。
「なんて親なの!?そんな小さな子供を捨ててどこに行ったの!?・・・許せないわ」
「光のために怒ってくれて嬉しいよ。――そんなわけで、俺と光の今の関係があるんだ」
おそらく、みやこもなんとなく察しているとは思うが、今の光は俺や俺の家族に依存する形で精神を保っている。毎朝布団へ潜り込んだり、俺の前で時折情緒不安定になるのは、特に俺に対しての依存度合が強いがゆえの行動だ。昔からの癖というのも否定はできないが、元々は依存する形でできた癖だろう。
話の中心である光はというと、今も俺の腕にしがみついていた。先ほどと違う点があるとすれば、少し痛いと感じるくらいに強く俺の腕を掴みながら下を向いていることだろう。
「話は分かったわ。それから光ちゃんの抱えてる問題も。・・・でも正直言って、年頃の男女が同じ布団で朝を迎えるっていうのは好ましくないと思う」
話を聞いたみやこの口から出てくる言葉たち。たしかに彼女の言う通りなのだが、こればっかりはすぐさまどうにか出来る事ではないような気もしている。たしかに、今の状態が良くないのも理解している。だがそれでも、と思ってしまうのは甘やかしているからなのか、それとも俺の決意が足りないからなのだろうか?――それとも光が俺に依存しているのではなく、逆に俺が光に依存しているのだろうか。
「まあ、理由が分かった以上、私としては下手なことは言わないわ。それと出来る限りはケアにも協力させてもらう」
「あ、ああ。ありがとな。・・・それと、このことを知ってるのはこれから会う中では恭介兄だけだから」
「ええ、分かったわ」
お互いに言葉をかわした俺とみやこは、光を連れて歩き出した。
家を出てから1時間半後。俺たちはおじさんの経営する食堂へと到着した。すでに食堂では林太、恭介兄、幸子さんの3人がおり、皆は複数人がけのテーブルで話をしていた。残る海は「午前中は受験勉強」ということでお昼ごろから参加する予定になっていた。
「お、新。こっちだ、こっち」
食堂のドアを開ける音でこちらに気づいた恭介兄が手招きしながら俺たちを呼ぶ。すぐに恭介兄たちの元へ向かった俺たちは、片方に男子。もう片方に女子という合コンのような状態となった。
そして、俺の目の前に座るのは――
「あらちん、なんだか合コンみたいね~」
幸子さんだった。なお、なぜこのような席配置になったかというと、光とみやこが俺の正面を嫌がったからだ。みやこのほうはなんとなく分かるが、光が俺の正面を嫌がるのは珍しかった。
「幸子さん、機嫌よさそうですね」
「もちろん~。あらちんと一番話ができる場所だからね~」
にこにことした表情でそう口にする幸子さん。普通に美人な幸子さんに改めて真正面から見られると、思わず顔が赤くなってしまうな。
「・・・」
「・・・ぶー」
そんな俺に視線を向ける存在が2人。1人はジト目、もう1人は頬を膨らませながら俺の方を見ていた。・・・正直言って、居心地はかなり悪い。
「そ、それはそうと。みやこは林太と恭介兄は初対面だろ?自己紹介したらどうだ?」
そんな居心地の悪さに耐えかねた俺は、3人が初対面であることを思い出しこれ幸いにとそのことを口にする。
「そういえばそうだな。オレは井上恭介。新より3つ年上の大学生だ。これからよろしくな」
「俺は金宮林太。新君とは同級生で親友です。新君ともどもよろしくお願いします」
恭介兄と林太が簡単に自己紹介を済ませる。
「宮川平子です。新君から聞いてるとは思いますけど、彼のおじいさんのお世話をしてます」
そう口にしたみやこは、ちらりと俺の方を見る。それを彼女が自己紹介中に発した言葉の確認と取った俺は、小さく頷いて返す。
みやこの自己紹介によろしく、と声をかける2人。
「・・・で、新」
「何?恭介兄」
不意に俺の方へ声をかけてくる恭介兄。わざわざ机に身を乗り出してきた恭介兄の表情を見た瞬間、俺は嫌な予感を覚える。これはあれだ、俺をからかう態勢に入っているな。
「彼女とは本当はどういう関係なんだ?」
・・・予感的中。
そわそわしながら俺の方を見る恭介兄。だが恭介兄には悪いが、俺とみやこは恋人関係とかではない。ていうか、そのことは伝えといたはずなんだけどな。
そして林太と幸子さんと光まで一斉に俺の方を見てきた。・・・間違いなく気になっているな。
「どういう関係って?」
「ほら、実はおじいさんの世話って言うのは口実で、実は恋人関係だったり――」
案の定、そう口にする恭介兄。だがそんな恭介兄の言葉をみやこが遮った。
「間違ってもそんなことは無いです。だれがこんなシスコンと恋人になんてなるんですか?」
辛辣な言葉を口にするみやこ。その彼女の言葉に、思わずその場の全員が黙り込んでしまう。そして俺に、なぜか憐れむような視線を向けてくる。
「私は光ちゃんが大好きなあらちんが好きだよ~?」
しばらくし、フォローするように口を開く幸子さん。だが正直言って、フォローに関しては林太か恭介兄辺りにしてほしかった。なぜかと言うと――
「え、ひかりの方がお兄ちゃんのこと好きだもん!幸子姉でも渡さないよ!」
光が暴走し始めるからだ。光は幸子さんを睨みながらそう口にすると、わざわざ席をぐるっと回って俺の膝に収まりに来る。
「あら、なら私は隣に座るわね~。ということで林太君、どいて?」
光の行動になぜか対抗心むき出しの幸子さんが林太にそう告げる。対する林太は、いきなり起きた状況が理解できず頭の上に疑問符を浮かべていたが、やがて幸子さんに笑顔で圧力をかけられ、幸子さんと場所を入れ替える。
「・・・どういう状況?これ」
膝の上に光。左側には幸子さん。光景的には間違いなく両手に花なのだが、その花たちの視線が俺には痛い。というか怖い。
「モテモテだな、新。うらやましいぜ」
「変わってくれるなら変わってよ、恭介兄」
「悪いな、新。オレにはそこに立つ資格はないんでな」
俺たちの状態を見ていた恭介兄が、格好良く訳の分からない言葉を口にする。ていうか、さっきからみやこの視線も微妙に怖い。・・・明らかに殺意が込められているような気がする。
「新・・・」
そんなみやこの視線を見てしまったのだろう。俺の向かいに座る林太が羨ましいような、でも同情するような視線を向けてくる。
「そ、そうだ、海が来るまで時間がかかるんだろう?せっかくだし、皆でその辺を歩かないか?」
女子組によって次第に険悪になっていく雰囲気を変えようと、恭介兄がそう提案する。その提案にこれ幸いと乗る俺と林太。
「おにいちゃんが行くならひかりも行く!」
そして俺について行きたいがために手を上げる光。それに続くように賛成する幸子さんとみやこ。
そうして俺たちは、食堂をあとにしたのだった。
食堂を出て歩くこと数十分。近くにある書店に立ち寄った俺たちは、そこで時間を潰すことになり、書店に入り自由行動となった俺たちは、それぞれバラバラに店内を回っていた。
「これ、昨日、新君が紹介してた本ね」
俺と一緒に新刊コーナーを見ていたみやこが、俺が昨日バスの中で見せた漫画を見つけて手に取る。なぜ食堂ではあれだけ睨みつけてきたみやこが俺と一緒にいるのかというと、俺に「最近の漫画で流行っているものを教えて欲しい」と言ってきたからだ。
どうやら昨日の会話でネット発の作品に興味を持ったらしく、男子陣のなかで一番話ができる俺に尋ねてきたらしい。
そんな彼女を見ながら俺は新刊のコーナーに目を移し、ふと視界に入った作品を手に取った。
「ほれ。猫の話が好きなみやこならこういうのも気に入るんじゃないか?」
俺が手に取ったのは、毛並みがもふもふな動物たちに囲まれて暮らすというスローライフ系の作品。転生した先でスローライフを送る、というよくある設定の作品だが、あらすじをみた限りは読みやすいだろうと思ったのだ。
俺が手にした漫画を受け取り表紙を眺めるみやこ。少しすると、彼女はその本を手にしたまま文庫本のコーナーへと移動していく。おそらく、原作の小説を探そうとしているのだろう。その証拠に、著者の名前と漫画の出版社を頼りに文庫本のコーナーを血眼になって探すみやこ。
「みやこ、多分こっちにはないぞ。あるとすれば、あっちの――恭介兄が立ってるとこだ」
そんな彼女に声をかけ、俺はラノベの新刊コーナーで吟味している恭介兄の方を示す。
「・・・そうなの?てっきりこっちだと思ってたわ」
意外そうな表情をするみやこ。同じ小説でも細かくジャンル分けされていることを知らなかった――というより、今までライトノベルというもの事態に触れることが無かったのだろう。俺が小学生の頃は「ラノベを読むのはオタク」みたいな認識があったしな。
「・・・あ、あったわ」
それからライトノベルのコーナーへ移動したみやこは、程なくして目的の本を発見できたらしく、刊行されている3冊をまるまる手に取った。
「初見で全部買うのか?もし中身が合わなかったらどうするんだよ?」
その行動に驚いた俺は思わず声をかける。するとみやこは首を傾げながら口を開く。
「新君がお薦めしてくれたんだもの。面白いわよ」
なぜか自信満々なみやこ。確かに薦めたのは俺だが、それだけで全冊購入っていうのはどうなんだろうか?
「いやいや、好みとかもあるだろうし、俺だって読んだことないんだぞ?」
「あら、そうなの?なら私が買うから後で読めばいいじゃない。それだけのことよ」
あっけらかんと告げるみやこ。その謎の自信はいったいどこから湧いてくるんだ?
「まあ、みやこがいいなら構わないけど・・・ていうか、何で恭介兄はにやにやしてるの?」
購入の意思は変わりそうにないみやこを見て頬を掻く。そして、そんな俺たちを新刊コーナーから時折のぞき見していた恭介兄に声をかける。
「いや、カップルっぽいなと思ってな。やっぱりつきあッグフ!」
「恭介兄ーー!」
つきあってると言おうとした恭介兄の体がくの字に曲がり、崩れ落ちていく。
恭介兄がカップルという単語を口にした途端に駆け出したみやこが、恭介兄へショルダータックルをかます。対する恭介兄は鳩尾に入ったのだろう、若干体を痙攣させながら床へと膝をついていた。
「付き合ってません!」
そんな恭介兄を見下ろしながら言い切るみやこ。だが耳まで真っ赤だったらしく、恭介兄にそのことを指摘されると口をつぐんでいた。
「新君!」
そしてなぜか呼ばれる俺。こういうときのみやこは訳の分からないことを口走るから本当は関わりたくないのだが・・・
「何か聞いたっ?」
「へ?」
案の定、脈絡もない訳の分からないことを言い出すみやこ。おそらく恭介兄が口走った言葉だと思うが、ここは聞いていないフリをした方がいい気がする。
「それでよし!さっさと会計して出るわよ」
そう口にしレジへと向かったみやこは、会計を済ませると1人書店を出て行ったのだった。
「遅いのよ、新君」
1人先に書店を出て行ったみやこを放っておいて、しばらく時間を潰していた俺たちにかけられたみやこからの最初の言葉がそれだった。
冬空の下、屋外に居続けるのは流石に寒かったらしく、みやこは体を抱え込むようにして暖をとっていた。
「いや、遅いも何も。勝手に出て行って戻ってこなかったのはみやこだろ・・・」
溜息を吐きながらそう零すと、みやこは俺に迫ってくる。
「はあ!?普通は追いかけてくるものでしょ!?それなのに放っておくだけじゃなくてそんなことを言うの!?」
ガチギレに近い様子で迫ってきたみやこ。今にも飛び掛かってきそうな彼女をなんとかなだめながら、俺は恭介兄に視線を送る。というか、わざわざ追いかけないだろ、普通。恋人じゃあるまいし・・・いや、友達でも追いかけるか。そう考えると、少し悪いことをしてしまったな。
対する恭介兄は俺と目線が合うと、わざとらしく視線を逸らした。
(・・・恭介兄も関わってるんだけどなぁ)
視線を逸らした恭介兄に対してそんなことを思う。元々は恭介兄がみやこのことをからかったからこうなった訳であって、無関係のフリをするのは良くないと思うんだがな。
「ねえ、新君?聞いてるの?」
「あ、ああ。・・・俺が悪かったよ」
不機嫌な様子のみやこから声をかけられ、俺は謝る。・・・正直、これ以上みやこを不機嫌にすると後が怖いしな。それによくよく考えてみれば、例えどんな状況だったとしても女の子を1人で待たせたことに変わりはない。
対するみやこは、俺の口から謝罪の言葉が出てくるとは思っていなかったのか、意外そうな表情を浮かべる。
「わ、分かればいいのよ。分かれば」
やがてそっぽを向きながらそう口にするみやこ。そんな俺たちの姿を見ていた光と幸子さんから微妙に怒りの籠った視線を受けていた気がするが、気のせいだろう。
「やっぱりカップルだよな。林太、お前もそう思うよな?」
「え、ええっと・・・」
そして、光や幸子さんと同じように俺たちのやり取りを見ていた恭介兄が林太に声をかける。林太の方は答えあぐねているようで、みやこの方をちらちらと窺っている。だが恭介兄は恐いもの知らずというかなんというか・・・先ほどの出来事は忘れてしまったのだろうか?
「恭介兄ーー!」
そして案の定、恭介兄はみやこにより再度ショルダータックルをかまされ、地面へ崩れ落ちていった。
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