上 下
11 / 148

10.出来れば完璧

しおりを挟む
「そういえば、旦那様と奥様は相変わらずなのですか?」

 おっと、シーナさんの意味深な問いかけ。

 シーナさん達は俺に気を使っているのか、この部屋では両親について話したことがなかったのでこれは絶対に聞き逃せない。

〉なんだなんだ?
〉あの両親が何かしたのか?
〉まぁ、何かやりそうな両親だったしな
〉そんな両親の話が聞けるのか!
〉聞き逃がせない話が聞けそうだ!

「はい。レイン様のことは私達に任せっきりで新しい子供を作ることしか考えていませんね」

 シーナさん達の言葉を聞いた瞬間、「あぁ、そうなのか」という感想しか思いつかなかった。ってか、今さらながらふと思ったのだが、

《気にしてなかったけど、そういえば今まで一度も顔を見にくることもなかったな》

 さらに思えば、産まれた時もちゃんと顔を見たことないので、両親の顔が思い出せない。

〉そこは気にしようよ!
〉一度も来てないって!
〉子作りに夢中ってwww
〉そこまで女の子にこだわる理由ってホントになんだよ!

「このままレイン様への愛情を持たれないということになって、シャーズ様やギングズ様と同じような教育が受けられないというようなことになったら………」
「そうならないようにジルベイルさんも手をうってくれると言ってくれてますからそれは大丈夫だと思います」

〉新たな人物名が出てきたな
〉シャーズにギングズにジルベイルか
〉名前の響きからして全員男だな

 あいにくと三人とも聞いたことのない名前なので俺もわからない。

〉シャーズとギングズに様をつけるということは、レインの兄にあたる人物なのかな?
〉そう考えるのが普通じゃね?
〉どんな兄弟だろうな

《あんな親だからあまり期待しないでおく》

〉あんな親ってwww
〉今の状況だとそう言いたくなるわねwww
〉一度も会いに来てない親達だからねwww
〉普通じゃありえない親達だしなwww
〉親失格だしなwww

 素直に思ったことを言ったらリスナー達から同意と笑が大量に返ってきた。

《それに、使用人の人達が色々と動いてくれているみたいだから、最悪のことにはならないようだし、そこは感謝だな》

 多分、こんないい使用人達が居なかったら、俺は早々にこの家に見切りをつけて出ていっていたかもしれない。

〉使用人様々だな
〉両親には恵まれなかったけど、使用人には恵まれたんだな
〉使用人がいい人が多くてよかったな
〉だからこそ感謝の気持ちを持って使用人達には優しく接しろよ!

《使用人達に優しく接するなんて当たり前のことだろ》

 今のところ辛くあたるのはあの親達だけだ。とはいえ、親達と会うことすらないので辛くあたることすら出来ない状況だけど。

〉親はあんなのだが、いい使用人達に恵まれる、だと………
〉それがどうかしたか?
〉いや、これも一種のご都合主義じゃねーか?
〉確かに!
〉やっぱり異世界転生は最高なのか!?
〉やっぱりそこ変われ!レイン!

 そして、また再燃し始めた『異世界転生最高』についてはご都合主義を否定出来ないのでノーコメントで。

「そういえば、なんで旦那様と奥様は女の子に執着しているのですか?」
「ジルベイルさんから聞いた話によると、王族に待望の子供が生まれたらしくて、その子供が王子だったようなのです」

 王族の王子、か。
 女の子が欲しいまさかの理由が判明した。

〉意味深どころか結論が出たな
〉王子の嫁にしたいから女の子が欲しい、と
〉つまり、政略結婚させて王族の仲間入りしたいと
〉サイテーな理由だな!
〉ってかやっぱり異世界だから王族がいるんだな!
〉そして王子の嫁ポジションを狙うってことはレインの家は貴族ってことだな
〉やっぱりお金持ちだったのか!
〉そして親は今の地位よりさらに上を目指したいと
〉権力欲ハンパねぇ!

 ホントにサイテーな親の元に生まれてきたのかもしれないが、全て聞いた話からの推測でしかないので俺的には結論が出たとはいえないので、やっぱり自分で情報収集をしたいところではある。

 しかし、赤ちゃんの体では動くことすら出来ないのでどうしてやろうか。
 どうやって情報収集をするか。

 そう考えた時に目玉カメラと目があってふと思いついた。

 それはドローンカメラだ。

 あぁいうのを魔法で作れれば動けなくても情報収集は出来るだろう。

 とはいえ、それをすぐさま実行には移さずに一度冷静になって考える。

 ドローンカメラという考えはいいとして、問題は四つ。
 ドローンカメラを見られてはいけない。
 映像を見るためのモニターも見られてはいけない。
 音声を聞かれてもいけない。
 扉などの障害物をどうにかしないといけない。

 これらの問題点をどう解消していくか。

 ドローンカメラに関してはスキルにある隠密を付与することで隠せるだろう。
 モニターはコンタクト型にして左目に作ればいいか。出来るのなら光量の自動調節機能をつける。じゃないと、急激な発光とかで目がやられる場合が出てくるだろうからな。
 音声はドローンカメラと連動したイヤホンを作り出して片耳につけておこう。出来るのなら音量の自動調整機能をつける。こっちは爆音とかで耳がやられないために。
 障害物に関しては出来るのならドローンカメラを作る時に透過能力をつけたいが、それが無理ならとにかく小さいドローンカメラを作る方向でいこう。

〉おい!
〉お~い
〉レイン!
〉聞こえてない?
〉聞こえてないっていうか見てないってのが正しいだろ
〉そんな正論の訂正は今必要ない!
〉なにかに集中してるっぽいね
〉だからってリスナー無視するな!

 情報収集のためのドローンカメラの案を考えていたら集中しすぎていたみたいで、コメント欄は俺への呼びかけのコメントで埋まっていた。

《すまんすまん。少し考え事をしててな》

〉なに考えてたんだ?
〉両親への復讐か?
〉赤ちゃんの復讐
〉まだなにかされたわけでもないのに復讐ってwww
〉赤ちゃんの復讐ってパワーワード
〉どうせエロいことだろ

 スゴい言われようだが、あいにくと違うのでしっかりと訂正しておこう。

《どっちも違うわ。
 動けない今の状況でもどうにか情報収集出来ないかを考えていたんだよ》

〉情報収集?
〉なんで?
〉そんなことする必要あるのか?
〉ないような気がするけど?
〉結論出ただろ?

《一応あの親達の口から聞いたわけじゃないし、ちゃんと確認しといたほうがいいだろ。だから、情報収集ついでに確認出来たらなと思ってな》

〉情報収集のついでなんかいwww
〉まぁ、確かに親達から聞いたわけじゃないからな
〉そこの確認は必要か
〉それに、よくよく考えれば色んな情報は必要だから、情報収集する必要はあるよな
〉なにかいい案は思いついたのか?

《あぁ》

 俺は早速魔法でドローンカメラは天井付近に、コンタクト型モニターは目に、イヤホンは耳に直接作り出し、ドローンカメラに隠密を付与した。
 そして、軽くドローンカメラを左右に動かしてみる。

 うん。ちゃんと意識した方向にちゃんと動くし映像もちゃんと映っているな。
 あとは、ちゃんと光量の自動調節機能と音量の自動調節機能がついていることを願おう。

〉おい!いきなり2画面に切り換わったんだが、どういうことだ!?
〉新しく現れた画面に映っているのは別角度の映像か?
〉でも左右に揺れたぞ?
〉どういうことなの?レイン

《こういうことだ》

 ドローンカメラを目玉カメラの前まで動かした。

〉これは………
〉ドローンか?
〉にしても五百円玉くらいの大きさしかないな
〉小さいな
〉新しい画面の映像はこのドローンの映像か

《そういうこと。
 ドローンが小さいのはバレにくくするためとMPの節約だな。
 隠密を付与しているからそうそうバレないとは思うけど。それに小さいほうが隠密の効果もあがりそうだしな》

 操作に慣れるために軽く動かし続ける。

〉なるほどなるほど
〉しっかり考えているのね
〉で、このドローンでどうする気なんだ?
〉まさか、盗撮?

 一番にその考えが思いつくリスナーに苦笑した。

《変態はすぐにエロの方へ話をもっていきたがるな》

〉いや!だって隠密とかかけて隠してるから!
〉わからなくもないけど最初から盗撮って聞くのわね~
〉流石にないわ~
〉普段からエロいことしか考えないから盗撮なんて問いが真っ先に出てくるんでしょ?
〉あ~
〉これに関してはフォローできねーわ
〉ドンマイ
〉見捨てないでくれよ!
〉で、なんのためにドローンなんて作ったの?

 まさかの問いかけに俺は内心ため息を吐いた。

《動けない今の状況でも情報収集するために決まってるだろう》

 そう答えながらドローンの操作に慣れてきたので早速情報収集しに行きたいのだが、そのためには障害物をすり抜けることさえ出来れば完ぺ………
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

伯爵家の次男に転生しましたが、10歳で当主になってしまいました

竹桜
ファンタジー
 自動運転の試験車両に轢かれて、死んでしまった主人公は異世界のランガン伯爵家の次男に転生した。  転生後の生活は順調そのものだった。  だが、プライドだけ高い兄が愚かな行為をしてしまった。  その結果、主人公の両親は当主の座を追われ、主人公が10歳で当主になってしまった。  これは10歳で当主になってしまった者の物語だ。

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

【書籍化決定】神様お願い!〜神様のトバッチリを受けた定年おっさんは異世界に転生して心穏やかにスローライフを送りたい〜

きのこのこ
ファンタジー
突然白い発光体の強い光を浴びせられ異世界転移?した俺事、石原那由多(55)は安住の地を求めて異世界を冒険する…? え?謎の子供の体?謎の都市?魔法?剣?魔獣??何それ美味しいの?? 俺は心穏やかに過ごしたいだけなんだ! ____________________________________________ 突然謎の白い発光体の強い光を浴びせられ強制的に魂だけで異世界転移した石原那由多(55)は、よちよち捨て子幼児の身体に入っちゃった! 那由多は左眼に居座っている神様のカケラのツクヨミを頼りに異世界で生きていく。 しかし左眼の相棒、ツクヨミの暴走を阻止できず、チート?な棲家を得て、チート?能力を次々開花させ異世界をイージーモードで過ごす那由多。「こいつ《ツクヨミ》は勝手に俺の記憶を見るプライバシークラッシャーな奴なんだ!」 そんな異世界は優しさで満ち溢れていた(え?本当に?) 呪われてもっふもふになっちゃったママン(産みの親)と御親戚一行様(やっとこ呪いがどうにか出来そう?!)に、異世界のめくるめくグルメ(やっと片鱗が見えて作者も安心)でも突然真夜中に食べたくなっちゃう日本食も完全完備(どこに?!)!異世界日本発福利厚生は完璧(ばっちり)です!(うまい話ほど裏がある!) 謎のアイテム御朱印帳を胸に(え?)今日も平穏?無事に那由多は異世界で日々を暮らします。 ※一つの目的にどんどん事を突っ込むのでスローな展開が大丈夫な方向けです。 ※他サイト先行にて配信してますが、他サイトと気が付かない程度に微妙に変えてます。 ※昭和〜平成の頭ら辺のアレコレ入ってます。わかる方だけアハ体験⭐︎ ⭐︎第16回ファンタジー小説大賞にて奨励賞受賞を頂きました!読んで投票して下さった読者様、並びに選考してくださったスタッフ様に御礼申し上げますm(_ _)m今後とも宜しくお願い致します。

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...