79 / 85
79.右半分
しおりを挟む
「危ない!」
ハル目掛けて飛んできたモノを僕はとっさにペットボトルで叩き落とす。
一体何が飛んできた?
「ピンポン玉?」
トシが呟いた通り、僕が叩き落としたモノはピンポン玉だった。
しかし、こんな山の中でいきなりピンポン玉が飛んでくるなんて絶対にありえないおかしなことなので、僕は飛んできた方向へと視線を向けた。
そこには、頭に紙風船を乗せ、手にはピコピコハンマーを持った猿がいた。
「えっ?えっ?」
予想外の姿をした猿の登場にハルがかなり混乱していた。
僕も声に出すことはしなかったが、内心ではかなり戸惑ってはいた。
だって、紙風船を乗せてピコピコハンマーを持つ野生の猿なんて絶対いないだろうからね!
「あれは!猿賊だ!」
僕達の戸惑いをよそに、猟師さんが急に叫んだ。
「っ!!」
猟師さんが急に叫んだことでハルが僕の腕に掴まってきたが、立ち上がらせるのにちょうどいいのでそのまま引っ張り上げて立ち上がらせると、倒れているユウの元へ向かった。
「猿賊ってなんですか?」
「猿賊とはこの山に住む猿達のことで、キノコや山菜を取りに来た人を襲っては収穫物を奪っていく山賊のような猿達のことだ!」
そう言いながらも焦りはない猟師さん。
というか、大声で危機感を出しているつもりなのかもしれないけど完璧に説明口調だし、おもむろに背負っていた大きなリュックを置いて何かを取り出そうとしているところを見ると、これも1つのアトラクション的なトラブルと考えていいだろう。
そんな僕の考えは正しかったようで、猟師さんがリュックから取り出したのは人数分の紙風船がついたカチューシャとピコピコハンマー。
「さぁこれをつけてピコピコハンマーで応戦するんだ!」
「えっと、つまり紙風船を割られたら失格で、全員やられたらこれまで採ってきた山菜やキノコを没収されるということでいいのですか?」
こういうのはしっかりとルール確認をしておかないとね。
「そういうことだね」
僕が問いかけると猟師さんは普通に答えてくれた。
だったら最初から演技なんてせずに普通にルール説明してくれたほうがよかったのだけど。
「ほら!猿賊が襲って………」
再度演技を始めた猟師さんの言葉が止まり、驚愕に目が見開かれた。
それもそのはずだろう。
なぜなら、猿賊達は次から次へと姿をあらわし、最終的には30匹も出てきたのだから。
「なっ!ここまでの頭数かけるような相手なのか!?」
なぜか猟師さんの驚愕の目は猿賊達にではなく僕達に向けられた。
というか、さっきの猟師さんの言葉からして、この猿賊の頭数は相手によって変わるらしい。
そうなると、裏で猿賊達を操っている人物が誰なのかは自ずとわかってきた。そして、これだけの頭数をかけてきた理由もなんとなくわかってくる。
怒ってますアピールか、僕達の実力確認か。
どちらにせよ不甲斐ない戦いは出来ないか。
「ユウ。寝てないで起き上がって自分の紙風船守るぐらいはしてよね」
僕はユウの腕を軽く蹴った。
「テメーらのせいでこうなってるってことを忘れるな」
文句を言いながらも起き上がったユウはカチューシャをつけるとピコピコハンマーを手に取った。
「だから、僕とリンで相手するけど、流石にこの頭数相手だと抑えきるのはムリだから守りくらいは自分でやってってことだよ」
僕はハルの頭にカチューシャをつけると、僕の腕をまだ掴んでいる手を離させて代わりにピコピコハンマーを握らせた。
「トシとハルもユウの近くで固まりながらムリしない範囲で自分の紙風船を守っててね」
「大丈夫なの?」
心配そうにまた僕の腕を掴んでくるハル。
「俺も少しは戦えると思うぞ」
トシも戦う意志を見せてくれる。
そんな2人に僕もリンも微笑みかけた。
「大丈夫大丈夫。2人のほうが動きやすいからな」
気軽に言いながら肩を組んできたリンの肩へ僕も手を乗せた。
「そうそう。こういう荒事は慣れたモノだからね」
「慣れてるって」
「それはそれでどうなんだ?」
ハルは戸惑い、トシは苦笑した。
「大丈夫だから見ててよ」
僕はハルの手を離させるとリンを見た。
「僕が右半分でリンが左半分でいいね?」
「あぁ。問題ない」
頷いたリンは肩を組むのを止めて拳を突き出してきたので僕も拳を突き出してぶつけ合わせた。
「それじゃあ、かかってこいや!」
そうリンが叫ぶと、猿賊達は一斉に僕達へと向かってきた。
ハル目掛けて飛んできたモノを僕はとっさにペットボトルで叩き落とす。
一体何が飛んできた?
「ピンポン玉?」
トシが呟いた通り、僕が叩き落としたモノはピンポン玉だった。
しかし、こんな山の中でいきなりピンポン玉が飛んでくるなんて絶対にありえないおかしなことなので、僕は飛んできた方向へと視線を向けた。
そこには、頭に紙風船を乗せ、手にはピコピコハンマーを持った猿がいた。
「えっ?えっ?」
予想外の姿をした猿の登場にハルがかなり混乱していた。
僕も声に出すことはしなかったが、内心ではかなり戸惑ってはいた。
だって、紙風船を乗せてピコピコハンマーを持つ野生の猿なんて絶対いないだろうからね!
「あれは!猿賊だ!」
僕達の戸惑いをよそに、猟師さんが急に叫んだ。
「っ!!」
猟師さんが急に叫んだことでハルが僕の腕に掴まってきたが、立ち上がらせるのにちょうどいいのでそのまま引っ張り上げて立ち上がらせると、倒れているユウの元へ向かった。
「猿賊ってなんですか?」
「猿賊とはこの山に住む猿達のことで、キノコや山菜を取りに来た人を襲っては収穫物を奪っていく山賊のような猿達のことだ!」
そう言いながらも焦りはない猟師さん。
というか、大声で危機感を出しているつもりなのかもしれないけど完璧に説明口調だし、おもむろに背負っていた大きなリュックを置いて何かを取り出そうとしているところを見ると、これも1つのアトラクション的なトラブルと考えていいだろう。
そんな僕の考えは正しかったようで、猟師さんがリュックから取り出したのは人数分の紙風船がついたカチューシャとピコピコハンマー。
「さぁこれをつけてピコピコハンマーで応戦するんだ!」
「えっと、つまり紙風船を割られたら失格で、全員やられたらこれまで採ってきた山菜やキノコを没収されるということでいいのですか?」
こういうのはしっかりとルール確認をしておかないとね。
「そういうことだね」
僕が問いかけると猟師さんは普通に答えてくれた。
だったら最初から演技なんてせずに普通にルール説明してくれたほうがよかったのだけど。
「ほら!猿賊が襲って………」
再度演技を始めた猟師さんの言葉が止まり、驚愕に目が見開かれた。
それもそのはずだろう。
なぜなら、猿賊達は次から次へと姿をあらわし、最終的には30匹も出てきたのだから。
「なっ!ここまでの頭数かけるような相手なのか!?」
なぜか猟師さんの驚愕の目は猿賊達にではなく僕達に向けられた。
というか、さっきの猟師さんの言葉からして、この猿賊の頭数は相手によって変わるらしい。
そうなると、裏で猿賊達を操っている人物が誰なのかは自ずとわかってきた。そして、これだけの頭数をかけてきた理由もなんとなくわかってくる。
怒ってますアピールか、僕達の実力確認か。
どちらにせよ不甲斐ない戦いは出来ないか。
「ユウ。寝てないで起き上がって自分の紙風船守るぐらいはしてよね」
僕はユウの腕を軽く蹴った。
「テメーらのせいでこうなってるってことを忘れるな」
文句を言いながらも起き上がったユウはカチューシャをつけるとピコピコハンマーを手に取った。
「だから、僕とリンで相手するけど、流石にこの頭数相手だと抑えきるのはムリだから守りくらいは自分でやってってことだよ」
僕はハルの頭にカチューシャをつけると、僕の腕をまだ掴んでいる手を離させて代わりにピコピコハンマーを握らせた。
「トシとハルもユウの近くで固まりながらムリしない範囲で自分の紙風船を守っててね」
「大丈夫なの?」
心配そうにまた僕の腕を掴んでくるハル。
「俺も少しは戦えると思うぞ」
トシも戦う意志を見せてくれる。
そんな2人に僕もリンも微笑みかけた。
「大丈夫大丈夫。2人のほうが動きやすいからな」
気軽に言いながら肩を組んできたリンの肩へ僕も手を乗せた。
「そうそう。こういう荒事は慣れたモノだからね」
「慣れてるって」
「それはそれでどうなんだ?」
ハルは戸惑い、トシは苦笑した。
「大丈夫だから見ててよ」
僕はハルの手を離させるとリンを見た。
「僕が右半分でリンが左半分でいいね?」
「あぁ。問題ない」
頷いたリンは肩を組むのを止めて拳を突き出してきたので僕も拳を突き出してぶつけ合わせた。
「それじゃあ、かかってこいや!」
そうリンが叫ぶと、猿賊達は一斉に僕達へと向かってきた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
三姉妹の姉達は、弟の俺に甘すぎる!
佐々木雄太
青春
四月——
新たに高校生になった有村敦也。
二つ隣町の高校に通う事になったのだが、
そこでは、予想外の出来事が起こった。
本来、いるはずのない同じ歳の三人の姉が、同じ教室にいた。
長女・唯【ゆい】
次女・里菜【りな】
三女・咲弥【さや】
この三人の姉に甘やかされる敦也にとって、
高校デビューするはずだった、初日。
敦也の高校三年間は、地獄の運命へと導かれるのであった。
カクヨム・小説家になろうでも好評連載中!
家政婦さんは同級生のメイド女子高生
coche
青春
祖母から習った家事で主婦力抜群の女子高生、彩香(さいか)。高校入学と同時に小説家の家で家政婦のアルバイトを始めた。実はその家は・・・彩香たちの成長を描く青春ラブコメです。
連れ子が中学生に成長して胸が膨らむ・・・1人での快感にも目覚て恥ずかしそうにベッドの上で寝る
マッキーの世界
大衆娯楽
連れ子が成長し、中学生になった。
思春期ということもあり、反抗的な態度をとられる。
だが、そんな反抗的な表情も妙に俺の心を捉えて離さない。
「ああ、抱きたい・・・」
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
お隣さん家にいる高2男子が家の中で熱唱してて、ウチまで聞こえてるのはヒミツにしておきます。
汐空綾葉
青春
両親の仕事の都合で引っ越してきた伊里瀬佳奈です。お隣さん家には、同級生の男子が住んでるみたい。仲良くなれてきたけれど、気が向いたら歌い出すみたいでウチまで聞こえてきてるのはヒミツにしておきます。
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる