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65.クラクラしてピヨ

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「しおりはちゃんと行き渡ったね」

「うん」とか「はい」とか手を上げるとか反応は様々だったが、全員に行き渡ったことはわかったので説明を始めよう。

「今さっと見たのだけど、明日から4泊5日の新入合宿があるらしい」
『え?』

 みんなポカンとした表情で固まったかと思えば、

『はー!』

 リン以外のみんながかなりの大声で叫んだので、その叫び声の大きさに僕は耳を塞いだ。

 僕は耳を塞いだのだけど、僕を凝視していたナツ先生は反応出来ずに耳を塞ぐこともなかったのでキーンとなったのか、目を回してクラクラしてピヨっていた。

「明日からだって!?」
「なんで!?」
「ウソだろ!?」
「そんな急に!?」
「準備間に合わねーって!」
「ありえねーだろ!」
「どうなってるんだよ!」

 まぁ、そう言いたくなるのはわかるね。僕もしおりを見た瞬間にそう叫びたかったからね。

 入学式の次の日からいきなり泊まり込みの学校行事なんて普通はありえない。せめて一週間ぐらい経ってからだろう。

 普通ならありえないけど、普通ならいない僕が居る時点で普通じゃないのだから、まぁありえないことではないのだろうか?
 なんて考えもしたが、やっぱりおかしいと思ったのでまた叫びたくなった。

 しかし、説明しないといけないので、とりあえずはなんとかその叫びたかった気持ちを飲み込んで最後まで読み切ったのだ。

「はいはいはい!静かに!」

 手を叩きながら声をかけて落ち着かせようとするも、元々落ち着いていたリンや僕の声で落ち着いたユウ以外のみんなは落ち着く様子はない。

「はぁ」

 ため息と吐いてから手で黒板を強く叩いて「バン!」と大きな音を出すと、みんなはビクッとして黙り込んだ。

「あのね。僕は先生じゃなくてみんなと同じ新入生で、このしおりもさっき読んだばかりだからね。そして、このしおりを読んで新入合宿のことを知ったばかりで、本来ならそっちに座ってみんなと一緒にどうして?なんで?どういうこと?って言いたいのだからね。それを忘れないでよね」

 笑顔で言うと、みんなはブンブンと首を縦に振って頷いていた。

 そんなみんなの姿にリンは小さく笑っているけど、僕からすれば全くもって笑えないね。

「はぁ」

 再度ため息を吐いてから、こんなことになった原因のナツ先生を見ると、ナツ先生はまだピヨっていた。

 この様子だと、ナツ先生が復活することはないだろうから、やっぱり僕が説明を続けないといけないのだろうね。

「すでに決まっている学校行事なんだから文句を言ったところで変わることなんてないのだし、楽しむ方向へ気持ちを切り替えたほうがいいのじゃない?」
「そういうことだな」
「だね」

 ユウやリンが同意するように頷くと、みんなの雰囲気も切り替わった感じがしたので説明の続きといこう。

「行き先は四季山脈の向こう側で、最初に行くのは春町で、夏町、秋町、冬町の順番で回っていき、それぞれの町で1泊ずつするから。
 服装は私服でもいいけど、それぞれの町に行くから持っていく服装についてはちゃんと考えて持っていってね」

 なぜ服装を考えて持っていくように言ったのかというと、それにはまず四季山脈と春町、夏町、秋町、冬町について説明しないといけないだろう。
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