上 下
54 / 85

54.カッコつけたポーズ

しおりを挟む
「お嬢さん。今から俺とお茶でもどうですか?」

 女の子らしい生徒に声をかけながらユウは一瞬こちらへアイコンタクトを送ってきた。なので、リンの方を見ると、リンは僕と目を合わせてからユウ達の方へと歩き出した。

 はいはい。そういう流れに持っていくわけね。

 流れを理解した僕とは違い、急にそんな風に声をかけられた女の子らしい生徒は固まってしまっていた。

 それが普通の反応だよね。しかし、あいにくとこれで終わりではないのだ。

「いや、今から俺と映画でもどう?」

 そこへ追い打ちをかけるようにリンまで声をかけた。

 リンが流れにノッていく方向でいくのなら、僕もその流れにノッていこうと思うので、リンとユウの背後から近づいた。

「アホか」

 そう言いながら2人の頭を叩いてやる。

「いてっ」
「何しやがる」

 本気で痛がってるわけでも怒ってるわけでもないけど、2人は僕を睨みつけてきた。

 そんな2人を左右に押しやると、その間に入り込んで2人を見た。

「逆に聞きたいんだけど、何してるの?」
「見てわかるだろ?」
「ナンパさ!」

 リンが自信満々に言い切ると、2人はムダにカッコつけたポーズを決めた。

 まぁ、誰がどう見てもナンパなのは一目瞭然だよね。 

 それがわかっていながらも聞いたのは、みんなと認識を共有するためである。

 認識がズレていたらこのあとの展開についてこれないかもしれないしね。

 しかし、「そのムダにカッコつけたポーズはする必要ないよね?」と言いたいけど、そっちに話の流れがいくとめんどくさいのでグッと聞きたい気持ちを抑える。

「ナンパする言葉が古臭い気もしなくはないけど、2人共ナンパしてる場所がどこだかわかってる?」
「もちろんわかってるさ」

 わかっているなら本来ナンパなんてする場所ではないはずなんだけどね。

 そういった雰囲気が漂い始めた。

「じゃあどこだっけ?」
「女子高校だぞ」
「今日はその入学式で俺達は新入生なんだからな」
「そんなことも忘れたのか?」

 リンとユウに肩を組まれ、両サイドからそんなことを言われた。

 もちろんこの会話はワザとなので、リンもユウも本気で僕をバカにしているわけでも、うざ絡みしてきているわけでもないと頭では理解してるのだけど、その理解を超えるウザさについ殴りたくなった。
 しかし、その殴りたくなった気持ちを落ち着かせて話を続けよう。

「今から入学式なのにお茶とか映画とかありえないでしょ」

 僕のツッコミにハッとした2人はさらにカッコつけて女の子らしい生徒の方を見た。

「入学式終わりに俺と一緒にお茶でもどう?」
「いや、俺と入学式終わりに映画見に行こうよ」
「バカか」

 2人の頭を小突いてやる。

「いってーな」
「俺達のナンパの邪魔をするなよ」

 2人が両サイドから体当たりをしてこようとしたので1歩下がってよけると、2人はぶつかり合ってコケた。

 それを見てクスクス笑い出すみんな。

 すぐに起き上がった2人が近づいて来ようとしたので両手を突き出して止める。

「2人に聞きたいのだけど、女子高校はどんな高校だったのかな?」

 これもみんなわかっていることだろうが、それでも再度確認のために2人に問いかける。

 僕の問いに怒りの表情からポカンとした表情になる2人。

「どんな高校って?」
「女子高校という名前をしているけど」
「その中身は男子校というややこしい学校って」
『あれ?』

 自分達の答えに疑問を持った2人は同時に首を傾げた。

 2人と同じように不思議そうに首を傾げている生徒がチラホラいるのでみんな混乱し始めているのだろうね。

 そんな2人に再度問いかけてみる。

「そんな男子校の女子高校で2人は何してたの?」
「ナンパ、だな」
「誰を?」
「このカワイイ、新入生を?」
『あれ?』

 再度首を傾げた2人はカワイイ新入生を見つめた。
 2人だけではなく、僕やクラス中、さらには廊下にいる生徒からの視線を受けたカワイイ新入生は困ったように苦笑した。

 そんな苦笑した姿もかわいくて、多分キュンとした生徒が多数いただろう。

 そう思いつつも、結論と最後の確認に入るとしよう。

「女子高校というややこしいな名前の男子校の新入生ってことはどういうことかわかるかな?」
『カワイイ新入生は男』
「でいいんだよね?」

 もう結論が出ている、というか、最初から結論は出ていたのだけど、やっぱり最後は本人の口から聞くのが1番なので、カワイイ新入生の答えをみんなして待った。

「そうだよ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。

遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。 彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。 ……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。 でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!? もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー! ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。) 略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

処理中です...