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別離
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朝まで飲んだせいか頭がフラフラしていた。
彼女とはまた3日ほど連絡が途切れていた。
そんな日曜日の午後、電話が鳴った。
彼女の母親と名乗る女性からだった。
私の身分を証明出来るものを持って
彼女の家に来て欲しいと言う。
「聖子さんは?何かあったんですか?」
「それは来られた時にお話しします」
私は急いで車に乗り彼女の家に向かった。
家の鍵は彼女から渡されていた。
家に着いた私は真っ先に彼女を探した。
そこにいる女性が話しかける間も与えず、
リビング、寝室、浴室、クローゼットまで。
でも彼女を見つけることは出来なかった。
「五十嵐さんですね、どうぞお座り下さい」
上品な雰囲気の年配の女性だった。
それはとても落ち着いた優しい口調で
どこか彼女を思わせる響きがあった。
まぎれもなく女性は彼女の母親だった。
「五十嵐といいます、で彼女は?」
「お呼びして申し訳ございませんでした、
娘は3日前に他界いたしました」
頭が真っ白になり何も言えないでいた。
茫然としたまま数十秒は沈黙が続いた。
「何があったんですか?
4日前には電話で元気に話してました」
「あの子から病気のことは何も?」
「病気もなにも、聖子は…聖子さんは
ずっと元気でしたから」
息が詰まりながらやっと話していた私に
彼女の母親はこう続けた。
「あの子が大学に入った頃でした、
検査であの子の頭に腫瘍がみつかり
以来、月に1、2度のペースで
通院や入院を繰り返してきたんです
手術をするには難しい場所らしく
医師には投薬治療しか手がないと
言われてしまいました」
「そんな、全然そんな風には…」
「だと思います。娘は気丈な子でしたから
五十嵐さん、娘を大事にしてくれて
本当にありがとうございました、
あの子の父親も感謝しております」
「聖子さんは今どこに?」
「秋田の実家におります、
2日前に連れて帰り葬儀も済ませました」
「そんな…」
彼女がもう……言葉にならなかった。
「ここであの子の物を整理していたら
キャビネットにこれと何枚かの二人の
楽しそうな写真を見つけてね、
あなただとすぐわかった」
そう言うと見覚えのある封筒を手渡した。
私の宛名と彼女の名前は間違いなく
彼女の文字だった。
「ごめんなさいね、読ませてもらいました
あなたの事、ほんとに大好きだったのね
私達には何も言ってくれなくて
あなたのことが今日まで判らなかったの
誰かとお付き合いしているとは何となく
気付いてはいたけど」
「他に手紙は無かったですか?」
「出てきたものはこれだけでした」
そして住所と電話番号が書かれたメモを渡し
時間がある時に秋田に来て欲しいと。
「わかりました、必ず伺います」
それしか言えなかった。
時々連絡が途切れる理由がこれだったなんて
夢にも思っていなかった。
私は置いてあった私物を紙袋に押し込んで
彼女から渡されていた鍵を返した。
その後のことは何も覚えていない。
月曜日の朝、上司に電話で事情を伝え
3日間の有休をお願いした。
たった1日で世の中の全てが
変わってしまった気がしていた。
彼女とはまた3日ほど連絡が途切れていた。
そんな日曜日の午後、電話が鳴った。
彼女の母親と名乗る女性からだった。
私の身分を証明出来るものを持って
彼女の家に来て欲しいと言う。
「聖子さんは?何かあったんですか?」
「それは来られた時にお話しします」
私は急いで車に乗り彼女の家に向かった。
家の鍵は彼女から渡されていた。
家に着いた私は真っ先に彼女を探した。
そこにいる女性が話しかける間も与えず、
リビング、寝室、浴室、クローゼットまで。
でも彼女を見つけることは出来なかった。
「五十嵐さんですね、どうぞお座り下さい」
上品な雰囲気の年配の女性だった。
それはとても落ち着いた優しい口調で
どこか彼女を思わせる響きがあった。
まぎれもなく女性は彼女の母親だった。
「五十嵐といいます、で彼女は?」
「お呼びして申し訳ございませんでした、
娘は3日前に他界いたしました」
頭が真っ白になり何も言えないでいた。
茫然としたまま数十秒は沈黙が続いた。
「何があったんですか?
4日前には電話で元気に話してました」
「あの子から病気のことは何も?」
「病気もなにも、聖子は…聖子さんは
ずっと元気でしたから」
息が詰まりながらやっと話していた私に
彼女の母親はこう続けた。
「あの子が大学に入った頃でした、
検査であの子の頭に腫瘍がみつかり
以来、月に1、2度のペースで
通院や入院を繰り返してきたんです
手術をするには難しい場所らしく
医師には投薬治療しか手がないと
言われてしまいました」
「そんな、全然そんな風には…」
「だと思います。娘は気丈な子でしたから
五十嵐さん、娘を大事にしてくれて
本当にありがとうございました、
あの子の父親も感謝しております」
「聖子さんは今どこに?」
「秋田の実家におります、
2日前に連れて帰り葬儀も済ませました」
「そんな…」
彼女がもう……言葉にならなかった。
「ここであの子の物を整理していたら
キャビネットにこれと何枚かの二人の
楽しそうな写真を見つけてね、
あなただとすぐわかった」
そう言うと見覚えのある封筒を手渡した。
私の宛名と彼女の名前は間違いなく
彼女の文字だった。
「ごめんなさいね、読ませてもらいました
あなたの事、ほんとに大好きだったのね
私達には何も言ってくれなくて
あなたのことが今日まで判らなかったの
誰かとお付き合いしているとは何となく
気付いてはいたけど」
「他に手紙は無かったですか?」
「出てきたものはこれだけでした」
そして住所と電話番号が書かれたメモを渡し
時間がある時に秋田に来て欲しいと。
「わかりました、必ず伺います」
それしか言えなかった。
時々連絡が途切れる理由がこれだったなんて
夢にも思っていなかった。
私は置いてあった私物を紙袋に押し込んで
彼女から渡されていた鍵を返した。
その後のことは何も覚えていない。
月曜日の朝、上司に電話で事情を伝え
3日間の有休をお願いした。
たった1日で世の中の全てが
変わってしまった気がしていた。
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