VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

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◇556 それ、最悪死んでたんじゃ?

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 一夜が明け、第二フェーズの余韻に浸っていた。
 ギルドホームに集まったアキラたちは、昨日のことを思い起こす。

「ねぇ、Night。昨日のことなんだけど」
「ん? 昨日がどうしたんだ」

 アキラとフェルノ、それから雷斬の三人は、Nightに詰め寄る。
 昨日の第二フェーズ、如何して勝てたのか、正直分かっていない。
 それになにより、コアを破壊したことで起きたあの衝撃。
 Nightは全てを知っているので、アキラは訊ねる。

「ほら、コアを破壊したこと。覚えてるでしょ?」
「もちろん覚えている。無事にコアは破壊し、明日の第三フェーズに進めたな」
「そう言うことじゃないよー」

 フェルノはムキになってボヤいた。
 腕をブンブン振り回すと、まるで子供のように怒る。
 Nightは面倒そうにしながらも、読んでいた本をパタンと閉じる。

「それで、なにが不満なんだ?」
「不満って言うのかな?」
「どうでしょうか? 勝てたのは良いことですが、実際なにがなにやら」

 雷斬は首を捻った。
 それもその筈、コアを破壊したことで、アキラたちは勝利を収めた。
 一重に、アキラたちの活躍は、充分な貢献に繋がったのは間違いない。

 けれど、ボーンドラゴンを倒せたのは偶然にも等しい。
 確かに倒したことには変わりないが、それでもいかんせん不思議だ。

「ボーンドラゴンは、どうして倒れたのでしょうか?」
「なんだ、そんなことか」
「「そんなこと!?」」

 Nightは簡単に答える。
 アキラとフェルノは目を見開き、Nightにグッと近付く。
 表情を一切変えず、面倒そうに咳き込むと、Nightは簡潔に答えた。

「いいか、ボーンドラゴンは骨系のモンスター。大抵骨系のモンスターは、体の一部が失われると、それが消滅しない限り、動きが極めて悪くなる」
「それは実際に見たから分かるけど」
「それに加えて、失った部分を取り戻そうと必死になる。そんな執拗な習性が、今回の勝敗に繋がった訳だ」
「「「ん?」」」

 理解をしようとはした。概ねも理解できる。
 つまり、ボーンドラゴンはアキラが手にしていた骨=自分の体を取り戻そうと必死だった。
 それは理解ができ、骨をコアに投げたせいで、自分からぶつかりに行った。
 完全に自殺行為だったけど、そのおかげで勝てたのだ。

「アキラー、解る?」
「解るけど……解らないよ」

 アキラとフェルノは互いに顔を見合わせた。
 お互い同じことを考えていた。

「なに? なにか変なことでもあるの?」
「ベル、少し考えてみてください。ボーンドラゴンは自分の体を取り返すために、コアにぶつかりましたよね。その衝撃で熱が発生し、ボーンドラゴンは消えてしまったんです」
「消し炭だったわね」

 ベルの言う通り、ボーンドラゴンは消し炭になっていた。
 その余波をまともに喰らったアキラたちは、恐怖を感じた。
 あの熱、余波でなければ死んでいた。

「危うく死に掛けたな」
「「Nightのせいでしょ?」」
「何故私が叱られるんだ。それで、なにが気掛かりになった?」

 Nightは催促をする。
 するとアキラは上手く言えないが、しどろもどろになりながら答える。

「つまりね、ボーンドラゴンは倒せたけど、あの熱で倒れたのかな?」
「……そう言うことか。正直な話、あのコアはただの熱源コアじゃない」
「やっぱり! それじゃあなんだったの?」
「粒子の塊だな。それらがぶつかり合うことで、対消滅を起こしたんだ」
「「「対消滅?」」」

 あまりにも物騒な言葉が飛び出す。
 アキラたちは怖くなるが、Nightは淡々と答える。

「対消滅は、この世で最も強力な消滅だ。素粒子とその反対になる粒子がぶつかり合うことで、物質すら残らなくなる現象。お前の視界が一瞬奪われたんだろ?」
「うん」
「それも余波だな。GAMEだから良かったが、コレが現実なら、全て終わっていたぞ」

 Nightの言葉は軽いように見えて、実は重たい話をしていた。
 要するに、無限のエネルギーを生み出し続けていたコアを破壊したことで、粒子同士の対消滅が起きた。
 まるで太陽が爆発したかのような熱量と、全てを終わらせる対消滅。
 二つの作用により、ボーンドラゴンは跡形も無く消えてしまった。
 同時に、アキラたちは強制ログアウトを超えた、精神的苦痛を浴びる寸前だったのだ。

「怖いよ! 悍ましいよ!」
「だが、やり遂げた」
「それでこれとは話が違うよ! Night、もっとまともな作戦考えてよ」
「作戦か……確かに、ボーンドラゴンの骨が手に入っていた時点で、策はいくらでもあった。
穴を掘るでも言い、爆破するでも言い、バラバラに一つずつ分けていく作業も、時間はかかるが確実だったな」
「尚更じゃんかー!」

 もはや作戦とかそんな話じゃなかった。
 完全に危険に飛び込んだだけの愚かな行い。
 にもかかわらず、Nightの価値観は飛んでいた。

「だがこれで経験にはなっただろ」
「経験って、そんな呑気な……」
「呑気? そう思うのは勝手だが、実際に分かったこともあるだろ」
「分かったこと?」

 一体何が解ったのだろうか?
 アキラたちは互いに顔を見合わせるも答えが出ない。
 首を捻ってNightに訊ねていた。

「分かったことって?」
「お前達は幸運ってことだ」
「「「うるさい!」」」

 完全に煽られていた。
 アキラたちは怒鳴り付ける。
 珍しく雷斬まで怒ると、Nightもポカンとしたのか、そのまま時間だけが刻々流れ、気が付けば変な空気になっていた。
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