上 下
558 / 568

◇554 痛み分けな結末

しおりを挟む
 バー――――ン!! ボー――――ン!!

 爆発音が響き渡った。
 眩い閃光に包まれると、とてつもない熱が迸る。
 ボーンドラゴンはコアにぶつかり、真っ先に光と爆発に飲まれた。

「ボンギャラララァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 ボーンドラゴンの姿は爆発に巻き込まれてしまった。
 光に覆い包まれ、絶叫と共に飲み込まれる。
 それが最後の言葉になると、ボーンドラゴンは消えてしまった。

「な、なにが起きて……あ、あっっ!?」

 アキラは見えなかった。
 視界が奪われると、何が起きているのか分からない。
 にもかかわらず、頬を焼く様な熱が走ると、アキラは声を上げた。

「ヤッバ! アキラ、逃げるよー!」
「私が道を切り拓きます。満月斬り!」

 雷斬は道を切り拓く。
 満月斬りで光と熱を断ち切ると、その後ろをフェルノが全力で駆け込む。

「うっ、うわぁ!? フェルノ、なんで私抱えてるの?」
「いいから、早くしないと……ぐへっ!」
「フェルノさん!? うわぁ!」

 アキラとフェルノは雷斬にぶつかった。
 互いに体を押し付け合うと、光と熱に押し出される。
 部屋の壁に思いっきり叩き付けられると、アキラはようやく視界を取り戻す。

「い、痛い……けど、熱い! 熱い熱い!?」
「もしかしてあのコア、壊しちゃダメだった系?」
「恐らくそうですね。早く壁の裏に」

 アキラたちは熱に襲われた。
 コアを壊したせいか、とてつもない光と熱に肌が焼けそうになる。
 壁に手を触れながら何とか進むも、流石に間に合わない。HPがドンドン削れていく。

「このままじゃ、強制ログアウトしちゃうよ」
「でもさー」
「そうですね。このままでは、時間も……」
「お前ら、私を忘れるな」

 Nightの声が聞こえた。
 耳を打たれると、アキラたちの前に巨大な盾が床から生える。
 すると光と熱が遮られ、一気に焼けた肌が冷たくなった。

「さ、寒い! 今度は急に寒い!?」
「当り前だ。熱源を壊したからには、この部屋は一気に冷えるぞ」
「そんな! っていうか、Night。遅いし、無茶だよ。私たちじゃなかったら、死んでたよ!」

 アキラは遅れて助けに来たNightを叱った。
 危うく最終日を迎える前に死に掛けた。
 険しい表情になる中、Nightはインベントリからアイテムを取り出す。

「ほらっ」
「おっと。コレ、回復ポーション?」
「火傷も回復できるように、私が調整したものだ」

 Nightは回復ポーションを取り出し、アキラたちそれぞれに手渡す。
 受取った中身を一気に飲み干す。
 すると喉の奥がヒリヒリする。変な感覚に追い込まれると、今にも吐き出しそうになった。

「不味っ!」
「当り前だ。効能が高い分、苦みも倍だからな」
「うえっ、こんな飲むのー? 吐きそうな人がいるのに?」
「……」

 アキラたちは嗚咽を漏らした。
 そんな中、雷斬だけは全力で耐える。
 無言のまま動かない石になると、ベルに肩を触られる。

「雷斬、無理してまで飲む必要は無いのよ?」
「……」
「飲めないのね。はいはい、ゆっくり飲めばいいのよ」

 あんなもの、飲みたくもない。
 けれど飲まないと、いつまでも肌が痛い。
 イベントで勝利した筈だけれど、この部屋から出られるようになるまで、まだ少し時間があるようで、アキラたちは苦悶の表情を浮かべた。

「ううっ、不味い」
「これ、今まで飲んだ奴より厳しくない?」
「不味いを通り越して不味いものを調合したからな。その分、効き目は凄いだろ」
「「効き目?……嘘っ!?」」

 アキラとフェルノは驚いた。
 体中が焼ける感覚が無くなり、痛みがスッと引いて行く。
 更に腕を見てみると、焼けた肌が治って来た。
 とんでもない回復効果に目を見開くと、瞬きさえできなかった。

「嘘じゃない。それが現状いまだ」
「不味いだけのことはあるねー」
「うん。これで効かなかったら、Nightのこと……」

 手が出ていたかもしれない。
 それくらい不味くて仕方が無く、本気で吐き出したかった。

 それでもアキラたちはポーションを飲み切る。
 口の端から緑色の液体が垂れてはいるが、気が付けばHPも全回復、怪我も治っている。
 万全を今更期したアキラたちだったが、そろそろ時間らしい。

「おっ、来たな」

 アキラたちの体が粒子に包まれる。
 如何やらテレポートの準備が整ったようで、第二フェーズも無事に終わった。
 のだが、まだアキラたちは分からないことがある。

「そう言えばNight。ボーンドラゴンはどうして……」
「ああ、それは……」

 ボーンドラゴンが何故倒されたのか。
 Night以外の面々は、あまり分かっていなかった。
 そのせいか、テレポート寸前で訊ねたのだが、間に合わない。

「「「あっ!」」」

 スッと互いが目の前から消え合う。
 要塞の中枢部には誰もいなくなってしまうと、冷たく寂しい空気が立ち込める。

 Nightの作った盾だけが取り残されると、真っ暗闇に覆われた。
 もはや肉眼での視認は不可能。
 呆気ない幕引きを前に、第二フェーズは無事に終わった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

沢山寝たい少女のVRMMORPG〜武器と防具は枕とパジャマ?!〜

雪雪ノ雪
ファンタジー
世界初のフルダイブ型のVRゲーム『Second World Online』通称SWO。 剣と魔法の世界で冒険をするVRMMORPGだ。 このゲームの1番の特徴は『ゲーム内での3時間は現実世界の1時間である』というもの。 これを知った少女、明日香 睡月(あすか すいげつ)は 「このゲームをやれば沢山寝れる!!」 と言いこのゲームを始める。 ゲームを始めてすぐ、ある問題点に気づく。 「お金がないと、宿に泊まれない!!ベットで寝れない!!....敷布団でもいいけど」 何とかお金を稼ぐ方法を考えた明日香がとった行動は 「そうだ!!寝ながら戦えばお金も経験値も入って一石三鳥!!」 武器は枕で防具はパジャマ!!少女のVRMMORPGの旅が今始まる!! ..........寝ながら。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話 主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉 神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく…… ※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!! 内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません? https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

処理中です...