VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に！？

水定ユウ

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◇５５１　VSボーンドラゴン２

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　ボーンドラゴンの突然の行動変化。
　HPが半分を切ったせいだろう。
　アキラは今までの経験からパターンを読み、自分に突撃して来るボーンドラゴンを引き付ける。

「二人共、私が注意を引くから、その間にお願い！」

　アキラが叫ぶと、無言の相槌があった。
　フェルノも雷斬も、ボーンドラゴンの視界から外れる。
　アキラの存在だけが、ボーンドラゴンの視界に収まると、鋭い骨の牙を剥き出しにし、噛み付こうとする。

「こういう時は……避ける！」

　アキラは右へと思いっきり飛ぶ。
　クルンと前転をしながら回避すると、ダメージを〇で抑える。

　ガタガタガタガタガタガタガタガタ！！

　ボーンドラゴンは攻撃を回避され、骨を床に擦り付ける。
　これで少しは自傷ダメージを稼ぎたい。
　そう思ったのだが、HPが半分を切ってからは、自傷ダメージの判定が無くなる。

「どうして？　自傷ダメージが入ってない」
「もしかすると、HPが半分を切るのを狙っていたのでしょうか？」
「それだけ頭が良いってこと？　それじゃあさっきの行動もわざと……」

　雷斬の言葉によって、アキラの意識が加速する。
　もしもそうだとすれば、ボーンドラゴンは非常に好戦的だ。
　長く大きな体を見事に操ると、部屋の中を悠々と支配する。
　その巨体によってまともに逃げる隙間も無く、アキラは追い詰められた。

「おっと、うおっと、あ、危なかった……」

　ボーンドラゴンは円を描くようにして、アキラを追い詰める。
　鋭い牙と分厚い骨の体で威嚇すると、アキラは反撃所か、避けるだけで必死だ。
　自然と動きも最小限になり、逃げる空間も奪われると、部屋の中央付近に寄せられていた。

「これって、私を囲んでるよね？」

　ボーンドラゴンは一人ずつ食べるつもりだった。
　アキラのことを狙いに決めた時点で、取り囲む予定だったらしい。
　習性と簡単に片づけられない。
　空間を詰められ、アキラが床を見失うと、ボーンドラゴンの坩堝に嵌っていた。

「アキラ！？　雷斬、行くよ！」
「はい。【雷鳴】」

　フェルノと雷斬は見兼ねて助けに向かう。
　注意を引いてくれているので、いくらでも攻撃を加える隙はあった。
　けれどその度に長い体と尻尾で邪魔をされ、進路を封じられていたが、もはやこじ開けるしかない。

「【吸炎竜化】！　燃やし尽くすよ」
「三日月！」

　フェルノは武装した拳に炎を灯す。
　荒々しいパンチを繰り出し、ボーンドラゴンの体に叩き込む。

　対して雷斬は繊細だ。
　一度鞘に納めた刀を振り抜くと、その形は弧を描く。
　まるで三日月のようで、下から掬い上げた一撃が、骨の隙間に食い込んで、軟骨をすり減らした。

「ボンギャラララァァァァァァァァァァ！？」

　ボーンドラゴンは雷斬の繰り出した技に苦しみ出す。
　ほんの少しだけ、上に対して隙間ができた。
　そこからなら、ボーンドラゴンの裏を掻ける。
　アキラは【キメラハント】＋【月跳】を発動した。

「あの隙間なら潜れる。せーのっ！」

　跳躍力を強化し、白いモフモフの毛と共に、ボーンドラゴンから脱する。
　ほんの少ししか開いていない隙間を、体を窄めながら何とか越える。
　脇腹が引っかかりそうになり、HPが少し削られるも、最小限で済んだ。

「痛たたたぁ。でもギリギリセーフだね」

　アキラは無事にボーンドラゴンから抜け出す。
　安堵したのも束の間。
　ボーンドラゴンが、骨と骨を軋ませながら、ギュンと体を丸めた。

「ボンギュァァァァァァァァァァァァァァァ！」

　危うく即死するところだった。
　アキラは悍ましい恐怖を感じ、冷汗を掻く。

「アキラ、大丈夫だったー？」
「うん。二人が隙を作ってくれたおかげだよ」
「いえ、このくらいのこと、造作もありません。ですが、ボーンドラゴンは手強いですね。隙が……ありません」

　アキラたちは悠長に話している間もなかった。
　こうしている間にも、ボーンドラゴンは、恵まれた図体を活かし、アキラたちを攻撃する。
　長い尻尾を叩き付け、尖った骨を突き付ける。
　喰らえばペラペラの防御が一瞬で無に帰すと思えば、迂闊に手が出せない。

「HPは半分以下なのになー」
「半分以下になってしまったから、攻撃が苛烈しているのでしょうか？」
「きっとそうだよ。Night！　なんとかならないの？」

　アキラはNightに叫んだ。
　するとNightはベルと作業している。
　弓を構えたベルに、変な形をした矢を預ける姿が映る。

「あ、アレなにかな？」
「いつもの奴じゃない？　ほら、ベルに渡すってことは、ベル用の秘策」
「どのような秘策か、少々怖いですが、今はありがたいですね。ベル、お願いします」
「分かってるわよ……今すぐ、そこを離れなさい！」

　ベルは弦を引いた。
　矢が思いっきり放たれるが、アキラたちは妙な違和感を覚える。
　屋の先端が丸い。白い布が覆い被さっていて、ベルも何故か曲射で射る。

「あれ、いつもと軌道が……」
「なんかマズそうじゃない？」
「はい。皆さん、急いで下がりましょう」
「下がりましょうって言っても、もう矢が……うわぁぁぁぁぁ！」

　ベルの射た矢は、ボーンドラゴンに命中した。
　曲射で射られた矢は、ボーンドラゴンに当たると、白い布が爆発。
　中に入っていた火薬が爆発し合うと、ボーンドラゴンだけではなく、アキラたちまで巻き込んだ。

　“離れさない”の意味。
　最初から分かっていた。
　自分たちよりも強いモンスター相手には、危険も承知だ。
　アキラたちはNightの考えを読み切れず、完全に自滅した。

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