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◇543 他のプレイヤーを囮にして
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「よいしょ、よいしょ、後ちょっと……それっ!」
「よっと」
「それーっ! ふぅ、やーっと終わったー」
隠し通路の狭い出入り口から抜け出すと、ようやく解放された。
全身が硬くなっているせいか、骨と筋肉がボキボキ音を立てる。
これは筋肉痛確定だ。
アキラたちは背筋を伸ばすと、肺一杯に空気を取り入れた。
「いやぁー、ここまで大変だったねー」
「そうだな。大体十五分くらいか?」
「それって時間掛かっちゃったのかな?」
「恐らくはな。実際、途中から埃の量が尋常じゃなっただろ?」
「「確かに!」」
アキラとフェルノは首を縦に振った。
実際、頭や肩にはたくさんの小さなコンクリートの破片や、埃、粉末状の砂が付着していた。
とは言え、蜘蛛の巣なんかも張ってあったが、背が低くて助かった。
おかげでこれくらいで済んだので、アキラたちは胸を撫でる。
「でも時間が掛かっちゃったから、急がないとマズいよね?」
「そうだな。本当はもう行きたいんだが……」
「雷斬とベルが全然来ないねー。あはは、もしかして奥で詰まってるのかな?」
「本当にありそうだから止めろ。フラグ立てるな」
「あはは、立てたつもりないけどねー」
五分経っても追い付いて来ない。
もしかすると、隠し通路の奥で引っ掛かっているのかも。
助けに行った方がいいよね?
アキラはそう思うも、隠し通路の奥で蠢く影があった。
「アレは……」
「ようやくか」
隠し通路から挟まりながらやって来るのは二人組。
雷斬とベル。肩や腕、足が絡まりながら、それでも何とか進んでいる。
だけど表情は険しそう。いいや、むしろ喧嘩調だった。
「ちょっと雷斬、光が見えたわよ!」
「本当ですね。あっ、アキラさんたちが待っていますよ」
「あの二人、全く呑気よね。私たちがこんなに苦労しているの」
「そうですね。ですがこれも私たちのせいです」
「なんで雷斬は相変らずなのよ!」
喧嘩と言うよりも口論だった。
しかも二人の間ではなく、悠々と先に行った、アキラたちに苛立っている。
これはヤバい。きっと通路を抜けたら怒られる奴だ。
アキラはNightの肩を掴んだ。
「なんだ、アキラ?」
「どうしよう。二人共怒ってるよ!?」
「そうだな。それじゃあどうする? 今なら一方的に倒せるぞ?」
「そんなことしないけど……二人共ゆっくりでいいからね」
「「ゆっくり進める隙間は無いわよ」無いですよ!」
アキラは口を“へ”の字に歪めた。
如何して怒られるの? アキラは声を掛けただけなのに、気に入らない素振りを見せられた。
なんだか声を掛けた方がバカを見る。そんな気がしてしまい、何も言わないことにした。
「雷斬、足をもっと下げてよ」
「ですがそれだと私の腰骨が引っかかって……」
「痛い、痛い痛い痛い、痛いから、ちょっと止めてよね!」
「私は言われたようにしただけですよ?」
なんだか理不尽な言い合いまで繰り広げていた。
Nightは溜息を零す。
こうしている間にも、要塞の制圧率は増えている。
非常にマズい。なんの活躍も果たせないまま、イベントが終了するかもしれない。
「Night、どうしよう。このままじゃ、こうしている間にイベントが終わっちゃうよ」
「その可能性は高いな」
「やっぱりそうだよね!? どうしよう」
「安心しろ。私達がこうしている間、他のプレイヤーに襲われないのは何故だと思う?」
「えっ?」
言われてみればそうだった。
アキラたちが今いるのは隠し部屋でも隠し通路でもない。
その外にある、普通の廊下だ。
こんな場所、敵プレイヤーに見つかったら一発で襲われる。
優秀な遊撃の雷斬と遠距離攻撃のベルが動けていない。
もしも囲まれたら終わりかもしれない。
にもかかわらず、敵プレイヤーと接敵しない。
ましてや要塞の揺れも収まっている。
これって絶対に意味がある。因果関係のようなもので、アキラは考えだした。
「もしかして、他のプレイヤーたちが頑張ってくれてる?」
「それも一つだろうが、私たちの存在に気が付いていないのが大きいだろうな」
「ん? どゆことー」
フェルノは首を捻った。
気が付かれていない? 流石にそんなことあるのかな。
アキラも考えるが、Nightはズバリ言い切る。
「こんな所で油を売っているような奴等、相手にもならないんだろ」
「「なっ!?」」
Nightの言葉が刺さった。
もしもそんな見られ方をしていたら少し腹が立つ。
だけどアキラたちは誰とも接敵していない。
つまり、Nightの言うことはあながち間違ってはいなかった。
「とは言え。これは好都合だ」
「好都合? 完全に舐められてるって奴だよね?」
「そう捉えるのも一つだな。だが、私たちに注意が向いていないと言うことは、敵は何処に注意を向けている?」
「えっ、そんなの……」
答えは考えるまでもない。
アキラたちがここに居て、誰とも接敵していない。
つまり答えは……
「他のプレイヤーさんたちが、敵プレイヤーさんたちを引き付けてくださっているのですね」
答えたのは雷斬だった。
ベルと一緒に、ようやく隠し通路を出られたらしい。
全身埃や蜘蛛の巣が引っかかっているけれど、とりあえずHPが減るような怪我は負ってなくてなによりだ。
「二人共大丈夫?」
「はい、なんとか」
「全身痛いけどね。で、私達が舐められてるって話だけど、Nightはどうするか分かってるのよね?」
「無論だ。他のプレイヤーが囮になってくれているとして、私たちはその隙に敵の裏を掻く」
「「「裏を掻く?」」」
それができたら一番いいけど、如何やってするんだろう。
アキラとフェルノがポカンとする中、Nightは答える。
「簡単な話だ。私たちで奇襲を仕掛ける。今回のイベントは要塞を先に制圧した方の勝ちだ。つまり、言いたいことは分かるな?」
「存在が知られていない透明部隊を向かわせて、先に要塞の中枢を落とすということですね」
「そう言うことだ。それじゃあ今から作戦だが……」
Nightは用意された簡単な地図を取り出す。
今回は時間も無い。Nightの予測を頼りに、ある程度の作戦を作った。
完全にシンプルなもので、囮になって暴れてくれている陽動部隊とは当然連携も取れない。
完全に地の力が試される中、アキラたちは用意周到でもない作戦を胸に、とりあえず誰もいない廊下を行く。
「よっと」
「それーっ! ふぅ、やーっと終わったー」
隠し通路の狭い出入り口から抜け出すと、ようやく解放された。
全身が硬くなっているせいか、骨と筋肉がボキボキ音を立てる。
これは筋肉痛確定だ。
アキラたちは背筋を伸ばすと、肺一杯に空気を取り入れた。
「いやぁー、ここまで大変だったねー」
「そうだな。大体十五分くらいか?」
「それって時間掛かっちゃったのかな?」
「恐らくはな。実際、途中から埃の量が尋常じゃなっただろ?」
「「確かに!」」
アキラとフェルノは首を縦に振った。
実際、頭や肩にはたくさんの小さなコンクリートの破片や、埃、粉末状の砂が付着していた。
とは言え、蜘蛛の巣なんかも張ってあったが、背が低くて助かった。
おかげでこれくらいで済んだので、アキラたちは胸を撫でる。
「でも時間が掛かっちゃったから、急がないとマズいよね?」
「そうだな。本当はもう行きたいんだが……」
「雷斬とベルが全然来ないねー。あはは、もしかして奥で詰まってるのかな?」
「本当にありそうだから止めろ。フラグ立てるな」
「あはは、立てたつもりないけどねー」
五分経っても追い付いて来ない。
もしかすると、隠し通路の奥で引っ掛かっているのかも。
助けに行った方がいいよね?
アキラはそう思うも、隠し通路の奥で蠢く影があった。
「アレは……」
「ようやくか」
隠し通路から挟まりながらやって来るのは二人組。
雷斬とベル。肩や腕、足が絡まりながら、それでも何とか進んでいる。
だけど表情は険しそう。いいや、むしろ喧嘩調だった。
「ちょっと雷斬、光が見えたわよ!」
「本当ですね。あっ、アキラさんたちが待っていますよ」
「あの二人、全く呑気よね。私たちがこんなに苦労しているの」
「そうですね。ですがこれも私たちのせいです」
「なんで雷斬は相変らずなのよ!」
喧嘩と言うよりも口論だった。
しかも二人の間ではなく、悠々と先に行った、アキラたちに苛立っている。
これはヤバい。きっと通路を抜けたら怒られる奴だ。
アキラはNightの肩を掴んだ。
「なんだ、アキラ?」
「どうしよう。二人共怒ってるよ!?」
「そうだな。それじゃあどうする? 今なら一方的に倒せるぞ?」
「そんなことしないけど……二人共ゆっくりでいいからね」
「「ゆっくり進める隙間は無いわよ」無いですよ!」
アキラは口を“へ”の字に歪めた。
如何して怒られるの? アキラは声を掛けただけなのに、気に入らない素振りを見せられた。
なんだか声を掛けた方がバカを見る。そんな気がしてしまい、何も言わないことにした。
「雷斬、足をもっと下げてよ」
「ですがそれだと私の腰骨が引っかかって……」
「痛い、痛い痛い痛い、痛いから、ちょっと止めてよね!」
「私は言われたようにしただけですよ?」
なんだか理不尽な言い合いまで繰り広げていた。
Nightは溜息を零す。
こうしている間にも、要塞の制圧率は増えている。
非常にマズい。なんの活躍も果たせないまま、イベントが終了するかもしれない。
「Night、どうしよう。このままじゃ、こうしている間にイベントが終わっちゃうよ」
「その可能性は高いな」
「やっぱりそうだよね!? どうしよう」
「安心しろ。私達がこうしている間、他のプレイヤーに襲われないのは何故だと思う?」
「えっ?」
言われてみればそうだった。
アキラたちが今いるのは隠し部屋でも隠し通路でもない。
その外にある、普通の廊下だ。
こんな場所、敵プレイヤーに見つかったら一発で襲われる。
優秀な遊撃の雷斬と遠距離攻撃のベルが動けていない。
もしも囲まれたら終わりかもしれない。
にもかかわらず、敵プレイヤーと接敵しない。
ましてや要塞の揺れも収まっている。
これって絶対に意味がある。因果関係のようなもので、アキラは考えだした。
「もしかして、他のプレイヤーたちが頑張ってくれてる?」
「それも一つだろうが、私たちの存在に気が付いていないのが大きいだろうな」
「ん? どゆことー」
フェルノは首を捻った。
気が付かれていない? 流石にそんなことあるのかな。
アキラも考えるが、Nightはズバリ言い切る。
「こんな所で油を売っているような奴等、相手にもならないんだろ」
「「なっ!?」」
Nightの言葉が刺さった。
もしもそんな見られ方をしていたら少し腹が立つ。
だけどアキラたちは誰とも接敵していない。
つまり、Nightの言うことはあながち間違ってはいなかった。
「とは言え。これは好都合だ」
「好都合? 完全に舐められてるって奴だよね?」
「そう捉えるのも一つだな。だが、私たちに注意が向いていないと言うことは、敵は何処に注意を向けている?」
「えっ、そんなの……」
答えは考えるまでもない。
アキラたちがここに居て、誰とも接敵していない。
つまり答えは……
「他のプレイヤーさんたちが、敵プレイヤーさんたちを引き付けてくださっているのですね」
答えたのは雷斬だった。
ベルと一緒に、ようやく隠し通路を出られたらしい。
全身埃や蜘蛛の巣が引っかかっているけれど、とりあえずHPが減るような怪我は負ってなくてなによりだ。
「二人共大丈夫?」
「はい、なんとか」
「全身痛いけどね。で、私達が舐められてるって話だけど、Nightはどうするか分かってるのよね?」
「無論だ。他のプレイヤーが囮になってくれているとして、私たちはその隙に敵の裏を掻く」
「「「裏を掻く?」」」
それができたら一番いいけど、如何やってするんだろう。
アキラとフェルノがポカンとする中、Nightは答える。
「簡単な話だ。私たちで奇襲を仕掛ける。今回のイベントは要塞を先に制圧した方の勝ちだ。つまり、言いたいことは分かるな?」
「存在が知られていない透明部隊を向かわせて、先に要塞の中枢を落とすということですね」
「そう言うことだ。それじゃあ今から作戦だが……」
Nightは用意された簡単な地図を取り出す。
今回は時間も無い。Nightの予測を頼りに、ある程度の作戦を作った。
完全にシンプルなもので、囮になって暴れてくれている陽動部隊とは当然連携も取れない。
完全に地の力が試される中、アキラたちは用意周到でもない作戦を胸に、とりあえず誰もいない廊下を行く。
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