上 下
534 / 568

◇530 頼りになります。聖レッドローズ騎士団さん!

しおりを挟む
 アキラたちを含めた継ぎ接ぎの絆は襲い掛かるモンスターたちを相手に、淡々と蹴散らしていた。
 【キメラハント】:【甲蟲】で武装した拳と、フェルノの吸炎竜の拳が飛んできたモンスターを殴りつける。

 その周りではベルが他のプレイヤーたちと一緒に矢を射る。
 黒い点を次々撃ち落とすと、迫り来るモンスターを減らす。

 減らされたモンスターたちは壁の上を走り回る遊撃プレイヤーによって処理された。
 雷斬も昆虫系モンスターを除いて邪魔にならないように切り付ける。
 調子を取り戻したおかげか、徐々に慣れ始め、優位を取っていた。

「そりゃぁ!」
「あ、あんがとな。助かったぜ」
「いえ、お気になさらないでください。それよりも、この数は骨が折れますね」

 雷斬は襲われていたプレイヤーを助けた。
 しかしこれでは埒が明かない。
 壁の上のプレイヤーたちは、上手くモンスターをいなしているのだが、物量差で押し潰されてしまいそうだった。

「おい、あんたら! もっと弓を射れねぇのか!」
「無理に決まってるわ。これで限界なの」
「そうだぜ。弓って、補正があってもムズいんだぞ」
「それよりお前たちが壁に登って来させるなよ。モンスターをどっかに行かせろよ!」
「ふざけるな。それができたら苦労するかよ」

 プレイヤー間で口論を始めた。
 そのせいで手が止まり、モンスターの動きが活発になる。
 ここが勝機。とでも思ったのか、勢いよく壁に激突して来る。

 ドス―ン!!

「「「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」

 壁にモンスターがぶつかった。
 耐久値が一気に削られ、壁が揺れ動く。
 乗っていたプレイヤーたちも足下が疎かになり、クラリと揺れてしまった。

「痛ってぇ」
「ふざけんじゃねぇぞ! この野郎が」
「待って。勝手に立ち上がらないで。痛い!」

 転んだプレイヤーたちが互いに腕や足を絡ませていた。
 そのせいで上手く立ち上がれず、体が捻じれてしまっている。
 誰か一人が動けば誰かが怪我をする。
 あまりにもドミノ倒し的な現状に、体制が崩れてしまっていた。

「マズいな……私が援護に行くか」
「Night、待って。Nightの盾が無いと、私たちも戦えないよ」
「そうよ。Nightはここにいるの」

 継ぎ接ぎの絆もこの状況を黙ってみているしかなかった。
 人数の不利が大勢の中にも響いてしまっている。
 今の持ち場を維持するだけで力を出し切っていた。

「マズいな。本当にマズいか……雷斬を一度呼び戻すぞ!」
「どうやってー?」
「こんな状況で伝令なんて無理よ。それともあれ? 発煙筒でも使うの?」
「そんなHPは残っていない。私が走っても……」
「「「危険だよ!!!」」」

 足が速くないNightが動くのはあまりにも危険だ。
 ここでNightに居なくなられるのは絶対にダメ。
 それなら緊急避難も視野に入れ、Nightは思考を巡らせる。

「仕方ないな。私が盾を全開で出せば……」
「その必要は無いぜ!」

 苦渋の決断をNightは決めた。
 そんなことをすれば、このフェーズ中、何もできなくなるのは必至。
 それでもやるべきだと判断したNightだったが、突如として声がした。しかも真上からだ。

「とぉ!」

 視線を真上に向けると、白髪の老爺が居た。
 両腕には盾と爪が合体した武器、盾爪を装備している。
 見た目には似合わない筋骨隆々としたたくましい肉体を武器に飛び跳ねると、着地と同時に敵モンスターを薙ぎ払った。

「ふぅ、大丈夫かえ、子供たちよ」
「えっ、誰ですか?」
「お前は聖レッドローズ騎士団の幹部、珀琥びゃっくか!?」
「「珀琥?」」

 現れた老爺は珀琥と呼ばれるプレイヤー。
 聖レッドローズ騎士団の幹部と聞くだけで強いのは間違いない。

 だけど如何してここにいるのだろうか。
 アキラたちは身震いをした上で身構えると、変に警戒してしまった。

「おいおい、子供たちよ。俺は戦う気無いぞ」
「それは分かってます」
「おうおう、分かってるなら話が早いな。とっととこの数、薙ぎ払うぞ!」
「薙ぎ払うだと? 一人でやる気か、流石に無理があるだろ」

 Nightは昂った士気を挫く様な言葉を吐いた。
 しかし珀琥はそれ由良面白いと感じ取る。
 愉悦混じりに高笑いをすると、珀琥は盾爪をかち合わせた。火花が散り、金属音がキリキリと音を立てる。

「がーはっはっはっ! 無論それも面白いが、ここは共闘と行こうじゃねえか」
「「「共闘?」」」
「おうよ。うちのギルマス、ブローズからの指示なんだな。暴れるぜぇ!!」

 珀琥は楽し気にモンスターに向かっていく。
 盾爪を振るうと、掠っただけでモンスターが薙ぐ払われる。
 切り刻まれるモンスターの体。一瞬でHPを失うと、飛び散った体がはじけ飛ぶ。

「なんだ、この光景は?」
「アグレッシブだね」
「ですが確実にモンスターを仕留めていますよ。慣れているんでしょうか?」
「「「慣れてるとか、怖い」」」

 アキラたちは呆けてしまっていた。自然と体が動きを止める。
 それ程までにテンションが高く、アグレッシブにモンスターを薙ぎ払っている。
 敵にしたくはない。だけど味方だと凄く頼りになる。
 そんな珀琥の姿に、聖レッドローズ騎士団の底の知れなさが伝わった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

VRゲームでも身体は動かしたくない。

姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。 古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。 身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。 しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。 当作品は小説家になろう様で連載しております。 章が完結次第、一日一話投稿致します。

沢山寝たい少女のVRMMORPG〜武器と防具は枕とパジャマ?!〜

雪雪ノ雪
ファンタジー
世界初のフルダイブ型のVRゲーム『Second World Online』通称SWO。 剣と魔法の世界で冒険をするVRMMORPGだ。 このゲームの1番の特徴は『ゲーム内での3時間は現実世界の1時間である』というもの。 これを知った少女、明日香 睡月(あすか すいげつ)は 「このゲームをやれば沢山寝れる!!」 と言いこのゲームを始める。 ゲームを始めてすぐ、ある問題点に気づく。 「お金がないと、宿に泊まれない!!ベットで寝れない!!....敷布団でもいいけど」 何とかお金を稼ぐ方法を考えた明日香がとった行動は 「そうだ!!寝ながら戦えばお金も経験値も入って一石三鳥!!」 武器は枕で防具はパジャマ!!少女のVRMMORPGの旅が今始まる!! ..........寝ながら。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話 主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉 神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく…… ※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!! 内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません? https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?

歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。 それから数十年が経ち、気づけば38歳。 のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。 しかしーー 「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」 突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。 これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。 ※書籍化のため更新をストップします。

処理中です...