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◇529 モンスターの群れが来た!
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アナウンスが響き渡った。
如何やらイベント開始時刻になったようで、下の二桁が:00になっている。
同時にアキラたちは武器を取ると、壁に登っているプレイヤー、要塞に待機しているプレイヤーに分けられた。
「みんな始まったよ。後、アレ見て!」
指を指した先。それは空だった。
何処までも広がる青空……かと思ったけど、何故か灰色の空に変わり果てている。
もしかしなくても、イベントが始まったからだ。
そんな灰色の空模様の中。
指を指した視線の先には黒い点が幾つも見える。
何処からともなくやってきて、壁と要塞を狙っているようだった。
「なんでしょうか、アレは?」
「分からないけど、とりあえず射てみるわね」
ベルは弓を構えた。同じくして、壁に登った弓使いのプレイヤーも弓を構える。
弦を引き絞り、黒い点へと狙いを定める。
中にはスキルも使っているプレイヤーも居て、それだけで壮観だ。
「射抜かれなさい!」
ベルが弦を放し、弓矢を自由にすると、真っ直ぐ黒い点に向かって飛んで行く。
弓の軌道の隣。同じように長弓の矢が飛んで行き、黒い点を撃つ。
何のエフェクトも無い矢、特徴的な黒い鏃の矢、青白い閃光を放つ矢と綺麗だ。
「やったわね。まあ、このくらいでしょ」
「どうだろうな。とりあえず、全員下がれ」
「えっ? Night、なにかダメなの」
「ダメもなにも、見ていれば分かる」
矢を射たプレイヤーたちはドヤ顔していた。
完全に勝ちを確信している様子で、ベルもその内の一人。
満足そうに弓を下ろすと、呆けてしまっていた。
そんな中、Nightは冷静に分析していた。
同じように至極冷静な対応を見せるプレイヤーたちも多く居る。
一体何がダメなのか。矢はちゃんと射た筈。
納得ができていない中、フェルノは他プレイヤーにも分かるように声を上げた。
「あっ、矢が燃やされた!」
「「「えっ!?」」」
視線をすぐさま戻すと、飛んでいた矢たちが次々と落とされていく。
爪で叩き落とされる矢、角で弾かれる矢、ましてた口から吐き出された炎で燃やされる矢。
最初から予測していたみたいに淡々としていて、弓使いたちは愕然とする。
「嘘でしょ、そんなの有り!?」
「だから言っただろ。どうだろうな、と」
「もう、それじゃあ下がってどうするの?」
「どうもしない。私たちのスキルでは遠距離の相手を倒せない。強いて言うなら……」
そう言うと、Nightはベルの腕を引き寄せた。
突然のことで動揺したのか、ベルは目を見開く。
瞬きを何度かすると、Nightは地面を蹴った。
「私たちが負けたら意味が無いだろ」
その瞬間、NightのHPと引き換えに、地面から巨大な盾が出た。
アキラたち全員の視界が覆われ、何も見えなくなってしまう。
しかしその直後、盾に硬い何かがぶつかる。ゴツン! と激しい音を立てると、現れた盾が軋んで揺れた。
「ギュビィ!?」
「ギュビィ? はっ、まさか!」
「切ります! ひやっ!?」
盾の内側から雷斬が飛び出す。
振り上げた刀を天高く掲げると、盾にぶつかったモンスターを切りつける。
グサリと切断し、光の粒子に変えると、アキラたちも盾から出た。
「な、なにこれ!?」
「ちょっと待って。こんなのが来るの?」
雷斬が切ったのは巨大な角が生えた虫だった。
頭と胴体が真っ二つにされると、動かなくなってしまう。
だけど足がピクピク動いていて、気持ちが悪かった。
「あっ、ああっ、あっ……」
「ちょっと、雷斬! こんな時に怯えないでよ」
「き、気持ちが悪いです。ああ、ひやっ!?」
雷斬は虫がダメだ。だから足が震えて竦んでいる。
手にしている刀には、切った虫の一部がこびりついている。
それを見ただけで顔が青ざめ、刀をブンブン振り回して危なかった。
「ちょっと雷斬! 刀振り回さないでよ」
「で、ですが……」
「もう倒したの。ほら、次々行くわよ」
ベルの言う通りだった。
まだまだ黒い点が空から飛来する。
壁に纏わり付いたり、突撃したり、ドンドン耐久値が減っていき、このままだと陥落も早かった。
「飛んできてるの虫だけじゃない。鳥とか変な生き物だったり……」
「そんなこと言ってる場合か。とっとと片付けるぞ」
そう言うと、Nightは珍しいものを作っていた。
手の中に収まる丸い球。鉄でできているのか、重厚感があって重々しい。
けれど妙なピンまで付いている。そのファンタジー質を一瞬で現実に変えてしまう武器。
アキラは閃光球じゃないと悟り、ピンを抜くNightに叫んだ。
「手榴弾!?」
「それっ!」
Nightは手榴弾を放り投げた。
すると壁に纏わり付いていたモンスター達の前で爆発する。
ドカーン! とけたたましい音と、黒い煙を上げると、壁にしがみつき纏わり付いていたモンスターたちはひっくり返って落ちて行く。
「とりあえずこれで耐久値は減らないな。見てみろ、同じようなことをしているプレイヤーも多いぞ」
「それとこれとは違うよ。Night、やっぱりファンタジーを否定してるよね?」
「このGAMEは自由なんだ。つべこべ言わずにやれ」
Nightはたじろくアキラを急かした。
その瞬間、Nightの背後を狙うようにクワガタのような大顎を持ったモンスターが現れる。
無防備なNightの背中を狙い顎を閉じようとするが、アキラは素早く前に出た。
「おらぁ!」
【キメラハント】:【甲蟲】を発動。両腕を籠手で武装した。
グーパンチをお見舞いし、HPが少ないモンスターを弾き飛ばすと、光の粒子へと変える。
危うくNightがやられるところだった。安堵したアキラに、Nightは口ばしる。
「油断している時間は無いぞ」
「それ、今のNightが言うの?」
「ふん」
何故だろう。Nightはほくそ笑んでいた。
まるで自分が襲われて、私が助けに入ると予想していたみたい。
何だか軽はずみすぎるなと、アキラは内心で思う中、まだまだ“防衛”は始まったばかりだった。
如何やらイベント開始時刻になったようで、下の二桁が:00になっている。
同時にアキラたちは武器を取ると、壁に登っているプレイヤー、要塞に待機しているプレイヤーに分けられた。
「みんな始まったよ。後、アレ見て!」
指を指した先。それは空だった。
何処までも広がる青空……かと思ったけど、何故か灰色の空に変わり果てている。
もしかしなくても、イベントが始まったからだ。
そんな灰色の空模様の中。
指を指した視線の先には黒い点が幾つも見える。
何処からともなくやってきて、壁と要塞を狙っているようだった。
「なんでしょうか、アレは?」
「分からないけど、とりあえず射てみるわね」
ベルは弓を構えた。同じくして、壁に登った弓使いのプレイヤーも弓を構える。
弦を引き絞り、黒い点へと狙いを定める。
中にはスキルも使っているプレイヤーも居て、それだけで壮観だ。
「射抜かれなさい!」
ベルが弦を放し、弓矢を自由にすると、真っ直ぐ黒い点に向かって飛んで行く。
弓の軌道の隣。同じように長弓の矢が飛んで行き、黒い点を撃つ。
何のエフェクトも無い矢、特徴的な黒い鏃の矢、青白い閃光を放つ矢と綺麗だ。
「やったわね。まあ、このくらいでしょ」
「どうだろうな。とりあえず、全員下がれ」
「えっ? Night、なにかダメなの」
「ダメもなにも、見ていれば分かる」
矢を射たプレイヤーたちはドヤ顔していた。
完全に勝ちを確信している様子で、ベルもその内の一人。
満足そうに弓を下ろすと、呆けてしまっていた。
そんな中、Nightは冷静に分析していた。
同じように至極冷静な対応を見せるプレイヤーたちも多く居る。
一体何がダメなのか。矢はちゃんと射た筈。
納得ができていない中、フェルノは他プレイヤーにも分かるように声を上げた。
「あっ、矢が燃やされた!」
「「「えっ!?」」」
視線をすぐさま戻すと、飛んでいた矢たちが次々と落とされていく。
爪で叩き落とされる矢、角で弾かれる矢、ましてた口から吐き出された炎で燃やされる矢。
最初から予測していたみたいに淡々としていて、弓使いたちは愕然とする。
「嘘でしょ、そんなの有り!?」
「だから言っただろ。どうだろうな、と」
「もう、それじゃあ下がってどうするの?」
「どうもしない。私たちのスキルでは遠距離の相手を倒せない。強いて言うなら……」
そう言うと、Nightはベルの腕を引き寄せた。
突然のことで動揺したのか、ベルは目を見開く。
瞬きを何度かすると、Nightは地面を蹴った。
「私たちが負けたら意味が無いだろ」
その瞬間、NightのHPと引き換えに、地面から巨大な盾が出た。
アキラたち全員の視界が覆われ、何も見えなくなってしまう。
しかしその直後、盾に硬い何かがぶつかる。ゴツン! と激しい音を立てると、現れた盾が軋んで揺れた。
「ギュビィ!?」
「ギュビィ? はっ、まさか!」
「切ります! ひやっ!?」
盾の内側から雷斬が飛び出す。
振り上げた刀を天高く掲げると、盾にぶつかったモンスターを切りつける。
グサリと切断し、光の粒子に変えると、アキラたちも盾から出た。
「な、なにこれ!?」
「ちょっと待って。こんなのが来るの?」
雷斬が切ったのは巨大な角が生えた虫だった。
頭と胴体が真っ二つにされると、動かなくなってしまう。
だけど足がピクピク動いていて、気持ちが悪かった。
「あっ、ああっ、あっ……」
「ちょっと、雷斬! こんな時に怯えないでよ」
「き、気持ちが悪いです。ああ、ひやっ!?」
雷斬は虫がダメだ。だから足が震えて竦んでいる。
手にしている刀には、切った虫の一部がこびりついている。
それを見ただけで顔が青ざめ、刀をブンブン振り回して危なかった。
「ちょっと雷斬! 刀振り回さないでよ」
「で、ですが……」
「もう倒したの。ほら、次々行くわよ」
ベルの言う通りだった。
まだまだ黒い点が空から飛来する。
壁に纏わり付いたり、突撃したり、ドンドン耐久値が減っていき、このままだと陥落も早かった。
「飛んできてるの虫だけじゃない。鳥とか変な生き物だったり……」
「そんなこと言ってる場合か。とっとと片付けるぞ」
そう言うと、Nightは珍しいものを作っていた。
手の中に収まる丸い球。鉄でできているのか、重厚感があって重々しい。
けれど妙なピンまで付いている。そのファンタジー質を一瞬で現実に変えてしまう武器。
アキラは閃光球じゃないと悟り、ピンを抜くNightに叫んだ。
「手榴弾!?」
「それっ!」
Nightは手榴弾を放り投げた。
すると壁に纏わり付いていたモンスター達の前で爆発する。
ドカーン! とけたたましい音と、黒い煙を上げると、壁にしがみつき纏わり付いていたモンスターたちはひっくり返って落ちて行く。
「とりあえずこれで耐久値は減らないな。見てみろ、同じようなことをしているプレイヤーも多いぞ」
「それとこれとは違うよ。Night、やっぱりファンタジーを否定してるよね?」
「このGAMEは自由なんだ。つべこべ言わずにやれ」
Nightはたじろくアキラを急かした。
その瞬間、Nightの背後を狙うようにクワガタのような大顎を持ったモンスターが現れる。
無防備なNightの背中を狙い顎を閉じようとするが、アキラは素早く前に出た。
「おらぁ!」
【キメラハント】:【甲蟲】を発動。両腕を籠手で武装した。
グーパンチをお見舞いし、HPが少ないモンスターを弾き飛ばすと、光の粒子へと変える。
危うくNightがやられるところだった。安堵したアキラに、Nightは口ばしる。
「油断している時間は無いぞ」
「それ、今のNightが言うの?」
「ふん」
何故だろう。Nightはほくそ笑んでいた。
まるで自分が襲われて、私が助けに入ると予想していたみたい。
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