530 / 575
◇526 フェーズ1 防衛
しおりを挟む
アキラたちは転移した。
強制テレポートでやって来たのは特別なエリア。
イベント会場は本来のマップとは異なっているようで、ボヤけた視界が開けて来た。
「ここは……うわぁ!」
アキラの目が開き、視界がクリアになると、目の前の景色が浮かんだ。
そこに広がるのは巨大な要塞。
目の前には灰色の壁があり、所々が罅割れ、亀裂が走り、あまりにも頼りない姿だった。
「なんで壁があるの? しかもあの建物って、要塞?」
「そうだな。……ん?」
要塞の存在、壁の存在。
二つを同時に理解すると、目の前にメッセージがポップする。
そこには文字が刻まれており、今回のイベント詳細がようやく明かされた。
[半チャーハン・バトルズ
—フェーズ1 防衛—
制限時間の間、要塞及び壁を死守してください。現在の要塞の耐久値:70,壁の耐久値:65。健闘を祈ります]
と書かれていた。
あまりにもあっさりした詳細にアキラたちはポカンとする。
言いたいことは理解できる。とりあえず守ればいい。防衛の名に恥じないが、ここで問題なのは一体何から守るのかだ。
「どうしよう。Night?」
「恐らくは他のプレイヤー、もしくはモンスターだな。とは言えこれで第三部。耐久の減りがやけに速いな」
Night曰く、今回の防衛ミッションはプレイヤー、もしくはモンスターから、目の前の要塞と壁を守ることらしい。
バトルズとは言っても、何もプレイヤーとの対人戦だけが全てではない。
アキラたちは予定と違うので困惑するが、とりあえず要塞と壁に上がってみることにした。
「うわぁ、高い!」
「しかも入り組んでいて迷うな」
「そうだねー。うわぁ、ここの壁崩れた!?」
「気を付けなさい。壁が壊れるってことは、耐久値が減るってことよ」
「今のでほんの少しだけですが、小数点が減ったらしいですね」
「うわぁ、ごめんね」
要塞の中はとにかく入り組んでいた。
最上階まで辿り着くだけで大変そうだ。
額の汗を拭いながら、アキラたちは階段の段差もまちまちな酷い造りの要塞を歩き回った。
「あっ、どうも」
「ああ、こんにちは!」
すると要塞の中には他のプレイヤーも居た。
アキラたちの前に合われたのは男性たちで構成されたギルド。
ギルマス風の丸眼鏡をかけた青年と軽い会釈を交わすと、アキラたちは避けて進んだ。
「今のギルドは知性の行方だな」
「な、なんって?」
「知性の行方。十人以上で構成されたギルドで、研究系だ」
「研究系なのに、戦闘系のイベントに参加しているんだ。珍しいね。よっぽど配信に出たいのかな?」
「だろうな。配信に出れば幾らか出る」
「現実だね。でもライバルがいたら、やる気も出るよね!」
知らないギルドとの交流、それから同じようにライバル。
そうと分かると俄然やる気が出た。
とは言え、本当の意味では戦いたくは無く、アキラはすぐに本心を吐露した。
「って言いたいところだけど……」
「聖レッドローズ騎士団だけで充分だ」
「そうだね、充分だね」
アキラとNightが互いに合いの手を入れ合う。
それだけライバルになり得るのは聖レッドローズ騎士団だけで良い。
これ以上増えるとなると、流石も継ぎ接ぎの絆の五人だけでは無理があった。
「充分ですって!? 舐めた言い回しね」
「えっ?」
突き当りの角を曲がろうとした。
すると上の階から声がする。
声が反響して誰か勘違いしちゃったのかな。
アキラはそう感じ、謝ろうと上を見る。するとそこにはブローズの姿があった。
「ブローズ!? どうしてここに」
「イベントに参加して貴女たちを倒すために決まっているでしょ?」
「決まってないけど……」
「そんなのはどうでもいいの。ふーん、それが貴女のギルド……粒揃いに見えて、弱そうね」
「そんなことないよ! みんな私よりも強いんだよ。ねっ!」
アキラはブローズの驕り高ぶった態度を軽くいなす。
しかし仲間のことをバカにされたので、少しだけイラっとした。
けれど落ち着かせて仲間の姿を一目見ると、私は唖然とする。
誰も怒っていない上に、大人な対応でいなしていた。
「はぁ、アキラに負けたからとは言っても、驕りが過ぎるだろ」
「なっ!?」
「そうだよー。それにさー」
「そんなつまらない子供な態度で、怒鳴る様な大人はいない。あまりにも沸点が低すぎて、逆に笑い物だ」
「んなっ!?」
ブローズは自分が咎められたことに気が付かされ、心にグサリと刺さる。
しかしそれで折れたりはしない。
流石の東ブロック最強ギルドのギルマスで、立ち直りも早かった。
「ふん、同じエリアでよかったわ。これで第三フェーズで思う存分倒せるもの」
「倒す前提なんだね。あれ、エリアってなに?」
「「気が付いてなかったの?」か?」
ブローズとNightに引かれてしまった。
一体なんのことだろう。
アキラは同じように分かっていないメンバーで固まると、互いに顔を見合わせる。
「おいおい、ここに全てのプレイヤーが集まっている訳ないだろ」
「そうなの?」
「当り前よ。はぁー、なんで私、こんななにも知らない子に負けたの? 本当に汚点よ、汚点」
「ひ、酷い言われよう」
「ですね」
「そうね」
「二人共、援護射撃しないでよ」
アキラは雷斬とベルにも援護射撃を喰らってしまう。
グサリと心を貫かれると、呆れた様子でブローズは手招きする。
「まあいいわ。ふん、会わせてあげたい人がいるの、付いて来なさい」
「えっ、会わせたい人?」
「私のギルドメンバーよ。その中でも精鋭をね」
そう言うと、ブローズはアキラたちを招き入れる。
否、同じように上の階へと足を進める。
それにしてもブローズのギルドは一体どんなメンバーなのか。
何も知らないNightを除く継ぎ接ぎの絆は、少しだけ緊張した様子で、ブローズに付いて回った。
強制テレポートでやって来たのは特別なエリア。
イベント会場は本来のマップとは異なっているようで、ボヤけた視界が開けて来た。
「ここは……うわぁ!」
アキラの目が開き、視界がクリアになると、目の前の景色が浮かんだ。
そこに広がるのは巨大な要塞。
目の前には灰色の壁があり、所々が罅割れ、亀裂が走り、あまりにも頼りない姿だった。
「なんで壁があるの? しかもあの建物って、要塞?」
「そうだな。……ん?」
要塞の存在、壁の存在。
二つを同時に理解すると、目の前にメッセージがポップする。
そこには文字が刻まれており、今回のイベント詳細がようやく明かされた。
[半チャーハン・バトルズ
—フェーズ1 防衛—
制限時間の間、要塞及び壁を死守してください。現在の要塞の耐久値:70,壁の耐久値:65。健闘を祈ります]
と書かれていた。
あまりにもあっさりした詳細にアキラたちはポカンとする。
言いたいことは理解できる。とりあえず守ればいい。防衛の名に恥じないが、ここで問題なのは一体何から守るのかだ。
「どうしよう。Night?」
「恐らくは他のプレイヤー、もしくはモンスターだな。とは言えこれで第三部。耐久の減りがやけに速いな」
Night曰く、今回の防衛ミッションはプレイヤー、もしくはモンスターから、目の前の要塞と壁を守ることらしい。
バトルズとは言っても、何もプレイヤーとの対人戦だけが全てではない。
アキラたちは予定と違うので困惑するが、とりあえず要塞と壁に上がってみることにした。
「うわぁ、高い!」
「しかも入り組んでいて迷うな」
「そうだねー。うわぁ、ここの壁崩れた!?」
「気を付けなさい。壁が壊れるってことは、耐久値が減るってことよ」
「今のでほんの少しだけですが、小数点が減ったらしいですね」
「うわぁ、ごめんね」
要塞の中はとにかく入り組んでいた。
最上階まで辿り着くだけで大変そうだ。
額の汗を拭いながら、アキラたちは階段の段差もまちまちな酷い造りの要塞を歩き回った。
「あっ、どうも」
「ああ、こんにちは!」
すると要塞の中には他のプレイヤーも居た。
アキラたちの前に合われたのは男性たちで構成されたギルド。
ギルマス風の丸眼鏡をかけた青年と軽い会釈を交わすと、アキラたちは避けて進んだ。
「今のギルドは知性の行方だな」
「な、なんって?」
「知性の行方。十人以上で構成されたギルドで、研究系だ」
「研究系なのに、戦闘系のイベントに参加しているんだ。珍しいね。よっぽど配信に出たいのかな?」
「だろうな。配信に出れば幾らか出る」
「現実だね。でもライバルがいたら、やる気も出るよね!」
知らないギルドとの交流、それから同じようにライバル。
そうと分かると俄然やる気が出た。
とは言え、本当の意味では戦いたくは無く、アキラはすぐに本心を吐露した。
「って言いたいところだけど……」
「聖レッドローズ騎士団だけで充分だ」
「そうだね、充分だね」
アキラとNightが互いに合いの手を入れ合う。
それだけライバルになり得るのは聖レッドローズ騎士団だけで良い。
これ以上増えるとなると、流石も継ぎ接ぎの絆の五人だけでは無理があった。
「充分ですって!? 舐めた言い回しね」
「えっ?」
突き当りの角を曲がろうとした。
すると上の階から声がする。
声が反響して誰か勘違いしちゃったのかな。
アキラはそう感じ、謝ろうと上を見る。するとそこにはブローズの姿があった。
「ブローズ!? どうしてここに」
「イベントに参加して貴女たちを倒すために決まっているでしょ?」
「決まってないけど……」
「そんなのはどうでもいいの。ふーん、それが貴女のギルド……粒揃いに見えて、弱そうね」
「そんなことないよ! みんな私よりも強いんだよ。ねっ!」
アキラはブローズの驕り高ぶった態度を軽くいなす。
しかし仲間のことをバカにされたので、少しだけイラっとした。
けれど落ち着かせて仲間の姿を一目見ると、私は唖然とする。
誰も怒っていない上に、大人な対応でいなしていた。
「はぁ、アキラに負けたからとは言っても、驕りが過ぎるだろ」
「なっ!?」
「そうだよー。それにさー」
「そんなつまらない子供な態度で、怒鳴る様な大人はいない。あまりにも沸点が低すぎて、逆に笑い物だ」
「んなっ!?」
ブローズは自分が咎められたことに気が付かされ、心にグサリと刺さる。
しかしそれで折れたりはしない。
流石の東ブロック最強ギルドのギルマスで、立ち直りも早かった。
「ふん、同じエリアでよかったわ。これで第三フェーズで思う存分倒せるもの」
「倒す前提なんだね。あれ、エリアってなに?」
「「気が付いてなかったの?」か?」
ブローズとNightに引かれてしまった。
一体なんのことだろう。
アキラは同じように分かっていないメンバーで固まると、互いに顔を見合わせる。
「おいおい、ここに全てのプレイヤーが集まっている訳ないだろ」
「そうなの?」
「当り前よ。はぁー、なんで私、こんななにも知らない子に負けたの? 本当に汚点よ、汚点」
「ひ、酷い言われよう」
「ですね」
「そうね」
「二人共、援護射撃しないでよ」
アキラは雷斬とベルにも援護射撃を喰らってしまう。
グサリと心を貫かれると、呆れた様子でブローズは手招きする。
「まあいいわ。ふん、会わせてあげたい人がいるの、付いて来なさい」
「えっ、会わせたい人?」
「私のギルドメンバーよ。その中でも精鋭をね」
そう言うと、ブローズはアキラたちを招き入れる。
否、同じように上の階へと足を進める。
それにしてもブローズのギルドは一体どんなメンバーなのか。
何も知らないNightを除く継ぎ接ぎの絆は、少しだけ緊張した様子で、ブローズに付いて回った。
0
お気に入りに追加
221
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました
新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。
後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~
夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。
多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』
一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。
主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!!
小説家になろうからの転載です。
世紀末ゾンビ世界でスローライフ【解説付】
しおじろう
SF
時は世紀末、地球は宇宙人襲来を受け
壊滅状態となった。
地球外からもたされたのは破壊のみならず、
ゾンビウイルスが蔓延した。
1人のおとぼけハク青年は、それでも
のんびり性格は変わらない、疲れようが
疲れまいがのほほん生活
いつか貴方の生きるバイブルになるかも
知れない貴重なサバイバル術!
最前線攻略に疲れた俺は、新作VRMMOを最弱職業で楽しむことにした
水の入ったペットボトル
SF
これまであらゆるMMOを最前線攻略してきたが、もう俺(大川優磨)はこの遊び方に満足してしまった。いや、もう楽しいとすら思えない。
ゲームは楽しむためにするものだと思い出した俺は、新作VRMMOを最弱職業『テイマー』で始めることに。
βテストでは最弱職業だと言われていたテイマーだが、主人公の活躍によって評価が上がっていく?
そんな周りの評価など関係なしに、今日も主人公は楽しむことに全力を出す。
この作品は「カクヨム」様、「小説家になろう」様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる