518 / 575
◇514 謎の草鞋と間欠泉
しおりを挟む
目の前に広がる巨大な穴。まるで火山の火口のようだ。
しかし中を覗き込むと、張られているのは水だった。
満たされていない水量で、湯気がモクモクと立っている。
如何やらここが源泉であることは確かなようだ。
「Night、ここが源泉だよね?」
「そうだな。とは言え、源泉の水量は問題無いな」
「そうなの? それじゃあ……なにかある?」
「いや、これだけだと判断ができない。問題は、なにを以って調査が必要なのかだ」
Nightは源泉の周囲を歩いてみることにした。
その背中をアキラも追い掛けると、源泉を流し見しながら、訊ねることにした。
「Night、クロユリさんは源泉の調査を頼んだよね?」
「そうだな。とは言え、源泉の調査がなにを以ってかだ」
「それさっき聞いたよ。調査って、なにを調査すればいいの?」
「……雷斬、ベル、一体なにを調査すればいいんだ?」
Nightはアキラの後ろを付いてくる、継ぎ接ぎの面々に訊ねた。
すると雷斬とベルはふと記憶を辿ると、クロユリの言葉を追い掛けた。
「そう言えば、源泉の調査って具体的にはなにか言ってたかしら?」
「言っていなかったと思いますよ?」
「ん? それじゃあなにか、私たちは骨折り損ってことか。ここまでの時間と労力を浪費しただけで、骨を折った結果ってことか?」
Nightはイラついた様子でギロッと視線を飛ばす。
睨まれた雷斬はペコリとお辞儀をし、ベルは面倒そうにあしらった。
その様子にNightは面倒そうな顔をすると、落胆して肩を落とした。
「……はぁ、仕方ないか」
「まあまあ、Night。とりあえずもう少し調査してみようよ」
「そうだな。とりあえず源泉の周囲を見て回るか」
Nightはインベントリの中からアイテムを取り出した。
様々な形をしたもので、それらを使うと源泉周囲への調査をしてみる。
「アキラ、フェルノ、二人は地層を調べてくれ」
「「地層?」」
「雷斬とベルは磁場だ。これを使え」
「「磁場?」」
アキラとフェルノは見たことも無い長い棒を渡される。
雷斬とベルも同様で、ゴテゴテした機械を押し付けられた。
使い方が全く分からない。ポカンとした顔をしていると、Nightも釣糸を手にしていた。
「私は源泉の方だな」
「ま、待ってよNight。私たちにこんな難しい道具扱えるの?」
「説明書は紙束で付けているだろ。それを見ろ」
「「「うわぁ、懐かしい」」」
アキラたちはそれぞれ役目を与えられ、髪束の説明書を渡される。
中身を見てもよく分からない。けれどやってみるしかなくなり、アキラたちは頭を掻く。
正直分からないことだらけで、何をすればいいのかピンと来ない。
しかし調査は単純なもので、ざっくりではあったが、何も異状は無い様子だ。
「なにも無しか……ん?」
「どうしたの、Night? なにか見つかったの?」
Nightはアイテムを使って調査を進めて行くと、ふと気になるものを見つけた。
視線が地面の先を見ており、源泉周囲で本来自然に付くことはあり得ない物が残っていた。
「それは草鞋の足跡ですか? おかしいですね。私たち以外に誰か居るのでしょうか?」
「えー、ここには今立ち入れないのよ?」
「いえ、許可証を持ってさえいれば予備の鍵を使うことは可能ですよ」
「それはそうだけど……もしかしなくても、私たち以外にも誰か調査に来ているってこと?」
「あるいは、その逆か……どちらにせよ、この草鞋は見過ごせないな。一応型を取っておくか」
龍顎山に立ち入っているのはアキラたちだけじゃなかった。
あまりにも急展開な事実に動揺が走るも、それで何かが変わることは無い。
調査は順調に進んで行き、気が付けば時間がかなり経過していた。
「結局、草鞋以外にはなにも無かったな」
「うーん、草鞋の人、結局見つからなかったね」
「行き違いかもしれないな。もう下山しているだろ。私たちも源泉でなにか起きる前に下山して……」
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ!!
「な、なんだ!?」
「じ、地面が揺れてる?」
「あはは、ここ火山が近いもんねー。しかも活火山だったよねー?」
「くっ、このタイミングで……おい、なにか近付いて来るぞ」
突然地面が揺れ出した。激しい地ならしを起こすと、立っていることさえやっとになる。
アキラたちは地面に手を突き体勢を整えると、揺れが収まるのをジッと待つ。
しかし動けないアキラたちを嘲笑うように、源泉の方からも音が響いた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
「今度は源泉か……まさかここで水位が上がるのか?」
「ってことは、この間みたいに間欠泉が来るってこと!?」
「そう言うことだ。マズいな、このままだと逃げられないぞ……」
Nightの言う通り、全く逃げられる余地が無かった。
アキラたちはジッと嵐が過ぎ去るのを待つも、源泉は水量を増し、水位を上げて一気に噴き出す。騒音が耳元でなぞると、噴水のように荒々しくアキラたちの前に柱を生み出した。
バッシャァァァァァァァァァァァァァァァン!!
「うわぁ、熱い、熱い熱い熱い」
「間欠泉が噴き出たか。全員気を付けろ、熱っ!?」
「熱い熱い熱い熱い、熱いねー」
「「くっ、熱い……」」
アキラたちは間欠泉の勢いをまともに喰らってしまった。
全身が焼けるように痛い。顔を上げることもまともにできず、全身が痛くて痛くて仕方がない。
しかめっ面を浮かべると、勢いのある水柱がアキラたちを戒める。
「くっ、このままじゃ……な、なにあれ!?」
「今、間欠泉の中からなにか見えた気がするぞ」
「黒い塊が蠢いている……あれは一体」
アキラたち全員が間欠泉の中に何かを捉えていた。
黒く蠢くその姿は、明らかにモンスター。
間欠泉の中を悠然と泳ぎ、その姿を現すのは間もなくだった。
しかし中を覗き込むと、張られているのは水だった。
満たされていない水量で、湯気がモクモクと立っている。
如何やらここが源泉であることは確かなようだ。
「Night、ここが源泉だよね?」
「そうだな。とは言え、源泉の水量は問題無いな」
「そうなの? それじゃあ……なにかある?」
「いや、これだけだと判断ができない。問題は、なにを以って調査が必要なのかだ」
Nightは源泉の周囲を歩いてみることにした。
その背中をアキラも追い掛けると、源泉を流し見しながら、訊ねることにした。
「Night、クロユリさんは源泉の調査を頼んだよね?」
「そうだな。とは言え、源泉の調査がなにを以ってかだ」
「それさっき聞いたよ。調査って、なにを調査すればいいの?」
「……雷斬、ベル、一体なにを調査すればいいんだ?」
Nightはアキラの後ろを付いてくる、継ぎ接ぎの面々に訊ねた。
すると雷斬とベルはふと記憶を辿ると、クロユリの言葉を追い掛けた。
「そう言えば、源泉の調査って具体的にはなにか言ってたかしら?」
「言っていなかったと思いますよ?」
「ん? それじゃあなにか、私たちは骨折り損ってことか。ここまでの時間と労力を浪費しただけで、骨を折った結果ってことか?」
Nightはイラついた様子でギロッと視線を飛ばす。
睨まれた雷斬はペコリとお辞儀をし、ベルは面倒そうにあしらった。
その様子にNightは面倒そうな顔をすると、落胆して肩を落とした。
「……はぁ、仕方ないか」
「まあまあ、Night。とりあえずもう少し調査してみようよ」
「そうだな。とりあえず源泉の周囲を見て回るか」
Nightはインベントリの中からアイテムを取り出した。
様々な形をしたもので、それらを使うと源泉周囲への調査をしてみる。
「アキラ、フェルノ、二人は地層を調べてくれ」
「「地層?」」
「雷斬とベルは磁場だ。これを使え」
「「磁場?」」
アキラとフェルノは見たことも無い長い棒を渡される。
雷斬とベルも同様で、ゴテゴテした機械を押し付けられた。
使い方が全く分からない。ポカンとした顔をしていると、Nightも釣糸を手にしていた。
「私は源泉の方だな」
「ま、待ってよNight。私たちにこんな難しい道具扱えるの?」
「説明書は紙束で付けているだろ。それを見ろ」
「「「うわぁ、懐かしい」」」
アキラたちはそれぞれ役目を与えられ、髪束の説明書を渡される。
中身を見てもよく分からない。けれどやってみるしかなくなり、アキラたちは頭を掻く。
正直分からないことだらけで、何をすればいいのかピンと来ない。
しかし調査は単純なもので、ざっくりではあったが、何も異状は無い様子だ。
「なにも無しか……ん?」
「どうしたの、Night? なにか見つかったの?」
Nightはアイテムを使って調査を進めて行くと、ふと気になるものを見つけた。
視線が地面の先を見ており、源泉周囲で本来自然に付くことはあり得ない物が残っていた。
「それは草鞋の足跡ですか? おかしいですね。私たち以外に誰か居るのでしょうか?」
「えー、ここには今立ち入れないのよ?」
「いえ、許可証を持ってさえいれば予備の鍵を使うことは可能ですよ」
「それはそうだけど……もしかしなくても、私たち以外にも誰か調査に来ているってこと?」
「あるいは、その逆か……どちらにせよ、この草鞋は見過ごせないな。一応型を取っておくか」
龍顎山に立ち入っているのはアキラたちだけじゃなかった。
あまりにも急展開な事実に動揺が走るも、それで何かが変わることは無い。
調査は順調に進んで行き、気が付けば時間がかなり経過していた。
「結局、草鞋以外にはなにも無かったな」
「うーん、草鞋の人、結局見つからなかったね」
「行き違いかもしれないな。もう下山しているだろ。私たちも源泉でなにか起きる前に下山して……」
ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ!!
「な、なんだ!?」
「じ、地面が揺れてる?」
「あはは、ここ火山が近いもんねー。しかも活火山だったよねー?」
「くっ、このタイミングで……おい、なにか近付いて来るぞ」
突然地面が揺れ出した。激しい地ならしを起こすと、立っていることさえやっとになる。
アキラたちは地面に手を突き体勢を整えると、揺れが収まるのをジッと待つ。
しかし動けないアキラたちを嘲笑うように、源泉の方からも音が響いた。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
「今度は源泉か……まさかここで水位が上がるのか?」
「ってことは、この間みたいに間欠泉が来るってこと!?」
「そう言うことだ。マズいな、このままだと逃げられないぞ……」
Nightの言う通り、全く逃げられる余地が無かった。
アキラたちはジッと嵐が過ぎ去るのを待つも、源泉は水量を増し、水位を上げて一気に噴き出す。騒音が耳元でなぞると、噴水のように荒々しくアキラたちの前に柱を生み出した。
バッシャァァァァァァァァァァァァァァァン!!
「うわぁ、熱い、熱い熱い熱い」
「間欠泉が噴き出たか。全員気を付けろ、熱っ!?」
「熱い熱い熱い熱い、熱いねー」
「「くっ、熱い……」」
アキラたちは間欠泉の勢いをまともに喰らってしまった。
全身が焼けるように痛い。顔を上げることもまともにできず、全身が痛くて痛くて仕方がない。
しかめっ面を浮かべると、勢いのある水柱がアキラたちを戒める。
「くっ、このままじゃ……な、なにあれ!?」
「今、間欠泉の中からなにか見えた気がするぞ」
「黒い塊が蠢いている……あれは一体」
アキラたち全員が間欠泉の中に何かを捉えていた。
黒く蠢くその姿は、明らかにモンスター。
間欠泉の中を悠然と泳ぎ、その姿を現すのは間もなくだった。
11
お気に入りに追加
221
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました
新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。
後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~
夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。
多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』
一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。
主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!!
小説家になろうからの転載です。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる