VRMMOのキメラさん〜雑魚種族を選んだ私だけど、固有スキルが「倒したモンスターの能力を奪う」だったのでいつの間にか最強に!?

水定ユウ

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◇509 ソウラの一存

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「ソウラさん!」

 アキラはDeep Skyのギルドホームに駆け込んだ。
 案の定、今日もソウラ一人の様子で、突然アキラが駆け込んできたので驚いていた。

「アキラ? 一体どうしたの?」
「ソウラさん、あの、凄く大事なお願いがあるんですけど、いいですか?」

 アキラは少しだけ息が上がっていた。
 その様子を診兼ね、ソウラは箱の中からオレンジジュースを取り出す。
 グラスを用意して注ぐ中、アキラはソウラにお願いをした。

「ソウラさん、今度のイベント、私達の味方になってくれませんか?」

 アキラはソウラにお願いをする。
 正直な話、ソウラ一人に言っても了承は得られない。
 今アキラがしようとしているのは、いわゆる同盟。
 アキラたちの味方になるということは、他のギルドを敵に回すということで、慎重派なけみー有するDeep Skyがそう簡単に首を縦に振る訳が無かった。

「味方? 別にいいわよ、私達のギルドなら」
「そうですよね、やっぱりダメですよね……いいんですか!?」
「もちろんいいわよ。前にけみーが言っていたから。継ぎ接ぎの絆とは今後ともうまくやって行くために同盟を組まないとダメだねって。今その約束が勝手に果たされるのね。はい、オレンジジュース、冷えているから飲んで」
「あっ、はい。いただきます」

 アキラは瞬きを三回繰り返した。
 何が起きたのか分からない。激動で進み、一瞬で解決してしまったのだ。
 けれどオレンジジュースを飲みながら頭を冷やすと、アキラはソウラに大事なことを説明していなかった。
 それを踏まえずすっ飛ばしてしまったのは申し訳ないので、改めて訊ねる。

「ソウラさん、ちゃんと説明していなかったんですけど、私達……」
「聖レッドローズ騎士団に一方的な因縁を付けられちゃったのね?」
「うっ、もう噂が広まっているんですね」
「うちはアイテム屋だからね。それで、聖レッドローズ騎士団をイベントで倒さないとダメってことよね?
「ううっ、そこまで知っていたんですね……で、でも! それなら尚更なんでですか。聖レッドローズ騎士団が相手なら、Deep Skyにとてはメリットの方が大きい筈ですよね?」

 アキラが気になっているのはDeep Skyとの繋がり。
 それを覆す程の圧倒的な固定客になってくれる可能性のある聖レッドローズ騎士団。
 いくら今までの蓄積があるとはいえ、相手にするにはあまりにも巨大だった。

「聖レッドローズ騎士団を敵に回したら、このお店の売上だって」
「それは大丈夫よ」
「どうしてですか?」
「うちはほとんど利用客もいない上に、基本的にはピーコのオーダーメイド品ばかりが売れるから、新しい一般客の客層を開拓しなくても大丈夫なの。おまけに知名度も、ねぇ?」

 ソウラは悲しいことを口走った。
 しょんぼりした様子で表情が暗くなると、アキラは何とか励まそうとする。

「大丈夫ですよ。ソウラさんたちのギルドが提供する品は、全部凄い物じゃないですか!」
「それもそうよね。ピーコ、アキラが凄いって」
「ありがとう!」

 地下室へとソウラは声を上げた。
 すると今日も地下室で作業中のピーコが感謝を伝えた。
 如何やらピーコも話を聞いていたようで、それを踏まえてアキラたちの味方になってくれているらしい。
 顔色と声音を聞き分けると、アキラはソウラたちが本当の意味で継ぎ接ぎの絆に付いてくれていると実感できた。

「皆さん私たちの味方になってくれるんですね」
「当り前よ。今まで紡いで来たもの、私たちは無碍にはしないわ」
「例えば、私たちが追い詰められてもですか?」
「当り前よ。それがUnionでしょ?」

 ソウラは満足そうに答えた。
 アキラは幾度となく思うことがあった。
 このGAMEは繋がりが大事だ。他のギルド機能があるGAMEに比べれば、その重要性は明らかだった。

「聖レッドローズ騎士団には味方がいない。だからこそ、集団と言う個が強くなったらしいわ」
「それってちょっと寂しくないですか?」
「そうね。でも私たちは違う。個と言う集団が一つになっているの。その繋がり、どれだけ大変な選択でも決して忘れちゃダメなのよ」
「……深いですね」
「ふふっ、ちょっと言ってみたかったの」

 ソウラは軽く笑みを浮かべた。
 口角が吊り上がり、アキラのことをジッと見つめる。
 如何やら臆する必要は無かったらしい。
 アキラはその事実を改めて理解させられると、胸の中にあった楔が解けて無くなる音がした。

「それじゃあついでになにか買って言ってくれるわよね?」
「ううっ、商売魂凄ですね」
「当然よ。少しは回収しないと……っと、回復ポーションが欲しいわよね。後はそうね、武器や防具は不要として、後は……」
「家具を、家具を買って欲しい」
「そうよね、余っている家具がたくさんあったわね。……アキラ、買ってくれるわよね? あっ、無理にとは言わないわよ」
「は、はい……そうですね、か、買いますよ。ある程度は」
「「毎度有り」」

 ソウラとピーコはアキラに色々売り付けようとした。
 流石にアキラも無碍にはできない。
 今まで使って来なかったポケットマネーを使う羽目になり、渋い表情を浮かべるアキラだったが、これも繋がりだと思うことで我慢して買い込むことになった。

 けれどいつかはきっと役に立つ。
 アキラはその思いを心に留め、受け入れるのだった。
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