512 / 575
◇508 舐めてはいけないギルドだから
しおりを挟む
アキラたちはギルドホームへと戻っていた。
途中事情をなにも知らない雷斬とベルを拾うと、断片的に話を交えて説明をした。
それだけで話が全て伝わる訳も無いが、“面倒なこと”になったのは伝わった。
「それじゃあ今後どうするかの対策だけど、なにかあるかな?」
「いきなり丸投げ? 残念だけど、分からないわね」
「そうだよね……」
ベルに一撃で跳ね返されてしまった。
困ってしまったアキラは視線をNightへと預ける。
覚悟は決まっているものの、具体的な対策など、何一つできていない現状だ。
ここはNightの知恵を借りようとしたが、相手が相手だけのこともあり、慎重にならざるを得なかった。
「聖レッドローズ騎士団は強いぞ。さっきも説明したが……」
「説明されてないけど?」
「そうですね。私たちは、具体的な敵方の全容も知らないのですが……」
ベルと雷斬は口を挟んだ。けれどこれは当然のことで、説明をする義務があった。
けれどNightは全容を改めて話すことはせず、二人のことを一度遮った。
「正直、私たちの質は奴らよりも上だ。だが、それはあくまでも幹部と互角かそれ以上と言うだけだな」
「あっ、無視してる」
「無視じゃない、一度遮っただけだ。後で説明するから待っていろ」
Night自身も相当脳のキャパシティを使っているようだ。
そのせいもあり、反応が少しだけ鈍くなっている。
同時に四つの思考ができるとはいえ、数的有利を取られている現状、下手な手立ては首を絞めるだけだと気が付いていた。
「ちなみにさー、数の有利を覆す方法は無いのー?」
フェルノは数的有利の効く作戦を訊ねた。
戦国の世を生きた昔の偉人たちは、戦いの中で不利な状況に陥ったことは幾度となく。
にもかかわらず、その逆境を覆し、逆に利用した上で大国に勝利した。
そんな例もある程なので、フェルノも似たようなものがきっとある筈と思ったのだ。
「数的不利、かつ圧倒的な実力差だとすれば、桶狭間の戦いは有名だな」
「「「あー、それねー」」」
Nightは有名な戦を引き合いに出してみた。
アキラたち全員は共感し、ポンと手を叩いた。
数的不利、かつ経験値不足、おまけに地位にも差がある状況は、圧倒的な人数差に加えて、東ブロック一位のギルド、どちらも今川家らしい。
「どんな状況でも番狂わせを起こすことはできる。だが、今回のイベント、それまで保つだろうか?」
「そこだよね。今回のイベント、第一フェイズ:防衛・第二フェイズ:制圧・第三フェイズ:乱戦。番狂わせを起こすには、第三フェイズまで行かないとダメで、一度でもそれまでに負けたら、今回のイベントには再参加できない。ちょっと厳しい仕様だよね? 人数の差もあるから、第三フェイズまで行けるかどうか……」
「その点なら大丈夫だ。私達は少数精鋭。お互いに目を配り合えば、第三フェイズまでは行ける。とは言え、五対百は正直厳しいんだがな……」
人数差を覆すことがいつだってできる。
けれどそれまでに疲弊してしまえば元も子もない。
相手も同じなのだが、それに伴う消耗が桁違いだった。
「回復ポーションを買い込んでおかないとダメだよね?」
「それも然りだな」
「然りと言うことは、Nightさんが本当に必要なものは別にあると言うことですね」
「そうだな。私が欲しいのはいざと言う時の保険になる人手だ」
「「「人手?」」」
Nightが欲しがっているものは、絶望的にアキラたちに足りない物だった。
少数精鋭。たった五人だけのギルドに人手がある訳もない。
あまりにも遠いものを要求され困り果てるが、ふと気が付いた。
「Nightが人手が欲しいのって、どうして?」
「どうしてもなにも、人数がいれば対処は可能だ。聖レッドローズ騎士団の幹部は全部で十二人。その内の五つは欠員が出ているから、実質ギルドマスターとサブギルドマスターを除けば、敵は七人に+二人になる。九人を相手取るのは厳しいからな。優秀な傭兵でもいれば話も変わるだけの話だ」
如何やらNightが見ているのは幹部だけらしい。
団員に関しては有象無象として捉えているようで、そちらを相手取るための人手。
その確保が狙いだったが、残念なことに伝手が無かった。
「誰かに頼めればな……」
「それじゃあ頼んでみようよ!」
アキラは項垂れるNightに声を掛けた。
誰かに頼めば済む話なら、頼ってみればいいだけだ。
答えはあまりにも簡単で、迷っていた気持ちが吹っ切れる。
「誰かにって誰にだ?」
「Deep Skyと妖帖の雅だよ。どっちも並外れた強さを持ったギルドだよ?」
「それは分かっているが、借りれるのか?」
「それは分からないけど、頑張って交渉してみよう。使える物はなんでも使う。でしょ?」
アキラは意識を切り替え、Nightっぽく話した。
熱く語り、Nightにアピールをしてみると、額に手を当てた。
呆れられてしまった。アキラは自信を欠けたが、ニヤリと笑みを浮かべるNightの顔が飛び込んだ。
「いいだろ。交渉、やってくればいい」
「いいの? いいんだよね!?」
「ああ。だが交渉の必要はない。アキラ、お前なら分かるだろ」
「うん。それじゃあ今から行ってくるね! 雷斬、ベル、二人は妖帖の雅をお願い。私はDeep Skyに行くから」
アキラは早速席を立つと、ギルドホームを出てDeep Skyの下へと向かった。
思い立ったが吉日。そんな言葉もある程で、アキラは凄く生き生きしていた。
その後ろ姿を見守ったNightたちは、「元気だな」と呟きつつも行動に起こし、昂る気持ちに感化されていた。
途中事情をなにも知らない雷斬とベルを拾うと、断片的に話を交えて説明をした。
それだけで話が全て伝わる訳も無いが、“面倒なこと”になったのは伝わった。
「それじゃあ今後どうするかの対策だけど、なにかあるかな?」
「いきなり丸投げ? 残念だけど、分からないわね」
「そうだよね……」
ベルに一撃で跳ね返されてしまった。
困ってしまったアキラは視線をNightへと預ける。
覚悟は決まっているものの、具体的な対策など、何一つできていない現状だ。
ここはNightの知恵を借りようとしたが、相手が相手だけのこともあり、慎重にならざるを得なかった。
「聖レッドローズ騎士団は強いぞ。さっきも説明したが……」
「説明されてないけど?」
「そうですね。私たちは、具体的な敵方の全容も知らないのですが……」
ベルと雷斬は口を挟んだ。けれどこれは当然のことで、説明をする義務があった。
けれどNightは全容を改めて話すことはせず、二人のことを一度遮った。
「正直、私たちの質は奴らよりも上だ。だが、それはあくまでも幹部と互角かそれ以上と言うだけだな」
「あっ、無視してる」
「無視じゃない、一度遮っただけだ。後で説明するから待っていろ」
Night自身も相当脳のキャパシティを使っているようだ。
そのせいもあり、反応が少しだけ鈍くなっている。
同時に四つの思考ができるとはいえ、数的有利を取られている現状、下手な手立ては首を絞めるだけだと気が付いていた。
「ちなみにさー、数の有利を覆す方法は無いのー?」
フェルノは数的有利の効く作戦を訊ねた。
戦国の世を生きた昔の偉人たちは、戦いの中で不利な状況に陥ったことは幾度となく。
にもかかわらず、その逆境を覆し、逆に利用した上で大国に勝利した。
そんな例もある程なので、フェルノも似たようなものがきっとある筈と思ったのだ。
「数的不利、かつ圧倒的な実力差だとすれば、桶狭間の戦いは有名だな」
「「「あー、それねー」」」
Nightは有名な戦を引き合いに出してみた。
アキラたち全員は共感し、ポンと手を叩いた。
数的不利、かつ経験値不足、おまけに地位にも差がある状況は、圧倒的な人数差に加えて、東ブロック一位のギルド、どちらも今川家らしい。
「どんな状況でも番狂わせを起こすことはできる。だが、今回のイベント、それまで保つだろうか?」
「そこだよね。今回のイベント、第一フェイズ:防衛・第二フェイズ:制圧・第三フェイズ:乱戦。番狂わせを起こすには、第三フェイズまで行かないとダメで、一度でもそれまでに負けたら、今回のイベントには再参加できない。ちょっと厳しい仕様だよね? 人数の差もあるから、第三フェイズまで行けるかどうか……」
「その点なら大丈夫だ。私達は少数精鋭。お互いに目を配り合えば、第三フェイズまでは行ける。とは言え、五対百は正直厳しいんだがな……」
人数差を覆すことがいつだってできる。
けれどそれまでに疲弊してしまえば元も子もない。
相手も同じなのだが、それに伴う消耗が桁違いだった。
「回復ポーションを買い込んでおかないとダメだよね?」
「それも然りだな」
「然りと言うことは、Nightさんが本当に必要なものは別にあると言うことですね」
「そうだな。私が欲しいのはいざと言う時の保険になる人手だ」
「「「人手?」」」
Nightが欲しがっているものは、絶望的にアキラたちに足りない物だった。
少数精鋭。たった五人だけのギルドに人手がある訳もない。
あまりにも遠いものを要求され困り果てるが、ふと気が付いた。
「Nightが人手が欲しいのって、どうして?」
「どうしてもなにも、人数がいれば対処は可能だ。聖レッドローズ騎士団の幹部は全部で十二人。その内の五つは欠員が出ているから、実質ギルドマスターとサブギルドマスターを除けば、敵は七人に+二人になる。九人を相手取るのは厳しいからな。優秀な傭兵でもいれば話も変わるだけの話だ」
如何やらNightが見ているのは幹部だけらしい。
団員に関しては有象無象として捉えているようで、そちらを相手取るための人手。
その確保が狙いだったが、残念なことに伝手が無かった。
「誰かに頼めればな……」
「それじゃあ頼んでみようよ!」
アキラは項垂れるNightに声を掛けた。
誰かに頼めば済む話なら、頼ってみればいいだけだ。
答えはあまりにも簡単で、迷っていた気持ちが吹っ切れる。
「誰かにって誰にだ?」
「Deep Skyと妖帖の雅だよ。どっちも並外れた強さを持ったギルドだよ?」
「それは分かっているが、借りれるのか?」
「それは分からないけど、頑張って交渉してみよう。使える物はなんでも使う。でしょ?」
アキラは意識を切り替え、Nightっぽく話した。
熱く語り、Nightにアピールをしてみると、額に手を当てた。
呆れられてしまった。アキラは自信を欠けたが、ニヤリと笑みを浮かべるNightの顔が飛び込んだ。
「いいだろ。交渉、やってくればいい」
「いいの? いいんだよね!?」
「ああ。だが交渉の必要はない。アキラ、お前なら分かるだろ」
「うん。それじゃあ今から行ってくるね! 雷斬、ベル、二人は妖帖の雅をお願い。私はDeep Skyに行くから」
アキラは早速席を立つと、ギルドホームを出てDeep Skyの下へと向かった。
思い立ったが吉日。そんな言葉もある程で、アキラは凄く生き生きしていた。
その後ろ姿を見守ったNightたちは、「元気だな」と呟きつつも行動に起こし、昂る気持ちに感化されていた。
11
お気に入りに追加
221
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました
新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。
後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~
夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。
多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』
一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。
主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!!
小説家になろうからの転載です。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる