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◇507 面倒なギルドに絡まれた
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「行っちゃった……どうしよう」
アキラは道の真ん中に突っ立っていた。
人混みの中に消えてしまったブローズ。その背中を追うことさえできない。
茫然とした上で、肩に新しい重荷が積まれると、ついつい溜息を付きたくなる。
「はぁ……」
「溜息を付くな。誰のせいでこうなったと思っているんだ」
背中をバシュンと叩いたのはNightだ。
アキラは突然のことに驚くも、振り返りざまに見せたNightの表情に驚愕。
酷く心配していた様子と、無事に勝利を掴んだ安心感に、心労が絶えない様子だからだ。
「Night、私のこと心配してくれていたんだ」
「私が心配したらダメなのか?」
「そんなことないけど……あ、そこは正直なんだ」
てっきりアキラは、Nightが否定して来ると思っていた。
けれど蓋を開ける前に本心が開いていて、Nightは正直な反応を見せる。
アキラは胸が苦しくなると、申し訳なさに包まれた。
「ごめんね、心肺掛けちゃって」
「それはもういい。だが、無理だけはするなよ」
「そうするね。今回はとっても大変だったから」
アキラはブローズとの勝負に勝つことはできた。
けれど最初から最後までギリギリで、一歩間違えれば惨事になっていた。
それだけの相手と渡り合い勝利できた喜びがあるものの、マズいのはここからだった。
「それよりどうしよう、Night!」
「話は聞いていたが、マズいことになったな」
「やっぱりNightもそう思うよね? ど、どうしよう……マズいよ、私はやる気なかったのに」
アキラは頭を抱えてしまった。
それもそのはず、ブローズと争う気は更々なかった。
にもかかわらず再び因縁を付けられてしまい、軽いパニックに陥っていた。
「とは言え相手は本気だぞ。あの様子、確実に来る」
「い、イベントに不参加って言うのは?」
「そうなればストーカーみたいに付き纏われるぞ?」
「ううっ、それは面倒だね。それじゃあわざと負けちゃうとか? 今回は賭け事でも無いから、安心して負けられるよ?」
アキラはブローズが一方的に提案したイベント参加を断ろうとした。
けれどNightが先を読んでブローズの思考を読み解く。
どのみち挑まなければストーカーにでもなられてしまう。そう思ってしまうと、イベントに参加した上でわざと負けるのが一番手っ取り早いと思ったのだが、如何にもそうはいかないらしい。
「それは無理な話だな」
「どうして? もしかして、負けても付き纏う、激ヤバストーカーってこと?」
「それもあるが、相手が聖レッドローズ騎士団だということだな」
Nightが口にしたのはブローズがギルドマスターのギルド、聖レッドローズ騎士団。
アキラは一度も見聞きしたことの無い名前だが、Nightが知っている程なので有名なのだろう。
けれど何も知らないアキラは無知にも程があるが、自覚した上でNightに訊ねようとした。しかしアキラの口を挟んだのは別の人物だった。
「ねぇねぇNight、聖レッドローズ騎士団ってなーに?」
人混みを掻き分けてやって来たのはフェルノだった。
アキラとNightに飛びついて、腕を首に回すと、擦り寄るように訊ねる。
内緒話をするように人目を寄せ付けないと、ウザったらしくNightは答えた。
「聖レッドローズ騎士団は私達が活動拠点にしている東ブロック最強のギルドだ」
「さ、最強のギルド!?」
「へぇー、イベントで最強ってこと? それとも単純にギルドの質がってことー? それなら私達も負けて無いけどなー」
聖レッドローズ騎士団。その名は東ブロック最強と名高いギルド。
アキラはそれを聞いて肝が冷えるが、フェルノは負けじと勝気になる。
しかしNightは神妙な顔色を浮かべると、改めてフェルノの質問に答えた。
「そうだな。個の力と言うよりも、密度だな」
「「密度?」」
「ああ。聖レッドローズ騎士団は騎士団長でギルドマスターのブローズを中心としたギルドで、その最大の武器は団員数。優に百人は超える大所帯で、並のギルドなら数による暴力で駆逐されるだろうな」
「うっ、お、恐ろしいね」
アキラはNightが教えてくれた情報に耳を疑う。
けれどまだ人数だけだ。それならば質で如何にでもなる。
フェルノはそう思っていたのだが、Nightは表情を険しくし、額に皺を寄せる。
「おまけに騎士団長のブローズを始め、幹部は皆粒揃いだ。イベントには個人で参加して、優秀な結果を残している。はっきり言って、手強い相手だ」
「Nightにそこまで言わせるなんて……本当にマズいよ。面倒な人に目を付けられちゃったよ」
アキラは今一度頭を抱えてしまった。
そんな人たちと次のイベントで当たることになるのは、はっきり言って嫌だった。
けれど今更引き返せない。引き返すチケットすらなく、てんやわんやな状態だ。
「落ち着けアキラ。確かに相手は強いが、こちらは少数精鋭だ」
「少数精鋭? 確かに私たちは人数は少ないけど、そんなに弱くはない……」
「むしろ強いよねー。数の暴力? そんなの質で潰すだけだよー。うーん、楽しくなってきた!」
フェルノは目をキラキラさせていた。
拳を作りかち合わせると、今にも燃えて全てを焼き尽くしてしまいそう。
その隣では凛々しい表情を作るNight。負ける気は一切無さそうで、この状況を楽しんでいる節さえある。
「二人共、戦ってくれるの?」
「そこは逃げると言わないんだな」
「そうだねー。売られちゃった喧嘩でしょ? 買うのは面倒だけど、買っても私たちに損は無いよねー。あはは!」
アキラはその瞬間、頭の中から迷いが消えた。
一瞬にして弾けて消えると、意識がグルグル回転し、新しい意識を取り持つ。
そこには負けるような要素は無く、むしろこの状況さえ全力で楽しむ覚悟があった。
「ふぅ。二人共ごめんね、私焦ってたよ」
「そうだな。焦った所で解決はしない」
「状況を乗りこなしていこー」
「お前が言うな、お前が」
「あはは、そうだねー。それじゃあ全員で作戦会議だー」
「うん。二人共、ありがとう」
アキラは吹っ切れたおかげで迷いなかった。
次のイベント、新たな強者とぶつかることになる。
それすらも上手く乗りこなす覚悟になると、気持ちと表情はは整い、PvPの結果さえ兼ねた道を行くだけだ。
アキラは道の真ん中に突っ立っていた。
人混みの中に消えてしまったブローズ。その背中を追うことさえできない。
茫然とした上で、肩に新しい重荷が積まれると、ついつい溜息を付きたくなる。
「はぁ……」
「溜息を付くな。誰のせいでこうなったと思っているんだ」
背中をバシュンと叩いたのはNightだ。
アキラは突然のことに驚くも、振り返りざまに見せたNightの表情に驚愕。
酷く心配していた様子と、無事に勝利を掴んだ安心感に、心労が絶えない様子だからだ。
「Night、私のこと心配してくれていたんだ」
「私が心配したらダメなのか?」
「そんなことないけど……あ、そこは正直なんだ」
てっきりアキラは、Nightが否定して来ると思っていた。
けれど蓋を開ける前に本心が開いていて、Nightは正直な反応を見せる。
アキラは胸が苦しくなると、申し訳なさに包まれた。
「ごめんね、心肺掛けちゃって」
「それはもういい。だが、無理だけはするなよ」
「そうするね。今回はとっても大変だったから」
アキラはブローズとの勝負に勝つことはできた。
けれど最初から最後までギリギリで、一歩間違えれば惨事になっていた。
それだけの相手と渡り合い勝利できた喜びがあるものの、マズいのはここからだった。
「それよりどうしよう、Night!」
「話は聞いていたが、マズいことになったな」
「やっぱりNightもそう思うよね? ど、どうしよう……マズいよ、私はやる気なかったのに」
アキラは頭を抱えてしまった。
それもそのはず、ブローズと争う気は更々なかった。
にもかかわらず再び因縁を付けられてしまい、軽いパニックに陥っていた。
「とは言え相手は本気だぞ。あの様子、確実に来る」
「い、イベントに不参加って言うのは?」
「そうなればストーカーみたいに付き纏われるぞ?」
「ううっ、それは面倒だね。それじゃあわざと負けちゃうとか? 今回は賭け事でも無いから、安心して負けられるよ?」
アキラはブローズが一方的に提案したイベント参加を断ろうとした。
けれどNightが先を読んでブローズの思考を読み解く。
どのみち挑まなければストーカーにでもなられてしまう。そう思ってしまうと、イベントに参加した上でわざと負けるのが一番手っ取り早いと思ったのだが、如何にもそうはいかないらしい。
「それは無理な話だな」
「どうして? もしかして、負けても付き纏う、激ヤバストーカーってこと?」
「それもあるが、相手が聖レッドローズ騎士団だということだな」
Nightが口にしたのはブローズがギルドマスターのギルド、聖レッドローズ騎士団。
アキラは一度も見聞きしたことの無い名前だが、Nightが知っている程なので有名なのだろう。
けれど何も知らないアキラは無知にも程があるが、自覚した上でNightに訊ねようとした。しかしアキラの口を挟んだのは別の人物だった。
「ねぇねぇNight、聖レッドローズ騎士団ってなーに?」
人混みを掻き分けてやって来たのはフェルノだった。
アキラとNightに飛びついて、腕を首に回すと、擦り寄るように訊ねる。
内緒話をするように人目を寄せ付けないと、ウザったらしくNightは答えた。
「聖レッドローズ騎士団は私達が活動拠点にしている東ブロック最強のギルドだ」
「さ、最強のギルド!?」
「へぇー、イベントで最強ってこと? それとも単純にギルドの質がってことー? それなら私達も負けて無いけどなー」
聖レッドローズ騎士団。その名は東ブロック最強と名高いギルド。
アキラはそれを聞いて肝が冷えるが、フェルノは負けじと勝気になる。
しかしNightは神妙な顔色を浮かべると、改めてフェルノの質問に答えた。
「そうだな。個の力と言うよりも、密度だな」
「「密度?」」
「ああ。聖レッドローズ騎士団は騎士団長でギルドマスターのブローズを中心としたギルドで、その最大の武器は団員数。優に百人は超える大所帯で、並のギルドなら数による暴力で駆逐されるだろうな」
「うっ、お、恐ろしいね」
アキラはNightが教えてくれた情報に耳を疑う。
けれどまだ人数だけだ。それならば質で如何にでもなる。
フェルノはそう思っていたのだが、Nightは表情を険しくし、額に皺を寄せる。
「おまけに騎士団長のブローズを始め、幹部は皆粒揃いだ。イベントには個人で参加して、優秀な結果を残している。はっきり言って、手強い相手だ」
「Nightにそこまで言わせるなんて……本当にマズいよ。面倒な人に目を付けられちゃったよ」
アキラは今一度頭を抱えてしまった。
そんな人たちと次のイベントで当たることになるのは、はっきり言って嫌だった。
けれど今更引き返せない。引き返すチケットすらなく、てんやわんやな状態だ。
「落ち着けアキラ。確かに相手は強いが、こちらは少数精鋭だ」
「少数精鋭? 確かに私たちは人数は少ないけど、そんなに弱くはない……」
「むしろ強いよねー。数の暴力? そんなの質で潰すだけだよー。うーん、楽しくなってきた!」
フェルノは目をキラキラさせていた。
拳を作りかち合わせると、今にも燃えて全てを焼き尽くしてしまいそう。
その隣では凛々しい表情を作るNight。負ける気は一切無さそうで、この状況を楽しんでいる節さえある。
「二人共、戦ってくれるの?」
「そこは逃げると言わないんだな」
「そうだねー。売られちゃった喧嘩でしょ? 買うのは面倒だけど、買っても私たちに損は無いよねー。あはは!」
アキラはその瞬間、頭の中から迷いが消えた。
一瞬にして弾けて消えると、意識がグルグル回転し、新しい意識を取り持つ。
そこには負けるような要素は無く、むしろこの状況さえ全力で楽しむ覚悟があった。
「ふぅ。二人共ごめんね、私焦ってたよ」
「そうだな。焦った所で解決はしない」
「状況を乗りこなしていこー」
「お前が言うな、お前が」
「あはは、そうだねー。それじゃあ全員で作戦会議だー」
「うん。二人共、ありがとう」
アキラは吹っ切れたおかげで迷いなかった。
次のイベント、新たな強者とぶつかることになる。
それすらも上手く乗りこなす覚悟になると、気持ちと表情はは整い、PvPの結果さえ兼ねた道を行くだけだ。
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