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◇476 誰かのために囮になって
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突然けたたましい音を立てながら現れた謎のモンスター。
エイのように広い体。高さもあり、まるで傘の様。
しかしよく見れば頭から突起物が伸びていて、傘の姿もどんぐりの様。
口は大きく膨らんでいて、笑顔を作っている。この姿、例えるなら平べったいアンコウだった。
とは言えアンコウにしてはやけに大きい。
アキラはゴクリと喉を鳴らすと、体長は優に三メートルを超えるモンスターに少しだけ脚が竦んでいた。
「な、なにこのモンスター。大き過ぎない?」
「まさかこんなモンスターまでいたとはな。はっ、アキラ避けろ!」
「えっ?」
突然Nightが声を上げた。何かしようとしているのかな。
視線を一瞬だけ目の前のモンスターから外すと、突然空気を切るような異様な衝撃が肌を刺す。
バシュン!
「「うわぁ!?」」
突然攻撃をしてきた。しかも足のように見えていた四本の触手の内の一本を巧みに操り、まるで鞭のように鋭く叩き付ける。
あんなものに当たれば当然ひとたまりもない。
ましてややけに好戦的で、距離を取って奇跡的に初撃を躱せたアキラたちを睨み追撃を放とうとする。
「Night、このモンスターの相手は私がするから先に行って!」
「はっ? 死亡フラグを立てるのか」
「そうじゃないよ。だけどこんな相手、私たち二人じゃ勝てない。だからNightは先に行って!」
これだけでは何の話かよく分からない。
実際、アキラとNightは互いに心で会話をしていた。
お互いのことをある程度理解しているからこそ、余計な文言は省き、とにかくモンスターの動きを避けることに必死だ。
「馬鹿か。依頼を第一に考えて、自分を囮に使うなんて」
「やっぱり分かってたんだ」
「当り前だ。私を誰だと思っている。いや、今はそんなこといい。私が攻撃ができないから、逃げる時間を稼ぐってことだな。悪いがそんな作戦は……」
「そう言うこと。それじゃあ、お願いね」
Nightはアキラの思考を全て読み切っていた。
むしろこれ以上ないくらい先のことを考えていた。
しかもアキラの作戦は単純。自分を囮に使い、Nightが逃げる時間を確保するのだ。
もちろんそんな保証はできない。けれどやってみるしかない。
今回の依頼、決して戦闘は加味しない。だから依頼優先になるのなら、アキラの作戦は非常に有効だった。
と言うのも、今回の依頼はシマリスのりっぴーを無事に連れ帰り、飼い主の下に届けること。それは絶対に条件が変わらないのだ。
だからこそ早く依頼を達成する必要がある。速やかに丁寧にだ。
となれば無駄に戦闘をする必要はない。けれどモンスターはアキラたちを敵視している。なにを以って敵視しているのかは分からないが、無事に帰してくれそうにない。だから戦うのだ。
「おい、相手はNPCだぞ! 無駄に戦って、影響を生む必要はないだろ」
「でも、その子が居なくて悲しむ子もいるでしょ? 例えNPCだとしても、この世界で生きているんだよ。大切なものがいなくなっちゃったら、すっごく悲しくなるでしょ」
アキラの言うことは最もだった。NPCとは言えどこの世界に来ている立派な住人。
架空の命があるからこそ、無碍にはできない。この世界が全てなNPCの住人にとって、ペットは家族。つまり現実の世界の人たちと同じ感性を持っていた。
だからこそ、Nightは言葉の引っ掛かりを勘付く。
「それ、お前が勘定に入っていないだろ」
「そんなことないよ。安心して、いざとなったら逃げるから。そりゃぁ!」
アキラはモンスターに向かって行った。
もはや何を言っても聞く耳は持たないだろう。
そんな雰囲気を放ちながら、必死に威勢を武器に戦う。
「くそ。相手は首領栗フィッシュだぞ。陸地に住むバットフィッシュ。あの巨体と触手を武器に戦うそれなりの強敵。アキラなら負ける心配はないだろうが、今のスキルでしかも一人で何処まで善戦……はぁ、私が戦えれば」
Nightは自分の身に起きている現状が嫌でしかなかった。
それもそのはず筋力が無いから両手で箱罠を持たざるを得ない。
そのせいでまともに武器も扱えず、ましてや罠の用意も、【ライフ・オブ・メイク】で適宜援護もまともにできない。
それなら箱罠を置けばいいのでは? そう思うかもしれないが、そんなことをすれば首領栗フィッシュに狙われたり、悲惨にも攻撃が被弾するかもしれない。
せめてもう少し距離があれば触手の餌食にもならないのにと思いつつ、木々の間は開けているせいか、簡単に目視され、背中を見せれば狙われる。
そこまで検討しているからこそ、アキラはこうして一人で戦うことを選んだのだ。
となれば、Nightはこれ以上深追いできない。むしろそれはアキラの邪魔にしかならないと悟る。だが……
「アキラ、ソイツの体表は粘液を纏っていることから判る通り水分が多めだ。弱点は逆に言えば乾燥。フェルノを連れて来るから待っていろ!」
「うん。Nightも気を付けてね」
お互いにそれ以上の会話は要らなかった。
むしろ会話をする必要は無かった。
アキラは首領栗フィッシュに向かって行き、Nightはシマリスの入った箱罠を持って急いで逃げる。
背中を見せるなんて真似は、圧倒的に危険。首領栗フィッシュも知能が高いせいか、背中を見せ足を引き攣るように逃げるNightに触手を放った。
プシュン!
高速で太い触手が放たれ、Nightのことを狙った。
けれどアキラは素早く飛び込み、触手を撃ち落とす。
「させないよ!」
【甲蟲】で武装した腕を振り下ろし、触手を真下に叩き付けた。
すると首領栗フィッシュは驚いた様子で口をひん曲げると、邪魔立てするアキラのことを見定める。
完全に意識をアキラへと移動させ、睨みつけるように触手をブンブン振り回した。
「私の仲間の邪魔はさせないよ。貴方の相手は私がする!」
アキラは構えを取ると、首領栗フィッシュのことを凝視する。
互いに敵対意識を剥き出しにすると、三秒程の間を置いた後、首領栗フィッシュから動き出すのだった。
エイのように広い体。高さもあり、まるで傘の様。
しかしよく見れば頭から突起物が伸びていて、傘の姿もどんぐりの様。
口は大きく膨らんでいて、笑顔を作っている。この姿、例えるなら平べったいアンコウだった。
とは言えアンコウにしてはやけに大きい。
アキラはゴクリと喉を鳴らすと、体長は優に三メートルを超えるモンスターに少しだけ脚が竦んでいた。
「な、なにこのモンスター。大き過ぎない?」
「まさかこんなモンスターまでいたとはな。はっ、アキラ避けろ!」
「えっ?」
突然Nightが声を上げた。何かしようとしているのかな。
視線を一瞬だけ目の前のモンスターから外すと、突然空気を切るような異様な衝撃が肌を刺す。
バシュン!
「「うわぁ!?」」
突然攻撃をしてきた。しかも足のように見えていた四本の触手の内の一本を巧みに操り、まるで鞭のように鋭く叩き付ける。
あんなものに当たれば当然ひとたまりもない。
ましてややけに好戦的で、距離を取って奇跡的に初撃を躱せたアキラたちを睨み追撃を放とうとする。
「Night、このモンスターの相手は私がするから先に行って!」
「はっ? 死亡フラグを立てるのか」
「そうじゃないよ。だけどこんな相手、私たち二人じゃ勝てない。だからNightは先に行って!」
これだけでは何の話かよく分からない。
実際、アキラとNightは互いに心で会話をしていた。
お互いのことをある程度理解しているからこそ、余計な文言は省き、とにかくモンスターの動きを避けることに必死だ。
「馬鹿か。依頼を第一に考えて、自分を囮に使うなんて」
「やっぱり分かってたんだ」
「当り前だ。私を誰だと思っている。いや、今はそんなこといい。私が攻撃ができないから、逃げる時間を稼ぐってことだな。悪いがそんな作戦は……」
「そう言うこと。それじゃあ、お願いね」
Nightはアキラの思考を全て読み切っていた。
むしろこれ以上ないくらい先のことを考えていた。
しかもアキラの作戦は単純。自分を囮に使い、Nightが逃げる時間を確保するのだ。
もちろんそんな保証はできない。けれどやってみるしかない。
今回の依頼、決して戦闘は加味しない。だから依頼優先になるのなら、アキラの作戦は非常に有効だった。
と言うのも、今回の依頼はシマリスのりっぴーを無事に連れ帰り、飼い主の下に届けること。それは絶対に条件が変わらないのだ。
だからこそ早く依頼を達成する必要がある。速やかに丁寧にだ。
となれば無駄に戦闘をする必要はない。けれどモンスターはアキラたちを敵視している。なにを以って敵視しているのかは分からないが、無事に帰してくれそうにない。だから戦うのだ。
「おい、相手はNPCだぞ! 無駄に戦って、影響を生む必要はないだろ」
「でも、その子が居なくて悲しむ子もいるでしょ? 例えNPCだとしても、この世界で生きているんだよ。大切なものがいなくなっちゃったら、すっごく悲しくなるでしょ」
アキラの言うことは最もだった。NPCとは言えどこの世界に来ている立派な住人。
架空の命があるからこそ、無碍にはできない。この世界が全てなNPCの住人にとって、ペットは家族。つまり現実の世界の人たちと同じ感性を持っていた。
だからこそ、Nightは言葉の引っ掛かりを勘付く。
「それ、お前が勘定に入っていないだろ」
「そんなことないよ。安心して、いざとなったら逃げるから。そりゃぁ!」
アキラはモンスターに向かって行った。
もはや何を言っても聞く耳は持たないだろう。
そんな雰囲気を放ちながら、必死に威勢を武器に戦う。
「くそ。相手は首領栗フィッシュだぞ。陸地に住むバットフィッシュ。あの巨体と触手を武器に戦うそれなりの強敵。アキラなら負ける心配はないだろうが、今のスキルでしかも一人で何処まで善戦……はぁ、私が戦えれば」
Nightは自分の身に起きている現状が嫌でしかなかった。
それもそのはず筋力が無いから両手で箱罠を持たざるを得ない。
そのせいでまともに武器も扱えず、ましてや罠の用意も、【ライフ・オブ・メイク】で適宜援護もまともにできない。
それなら箱罠を置けばいいのでは? そう思うかもしれないが、そんなことをすれば首領栗フィッシュに狙われたり、悲惨にも攻撃が被弾するかもしれない。
せめてもう少し距離があれば触手の餌食にもならないのにと思いつつ、木々の間は開けているせいか、簡単に目視され、背中を見せれば狙われる。
そこまで検討しているからこそ、アキラはこうして一人で戦うことを選んだのだ。
となれば、Nightはこれ以上深追いできない。むしろそれはアキラの邪魔にしかならないと悟る。だが……
「アキラ、ソイツの体表は粘液を纏っていることから判る通り水分が多めだ。弱点は逆に言えば乾燥。フェルノを連れて来るから待っていろ!」
「うん。Nightも気を付けてね」
お互いにそれ以上の会話は要らなかった。
むしろ会話をする必要は無かった。
アキラは首領栗フィッシュに向かって行き、Nightはシマリスの入った箱罠を持って急いで逃げる。
背中を見せるなんて真似は、圧倒的に危険。首領栗フィッシュも知能が高いせいか、背中を見せ足を引き攣るように逃げるNightに触手を放った。
プシュン!
高速で太い触手が放たれ、Nightのことを狙った。
けれどアキラは素早く飛び込み、触手を撃ち落とす。
「させないよ!」
【甲蟲】で武装した腕を振り下ろし、触手を真下に叩き付けた。
すると首領栗フィッシュは驚いた様子で口をひん曲げると、邪魔立てするアキラのことを見定める。
完全に意識をアキラへと移動させ、睨みつけるように触手をブンブン振り回した。
「私の仲間の邪魔はさせないよ。貴方の相手は私がする!」
アキラは構えを取ると、首領栗フィッシュのことを凝視する。
互いに敵対意識を剥き出しにすると、三秒程の間を置いた後、首領栗フィッシュから動き出すのだった。
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