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◇453 雷斬・天狐VS雪将軍2
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「それでどうやって本気出さすの?」
天孤は雷斬に訊ねた。
雪将軍の本気を出させるとは言っても、如何にして本気を出させるのか。
中途半端な力じゃ雪将軍を倒すことはできない。
となれば、ちゃんと雪将軍を煽るしかない。
「そうですね。とりあえず、嗾けてみましょうか」
雷斬は黒刀を握りしめると、今一度【雷鳴】を呼んだ。
全身に雷を纏わせると、鋭く駆け出す。
雪将軍の体勢に隙は無い様に見える。全身から迸る殺気にもムラはない。
けれどどんな相手にもほんの一瞬、隙は生まれるので、雷斬は的確に懐に忍んだ。
「そこです!」
雷の電光と共に姿を現しにした雷斬。
雪将軍の鳩尾が目と鼻の先にある。
「アマイ! ソノテイドデワシヲヤレルトオモウナ!」
雪将軍は雷斬の姿を見つけると、太い腕を伸ばした。
ゴツくて大きな手を使い、雷斬のことを投げ飛ばそうとする。
けれど雷斬は一切避ける気はない。投げられる前に仕留めるのだ。
雷斬が突き立てた黒刀は腕の中に隠されていた。
左腕の丁度死角。クルンと回して、肘打ちをするみたいに鳩尾に突き刺す。
グサリ!
黒刀の切っ先が雪将軍の鳩尾を貫く。
相当のダメージがあるはず。確信を持った雷斬だったが、如何やらそう上手くも行っていない。視線を上げ、頭上のHPバーに目を凝らすのだが、何故かHPが減っていなかった。
「えっ!? ぬあっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
驚いている間に雪将軍に捕まった。
そのまま握り潰されると思ったが、そんな残酷なことにはならずに済んだ。
変わりに思いっきり投げ飛ばされると、雷斬は受け身を取ることに全力になる。
「ここで受け身を取れば……」
「トラセヌ! ツラヌケ、ワガヤイバヨ!」
雪の上に綺麗に受け身を取ろうとする。
けれど雪将軍は読んでいたようで、雷斬が受け身を取ろうとした雪の上に仕掛ける。
着地を目の前にした瞬間、降り積もった雪が盛り上がる。
すると地面の中から鋭く尖った氷の刃が突き出て、雷斬のことを貫こうとする。
「そんなことまでできるんですね! それなら私もやることをするだけです」
雷斬は瞬時に理解すると、頭を使って必要な数の刃を生み出す。
【陣刃】が展開され、突き出た氷の刃をカンカンと軽快な音を立てながら、弾いていく。
まるでピンボールのようで、雷斬のことを意図的に吹き飛ばした。
「おっとっと! これは流石に堪えますね」
雷斬は何とか離れた場所で受け身を取った。
しかし体を変に捻ってしまったせいで、HPとは関係なく体を痛める。
使っていない右腕を犠牲にしつつ、雷斬は何とか即死を切り抜けた。
「いける、雷斬?」
「天狐さん。はい、大丈夫ですよ」
天孤は姿を消していたようで、素早く雷斬の下へとやって来た。
フッと沸いた天狐に雷斬は目を開くが、心配されているので心配は無いと答える。
けれど腕を抑えているせいか、あまり大丈夫とは言えない。
天孤は雷斬の体を心配しつつ、余計に心労を掛けないように配慮した。
「まさか防御力も上がっているなんてね、ちょいやりすぎかな」
「そうですね。それにしても雪刃をあしらわれてしまうなんて、少しだけですが屈辱的ですね」
雷斬は久々に繰り出した技が容易く防がれたことに、若干だが精神的なダメージを受けていた。
けれどそれだけ警戒されていた。否、雪将軍が先程戦っていた時よりも強くなっていることに感銘を抱く。怒りで強くなる行為。よくある話だ。
雷斬も理解は示すものの、流石に同意はできない。
「怒りの感情で強くなったとしても、それは本当に強くなったとは言えません。即ち、雪将軍の全力は既に果たされている。残った原動力は、怒りによる強制だけですか」
「せつないな」
「せつないですか。確かにそうも見えてしまいますね。では私たちが解放して差し上げましょうか」
雷斬はインベントリからアイテムを取り出した。
注射器のような形をしているが、中には液体が入っていた。
透明度の高いもので、毒とは思えない。
けれど雷斬は注射器を握ると、それを自分の右腕に打ち込んだ。
天孤は突然の奇行に、雷斬の精神状態を心配せざるを得なくなる。
「それなに?」
「なに言って、アドレナリンを打って一時的に痛みを飛ばしたんですよ」
「そんなんまであるの?」
「はい。アドレナリンとして使われているのはこの世界の野草ですが、この使いきりの注射器はNightさんに託されたものです。なにかあれば痛みを飛ばせ。今がその時です」
Nightに渡されていたアイテムがここに来て役に立つとは思わなかった。
いつも以上にHPの消費が多く、【ライフ・オブ・メイク】の回数を減らしていたのはこのためだった。
しかしこれを使った以上、雷斬も負けるわけには行かなくなる。
黒刀を強く握りしめると、雪将軍に突き付ける。
「イタミヲクスリデトバシタカ! ダガソウナガクハモタナイハズダ」
「そうですね。確かに長くは持ちません。ですが薬が切れる前に倒してしまえばいいんですよ」
「ワシヲタオス?」
「はい。どんな相手でも、例え大きく開いたレベル差があったとしても、倒せない相手はいませんから。そうですよね、天狐さん」
「そうやな」
時間的にも十分くらいが限界だろうか。
雷斬は腕の痛みが引いて来たので、刀を両手で握ってみせる。
雪将軍は太刀を構えていると、全身から迸る殺気を剥き出しにして飛ばした。
だが二人は威圧如きではやられる気はなく、むしろ冷たい殺気で雪将軍の殺気を押し返し、拮抗した状況を作り上げる。
「ナルホドノ。ナラバオモイシラセテヤロウ!」
雪将軍の目付きと口調が変わった。
何をしようと言うのか。雷斬と天狐は警戒心を剥き出す。
けれど雪将軍の行動は突飛なもので、太刀を雪の上に突き立て静止する。
静観を装うつもりだろうか? そう思える程思考回路は停止していないが、雪将軍の見た目や動きに変化が出ることはなく、代わりに動いたのは環境だった。
天孤は雷斬に訊ねた。
雪将軍の本気を出させるとは言っても、如何にして本気を出させるのか。
中途半端な力じゃ雪将軍を倒すことはできない。
となれば、ちゃんと雪将軍を煽るしかない。
「そうですね。とりあえず、嗾けてみましょうか」
雷斬は黒刀を握りしめると、今一度【雷鳴】を呼んだ。
全身に雷を纏わせると、鋭く駆け出す。
雪将軍の体勢に隙は無い様に見える。全身から迸る殺気にもムラはない。
けれどどんな相手にもほんの一瞬、隙は生まれるので、雷斬は的確に懐に忍んだ。
「そこです!」
雷の電光と共に姿を現しにした雷斬。
雪将軍の鳩尾が目と鼻の先にある。
「アマイ! ソノテイドデワシヲヤレルトオモウナ!」
雪将軍は雷斬の姿を見つけると、太い腕を伸ばした。
ゴツくて大きな手を使い、雷斬のことを投げ飛ばそうとする。
けれど雷斬は一切避ける気はない。投げられる前に仕留めるのだ。
雷斬が突き立てた黒刀は腕の中に隠されていた。
左腕の丁度死角。クルンと回して、肘打ちをするみたいに鳩尾に突き刺す。
グサリ!
黒刀の切っ先が雪将軍の鳩尾を貫く。
相当のダメージがあるはず。確信を持った雷斬だったが、如何やらそう上手くも行っていない。視線を上げ、頭上のHPバーに目を凝らすのだが、何故かHPが減っていなかった。
「えっ!? ぬあっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
驚いている間に雪将軍に捕まった。
そのまま握り潰されると思ったが、そんな残酷なことにはならずに済んだ。
変わりに思いっきり投げ飛ばされると、雷斬は受け身を取ることに全力になる。
「ここで受け身を取れば……」
「トラセヌ! ツラヌケ、ワガヤイバヨ!」
雪の上に綺麗に受け身を取ろうとする。
けれど雪将軍は読んでいたようで、雷斬が受け身を取ろうとした雪の上に仕掛ける。
着地を目の前にした瞬間、降り積もった雪が盛り上がる。
すると地面の中から鋭く尖った氷の刃が突き出て、雷斬のことを貫こうとする。
「そんなことまでできるんですね! それなら私もやることをするだけです」
雷斬は瞬時に理解すると、頭を使って必要な数の刃を生み出す。
【陣刃】が展開され、突き出た氷の刃をカンカンと軽快な音を立てながら、弾いていく。
まるでピンボールのようで、雷斬のことを意図的に吹き飛ばした。
「おっとっと! これは流石に堪えますね」
雷斬は何とか離れた場所で受け身を取った。
しかし体を変に捻ってしまったせいで、HPとは関係なく体を痛める。
使っていない右腕を犠牲にしつつ、雷斬は何とか即死を切り抜けた。
「いける、雷斬?」
「天狐さん。はい、大丈夫ですよ」
天孤は姿を消していたようで、素早く雷斬の下へとやって来た。
フッと沸いた天狐に雷斬は目を開くが、心配されているので心配は無いと答える。
けれど腕を抑えているせいか、あまり大丈夫とは言えない。
天孤は雷斬の体を心配しつつ、余計に心労を掛けないように配慮した。
「まさか防御力も上がっているなんてね、ちょいやりすぎかな」
「そうですね。それにしても雪刃をあしらわれてしまうなんて、少しだけですが屈辱的ですね」
雷斬は久々に繰り出した技が容易く防がれたことに、若干だが精神的なダメージを受けていた。
けれどそれだけ警戒されていた。否、雪将軍が先程戦っていた時よりも強くなっていることに感銘を抱く。怒りで強くなる行為。よくある話だ。
雷斬も理解は示すものの、流石に同意はできない。
「怒りの感情で強くなったとしても、それは本当に強くなったとは言えません。即ち、雪将軍の全力は既に果たされている。残った原動力は、怒りによる強制だけですか」
「せつないな」
「せつないですか。確かにそうも見えてしまいますね。では私たちが解放して差し上げましょうか」
雷斬はインベントリからアイテムを取り出した。
注射器のような形をしているが、中には液体が入っていた。
透明度の高いもので、毒とは思えない。
けれど雷斬は注射器を握ると、それを自分の右腕に打ち込んだ。
天孤は突然の奇行に、雷斬の精神状態を心配せざるを得なくなる。
「それなに?」
「なに言って、アドレナリンを打って一時的に痛みを飛ばしたんですよ」
「そんなんまであるの?」
「はい。アドレナリンとして使われているのはこの世界の野草ですが、この使いきりの注射器はNightさんに託されたものです。なにかあれば痛みを飛ばせ。今がその時です」
Nightに渡されていたアイテムがここに来て役に立つとは思わなかった。
いつも以上にHPの消費が多く、【ライフ・オブ・メイク】の回数を減らしていたのはこのためだった。
しかしこれを使った以上、雷斬も負けるわけには行かなくなる。
黒刀を強く握りしめると、雪将軍に突き付ける。
「イタミヲクスリデトバシタカ! ダガソウナガクハモタナイハズダ」
「そうですね。確かに長くは持ちません。ですが薬が切れる前に倒してしまえばいいんですよ」
「ワシヲタオス?」
「はい。どんな相手でも、例え大きく開いたレベル差があったとしても、倒せない相手はいませんから。そうですよね、天狐さん」
「そうやな」
時間的にも十分くらいが限界だろうか。
雷斬は腕の痛みが引いて来たので、刀を両手で握ってみせる。
雪将軍は太刀を構えていると、全身から迸る殺気を剥き出しにして飛ばした。
だが二人は威圧如きではやられる気はなく、むしろ冷たい殺気で雪将軍の殺気を押し返し、拮抗した状況を作り上げる。
「ナルホドノ。ナラバオモイシラセテヤロウ!」
雪将軍の目付きと口調が変わった。
何をしようと言うのか。雷斬と天狐は警戒心を剥き出す。
けれど雪将軍の行動は突飛なもので、太刀を雪の上に突き立て静止する。
静観を装うつもりだろうか? そう思える程思考回路は停止していないが、雪将軍の見た目や動きに変化が出ることはなく、代わりに動いたのは環境だった。
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