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◇437 戦いは弱音から
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激しくぶつかり合う両者。
大振りの太刀を捻じ伏せようと技術で真っ向からぶつかる雷斬と、その技術すら恵まれた体格で淘汰しようと画策する雪将軍。
圧倒的な技と体による戦いぶり。勝つのは己の心が強い方。
そう委ねられる他ならないが、互いに負ける気は一切無く。実力をフルに発揮しようとする。
「サキホドヨリモズイブントオモタイガ、ソノテイドデハワレニハカテンゾ!」
「そうでしょうね。ですが貴方も動きが制限されているのは同じはずです」
「ワカッテイルヨウナクチヲスルナ! ワレハコノテイドデハマケンノダ!」
大振りの太刀を振り払おうとする。
その反動で雷斬を吹き飛ばそうとするのだが、如何にもできないでいた。
体を捻れば張り巡らされた見えざる刃、【陣刃】によってズタズタにされる。
意識の内側に染み込まされた新常識に、雪将軍は躊躇いを見せてしまう。
「クッ、ツクヅクヒキョウナマネダ」
「それが戦というものです。故に破られるのは唐突。なのでここで切ります!」
雷斬は身を屈めた。雪将軍の懐に潜り込もうとした。
前屈みになって滑り込むように刀身を隠すと、大振りの太刀の下を潜る。
流石に雪将軍は対処が間に合わない。
ここからなら首を狙える。油断はしていないが、取った! と確信していた。
「そこです!」
雷斬は左足に重心を移動し、一気に飛んだ。
ここからなら下手なことをしなくても狙えるからだ。
けれどその刃が届くことはなかった。
あと少し、後数センチのところで邪魔が入った。それは雪将軍の太刀でも蹴りでもない。
意識外からの奇襲だった。
「ぐはっ!」
雷斬の体が吹き飛んだ。突然左の脇腹を硬い何かで叩き付けられたような衝撃が走る。
しかもその衝撃がその場で止まらない。
簡単に吹き飛ばされてしまい、雷斬は苦しみの余り転げてしまった。
なかなか立てない。だけど立たないとやられる。
迫りくる死の臭いに駆られて何とか立ち上がる。
幸いなことに刀は落とさずに済んだようで、杖代わりにして体を預けた。
ピキンピキン! と砕ける寸前の音が耳に劈く。腕を痺れが襲い、口元を拭って痛みを堪える。
見てみればHPがかなり削られていた。
今の奇襲で半分は失われているようで、雷斬は何処から攻撃が来たのか視線を配って回る。隙を突いて回復ポーションを口に加えたはいいものの、雪将軍ですら何処から攻撃が飛んで来たのか分かっていない。
だからだろうか。広い武家屋敷の中に雪将軍の怒号が響き渡る。
「ツユヨミ、ドコニイル!」
「ツユヨミ? 誰のことでしょうか」
雪将軍は何者かは知れないツユヨミを呼びつけた。
キョロキョロと視線を配り回し、耳も鼻も研ぎ澄ます。
すると雪将軍の耳元で声がした。薄っすらと雷斬にも聞こえたが、何故か苦しんだ声をしている。
「……ハイ、ココニ……」
「ツユヨミ、ブジダッタノカ?」
「エエ、シュクンノサスツルギノオカゲニゴザイマス。ユエニ、ミヲヒソメテキシュウヲ」「タイギゴクロウデアッタナ。テキギキシュウヲタノムゾ」
「ショウチシマシタ」
姿は見えない。声だけが聞こえている。
もしかしたら今話しているツユヨミこそが幻術士だろうか。
まだ確証は持てないが、雷斬はある程度の推測を立てた。
けれど見えない相手にも意識を裂くのは大変だ。汗が滲み出てくる中、雪将軍はせっかく雷斬が【陣刃】を張り巡らせたはずなのに、それすら覆してしまった。
「ケイセイギャクテントイウワケダナ」
「そうみたいですね。ですが雪将軍さん、貴方も卑怯じゃないですか」
「フン。ドウトデモイエバヨイ。スベテハマケイヌ、ヨワキモノノサダメヨ!」
雪将軍は勝ち誇ったつもりでいた。
しかし雷斬はまだまだ諦めてはいないので、刀を握り直して構える。
このまま押し切れるかは怪しいのだが、雷斬は刀の切っ先を突きつけると、サスツルギが来る前に仕掛けようとする。
だけどそれすら読んでいたのか、雪将軍はサスツルギを使って来た。
「コオッテキエヨ!」
「いえ、消えるのは貴方です。来てください!」
雷斬は【雷鳴】を呼んでその場から消える。
電流を迸らせて、その場から瞬時に消えると、そのまま逃げる気は一切無く、雪将軍に果敢に攻め込む。刀を振り抜くと、首だけを狙って掻き切ろうとするのだが、雷斬が弱っていることも見抜かれているようで、雪将軍は容易くあしらった。
「ヌルイゾ! ショウキガカギラレテイルガユエニタンキケッセンニモチコンダコトヲコウカイセヨ!」
雪将軍は雷斬の動きを完璧に読むと、腹部に向かって膝蹴りを喰らわした。
クリンヒットしてしまう大ダメージを負うと、雷斬は吐き気を催し嗚咽する。
体がくの字にひしゃげてしまい、完全に動けなくなると、太刀の錆にもする気が失せたのか、そのまま蹴り飛ばした。
「あっ……」
意識が遠のいていくのが判る。これがGAMEだと分かっているにもかかわらず脳裏を過る走馬灯。時間の流れがゆっくりに感じ、雪将軍が目の前から離れて行く。
後ろに何があるのかは分からない。けれどせめてもの足掻きを見せたい。
そう思って体を屈めようとするも受け身を取れない程一瞬のうちに片が付いてしまい、雷斬は抵抗の一つもできずに空しく全身を強く打った。
大振りの太刀を捻じ伏せようと技術で真っ向からぶつかる雷斬と、その技術すら恵まれた体格で淘汰しようと画策する雪将軍。
圧倒的な技と体による戦いぶり。勝つのは己の心が強い方。
そう委ねられる他ならないが、互いに負ける気は一切無く。実力をフルに発揮しようとする。
「サキホドヨリモズイブントオモタイガ、ソノテイドデハワレニハカテンゾ!」
「そうでしょうね。ですが貴方も動きが制限されているのは同じはずです」
「ワカッテイルヨウナクチヲスルナ! ワレハコノテイドデハマケンノダ!」
大振りの太刀を振り払おうとする。
その反動で雷斬を吹き飛ばそうとするのだが、如何にもできないでいた。
体を捻れば張り巡らされた見えざる刃、【陣刃】によってズタズタにされる。
意識の内側に染み込まされた新常識に、雪将軍は躊躇いを見せてしまう。
「クッ、ツクヅクヒキョウナマネダ」
「それが戦というものです。故に破られるのは唐突。なのでここで切ります!」
雷斬は身を屈めた。雪将軍の懐に潜り込もうとした。
前屈みになって滑り込むように刀身を隠すと、大振りの太刀の下を潜る。
流石に雪将軍は対処が間に合わない。
ここからなら首を狙える。油断はしていないが、取った! と確信していた。
「そこです!」
雷斬は左足に重心を移動し、一気に飛んだ。
ここからなら下手なことをしなくても狙えるからだ。
けれどその刃が届くことはなかった。
あと少し、後数センチのところで邪魔が入った。それは雪将軍の太刀でも蹴りでもない。
意識外からの奇襲だった。
「ぐはっ!」
雷斬の体が吹き飛んだ。突然左の脇腹を硬い何かで叩き付けられたような衝撃が走る。
しかもその衝撃がその場で止まらない。
簡単に吹き飛ばされてしまい、雷斬は苦しみの余り転げてしまった。
なかなか立てない。だけど立たないとやられる。
迫りくる死の臭いに駆られて何とか立ち上がる。
幸いなことに刀は落とさずに済んだようで、杖代わりにして体を預けた。
ピキンピキン! と砕ける寸前の音が耳に劈く。腕を痺れが襲い、口元を拭って痛みを堪える。
見てみればHPがかなり削られていた。
今の奇襲で半分は失われているようで、雷斬は何処から攻撃が来たのか視線を配って回る。隙を突いて回復ポーションを口に加えたはいいものの、雪将軍ですら何処から攻撃が飛んで来たのか分かっていない。
だからだろうか。広い武家屋敷の中に雪将軍の怒号が響き渡る。
「ツユヨミ、ドコニイル!」
「ツユヨミ? 誰のことでしょうか」
雪将軍は何者かは知れないツユヨミを呼びつけた。
キョロキョロと視線を配り回し、耳も鼻も研ぎ澄ます。
すると雪将軍の耳元で声がした。薄っすらと雷斬にも聞こえたが、何故か苦しんだ声をしている。
「……ハイ、ココニ……」
「ツユヨミ、ブジダッタノカ?」
「エエ、シュクンノサスツルギノオカゲニゴザイマス。ユエニ、ミヲヒソメテキシュウヲ」「タイギゴクロウデアッタナ。テキギキシュウヲタノムゾ」
「ショウチシマシタ」
姿は見えない。声だけが聞こえている。
もしかしたら今話しているツユヨミこそが幻術士だろうか。
まだ確証は持てないが、雷斬はある程度の推測を立てた。
けれど見えない相手にも意識を裂くのは大変だ。汗が滲み出てくる中、雪将軍はせっかく雷斬が【陣刃】を張り巡らせたはずなのに、それすら覆してしまった。
「ケイセイギャクテントイウワケダナ」
「そうみたいですね。ですが雪将軍さん、貴方も卑怯じゃないですか」
「フン。ドウトデモイエバヨイ。スベテハマケイヌ、ヨワキモノノサダメヨ!」
雪将軍は勝ち誇ったつもりでいた。
しかし雷斬はまだまだ諦めてはいないので、刀を握り直して構える。
このまま押し切れるかは怪しいのだが、雷斬は刀の切っ先を突きつけると、サスツルギが来る前に仕掛けようとする。
だけどそれすら読んでいたのか、雪将軍はサスツルギを使って来た。
「コオッテキエヨ!」
「いえ、消えるのは貴方です。来てください!」
雷斬は【雷鳴】を呼んでその場から消える。
電流を迸らせて、その場から瞬時に消えると、そのまま逃げる気は一切無く、雪将軍に果敢に攻め込む。刀を振り抜くと、首だけを狙って掻き切ろうとするのだが、雷斬が弱っていることも見抜かれているようで、雪将軍は容易くあしらった。
「ヌルイゾ! ショウキガカギラレテイルガユエニタンキケッセンニモチコンダコトヲコウカイセヨ!」
雪将軍は雷斬の動きを完璧に読むと、腹部に向かって膝蹴りを喰らわした。
クリンヒットしてしまう大ダメージを負うと、雷斬は吐き気を催し嗚咽する。
体がくの字にひしゃげてしまい、完全に動けなくなると、太刀の錆にもする気が失せたのか、そのまま蹴り飛ばした。
「あっ……」
意識が遠のいていくのが判る。これがGAMEだと分かっているにもかかわらず脳裏を過る走馬灯。時間の流れがゆっくりに感じ、雪将軍が目の前から離れて行く。
後ろに何があるのかは分からない。けれどせめてもの足掻きを見せたい。
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