429 / 568
◇426 武家屋敷の万華鏡
しおりを挟む
竹林の中にポツリと佇む武家屋敷。
一体どれほどの年月をこの場所で過ごしてきたのだろうか。
アキラたちは歴史を感じさせる奥ゆかしい建物を見つめ立ち尽くしていた。
「ここが武家屋敷だな」
「結構古いねー。入って大丈夫かな?」
「どうだろうな。少なくとも古くて当たり前だ。モミジヤの中にも歴史を思わせるものは多いが、これはその中でも特に古いものに属していると見て言い」
Nightがここまで言うからにはきっと本当だ。
だけど入ってもいいかは分からない。
もしかしたら門を潜ったら倒壊するかもしれない。
そんな危険性が孕んでいたが、ここで立ち尽くしていても時間の無駄は変らない。
「どうするのよ? とりあえず射てみる?」
ベルは弓を構えていた。
先制攻撃を仕掛けようとしているが、Nightはそれを止めた。
「待て。入っても無いのに攻撃しても意味はない」
「そういうもの?」
「この先は特殊なエリアだ。侵入者と思われてもいない私たちが幾ら攻撃をしようが、攻撃を空撃ちしているに過ぎない」
Nightの言う言葉に説得力がドンドン増す。
ベルもそれを受けて弓を背中に掛け直すと、諦めた様子で矢を戻した。
「それでは行きましょうか」
「そうだな。とにかく警戒するぞ。とくにフェルノ、前には出るなよ」
「分かってるってー」
「それじゃみんな気を引き締めて。いざ!」
アキラたちは足を前に出した。
一歩一歩噛み締めるように薄っすらと遺る雪の上を歩いて行く。
五人のそれぞれ違う足跡を残して門を潜ると、全身を異様なものが駆けた。
ギュィィィィィィィィィィィィィィィン!
「うっ!?」
アキラは口元を抑えた。吐き気じゃない。とにかく頭の中がおかしくなりそうだった。
目がチカチカする。視界に煌びやかな光沢のある色紙が溢れ出す。
何もしていないはずが、急に視界から入って来た色紙がグルグルと形を変えていく。その姿は形を作り出し、例えるなら万華鏡のように様々に変化していく。
脳内で様々な模様が作られた。
ドンドン変化していき、頭の中を支配する。
ゴトンゴトンと聴こえないはずの音を響かせながら、グルグルグルグル回転する。
それはまるで部屋のようで、襖が開くと同時に模様が幾つも生み出された。
「な、なんだこれ……うっ、気持ち悪いな」
「頭の中が変だよー」
「これは……人体に影響が出そうですね」
「一体何処から……くっ、腹が立つわね。こうなったら、……はっ! 皆さん、落ち着きましょうね」
その中で唯一ベルは動くことができた。
自分で舌を噛み、蟀谷を思いっきり叩いた。
加えて普段の性格を偽る。初めて会う相手にする時と同じで、礼儀正しい良い人を演じた。
「ふぅ……一番救いがありそうなのは、アキラさん!」
ベルは思いっきりアキラの背中を叩いた。
すると脳内で回転していた部屋の動きが止まり、万華鏡が見えなくなる。
その状態でもう一度背中を叩かれると、痛みが一気に押し寄せた。
「痛い!」
アキラは隠さずに叫んだ。だけどおかげで視界が元に戻る。
万華鏡に支配されていたが無事に解放され、アキラは四肢を地面に付いた。
「ぜぇぜぇ」と息を荒げると、気持ち悪さのあまり、口からダラダラと涎を流した。
「あ、ありがとう。ベル」
「どういたしまして。それでは私のことも叩いてください」
「う、うん。行くよ、せーのっ!」
パチン!
アキラはベルの背中を痛くならない程度で叩いた。
するとベルは元に戻り、「ふぅ、助かったわ」と安堵した。
「一体なにが起きていたのかしら?」
「分からないけど、とりあえずみんなも助けてあげよ。ここは本当に気を引き締めないと飲まれるところだって分かったから」
「そうね。それじゃあ、せーのっ!」
「「えいっ!」」
アキラとベルは全員の意識を万華鏡の悪夢から救い出した。
救い方が雑で、あまりにも物理だったけれど、今更そんなことは言ってられない。
とは言えこれで全員解放され、地べたに四肢を付けて項垂れていた。相当堪えたようで、武家屋敷に入る前から疲弊してしまった。
「はぁはぁ。今のは一体なんだったのー?」
「分からないが、痛烈な歓迎ではあるな」
「これを歓迎と捉えていいのでしょうか? いえ、私たちは侵入者なので、攻撃を受けても仕方ないのかもしれませんね」
アキラたちは酷い目に遭ってしまった。
早速の精神攻撃はかなり効いた。
けれどそのおかげで全員が気を引き締めることになる。精神レベルがたちまち上がり、これで精神干渉系の攻撃はもう効かないだろう。
「それじゃあ私たちに精神攻撃してきた相手に一発入れに行こうか」
「そうだな。叩きのめすぞ」
「あはは、結構怒ってるよねー。まあ、それは私たちなんだけどさー」
アキラたちは武家屋敷に入ることにした。
果たして何処に居るのか。アキラたちは怒りの矛先を向けるべく、雪将軍を探し回ることにした。
一体どれほどの年月をこの場所で過ごしてきたのだろうか。
アキラたちは歴史を感じさせる奥ゆかしい建物を見つめ立ち尽くしていた。
「ここが武家屋敷だな」
「結構古いねー。入って大丈夫かな?」
「どうだろうな。少なくとも古くて当たり前だ。モミジヤの中にも歴史を思わせるものは多いが、これはその中でも特に古いものに属していると見て言い」
Nightがここまで言うからにはきっと本当だ。
だけど入ってもいいかは分からない。
もしかしたら門を潜ったら倒壊するかもしれない。
そんな危険性が孕んでいたが、ここで立ち尽くしていても時間の無駄は変らない。
「どうするのよ? とりあえず射てみる?」
ベルは弓を構えていた。
先制攻撃を仕掛けようとしているが、Nightはそれを止めた。
「待て。入っても無いのに攻撃しても意味はない」
「そういうもの?」
「この先は特殊なエリアだ。侵入者と思われてもいない私たちが幾ら攻撃をしようが、攻撃を空撃ちしているに過ぎない」
Nightの言う言葉に説得力がドンドン増す。
ベルもそれを受けて弓を背中に掛け直すと、諦めた様子で矢を戻した。
「それでは行きましょうか」
「そうだな。とにかく警戒するぞ。とくにフェルノ、前には出るなよ」
「分かってるってー」
「それじゃみんな気を引き締めて。いざ!」
アキラたちは足を前に出した。
一歩一歩噛み締めるように薄っすらと遺る雪の上を歩いて行く。
五人のそれぞれ違う足跡を残して門を潜ると、全身を異様なものが駆けた。
ギュィィィィィィィィィィィィィィィン!
「うっ!?」
アキラは口元を抑えた。吐き気じゃない。とにかく頭の中がおかしくなりそうだった。
目がチカチカする。視界に煌びやかな光沢のある色紙が溢れ出す。
何もしていないはずが、急に視界から入って来た色紙がグルグルと形を変えていく。その姿は形を作り出し、例えるなら万華鏡のように様々に変化していく。
脳内で様々な模様が作られた。
ドンドン変化していき、頭の中を支配する。
ゴトンゴトンと聴こえないはずの音を響かせながら、グルグルグルグル回転する。
それはまるで部屋のようで、襖が開くと同時に模様が幾つも生み出された。
「な、なんだこれ……うっ、気持ち悪いな」
「頭の中が変だよー」
「これは……人体に影響が出そうですね」
「一体何処から……くっ、腹が立つわね。こうなったら、……はっ! 皆さん、落ち着きましょうね」
その中で唯一ベルは動くことができた。
自分で舌を噛み、蟀谷を思いっきり叩いた。
加えて普段の性格を偽る。初めて会う相手にする時と同じで、礼儀正しい良い人を演じた。
「ふぅ……一番救いがありそうなのは、アキラさん!」
ベルは思いっきりアキラの背中を叩いた。
すると脳内で回転していた部屋の動きが止まり、万華鏡が見えなくなる。
その状態でもう一度背中を叩かれると、痛みが一気に押し寄せた。
「痛い!」
アキラは隠さずに叫んだ。だけどおかげで視界が元に戻る。
万華鏡に支配されていたが無事に解放され、アキラは四肢を地面に付いた。
「ぜぇぜぇ」と息を荒げると、気持ち悪さのあまり、口からダラダラと涎を流した。
「あ、ありがとう。ベル」
「どういたしまして。それでは私のことも叩いてください」
「う、うん。行くよ、せーのっ!」
パチン!
アキラはベルの背中を痛くならない程度で叩いた。
するとベルは元に戻り、「ふぅ、助かったわ」と安堵した。
「一体なにが起きていたのかしら?」
「分からないけど、とりあえずみんなも助けてあげよ。ここは本当に気を引き締めないと飲まれるところだって分かったから」
「そうね。それじゃあ、せーのっ!」
「「えいっ!」」
アキラとベルは全員の意識を万華鏡の悪夢から救い出した。
救い方が雑で、あまりにも物理だったけれど、今更そんなことは言ってられない。
とは言えこれで全員解放され、地べたに四肢を付けて項垂れていた。相当堪えたようで、武家屋敷に入る前から疲弊してしまった。
「はぁはぁ。今のは一体なんだったのー?」
「分からないが、痛烈な歓迎ではあるな」
「これを歓迎と捉えていいのでしょうか? いえ、私たちは侵入者なので、攻撃を受けても仕方ないのかもしれませんね」
アキラたちは酷い目に遭ってしまった。
早速の精神攻撃はかなり効いた。
けれどそのおかげで全員が気を引き締めることになる。精神レベルがたちまち上がり、これで精神干渉系の攻撃はもう効かないだろう。
「それじゃあ私たちに精神攻撃してきた相手に一発入れに行こうか」
「そうだな。叩きのめすぞ」
「あはは、結構怒ってるよねー。まあ、それは私たちなんだけどさー」
アキラたちは武家屋敷に入ることにした。
果たして何処に居るのか。アキラたちは怒りの矛先を向けるべく、雪将軍を探し回ることにした。
0
お気に入りに追加
221
あなたにおすすめの小説
仮想空間のなかだけでもモフモフと戯れたかった
夏男
SF
動物から嫌われる体質のヒロインがモフモフを求めて剣と魔法のVRオンラインゲームでテイマーを目指す話です。(なれるとは言っていない)
※R-15は保険です。
※小説家になろう様、カクヨム様でも同タイトルで投稿しております。
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
沢山寝たい少女のVRMMORPG〜武器と防具は枕とパジャマ?!〜
雪雪ノ雪
ファンタジー
世界初のフルダイブ型のVRゲーム『Second World Online』通称SWO。
剣と魔法の世界で冒険をするVRMMORPGだ。
このゲームの1番の特徴は『ゲーム内での3時間は現実世界の1時間である』というもの。
これを知った少女、明日香 睡月(あすか すいげつ)は
「このゲームをやれば沢山寝れる!!」
と言いこのゲームを始める。
ゲームを始めてすぐ、ある問題点に気づく。
「お金がないと、宿に泊まれない!!ベットで寝れない!!....敷布団でもいいけど」
何とかお金を稼ぐ方法を考えた明日香がとった行動は
「そうだ!!寝ながら戦えばお金も経験値も入って一石三鳥!!」
武器は枕で防具はパジャマ!!少女のVRMMORPGの旅が今始まる!!
..........寝ながら。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる