421 / 568
◇418 何か情報を持ってませんか?
しおりを挟む
「それで、どうしてうちの後を追うとってん」
天孤は自分の後を付けて来たアキラと雷斬を許した。
代わりに何故後を追って来たのか尋ねる。
もちろん隠す意味はない。アキラは天狐に答える。
「私達、久しぶりに天狐さんの姿を見つけて挨拶をしようと思って」
「挨拶?」
「はい。だって、モミジヤに来ても全然天狐さんの姿を見かけないので」
「そっかそっか。かんにんえー」
天孤はとにかく緩かった。
もはや最初から起こっている感じはなかったが、余計に緩くなっていた。
もしかしたら今なら話が深まるかもしれない。
アキラは意識を切り替えて、グッと踏み込んだ。
「天狐さん、少し気になることがあるんですけど」
「なに?」
「実は私たち、雪将軍って言うモンスターを探しに来たんです」
「雪将軍?」
天孤は早速首を捻った。
この感じだと、半分以上は知らない。
アキラと雷斬は勝手に期待してしまったことを心の中で謝ると、天狐は空を見上げた。
ポツポツと白い雪が降り始め、余計に気温が下がり始める。
「雪が降って来たなぁ」
「やっぱり知らないですよね?」
「うーん。知ってる言うたら知ってる。知らへんと言うたら知らへんなー」
その口振り、どっちなのか判断が付けにくい。
アキラと雷斬は神妙な表情を浮かべた。
すると天狐はパンと手を叩いた。
「そうやそうや思い出した。雪将軍言うたら、他のプレイヤーが話しとったやつや」
「そうなんですか!? 一体誰から……どんな人たちですか?」
「さぁ? 知らへんプレイヤーの会話を盗み聞きしただけやさかい」
「そんなことして大丈夫でしょうか?」
「ええでええで。気付かへん方が悪いさかい」
何処となく敵を作りそうで怖かった。
もしかしたら普段からさっきのスキルを使って姿を隠しているのかもしれない。
それで沢山の情報を仕入れている。
だからだろうか。この間の龍の髭の時も、何故か情報の巡り合わせが早かった。
「そのスキル便利ですね」
「そやな」
「戦闘になると無類の強さを発揮すると思いますよ」
「そうやね。そやけど私は一応侍? やさかい」
「「侍……」」
「とは言え、真っ向から戦う気は毛頭あらへんけどなぁ」
侍と言う言葉がこうも似合わないとは思わなかった。
完全に口から出まかせ。話の間繋ぎのために自らをそう評した。
本当に相手の目を盗み、揶揄う。天狐さんは狐の獣人キャラが似合っていた。
「それよりこれから冷えんで」
「確かに雪も降ってきましたもんね」
「もしかしなくても冷え込むと思いますよ。ここはスタットではないので」
「まあ、モミジヤは雪の量見ての通りやさかい」
「ううっ、そう言われると余計に寒くなって来た……」
アキラは全身を身震いさせた。
とは言えこの服は暖かい。
単純に言葉に釣られ、気分だけが凍え始めたのだ。
「冷えると良うないさかい、うちのギルドホームに来うひん?」
「「いいんですか!」」
「もちろんええわぁ。温泉にも入って行って」
「温泉……いいですね」
「うんうん。冬の温泉なんて風情の塊だもんね」
「はい。それでは皆さん、早速行きましょうか」
何故か雷斬が仕切り始めた。
本当な天狐が仕切るべきなのだが、そのノリに調子を合わせる。
「ほな行こう行こう!」と完全に乗って船で、腕を突き上げていた。
石造りの階段を下りていく。
きっと今頃Nightたちが必死に探してくれているんだろうと、頭の中だけで軽く想像ができた。
頭のいいNightなら足跡を追っているはず。そんな期待を込めて階段を下りて行くと、見慣れた姿を見つけた。
「あっ、Night。降りて来たよー」
「やっぱりか。はぁ……おい、突然いなくなるな!」
早速怒られてしまった。
完全に眉根に皺が寄っていて激おこだった。
アキラと雷斬は一瞬目が泳ぎそうになったが、すぐに開き直って謝る。
「「ごめんなさい」」
「あのな。突然いなくなられると困るんだ。アキラはまだしも、雷斬は集団行動できるはずだろ」
「できますが、今回は例外です」
「例外ってなによ。心配は……一応したのよ」
「一応何だねー。まあ、私は大丈夫派だったけどねー」
フェルノだけはこの状況でも怒ったりしなかった。
むしろ楽しそうで、ニヤニヤしている。
雪が降りしきる中、頭の上で腕を組んでいた。それほど余裕で、チームのムードメーカーだ。
「フェルノ。お前は心配して無さ過ぎだ」
「えー。だってアキラたちが戻ってこない訳ないでしょー」
「だからと言ってな……」
Nightは何の意味もなく怒っているわけじゃない。
それは分かっているのだが、雪が降って来たのも相まってか、雰囲気は最悪に走り出す。けれどNightの目元を隠すように、手が伸びて来た。
「うわぁ! な、なんだ」
「まあまあ、ええやん」
「その声は……天孤か?」
「そやけど?」
「本物か?」
「そや。久しぶりやな」
崩れ掛けた最悪の雰囲気が一変した。
完全にNightをあしらって揶揄ってしまう天狐に流石のアキラたちも助けてもらったとは言え、呆れてしまった。それくらい天狐は明るくて、自分のムードを崩さない姿勢がカッコ良かった。
天孤は自分の後を付けて来たアキラと雷斬を許した。
代わりに何故後を追って来たのか尋ねる。
もちろん隠す意味はない。アキラは天狐に答える。
「私達、久しぶりに天狐さんの姿を見つけて挨拶をしようと思って」
「挨拶?」
「はい。だって、モミジヤに来ても全然天狐さんの姿を見かけないので」
「そっかそっか。かんにんえー」
天孤はとにかく緩かった。
もはや最初から起こっている感じはなかったが、余計に緩くなっていた。
もしかしたら今なら話が深まるかもしれない。
アキラは意識を切り替えて、グッと踏み込んだ。
「天狐さん、少し気になることがあるんですけど」
「なに?」
「実は私たち、雪将軍って言うモンスターを探しに来たんです」
「雪将軍?」
天孤は早速首を捻った。
この感じだと、半分以上は知らない。
アキラと雷斬は勝手に期待してしまったことを心の中で謝ると、天狐は空を見上げた。
ポツポツと白い雪が降り始め、余計に気温が下がり始める。
「雪が降って来たなぁ」
「やっぱり知らないですよね?」
「うーん。知ってる言うたら知ってる。知らへんと言うたら知らへんなー」
その口振り、どっちなのか判断が付けにくい。
アキラと雷斬は神妙な表情を浮かべた。
すると天狐はパンと手を叩いた。
「そうやそうや思い出した。雪将軍言うたら、他のプレイヤーが話しとったやつや」
「そうなんですか!? 一体誰から……どんな人たちですか?」
「さぁ? 知らへんプレイヤーの会話を盗み聞きしただけやさかい」
「そんなことして大丈夫でしょうか?」
「ええでええで。気付かへん方が悪いさかい」
何処となく敵を作りそうで怖かった。
もしかしたら普段からさっきのスキルを使って姿を隠しているのかもしれない。
それで沢山の情報を仕入れている。
だからだろうか。この間の龍の髭の時も、何故か情報の巡り合わせが早かった。
「そのスキル便利ですね」
「そやな」
「戦闘になると無類の強さを発揮すると思いますよ」
「そうやね。そやけど私は一応侍? やさかい」
「「侍……」」
「とは言え、真っ向から戦う気は毛頭あらへんけどなぁ」
侍と言う言葉がこうも似合わないとは思わなかった。
完全に口から出まかせ。話の間繋ぎのために自らをそう評した。
本当に相手の目を盗み、揶揄う。天狐さんは狐の獣人キャラが似合っていた。
「それよりこれから冷えんで」
「確かに雪も降ってきましたもんね」
「もしかしなくても冷え込むと思いますよ。ここはスタットではないので」
「まあ、モミジヤは雪の量見ての通りやさかい」
「ううっ、そう言われると余計に寒くなって来た……」
アキラは全身を身震いさせた。
とは言えこの服は暖かい。
単純に言葉に釣られ、気分だけが凍え始めたのだ。
「冷えると良うないさかい、うちのギルドホームに来うひん?」
「「いいんですか!」」
「もちろんええわぁ。温泉にも入って行って」
「温泉……いいですね」
「うんうん。冬の温泉なんて風情の塊だもんね」
「はい。それでは皆さん、早速行きましょうか」
何故か雷斬が仕切り始めた。
本当な天狐が仕切るべきなのだが、そのノリに調子を合わせる。
「ほな行こう行こう!」と完全に乗って船で、腕を突き上げていた。
石造りの階段を下りていく。
きっと今頃Nightたちが必死に探してくれているんだろうと、頭の中だけで軽く想像ができた。
頭のいいNightなら足跡を追っているはず。そんな期待を込めて階段を下りて行くと、見慣れた姿を見つけた。
「あっ、Night。降りて来たよー」
「やっぱりか。はぁ……おい、突然いなくなるな!」
早速怒られてしまった。
完全に眉根に皺が寄っていて激おこだった。
アキラと雷斬は一瞬目が泳ぎそうになったが、すぐに開き直って謝る。
「「ごめんなさい」」
「あのな。突然いなくなられると困るんだ。アキラはまだしも、雷斬は集団行動できるはずだろ」
「できますが、今回は例外です」
「例外ってなによ。心配は……一応したのよ」
「一応何だねー。まあ、私は大丈夫派だったけどねー」
フェルノだけはこの状況でも怒ったりしなかった。
むしろ楽しそうで、ニヤニヤしている。
雪が降りしきる中、頭の上で腕を組んでいた。それほど余裕で、チームのムードメーカーだ。
「フェルノ。お前は心配して無さ過ぎだ」
「えー。だってアキラたちが戻ってこない訳ないでしょー」
「だからと言ってな……」
Nightは何の意味もなく怒っているわけじゃない。
それは分かっているのだが、雪が降って来たのも相まってか、雰囲気は最悪に走り出す。けれどNightの目元を隠すように、手が伸びて来た。
「うわぁ! な、なんだ」
「まあまあ、ええやん」
「その声は……天孤か?」
「そやけど?」
「本物か?」
「そや。久しぶりやな」
崩れ掛けた最悪の雰囲気が一変した。
完全にNightをあしらって揶揄ってしまう天狐に流石のアキラたちも助けてもらったとは言え、呆れてしまった。それくらい天狐は明るくて、自分のムードを崩さない姿勢がカッコ良かった。
0
お気に入りに追加
221
あなたにおすすめの小説
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
沢山寝たい少女のVRMMORPG〜武器と防具は枕とパジャマ?!〜
雪雪ノ雪
ファンタジー
世界初のフルダイブ型のVRゲーム『Second World Online』通称SWO。
剣と魔法の世界で冒険をするVRMMORPGだ。
このゲームの1番の特徴は『ゲーム内での3時間は現実世界の1時間である』というもの。
これを知った少女、明日香 睡月(あすか すいげつ)は
「このゲームをやれば沢山寝れる!!」
と言いこのゲームを始める。
ゲームを始めてすぐ、ある問題点に気づく。
「お金がないと、宿に泊まれない!!ベットで寝れない!!....敷布団でもいいけど」
何とかお金を稼ぐ方法を考えた明日香がとった行動は
「そうだ!!寝ながら戦えばお金も経験値も入って一石三鳥!!」
武器は枕で防具はパジャマ!!少女のVRMMORPGの旅が今始まる!!
..........寝ながら。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。
俺の召喚獣だけレベルアップする
摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話
主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った
しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった
それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する
そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった
この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉
神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく……
※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!!
内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません?
https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html
【書籍化決定】俗世から離れてのんびり暮らしていたおっさんなのに、俺が書の守護者って何かの間違いじゃないですか?
歩く魚
ファンタジー
幼い頃に迫害され、一人孤独に山で暮らすようになったジオ・プライム。
それから数十年が経ち、気づけば38歳。
のんびりとした生活はこの上ない幸せで満たされていた。
しかしーー
「も、もう一度聞いて良いですか? ジオ・プライムさん、あなたはこの死の山に二十五年間も住んでいるんですか?」
突然の来訪者によると、この山は人間が住める山ではなく、彼は世間では「書の守護者」と呼ばれ都市伝説のような存在になっていた。
これは、自分のことを弱いと勘違いしているダジャレ好きのおっさんが、人々を導き、温かさを思い出す物語。
※書籍化のため更新をストップします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる