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◇381 氷の花と小さな蜂
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アキラたちは寒空の下、大量に群生している透氷花を見つけた。
とは言え採取することはできない。
何故なら加重を掛ければ簡単に砕けてしまうからだ。
目の前にあるのに収穫できない。こんなにもむず痒いことはなく、アキラたちは唇を噛む。
もっと言えばそれどころの騒ぎではない。
蜂の姿が一向に見つからないのだ。
希少な花を見つけることは叶ったが、蜂が見つからないのなら意味がない。
如何したら良いのかも分からないまま、アキラたちは揃って立ち尽くしていた。
「如何しよう。このままじゃ結局見つからないよ」
「うーん、そもそもそんな蜜あるのかなー?」
「それを言ったら……」
「お終いだよねー。うーん、せめて蜜さえ見つかれば話も早いし終わるんだけどなー」
フェルノがぼやいた。
それもそのはずで欲しいのは蜜だ。
蜂はその過程で見つかるもので、キョロキョロ血眼になって景色を見回してみても一切見つかってくれないのだ。
「雪解け蜜……雪解けのシーズンではないのですが」
「雷斬、それを言ったらお終いだよ」
「そうでしたね。すみません」
「良いよ。私も思っちゃったから」
アキラと雷斬は思ってはいけないことを考えてしまった。
それを考えたら全部お終い。
ここに来た意味もここまで頑張って来た意味もなくなる。
そう思ったので、ふと意識を寄らしてみた。考えないで、その場に座り込んで少し休もうとすると、目の前を小さな何かが通った。
「ん?」
アキラは目線で追った。小さな何かが飛んでいる。
色は白、小さな白い毛が密集して生えている。脚は六本あり、如何やら昆虫のようだ。
羽音は聴こえてこない。それくらい低いデシベルで自身を支え、熱を放ちながらアキラの目の前を悠然と飛び去る。
飛び去った先を追う。それは透氷花の花弁の上。
何をしているのか、脚をガサガサとさせながら、花弁の中心のめしべから何か細かいものが出ている。
「アキラ、何を見ているのー?」
「これはもしかして……」
「蜂、だよね?」
その姿は誰が見ても明らかに蜂だった。
しかしあまりにも小さい。蜜蜂とかよりももっと小さい。
あのサイズ感を五分の一にしたレベルで、色も白く雪の世界に溶け込むようだった。
コレだと見つからない訳だが、本当にコレがアキラたちの探していた蜂かはまだ分からないのだ。
「綺麗で小さな蜂ですね」
「それに全然逃げないよー?」
「もしかして私たちのこと、眼中に無いのかな? それとも、見えていないのかな?」
白い小さな蜂は花粉を集めていた。
この時期に集めるなんて珍しい蜂だ。
本当は春とか、もっと暖かくなってから行動するはずだ。
だけどこの白い蜂は昆虫にとっては厳しい冬の寒さすら寄せ付けず、せっせと頑張っていた。
「けなげだね」
「そうだねー。頑張り屋さんだー」
アキラとフェルノは白い小さな蜂の頑張りに感嘆としていた。
すると雷斬はふと疑問を抱く。
ここまでスルーしていたが、当然の疑問を投げかけた。
「それにしても、如何して来の蜂は透氷花に乗っても大丈夫なんでしょうか?」
「「そう言えば……」」
すっかり忘れていたが、おかしな話だった。
白い小さい蜂は花弁の内に鎮座している。
体重がもの凄く軽い? そうだとしても、少しの加重で花弁が砕けてしまう透氷花の花弁に乗るのは大変だ。しかもそれを維持したまま花粉を集めると名乗ると、とんでもない繊細な体重移動が必要になる。見た所堂々としているので、そんな器用な真似をしているとは思えないのだ。
「如何やって乗っているんだろ? ……あれ?」
「如何したのアキラ? もしかして何か分かったの」
アキラはふと気が付いた。
白い小さな蜂は透氷花の花弁の上に乗っている訳じゃないらしい。
下から覗き込むとよく分かるが、羽を超高速ではためかせてホバリングしている。
つまりは脚の先だけを花弁に触れさせ花粉を集め、自分の体重を全て小さな二枚の羽で支えているのだ。
一体どれだけの強靭なパワーがあるのか。アキラとフェルノは気付いた瞬間絶句した。
「ヤバすぎだよー」
「ハチドリとかもホバリングするって動物番組で観たことあるけど、こんな小さな蜂にもできるんだね」
アキラは凄いと感動した。
拳をギュッと握りしめ、心の奥で飛行能力が欲しいと願った。
しかしまだその能力は手に入っていない。だから憧れだけを悶々と抱いた。
「それにしてもよく頑張るねー」
「うん。これだけ花粉を集めて何処に行くのかな?」
きっと巣に帰るんだろうけど、それが近いのか遠いのか分からない。
今はとにかく観察することだけしかできないので、アキラたちはじっくり観察を続ける。
すると満足したのか、急に飛び立った。
「あっ!」
「み、見えなくない?」
透氷花の花弁から白い小さな蜂は飛び立った。
花弁は砕けていないが、それどころじゃない。
あまりにも小さくてアキラもフェルノも見失ってしまう。
何処に飛んで行ったのかまるで判らずあたふたしている中、一人だけ雷斬だけはその姿を注視して空を見つめていた。鋭くなった眼光が、飛び立った蜂を逃がさない。
とは言え採取することはできない。
何故なら加重を掛ければ簡単に砕けてしまうからだ。
目の前にあるのに収穫できない。こんなにもむず痒いことはなく、アキラたちは唇を噛む。
もっと言えばそれどころの騒ぎではない。
蜂の姿が一向に見つからないのだ。
希少な花を見つけることは叶ったが、蜂が見つからないのなら意味がない。
如何したら良いのかも分からないまま、アキラたちは揃って立ち尽くしていた。
「如何しよう。このままじゃ結局見つからないよ」
「うーん、そもそもそんな蜜あるのかなー?」
「それを言ったら……」
「お終いだよねー。うーん、せめて蜜さえ見つかれば話も早いし終わるんだけどなー」
フェルノがぼやいた。
それもそのはずで欲しいのは蜜だ。
蜂はその過程で見つかるもので、キョロキョロ血眼になって景色を見回してみても一切見つかってくれないのだ。
「雪解け蜜……雪解けのシーズンではないのですが」
「雷斬、それを言ったらお終いだよ」
「そうでしたね。すみません」
「良いよ。私も思っちゃったから」
アキラと雷斬は思ってはいけないことを考えてしまった。
それを考えたら全部お終い。
ここに来た意味もここまで頑張って来た意味もなくなる。
そう思ったので、ふと意識を寄らしてみた。考えないで、その場に座り込んで少し休もうとすると、目の前を小さな何かが通った。
「ん?」
アキラは目線で追った。小さな何かが飛んでいる。
色は白、小さな白い毛が密集して生えている。脚は六本あり、如何やら昆虫のようだ。
羽音は聴こえてこない。それくらい低いデシベルで自身を支え、熱を放ちながらアキラの目の前を悠然と飛び去る。
飛び去った先を追う。それは透氷花の花弁の上。
何をしているのか、脚をガサガサとさせながら、花弁の中心のめしべから何か細かいものが出ている。
「アキラ、何を見ているのー?」
「これはもしかして……」
「蜂、だよね?」
その姿は誰が見ても明らかに蜂だった。
しかしあまりにも小さい。蜜蜂とかよりももっと小さい。
あのサイズ感を五分の一にしたレベルで、色も白く雪の世界に溶け込むようだった。
コレだと見つからない訳だが、本当にコレがアキラたちの探していた蜂かはまだ分からないのだ。
「綺麗で小さな蜂ですね」
「それに全然逃げないよー?」
「もしかして私たちのこと、眼中に無いのかな? それとも、見えていないのかな?」
白い小さな蜂は花粉を集めていた。
この時期に集めるなんて珍しい蜂だ。
本当は春とか、もっと暖かくなってから行動するはずだ。
だけどこの白い蜂は昆虫にとっては厳しい冬の寒さすら寄せ付けず、せっせと頑張っていた。
「けなげだね」
「そうだねー。頑張り屋さんだー」
アキラとフェルノは白い小さな蜂の頑張りに感嘆としていた。
すると雷斬はふと疑問を抱く。
ここまでスルーしていたが、当然の疑問を投げかけた。
「それにしても、如何して来の蜂は透氷花に乗っても大丈夫なんでしょうか?」
「「そう言えば……」」
すっかり忘れていたが、おかしな話だった。
白い小さい蜂は花弁の内に鎮座している。
体重がもの凄く軽い? そうだとしても、少しの加重で花弁が砕けてしまう透氷花の花弁に乗るのは大変だ。しかもそれを維持したまま花粉を集めると名乗ると、とんでもない繊細な体重移動が必要になる。見た所堂々としているので、そんな器用な真似をしているとは思えないのだ。
「如何やって乗っているんだろ? ……あれ?」
「如何したのアキラ? もしかして何か分かったの」
アキラはふと気が付いた。
白い小さな蜂は透氷花の花弁の上に乗っている訳じゃないらしい。
下から覗き込むとよく分かるが、羽を超高速ではためかせてホバリングしている。
つまりは脚の先だけを花弁に触れさせ花粉を集め、自分の体重を全て小さな二枚の羽で支えているのだ。
一体どれだけの強靭なパワーがあるのか。アキラとフェルノは気付いた瞬間絶句した。
「ヤバすぎだよー」
「ハチドリとかもホバリングするって動物番組で観たことあるけど、こんな小さな蜂にもできるんだね」
アキラは凄いと感動した。
拳をギュッと握りしめ、心の奥で飛行能力が欲しいと願った。
しかしまだその能力は手に入っていない。だから憧れだけを悶々と抱いた。
「それにしてもよく頑張るねー」
「うん。これだけ花粉を集めて何処に行くのかな?」
きっと巣に帰るんだろうけど、それが近いのか遠いのか分からない。
今はとにかく観察することだけしかできないので、アキラたちはじっくり観察を続ける。
すると満足したのか、急に飛び立った。
「あっ!」
「み、見えなくない?」
透氷花の花弁から白い小さな蜂は飛び立った。
花弁は砕けていないが、それどころじゃない。
あまりにも小さくてアキラもフェルノも見失ってしまう。
何処に飛んで行ったのかまるで判らずあたふたしている中、一人だけ雷斬だけはその姿を注視して空を見つめていた。鋭くなった眼光が、飛び立った蜂を逃がさない。
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