370 / 568
◇368 台地の死闘
しおりを挟む
アキラたちはとある森へとやって来ていた。
鬱蒼としている森だ。アキラとフェルノは藪から飛び出た細い木の枝を薙ぎ払い、Nightを後方に置いて、案内役を頼む。
「Night、この道しかないの?」
「そんなはずはない。だが、道が通れなかっただろ」
本当はこんな獣道を通る予定ではなかった。
実際は、この先に少し小高いいわゆる台地と呼ばれる場所がある。
そこに抜けるために、鋪装はされていないが、平らに整備された砂地の道が広がっている。
しかし今日の所は大木が倒れていて通れなかった。
もしかしたらモチツキンを死闘を繰り広げた証かも。
などと、早く大木が取り除かれることを期待しつつ、アキラたちは獣道を掻き分けた。
「ふぅ。この先に居るんだよね?」
「ネットの情報だとそうらしいな。実際、直近の記録を見るに間違いなさそうだ」
はっきりとNightは答える。
Nightが選び取った情報はほぼ間違いが無いので、アキラたちは安心することができた。
しかしながらこの獣道はかなり長い。
何処にモチツキンが居るのか一向に見えてこない中、突然変な音が聴こえた。
ドスンドスン!
何かを叩くような音だ。
激しく地面を揺らし、振動でその存在感を露わにする。
「な、何この音!」
アキラは気になってしまった。
するとNightは「例のモチツキンじゃないのか?」とあやふやに唱える。
「こんな音を出す? もしかして、杵を使っているのかな?」
「如何だろうな。とは言え、質量に対してだ。この音を出せるだけ巨体なら想像もつくが……」
「行ってみるしかないよー」
Nightは少し嫌な予感がして考え始めた。
しかしフェルノは直情的。
草木を掻き分け、獣道を開拓すると、森がようやく晴れた。
目の前には盛り上がった地面があり、これが台地だとすぐさま伝わる。
「結構大きな台地だね」
「うん。何処から……って、なだらかな道ができてるね。行ってみよっか」
「そうだねー」
「いや、待て!」
アキラとフェルノが早速行ってみようとする。
しかしNightはアキラの服の袖を掴み、行かせないようにしていた。
「如何したの、Night?」
「この音、聴こえないか?」
「音?」
耳を澄まして聴いてみた。
台地の上、ここからでは見えない所からドスンドスンと音が聴こえる。
一体何が居るのか。もしかしてそこにモチツキンが? そう思った最中、グシャ! と鈍くて嫌な音が聴こえた。
「な、なに今の音!?」
アキラは声を上げた。
幸い距離が離れているのでモチツキンには聴こえていないらしい。
安堵したのも束の間、妙にリアルな音が聴こえてしまったので、アキラとフェルノはNightに尋ねた。
「Night、今の音って?」
「台地の奥から聞こえて来たよー。しかも急に音が変化してさー」
「考えたくはないが、誰かやられたか?」
「「えっ?」」
アキラとフェルノは固まった。
完全に意識がフリーズしてしまい、瞳孔が一点を見つめている。
誰かやられたとは? その意味を深く検討する。
しかしNightが「あまり深く考えるな」と念押ししてくれる。
アキラとフェルノは一旦意識の外側へと外れると、Nightに改めて尋ねる。
「この上に居るんだよね?」
「だろうな。そしてさっきのはモチツキンの攻撃だ」
「アレが攻撃……怖いな」
アキラが口走った瞬間、何かが飛んでくる。
視線で追うことはもはや不可能。
気が付けば「ぐはっ!」と嗚咽を漏らす声が、近くにある今しがた崩れた藪の中から聴こえてくる。
「な、なに今の?」
「アキラ見てよ! HPバーがあるよ。かなりヤバい、レッドラインだ!」
藪の中に誰か居た。
アキラたちは近づいてみると、そこにはプレイヤーが倒れている。
何の種族かは分からないけど、細長い顔をした男は「嘘だろ、一発で……」と咳き込んでいた。
「大丈夫ですか!」
「うっ、挑戦しに来たのか? 止めておけ、アイツは……うっ!」
「あっ、ポーション! はっ……」
鞄の中からポーションを取り出そうとした。
しかしプレイヤーの男は手を伸ばし、ポーションを取り出そうとする手を引っ込めさせた。
「私にはいい。とにかく、アイツとは戦うな」
「戦うなって……それって、如何言う!」
アキラが訊こうとした。しかし時すでに遅し、男の体は粒子になる。
手を伸ばそうとした。だけどすり抜けてしまい、消滅してしまう。
「あっ……」
「強制ログアウトさせられたな」
「それって、やられたってこと?」
「そう言うことだ。それにしても、ここまで吹き飛ばされるんだな」
Nightは呑気だった。しかしアキラは少し冷や汗を掻く。
まさかこんなにあっさりやられてしまうなんて。
一体この先にどんなモンスターが待っているのか。
アキラはNightに尋ねる。
「モチツキンってこんなことをするの?」
「さあな。行ってみるしかない」
「そうだよね。それしかないもんね」
アキラたちは目の前に台地の山に向かう。
一体どんな姿なのか、とっても気になった。
鬱蒼としている森だ。アキラとフェルノは藪から飛び出た細い木の枝を薙ぎ払い、Nightを後方に置いて、案内役を頼む。
「Night、この道しかないの?」
「そんなはずはない。だが、道が通れなかっただろ」
本当はこんな獣道を通る予定ではなかった。
実際は、この先に少し小高いいわゆる台地と呼ばれる場所がある。
そこに抜けるために、鋪装はされていないが、平らに整備された砂地の道が広がっている。
しかし今日の所は大木が倒れていて通れなかった。
もしかしたらモチツキンを死闘を繰り広げた証かも。
などと、早く大木が取り除かれることを期待しつつ、アキラたちは獣道を掻き分けた。
「ふぅ。この先に居るんだよね?」
「ネットの情報だとそうらしいな。実際、直近の記録を見るに間違いなさそうだ」
はっきりとNightは答える。
Nightが選び取った情報はほぼ間違いが無いので、アキラたちは安心することができた。
しかしながらこの獣道はかなり長い。
何処にモチツキンが居るのか一向に見えてこない中、突然変な音が聴こえた。
ドスンドスン!
何かを叩くような音だ。
激しく地面を揺らし、振動でその存在感を露わにする。
「な、何この音!」
アキラは気になってしまった。
するとNightは「例のモチツキンじゃないのか?」とあやふやに唱える。
「こんな音を出す? もしかして、杵を使っているのかな?」
「如何だろうな。とは言え、質量に対してだ。この音を出せるだけ巨体なら想像もつくが……」
「行ってみるしかないよー」
Nightは少し嫌な予感がして考え始めた。
しかしフェルノは直情的。
草木を掻き分け、獣道を開拓すると、森がようやく晴れた。
目の前には盛り上がった地面があり、これが台地だとすぐさま伝わる。
「結構大きな台地だね」
「うん。何処から……って、なだらかな道ができてるね。行ってみよっか」
「そうだねー」
「いや、待て!」
アキラとフェルノが早速行ってみようとする。
しかしNightはアキラの服の袖を掴み、行かせないようにしていた。
「如何したの、Night?」
「この音、聴こえないか?」
「音?」
耳を澄まして聴いてみた。
台地の上、ここからでは見えない所からドスンドスンと音が聴こえる。
一体何が居るのか。もしかしてそこにモチツキンが? そう思った最中、グシャ! と鈍くて嫌な音が聴こえた。
「な、なに今の音!?」
アキラは声を上げた。
幸い距離が離れているのでモチツキンには聴こえていないらしい。
安堵したのも束の間、妙にリアルな音が聴こえてしまったので、アキラとフェルノはNightに尋ねた。
「Night、今の音って?」
「台地の奥から聞こえて来たよー。しかも急に音が変化してさー」
「考えたくはないが、誰かやられたか?」
「「えっ?」」
アキラとフェルノは固まった。
完全に意識がフリーズしてしまい、瞳孔が一点を見つめている。
誰かやられたとは? その意味を深く検討する。
しかしNightが「あまり深く考えるな」と念押ししてくれる。
アキラとフェルノは一旦意識の外側へと外れると、Nightに改めて尋ねる。
「この上に居るんだよね?」
「だろうな。そしてさっきのはモチツキンの攻撃だ」
「アレが攻撃……怖いな」
アキラが口走った瞬間、何かが飛んでくる。
視線で追うことはもはや不可能。
気が付けば「ぐはっ!」と嗚咽を漏らす声が、近くにある今しがた崩れた藪の中から聴こえてくる。
「な、なに今の?」
「アキラ見てよ! HPバーがあるよ。かなりヤバい、レッドラインだ!」
藪の中に誰か居た。
アキラたちは近づいてみると、そこにはプレイヤーが倒れている。
何の種族かは分からないけど、細長い顔をした男は「嘘だろ、一発で……」と咳き込んでいた。
「大丈夫ですか!」
「うっ、挑戦しに来たのか? 止めておけ、アイツは……うっ!」
「あっ、ポーション! はっ……」
鞄の中からポーションを取り出そうとした。
しかしプレイヤーの男は手を伸ばし、ポーションを取り出そうとする手を引っ込めさせた。
「私にはいい。とにかく、アイツとは戦うな」
「戦うなって……それって、如何言う!」
アキラが訊こうとした。しかし時すでに遅し、男の体は粒子になる。
手を伸ばそうとした。だけどすり抜けてしまい、消滅してしまう。
「あっ……」
「強制ログアウトさせられたな」
「それって、やられたってこと?」
「そう言うことだ。それにしても、ここまで吹き飛ばされるんだな」
Nightは呑気だった。しかしアキラは少し冷や汗を掻く。
まさかこんなにあっさりやられてしまうなんて。
一体この先にどんなモンスターが待っているのか。
アキラはNightに尋ねる。
「モチツキンってこんなことをするの?」
「さあな。行ってみるしかない」
「そうだよね。それしかないもんね」
アキラたちは目の前に台地の山に向かう。
一体どんな姿なのか、とっても気になった。
0
お気に入りに追加
221
あなたにおすすめの小説
仮想空間のなかだけでもモフモフと戯れたかった
夏男
SF
動物から嫌われる体質のヒロインがモフモフを求めて剣と魔法のVRオンラインゲームでテイマーを目指す話です。(なれるとは言っていない)
※R-15は保険です。
※小説家になろう様、カクヨム様でも同タイトルで投稿しております。
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
沢山寝たい少女のVRMMORPG〜武器と防具は枕とパジャマ?!〜
雪雪ノ雪
ファンタジー
世界初のフルダイブ型のVRゲーム『Second World Online』通称SWO。
剣と魔法の世界で冒険をするVRMMORPGだ。
このゲームの1番の特徴は『ゲーム内での3時間は現実世界の1時間である』というもの。
これを知った少女、明日香 睡月(あすか すいげつ)は
「このゲームをやれば沢山寝れる!!」
と言いこのゲームを始める。
ゲームを始めてすぐ、ある問題点に気づく。
「お金がないと、宿に泊まれない!!ベットで寝れない!!....敷布団でもいいけど」
何とかお金を稼ぐ方法を考えた明日香がとった行動は
「そうだ!!寝ながら戦えばお金も経験値も入って一石三鳥!!」
武器は枕で防具はパジャマ!!少女のVRMMORPGの旅が今始まる!!
..........寝ながら。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。
鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。
鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。
まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。
VRMMO~鍛治師で最強になってみた!?
ナイム
ファンタジー
ある日、友人から進められ最新フルダイブゲーム『アンリミテッド・ワールド』を始めた進藤 渚
そんな彼が友人たちや、ゲーム内で知り合った人たちと協力しながら自由気ままに過ごしていると…気がつくと最強と呼ばれるうちの一人になっていた!?
Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる