367 / 575
◇365 雪合戦をほぼガチでやらされた結果
しおりを挟む
明輝たちはそれぞれジャージの上にビブスを着ることになった。
赤と青と分かりやすい色合いになっている。
明輝と烈火も同じく赤色のビブスを着ることになった。
「何で本気で雪合戦をするんだろうね?」
「でも面白いから良くなーい?」
「それは良いんだけどね。だけど、相手は強そうだよ?」
明輝たち赤チームには白玄や黒牟、祭が居た。
しかし青チームには水泳部時期エースと呼ばれる及川麗奈を始め、友達の由里乃に風紀委員の三条美零。如何にもできそうな人たちばかりだった。
「加竜さん、水泳ではいい勝負でしたが、こちらでは私が勝ちますよ」
「うん。全力で楽しもう」
「全力で楽しむ……そうですね。まずは貴女を倒します」
「おお、ライバル意識。私は結構好きだよ、そう言うのー」
麗奈は烈火を挑発する。
しかし烈火は完全に挑発に乗ったは良いものの、そこからのペースは一切崩さない。
そんな姿を見届けると、準備も出来たので、船橋先生は笛を唇に当てる。
ちなみに今回のルールだと、雪玉を当てられた場合はアウト。場外に出る。
相手チームを全滅させるか、各陣営の中央ラインに設置されたフラッグを抜き取る。
このどっちかで勝利になる。
そんなシンプルなルールの下、何故か本格的になってしまった雪合戦が船橋先生の合図とともに開始されるのだった。
ピィィィィィィィィィィィィィィィ!
甲高い笛の音が空を切る。
流石に最初は様子見。そう思ったのも束の間。
烈火と麗奈が雪玉を作ると、同時に投げつけた。
「「そりゃぁ!」」
ほぼ同時だった。
然し若干烈火の方が早く、麗奈の雪玉を撃ち落とす。
とは言え互いに相殺され、完全に二人の先制パンチで事態が動く。
「やるねー」
「加竜さんも。ですが、こっちは一人では無いんですよ」
麗奈はそう答えると、後ろから伏兵が飛び出す。
美零と由里乃が雪玉をそれぞれ放り投げると、祭や他のクラスメイトを狙っていた。
「危ないよ。由里乃」
祭はスルリと躱してしまう。
他のクラスメイトは当たってしまったが、それでも隙を狙って、白玄と黒牟が雪玉を投げて二人を落とした。
流石のコンビネーションで、すぐさま反撃の目を生み出す。
「やるよ、黒牟!」
「うん」
二人はダンボールを盾にする。
それから雪玉を投げて牽制するが、流石に人数が減ったこともあり、相手チームも動きがない。
そんな中、烈火は麗奈と一対一の勝負をひたすらに繰り広げていた。
流石にその中には誰も入れない。なので暗黙の了解のように、誰も邪魔立てしていない。
「何でこっち攻撃して来ないんだろうねー」
「そうですね。こんなに隙があるのに……」
「そろそろ明輝辺りは気が付いているんじゃないかな?」
「うん。何で立花さんは攻撃して来ないのでしょうね?」
二人のピリピリとした熱いエネルギーが迸る。
二人の背中から語り掛けて来るものを明輝は当然気が付いていた。
しかしながらその中に入りこもうとは思わない。
だって誰も動かないから、余計な真似しちゃダメだった。
「如何しよう。私も攻撃した方が良いのかな?」
一応雪玉は作っていたし、的確かつ適度に投げて邪魔をしていた。
その隙を突いて祭が由里乃を撃破。
雪玉を失った祭の隙を隠すように、美零が投げる雪玉を雪玉をぶつけて払い落とす。
そのおかげで人数差は一瞬で生まれてしまい、五対二くらいになってしまった。
「ちょっと及川さん、そろそろ二人だけの勝負は止めて……」
「そうしたいけど、無理なんです」
「如何して?」
「私が加竜さんを止めないと、一掃されてしまいますよ」
麗奈の言うことは最もだった。
もしもここで麗奈がやられれば、烈火は容赦なく残った美零を落としに来る。
それはあまりにも確実で、その前に勝つための手段。唯一の方法はフラッグを取ることだった。
「だからね。三条さん、私の代わりにフラッグを取って来て」
「私が? 残ったメンバーを掻い潜って?」
「うん。お願いできませんか?」
「……あまりにも勝機が薄い気がしますけど……」
それでも美零はやることを決めていた。
それくらいしかできない。だからこそ頑張るのだ。
ここで音を上げるのは早すぎると、自分を鼓舞して、雪の上を駆け出す。
「もう、絶対無理でしょ!」
それでも美零は駆け出していた。
雪玉の集中砲火を何とか身を逸らして躱し、フラッグを目指す。
みんな空気を読んでいるのか、それとも思った以上にスピードがないせいか、全然雪玉が当たらずに、赤チームは困惑する。
「取った!」
美零はまさかフラッグを取って勝てるとは思わなかった。
指先が質感の良い金属棒に触れた瞬間、背中に雪玉が放物線を描いて当たる。
「えっ?」
「やった!」
目の前には明輝が居た。
しかしかなり離れていて、直接ストレートに投げた訳じゃない。
完全に隙を突かれた。背中に当たるように仕向けられるとは思わなかったのだ。
「う、嘘でしょ?」
「ふぅ。GAMEで慣れておいて良かったよ。うわぁ!」
「明輝、危ない!」
すると今度は最後の一人、麗奈が雪玉を投げた。
しかし明輝は素早く気が付き避けてしまい、青チームの活躍も空しく麗奈を烈火が仕留めた。
「ごめんねー」
「お、終わりですか」
麗奈に雪玉が当たる。
すると船橋先生がピィィィィィィィィィィ! と笛を吹き、「赤チームの勝利です」と宣言する。
「ふぅ。負けちゃったわね」
「ごめんね、麗奈ちゃん」
「いいわよ。でもまさか背中にドンピシャで当たるなんて」
「あはは、運良かったね」
明輝はその一言で片づけてしまった。
しかしただ運が良かったわけじゃない。明輝の方に運が傾いた。
何となく、そんな雰囲気があるのだが、誰も気が付きはしなかった。
とにかく楽しい雪合戦ができて、心底疲れたし、内側のボルテージにも火が点いた。
赤と青と分かりやすい色合いになっている。
明輝と烈火も同じく赤色のビブスを着ることになった。
「何で本気で雪合戦をするんだろうね?」
「でも面白いから良くなーい?」
「それは良いんだけどね。だけど、相手は強そうだよ?」
明輝たち赤チームには白玄や黒牟、祭が居た。
しかし青チームには水泳部時期エースと呼ばれる及川麗奈を始め、友達の由里乃に風紀委員の三条美零。如何にもできそうな人たちばかりだった。
「加竜さん、水泳ではいい勝負でしたが、こちらでは私が勝ちますよ」
「うん。全力で楽しもう」
「全力で楽しむ……そうですね。まずは貴女を倒します」
「おお、ライバル意識。私は結構好きだよ、そう言うのー」
麗奈は烈火を挑発する。
しかし烈火は完全に挑発に乗ったは良いものの、そこからのペースは一切崩さない。
そんな姿を見届けると、準備も出来たので、船橋先生は笛を唇に当てる。
ちなみに今回のルールだと、雪玉を当てられた場合はアウト。場外に出る。
相手チームを全滅させるか、各陣営の中央ラインに設置されたフラッグを抜き取る。
このどっちかで勝利になる。
そんなシンプルなルールの下、何故か本格的になってしまった雪合戦が船橋先生の合図とともに開始されるのだった。
ピィィィィィィィィィィィィィィィ!
甲高い笛の音が空を切る。
流石に最初は様子見。そう思ったのも束の間。
烈火と麗奈が雪玉を作ると、同時に投げつけた。
「「そりゃぁ!」」
ほぼ同時だった。
然し若干烈火の方が早く、麗奈の雪玉を撃ち落とす。
とは言え互いに相殺され、完全に二人の先制パンチで事態が動く。
「やるねー」
「加竜さんも。ですが、こっちは一人では無いんですよ」
麗奈はそう答えると、後ろから伏兵が飛び出す。
美零と由里乃が雪玉をそれぞれ放り投げると、祭や他のクラスメイトを狙っていた。
「危ないよ。由里乃」
祭はスルリと躱してしまう。
他のクラスメイトは当たってしまったが、それでも隙を狙って、白玄と黒牟が雪玉を投げて二人を落とした。
流石のコンビネーションで、すぐさま反撃の目を生み出す。
「やるよ、黒牟!」
「うん」
二人はダンボールを盾にする。
それから雪玉を投げて牽制するが、流石に人数が減ったこともあり、相手チームも動きがない。
そんな中、烈火は麗奈と一対一の勝負をひたすらに繰り広げていた。
流石にその中には誰も入れない。なので暗黙の了解のように、誰も邪魔立てしていない。
「何でこっち攻撃して来ないんだろうねー」
「そうですね。こんなに隙があるのに……」
「そろそろ明輝辺りは気が付いているんじゃないかな?」
「うん。何で立花さんは攻撃して来ないのでしょうね?」
二人のピリピリとした熱いエネルギーが迸る。
二人の背中から語り掛けて来るものを明輝は当然気が付いていた。
しかしながらその中に入りこもうとは思わない。
だって誰も動かないから、余計な真似しちゃダメだった。
「如何しよう。私も攻撃した方が良いのかな?」
一応雪玉は作っていたし、的確かつ適度に投げて邪魔をしていた。
その隙を突いて祭が由里乃を撃破。
雪玉を失った祭の隙を隠すように、美零が投げる雪玉を雪玉をぶつけて払い落とす。
そのおかげで人数差は一瞬で生まれてしまい、五対二くらいになってしまった。
「ちょっと及川さん、そろそろ二人だけの勝負は止めて……」
「そうしたいけど、無理なんです」
「如何して?」
「私が加竜さんを止めないと、一掃されてしまいますよ」
麗奈の言うことは最もだった。
もしもここで麗奈がやられれば、烈火は容赦なく残った美零を落としに来る。
それはあまりにも確実で、その前に勝つための手段。唯一の方法はフラッグを取ることだった。
「だからね。三条さん、私の代わりにフラッグを取って来て」
「私が? 残ったメンバーを掻い潜って?」
「うん。お願いできませんか?」
「……あまりにも勝機が薄い気がしますけど……」
それでも美零はやることを決めていた。
それくらいしかできない。だからこそ頑張るのだ。
ここで音を上げるのは早すぎると、自分を鼓舞して、雪の上を駆け出す。
「もう、絶対無理でしょ!」
それでも美零は駆け出していた。
雪玉の集中砲火を何とか身を逸らして躱し、フラッグを目指す。
みんな空気を読んでいるのか、それとも思った以上にスピードがないせいか、全然雪玉が当たらずに、赤チームは困惑する。
「取った!」
美零はまさかフラッグを取って勝てるとは思わなかった。
指先が質感の良い金属棒に触れた瞬間、背中に雪玉が放物線を描いて当たる。
「えっ?」
「やった!」
目の前には明輝が居た。
しかしかなり離れていて、直接ストレートに投げた訳じゃない。
完全に隙を突かれた。背中に当たるように仕向けられるとは思わなかったのだ。
「う、嘘でしょ?」
「ふぅ。GAMEで慣れておいて良かったよ。うわぁ!」
「明輝、危ない!」
すると今度は最後の一人、麗奈が雪玉を投げた。
しかし明輝は素早く気が付き避けてしまい、青チームの活躍も空しく麗奈を烈火が仕留めた。
「ごめんねー」
「お、終わりですか」
麗奈に雪玉が当たる。
すると船橋先生がピィィィィィィィィィィ! と笛を吹き、「赤チームの勝利です」と宣言する。
「ふぅ。負けちゃったわね」
「ごめんね、麗奈ちゃん」
「いいわよ。でもまさか背中にドンピシャで当たるなんて」
「あはは、運良かったね」
明輝はその一言で片づけてしまった。
しかしただ運が良かったわけじゃない。明輝の方に運が傾いた。
何となく、そんな雰囲気があるのだが、誰も気が付きはしなかった。
とにかく楽しい雪合戦ができて、心底疲れたし、内側のボルテージにも火が点いた。
0
お気に入りに追加
221
あなたにおすすめの小説
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
VRゲームでも身体は動かしたくない。
姫野 佑
SF
多種多様な武器やスキル、様々な【称号】が存在するが職業という概念が存在しない<Imperial Of Egg>。
古き良きPCゲームとして稼働していた<Imperial Of Egg>もいよいよ完全没入型VRMMO化されることになった。
身体をなるべく動かしたくないと考えている岡田智恵理は<Imperial Of Egg>がVRゲームになるという発表を聞いて気落ちしていた。
しかしゲーム内の親友との会話で落ち着きを取り戻し、<Imperial Of Egg>にログインする。
当作品は小説家になろう様で連載しております。
章が完結次第、一日一話投稿致します。
私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました
新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。
後輩と一緒にVRMMO!~弓使いとして精一杯楽しむわ~
夜桜てる
SF
世界初の五感完全没入型VRゲームハードであるFUTURO発売から早二年。
多くの人々の希望を受け、遂に発売された世界初のVRMMO『Never Dream Online』
一人の男子高校生である朝倉奈月は、後輩でありβ版参加勢である梨原実夜と共にNDOを始める。
主人公が後輩女子とイチャイチャしつつも、とにかくVRゲームを楽しみ尽くす!!
小説家になろうからの転載です。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる